偉人の勉強法No.F02
フランクリン流「名文を見ずに書き直す」と、文章がうまくなるって、ホント?

読む前に予想この常識、あなたはどう思う?
先に予想してから答えを見ると、記憶に残りやすくなります(予想の効果の記事)。
判定:半分ホント
要点メモから書き直して原文と比べる流れは、研究と合っています。ただ、この方法そのものを試した実験はありません。
半分ホントとは… 条件つきで正しい、または言い過ぎの部分がある常識です。
この記事を音声で聞くGoogle Cloud TTS(Chirp 3 HD)
0:00 / 6:08
論文での効果自分で作り出した情報は、読むだけより記憶に残る(効果量0.40)
今日からできるやり方
- お手本の文章を読み、各文の要点だけメモする
- 数日おき、メモだけを見て文章を書き直す
- 原文と比べ、違う所と足りない言葉を書き出す
- メモの順番を崩し、並べ直す練習もする
10代のベンジャミン・フランクリンには、ジョン・コリンズという本好きの友人がいました。2人は議論が大好きで、あるとき「女性に学問を教えるべきか」で言い争いになります。コリンズは反対、フランクリンは賛成。決着がつかないまま会えなくなったので、2人は手紙で論争を続けました。
片方が3、4通ずつ書いたころ、フランクリンの父親がその手紙を見つけて読みました。父親は議論の中身には触れず、書き方について話しました。つづりと句読点は、印刷所で働いているおかげで相手より正確だ。けれども、表現の美しさ、組み立て、わかりやすさでは、ずっと劣っている。いくつもの例を挙げて説明され、フランクリンはその指摘が正しいと認めました。のちのアメリカ建国の父のひとりは、ここから文章の修業を始めます。
雑誌の第3巻
ちょうどそのころ、フランクリンはロンドンの雑誌『スペクテイター』の第3巻を手に入れました。それまで一度も見たことのない雑誌です。くり返し読み、すっかり気に入り、できればこの文章をまねしたいと思いました。
そこで、記事をいくつか選び、一文ごとに、その文が言っていることを短いメモにしました。メモは数日しまっておきます。それから本を見ずに、メモだけを頼りに、もとの記事と同じくらい十分に、思いつく言葉で文章を書き直しました。最後に、自分の書いたものと原文を比べ、誤りを見つけて直しました。
足りなかったのは、言葉の在庫
比べてみてわかったのは、使える言葉の量が足りない、思い出してすぐ使う力も足りない、ということでした。フランクリンは、詩を書き続けていれば身についたはずだと考えます。詩では、韻やリズムに合わせて、同じ意味で長さや響きの違う言葉を、いつも探さなければならないからです。
そこで、記事の中の話を詩に書き換えました。しばらくして元の文を忘れたころ、その詩を、もう一度ふつうの文章に戻します。さらに、メモの順番をわざとばらばらにして、数週間後に最もよい順番へ並べ直す練習もしました。考えの並べ方、つまり文章の組み立てを身につけるためです。
原文と比べると、たくさんの誤りが見つかりました。それでも、ときには、細かい点で原文よりうまく書けたかもしれない、と思えることがありました。それが、いつかまずまずの書き手になれるかもしれないという励みになった、と書いています。練習の時間は、仕事が終わった夜か、始まる前の朝、そして日曜日でした。日曜日は、父親から言われていた礼拝をなるべく避けて、印刷所に一人で残ったそうです。
研究から見える効き目
この方法には、研究で効果が確かめられた要素が入っています。まず、自分で言葉を作り出すと、ただ読むより記憶に残ります。これを「生成効果」といいます。2007年、バーチらは86の研究から445の効果量をまとめ、その大きさを0.40と報告しました。効果量は差の大きさを表す数字です。論文の説明では、自分で作り出すほうが、読むだけより、成績の散らばりの幅(標準偏差)の半分近く上回るという意味です。
文章指導の研究もあります。2007年、グレアムとペリンは、4年生から12年生の文章指導の研究をまとめ、文章の質に対する効果を比べました。要約のしかたを教える指導は0.82と大きな効果でした。一方、お手本の文章を読んで学ぶ指導は0.25と小さめでした。文法を教える指導は、マイナス0.32でした。
フランクリンの父親が指摘したのも、文法ではなく、表現と組み立てとわかりやすさでした。名文を眺めるだけでは足りず、要点に縮め、自分で書き直し、原文と比べて直す。効いているのは、この手を動かす部分だと考えられます。
ただし、フランクリンの方法そのものを試した実験はありません。メタ分析の対象も、4年生から12年生の文章指導が中心です。
まねするなら、メモと数日の間
原田英語のおすすめは、好きな書き手の短い文章を1つ選び、一文ずつ要点だけをメモすることです。数日おいて、メモだけを見て書き直す。そして原文と並べて、違う所と、自分に出てこなかった言葉を書き出します。慣れてきたら、メモの順番を崩して、並べ直すところから始めてみましょう。
父親に「わかりにくい」と言われた少年は、こうして、原文と自分の文の差を一つずつ埋めていきました。
この記事に出てくる用語
- メタ分析
- たくさんの研究の結果をまとめて、全体として効果があるかを計算する方法。1つの研究より信頼できる。
- 効果量
- 効果の大きさを表す数字。目安は0.2で小さい、0.5で中くらい、0.8で大きい。
- 標準偏差
- 点数のばらつきの大きさ。「0.5標準偏差上がる」は、真ん中くらいの人が上位3割くらいに上がるイメージ。
参考文献
Franklin B. (1791/1868). Autobiography of Benjamin Franklin (Project Gutenberg eBook #20203).
www.gutenberg.org/ebooks/20203✓ 実在と内容を確認済み
Bertsch S., Pesta B., Wiscott R., McDaniel M. (2007). The generation effect: A meta-analytic review. Memory & Cognition, 35, 201-210.
doi.org/10.3758/BF03193441✓ 実在と内容を確認済み
Graham S., Perin D. (2007). A meta-analysis of writing instruction for adolescent students. Journal of Educational Psychology, 99, 445-476.
doi.org/10.1037/0022-0663.99.3.445✓ 実在と内容を確認済み
文献はCrossrefで書誌を確認し、記事の内容は要旨などと照合しています(判定の方法)。





