偉人の勉強法No.F10
手当たり次第の独学でも、科学は身につく(キュリー夫人は「実りが少なかった」と回想)って、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:ウソ
本人も「たいした実りはなかった」と振り返っています。伸びたのは、足りない基礎を計画的に埋めてからでした。
ウソとは… 研究の結果、この常識は支持されません。逆効果のこともあります。
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論文での効果助けのない発見学習は、直接の指導より劣る(効果量0.38)
今日からできるやり方
- 独学でも、体系的な教科書を1冊決める
- 解説つきの例題で、解き方の手順を学ぶ
- 解いたら必ず答え合わせをし、誤りを直す
- 苦手な基礎は、学年をさかのぼって埋める
1893年、パリのソルボンヌ大学。物理学の学士の試験で、1番の成績をとったのは、ポーランドから来た女子学生でした。翌1894年には、数学の学士を2番の成績でとります。のちに2度のノーベル賞を受けるマリー・キュリーです。
けれども、パリに来たときの彼女は、まわりのフランス人学生に大きく遅れていました。キュリーは、夫ピエールの伝記に添えた「自伝的覚え書き」(1923年英訳)で、そこに至るまでの勉強を振り返っています。
家庭教師の夜
キュリーは15歳で高校を卒業しました。成績はいつもクラスで1番でした。けれども、年老いた父の財産はわずかでした。17歳になったばかりで、住み込みの家庭教師として親元を離れます。
昼は子どもたちに勉強を教え、夜は自分の勉強にあてました。女性でも外国で大学の講義を受けた人がいると聞き、その準備をしようと決めたのです。文学や社会学にも同じくらい興味がありましたが、ひとりで勉強を続けるうちに、少しずつ数学と物理に心が向いていきました。
ただ、この独学には苦労がありました。高校で受けた理科の教育は、フランスの高校の水準よりずっと下でした。キュリーはそれを自分なりに補おうと、手当たり次第に手に入れた本で勉強します。そして、この方法は、たいした実りをもたらすはずがなかった、と書いています。それでも、ひとりで勉強する習慣が身につき、のちに役立つことも少しは学べた、とも述べています。
ワルシャワに戻ってからは、いとこが管理する小さな実験室を、夜や日曜日に使えるようになりました。物理や化学の本に書かれた実験をひとりで試し、思いがけない成功に励まされることもあれば、経験不足からくる事故や失敗に深く落ち込むこともありました。進歩の道は速くも楽でもない、と学んだ時期でした。
屋根裏部屋の4年間
1891年11月、24歳のキュリーは、ついにパリに出ます。住んだのは屋根裏の小さな部屋でした。冬は寒く、洗面器の水が夜のうちに凍ることもありました。眠るために、持っている服を全部ふとんの上に重ねたといいます。食事はパンとココア、卵や果物くらい。わずかな石炭は、自分で6階まで運び上げました。
けれども、いちばんの苦労は勉強でした。ソルボンヌの物理の講義についていくには、準備が足りなかったのです。ポーランドでどれだけ努力しても、同じ講義を受けるフランスの学生ほどの準備はできていませんでした。とくに数学が遅れていました。
そこでキュリーは、時間を講義と実験と図書館での勉強に分け、夜は部屋で、ときには夜遅くまで勉強しました。1年目の終わりには、同じポーランドの学生たちとの集まりもやめ、すべての力を勉強に集中させます。休みの大部分も、数学にあてました。こうして遅れを取り戻し、ほかの学生と同じ時期に試験に合格し、冒頭の成績をおさめたのです。
手当たり次第の独学ではなく、大学の講義という道筋に沿って、足りない基礎を狙って埋める。伸びたのは、勉強のしかたがそう変わってからでした。
研究が示す「導き」の力
研究も、導きのない独学の弱さを示しています。2011年、アルフィエリらは164の研究をまとめ、2つの分析をしました。
1つ目では、助けなしに自分で発見させる学習と、はっきり教える指導を比べました。580の比較から、ほとんどの条件で、はっきり教える指導のほうが成績が良くなりました(効果量0.38)。2つ目では、答え合わせや、解き方の例、手がかり、説明を求めるなどの助けを加えた発見学習を、ほかの指導と比べました。360の比較から、こちらは、ほかの指導より成果が上がりました(効果量0.30)。著者たちは、助けのない発見は学ぶ人の役に立たないが、答え合わせや例題や説明を求める工夫は役に立つ、とまとめています。
2006年、キルシュナーらも、初心者には手厚い導きのある指導が有効で、導きの少ない指導は効果も効率も劣ると論じています。導きの利点が薄れるのは、学ぶ人が十分な知識を持ち、自分の中で自分を導けるようになってからだ、とも述べています。
独学を実らせるには
独学そのものが悪いのではありません。キュリーも、ひとりで勉強する習慣は役に立ったと書いています。実りが少なかったのは、道筋と答え合わせのない独学でした。
原田英語のおすすめは、独学するなら、まず体系的な教科書を1冊決めることです。解説つきの例題で解き方の手順を学び、解いたら必ず答え合わせをして誤りを直す。苦手な基礎があれば、学年をさかのぼってでも埋める。
屋根裏部屋の学生が最初にしたのは、自分に足りないものを認めることでした。そこから、1番の成績までの道が始まりました。
参考文献
Curie M. (1923). Pierre Curie, with Autobiographical Notes (C. Kellogg & V. Kellogg, Trans.). Macmillan (Project Gutenberg eBook #69617).
www.gutenberg.org/ebooks/69617✓ 実在と内容を確認済み
Alfieri L., Brooks P., Aldrich N., Tenenbaum H. (2011). Does discovery-based instruction enhance learning? Journal of Educational Psychology, 103, 1-18.
doi.org/10.1037/a0021017✓ 実在と内容を確認済み
Kirschner P., Sweller J., Clark R. (2006). Why minimal guidance during instruction does not work. Educational Psychologist, 41, 75-86.
doi.org/10.1207/s15326985ep4102_1✓ 実在と内容を確認済み
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