数字でわかるNo.N06

ある程度読むなら4000〜5000語、しっかり読むなら8000語って、ホント?

判定日 読了 約4分音声 5:26文献 2件

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判定:ホント

最低ラインは4000〜5000語で文章の95%、理想ラインは8000語で98%。イスラエルの研究者が出した2本の線です。

ホントとは… 複数の研究でおおむね支持されている常識です。

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1980年代の終わり、イスラエルの言語学者ラウファーは、ある考えを信じる先生たちといっしょに働いていました。文章の単語の80%がわかれば、内容は理解できる、という考えです。

根拠になっていたのは、穴埋め問題です。5語に1語、つまり20%の単語を消しても、文章はちゃんと元に戻せる。それなら80%わかれば読めるはずだ、という考えでした。

ラウファーは、これに納得しませんでした。本物の文章で知らない単語になるのは、意味の中心になる語ばかりです。しかも、均等に散らばってはいません。知らない単語がかたまって出てくれば、その部分は意味が取れなくなります。そこで彼女は、文章の何%の単語を知っていれば読めるのかを、実際に調べ始めました。

80%ではなく、95%

1989年の研究で、ラウファーが出した答えは95%でした。単語の95%以上を知っている学生は、大学の読解テストで合格点の55%を取れる見込みが高かったのです。

次に彼女は、学習者が何語知っていればいいのかを調べました。1992年の研究では、3000語レベルの学習者の読解の得点は56%と予測されました。4000語なら63%、5000語なら70%です。

3つを同時に測った2010年の研究

2010年、ラウファーとラーフェンホルスト=カロフスキは、それまで別々に調べられてきたことを、ひとつの研究にまとめました。測ったのは3つです。

ひとつめは、学習者の語彙の大きさ。単語のレベル別テストで測りました。ふたつめは、その語彙で文章の何%をカバーできるか。文章の単語をレベル別に分けるソフトで計算しました。みっつめは読解力で、イスラエルの全国共通の試験の点数を使いました。

その結果、語彙が少し増えるだけでは、文章のカバー率はほとんど変わりませんでした。それでも、読解力は上がっていました。カバー率の数字に表れにくい少しの語彙の差が、読む力には効いていたのです。

ラウファーらは、ここから2本の線を提案しました。最低限の線は、4000〜5000ワードファミリーで、固有名詞を含めて95%のカバー率。理想の線は、8000ワードファミリーで98%です。ワードファミリーとは、もとの語とその派生語をまとめて1つと数える単位です。

のちにラウファーは、この研究をこう振り返っています。全国試験で「自力で読める」とされた学習者は、語彙が6000〜8000語で、98%に届いていました。一方、自力で読めるようになるまでにさらに授業を受ける必要があった学習者は、4000〜5000語で、95%でした。

2本の線を、どう使うか

2021年には、この数字の使い方をめぐって議論も起きています。別の研究者が、学習者と文章を数字で組み合わせるやり方は、根拠の弱い前提にもとづいていると批判したのです。ラウファーは「コップの中の嵐?」という題の論文で反論しました。

批判の中心は、数える単位でした。ワードファミリーで数えると、develop を知っていれば development もわかる、という前提になります。でも、学習者が派生語をすべて知っているとは限りません。これに対してラウファーは、実際の文章に出てくる派生語は意外に少ないと答えました。学習者向けの本では、派生語は文章の3.17%にすぎなかったのです。

同じ論文で彼女は、ディケンズの『クリスマス・キャロル』を4000語レベルに書き直した版を例に挙げています。この本なら、3000語で95%、5000語で98%に届きます。4000語前後の学生は、先生の助けを借りながら読み進めることができます。

さらに彼女は、2020年の研究も紹介しています。もともと知っている単語が90%でも、文脈から5%分を推測できれば、95%に届くというものです。

原田英語のおすすめは、まず4000〜5000語をめざすことです。そこまで来れば、助けを借りながら英文を読み進められます。その先の8000語は、辞書を置いて読書を楽しむための線です。2本の線のどちらにいるかがわかれば、自分に合った本も選びやすくなります。

この記事に出てくる用語
ワードファミリー
use・used・useful のように、もとが同じ単語をひとまとまりとして数える数え方。

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参考文献

  1. Laufer B., Ravenhorst-Kalovski G. (2010). Lexical threshold revisited: Lexical text coverage, learners’ vocabulary size and reading comprehension. Reading in a Foreign Language, 22, 15-30.

  2. Laufer B. (2021). Lexical Thresholds and Alleged Threats to Validity: A Storm in a Teacup? Reading in a Foreign Language, 33(2), 238-246.

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