数字でわかるNo.N10
出会う回数と単語の覚えやすさの関係は、r=.34って、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ホント
26の研究、1918人分をまとめると、出会う回数と覚えやすさの相関は0.34。はっきりした関係ですが、回数だけで決まるわけではありません。
ホントとは… 複数の研究でおおむね支持されている常識です。
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イギリスの作家バージェスの小説『時計じかけのオレンジ』には、見慣れない言葉がたくさん出てきます。「ナッドサット」と呼ばれる、ロシア語をもとにした若者言葉です。
1978年、サラギ、ネーション、マイスターの3人は、この小説を英語を母語とする学生20人に読んでもらいました。ロシア語を話せる人はいません。読み終わったあとで、ナッドサットの言葉90語の意味を選択式で答えてもらうと、平均で76%が正解でした。
小説を読んでいるうちに、知らない言葉を自然に覚えていたのです。研究チームは、読み物の中で単語が覚えられるには、少なくとも10回くらい出てくる必要がありそうだ、と書いています。
26の研究を、1つにまとめる
その後、同じような研究がたくさん行われました。文章や音声の中で単語に何回出会ったか。そして、その単語をどれだけ覚えたか。
2019年、ウチハラ、ウェッブ、ヤナギサワの3人は、外国語の学習者を対象にしたこうした研究を集めました。26の研究、合わせて1918人分のデータです。そこから45の結果を取り出し、メタ分析という方法で1つにまとめました。
まとめた結果、出会う回数と覚えた量の相関は0.34でした。相関とは、2つの数字がどのくらい連動しているかを表すもので、1なら完全に連動、0なら関係なしです。研究チームは、0.34を「中くらいの効果」としています。
出会う回数が増えるほど、たしかに単語は覚えやすくなります。ただ、相関0.34は、回数だけで学習のほとんどが決まるという強さではありません。
同じ回数でも、結果は変わる
研究によって、回数の効き方には大きな差がありました。ウチハラらは、その差がどこから来るのかも調べています。
関係していたのは、学習者の側では、年齢と、もともとの語彙の大きさでした。学び方の側では、日をあけて出会うかどうか、絵や映像の助けがあるか、学習にどれくらい深くかかわるか、などです。テストの形式や、あとでテストがあると予告したかどうかといった、研究の進め方の違いも影響していました。
つまり、同じ10回でも、だれが、どんな形で出会うかによって、残り方が変わるのです。
10回を超えると、一気に伸びた
1つの研究を、くわしく見てみましょう。2010年、ペリセル=サンチェスとシュミットは、英語力の高いスペイン人20人に、英語の小説『崩れゆく絆』を読んでもらいました。大学の最終学年の学生か、卒業したばかりの人たちです。ナイジェリアを舞台にした小説で、現地のイボ語の単語がそのまま出てきます。
研究チームは、イボ語の単語34語を選びました。そして、小説に出てくる回数で、1回、2〜4回、5〜8回、10〜17回、28回以上のグループに分けました。
参加者には、単語を覚えるようにとは伝えていません。ふつうに小説を楽しんで読んでもらっただけです。全員が最後まで読み、20人中17人が、おもしろかったと答えています。
結果を見ると、8回までの単語は、意味を選べたのが36%でした。10回以上出てきた単語では84%です。自分で意味を言えたのは、8回までが7%、10回以上が55%でした。
ただし、学習が急に伸びる回数は、人によって違っていました。早い人は2〜4回から5〜8回のあいだで伸び、遅い人は10〜17回を過ぎてから伸びました。研究チームは、回数よりも、単語が出てくる文脈のわかりやすさが効いている可能性も挙げています。
回数に、工夫を足す
10回という目安は、たしかに役に立ちます。でも、同じ日に10回くり返すのと、日をあけて10回出会うのとでは、同じ10回とは限りません。
原田英語のおすすめは、回数を重ねながら、出会い方に変化をつけることです。日をあけて復習する。絵や動画で意味を確かめる。覚えた単語を自分で使ってみる。回数はスタートラインで、そこに何を足すかで、単語の残り方が変わります。
この記事に出てくる用語
- メタ分析
- たくさんの研究の結果をまとめて、全体として効果があるかを計算する方法。1つの研究より信頼できる。
- 相関
- 2つのことが一緒に増えたり減ったりする度合い。−1から1の数字で、0に近いほど関係は弱い。原因と結果を示すものではない。
参考文献
Uchihara T., Webb S., Yanagisawa A. (2019). The Effects of Repetition on Incidental Vocabulary Learning: A Meta‐Analysis of Correlational Studies. Language Learning, 69, 559-599.
doi.org/10.1111/lang.12343✓ 実在と内容を確認済み
Pellicer-Sánchez A., Schmitt N. (2010). Incidental vocabulary acquisition from an authentic novel: Do Things Fall Apart? Reading in a Foreign Language, 22(1), 31-55.
doi.org/10.64152/10125/66652✓ 実在と内容を確認済み
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