この一瞬のために、プロは自分専用の一曲を用意しています。
それは趣味ではなく、集中力を一気に立ち上げるための装置です。
同じ仕組みは、机に向かう前の30秒にもそのまま使えます。
1登場曲は「気合い」ではなく「装置」である
日本のプロ野球には、打者が打席に向かうとき、投手がマウンドに上がるときに球場で流れる「登場曲」という文化があります。英語では walk-up song(打者)や entrance music(投手)と呼ばれ、メジャーリーグでも選手本人が曲を指定するのが一般的です。
ここで大事なのは、選曲が「好きな曲を流しているだけ」ではないという点です。毎試合、同じ場面で、同じ曲を、同じ音量で聴く。この反復によって、曲そのものが「これから集中モードに入る」という合図になっていきます。スポーツの現場でプレパフォーマンス・ルーティンと呼ばれる考え方で、ルーティンの中に音楽を組み込む選手は非常に多い。
だらだら流しっぱなし
盛り上がったところで
そのまま音楽を聴き続ける
長さは15〜30秒
曲が終わったら
すぐ本番に入る
違いは曲名ではなく、「いつ流すか」と「いつ止めるか」を決めているかどうかです。プロの登場曲は必ず短時間で切れます。音楽が終わった瞬間に集中が立ち上がる設計になっている。勉強前のBGMが習慣化しにくいのは、たいていここが逆になっているからです。
登場曲を勉強に応用するなら、狙いは「テンションを上げること」ではなく「始める合図をつくること」。1曲フルではなく、サビまでの30秒で十分です。
以下で紹介する20曲は、実際に日本のプロ野球選手が登場曲として使っている(または使っていたと報じられている)曲の中から、洋楽17曲・邦楽3曲を選んだものです。全曲にYouTubeリンクを付けました。公式MVがあるものは公式を、ないものは最も再生数の多い音源をリンクしています!
情報の扱いについて:登場曲はシーズン途中や打席ごとに変更されます。この記事では、球団公式サイトで確認できたものと、ファンによるまとめ情報がもとになっているものを分けて表記しました。最新の情報は必ず各球団の公式サイトでご確認ください。
2球団公式で裏が取れた洋楽5曲(横浜DeNAベイスターズ)
まずは、横浜DeNAベイスターズの公式サイト「選手登場曲」ページで確認できた洋楽から5曲。公式が打席ごとの曲名まで公開している、非常に貴重な一次情報です。
度会隆輝(第1・3打席)
▶ 公式MVを観る(YouTube)
度会隆輝(第4・5打席)
▶ 公式MVを観る(YouTube)
山﨑康晃
▶ MVを観る(YouTube)
浜地真澄
▶ 公式MVを観る(YouTube)
松本隆之介
▶ 公式MVを観る(YouTube)
DeNAの公式ページでは、打席ごとに別の曲を指定している選手が何人もいます。「1打席目はこれ、2打席目はこれ」という切り替え方は、そのまま科目ごとに曲を変えるという発想に置き換えられます。
3セ・リーグ編 イチオシ洋楽3曲
ここからは、ファンによる登場曲まとめ情報をもとにした選曲です(球団公式での確認は取れていないため、曲名は変更されている可能性があります)。まずはセ・リーグから3曲。
① 読売ジャイアンツ・戸郷翔征
THE NIGHTS
The Nights / Avicii(2014年)
エース級の投手がマウンドに向かうときに、これ以上ないほど合う一曲。
② 阪神タイガース・木浪聖也
HANDCLAP
HandClap / Fitz and the Tantrums(2016年)
音量を絞っても効く。集合住宅で夜に使える数少ないアップ系です。
③ 東京ヤクルトスワローズ・オスナ
LA ROMANA
La Romana / Bad Bunny ft. El Alfa(2018年)
英語以外の言語に耳を慣らす入口としても優秀。La Romana はドミニカ共和国の都市名です。
4パ・リーグ編 イチオシ洋楽9曲
パ・リーグは洋楽率が高く、EDM・ヒップホップ・ラテン・映画音楽まで振れ幅があります。ここでも出典はファンによるまとめ情報が中心です。
千葉ロッテマリーンズ
藤原恭大
▶ 公式MVを観る(YouTube)
友杉篤輝
益田直也
▶ 公式MVを観る(YouTube)
オリックス・バファローズ
山下舜平大
宗佑磨
▶ 公式MVを観る(YouTube)
埼玉西武ライオンズ
平良海馬
▶ 公式MVを観る(YouTube)
隅田知一郎
▶ 公式MVを観る(YouTube)
髙橋光成
▶ 公式音源を聴く(YouTube)
東北楽天ゴールデンイーグルス
早川隆久
▶ 動画を観る(YouTube)
5番外・邦楽3曲──英語の前に心を立て直す曲
洋楽だけが登場曲ではありません。日本語の曲には、意味がそのまま入ってくるという圧倒的な強みがあります。ここでは3曲だけ紹介します。
柳田悠岐(ソフトバンク)
▶ 公式MVを観る(YouTube)
奥川恭伸(ヤクルト)
▶ 公式MVを観る(YouTube)
万波中正(日本ハム)
▶ 公式音源を聴く(YouTube)
6曲名だけで学べる英語表現10選
ここまでに出てきた曲のタイトルには、そのまま入試や英検で使える表現が並んでいます。歌詞を追う前に、まずタイトルだけ覚えてしまうのが効率的です。
曲名は3〜5語程度なので、音とセットで一瞬で覚えられます。しかも毎回流すたびに復習が起きる。単語帳より定着が速いのは、この反復回数の差です。
7自分の「登場曲」の選び方 4ステップ
プロの選曲を眺めて終わりにするのはもったいない。同じ仕組みを自分の勉強に移植します。手順は4つです。
ステップ1:曲は1曲だけに絞る
複数用意した時点で「今日はどれにしよう」という判断が発生し、始めるまでの時間が延びます。プロが登場曲を1曲に固定しているのは、迷う余地をなくすためでもある。まずは上の20曲から直感で1曲選んでください。
ステップ2:流すのは30秒、必ず途中で止める
イントロからサビ手前までで切るのが理想です。フルで聴くと、聴き終えた時点で満足してしまう。曲が途中で切れる気持ち悪さを、そのまま机に向かう力に変えるのが狙いです。タイマー代わりにもなります。
ステップ3:場所と姿勢もセットで固定する
同じ椅子、同じ机、同じ明るさ。条件が揃うほど合図としての効きが強くなります。打者が同じ動作で打席に入るのと同じ考え方です。
ステップ4:勉強中は無音、または歌詞なしに切り替える
ここが最重要です。英文を読む・書くといった言語処理の最中に、歌詞のある曲を流すと処理が競合します。読解や英作文の時間は無音、計算や書き取りなど手を動かす作業なら歌詞なしの曲、という切り分けが現実的です。
この記事で紹介した曲のうち、Kernkraft 400・Aerodynamic・Portals の3曲は歌詞がありません。勉強中にそのまま流し続けられる、貴重な登場曲です。
8目的別プレイリストの組み方
同じ20曲でも、使う場面によって効き方がまったく変わります。目的から逆算して選んでください。
テンポが速すぎず、明るい曲。心拍を急に上げるより、体をほぐす方向が続きます。
勝負の場面を思い出させる曲。会場では音を出せないので、前日から同じ曲を使って条件づけをしておきます。
歌詞がないので言語処理とぶつかりません。一定のビートが手の動きを止めにくくします。
今日の失敗をいったん置く曲。区切りをつけて寝るのも戦略です。
洋楽を使うメリットは、耳が英語の音に触れる総時間が自然に増えることです。意味がわからないまま流していても構いません。先に音を覚えて、あとから意味を回収する順番のほうが、歌に関しては定着します。
まとめ──一曲で、スイッチは入る
プロが登場曲にこだわるのは、音楽が好きだからではありません。
本番に入る瞬間を、自分の意思ではなく仕組みで作るためです。
