中高英語教師のための授業アイデア&最新情報ニュースレター

【中高英語教師のための授業アイデア&最新情報】 2026年8月1日(土)~原田先生の英語教育ニュースレター Vol.163~

 

 

ENGLISH TEACHER’S BRIEFING
📬 原田先生の英語教育ニュースレター
中高英語教師のための授業アイデア&最新情報
2026.08.01 SAT  /  VOL.163
今号のかたち:キルギスのユルト天窓「トゥンドゥク」とフェルト絨毯「シルダック」
TÜNDÜK I  /  BAŞ SÖZ / 巻頭
⚡ 今日のヘッドライン
新潟県立国際フロンティア高校 ── 公立高校で全国初の「ケンブリッジ国際教育プログラム」
2027年4月、新潟県南魚沼市に開校予定の国際フロンティア高校が、公立高校としては全国で初めてケンブリッジ国際教育プログラムを導入します。1年生は全員、世界160以上の国と地域で使われているケンブリッジの教材で数学と英語を英語で学ぶ少人数授業を受け、他教科は日本語で学ぶ二層構成。国際情報高校の校舎を使い、寮を整備して県外からの入学も受け入れます。
注目したいのは「英語を学ぶ」ではなく「英語で学ぶ」を公立の枠組みで走らせるという設計です。県教委は狙いとして「知識を覚えて正解を再現する力」より「知識を道具として使い、まとめて説明する力」を挙げています。これは私立や一部の国際バカロレア校の話ではなく、公立高校の現実的な選択肢として提示されたという点で、進路指導にも授業設計にも効いてきます。
第1回オープンスクールは8月22日、事前申込は7月29日から受付開始。夏休みのうちに一度、中3の生徒に「こういう選択肢がある」と伝えられる材料です。
TÜNDÜK II  /  SABAK / 授業
🎯 今日の帯活動アイデア(5分でできる!)
◎ Spoke Words(スポーク・ワーズ)
対象:中2〜高3 | 時間:5分 | 準備:黒板のみ
① 黒板の中央に円を描き、中に名詞を1語だけ書く。例:decision
② 円から放射状に線を6本引く。生徒はペアで、その語と自然につながる語を線の先に書き込む(make / difficult / final / regret / quick / behind)
③ 教師が線を2本指名。生徒はその2語を両方使って1文を作る。例:“I made a quick decision and I still regret it.”
④ 30秒で口頭発表。次のラウンドは中心語を生徒が決める
💡 ユルトの天窓トゥンドゥクは、中心の輪から垂木が放射状に伸びる構造です。語彙も同じで、単語は単独ではなく「どの語と組むか」で意味の輪郭が決まります。コロケーションを「覚えるリスト」ではなく「線を引く作業」に変えると、生徒が自分で辞書を引き始めます。
◆ Both Halves Live(切り抜きも生かす)
対象:中3〜高3 | 時間:5分 | 準備:不要
① 教師が長めの1文を提示。例:“The teacher who joined our school last April speaks four languages.”
② 生徒はその文から連続する3〜6語を切り抜く。ただし条件が2つ ── 残った側が文として成立すること、切り抜いた側も句として意味を持つこと
③ ペアで交換。相手の「切り抜き」だけを見て、元の文を口頭で復元する
④ 元の文と見比べ、ズレた箇所を1つだけ指摘して終了
💡 シルダックは2枚重ねたフェルトを一度だけ切り抜き、切り取った側と残った側を両方とも絨毯にします。捨てる部分がない。文も同じで、関係詞節や前置詞句は「余分な飾り」ではなく、単独でも意味を持つ部品です。切って初めて、構造が手で触れるようになります。
TÜNDÜK III  /  MUGALIM / 教師
🤖 AI × 英語指導(教師向け)
Coursebox AI ── 手元の資料を、そのまま小テスト付き教材に
プロンプトやPDF・スライド・動画をアップロードすると、章立て・本文・クイズまで一気に生成するAIオーサリングツールです。100以上の言語に対応し、AI採点とルーブリック作成まで同じ画面で完結します。教材を作る段階と、評価基準を決める段階が分かれないのが実務上ありがたい設計です。
英語科での使いどころは「配布済みプリントの再利用」。既に印刷済みのハンドアウトを取り込ませ、同じ内容の確認クイズだけ生成させると、2学期の小テストづくりが一気に軽くなります。生成物はそのまま使わず、設問の1割を自分で書き換えるのを習慣にすると精度が安定します。
無料でアカウントを作ってコース作成を試せます。
TÜNDÜK IV  /  OKUUÇU / 生徒
📱 AI × 英語学習(生徒向け)
Yoodli ── 「何を言ったか」ではなく「どう言ったか」を返すAI
話した英語を録音・アップロードすると、フィラー(um, like)の回数、話速、間の取り方、言い淀みを数値と時系列で返してくれるスピーチコーチです。発音の正誤判定ツールではなく、デリバリーの癖を見せるツール、という点が他と違います。Toastmasters Internationalが会員向けに採用したことでも知られます。
スピーチ・プレゼン・面接の指導と相性が良く、生徒が自分の録音を自分で聞き返すという一番しんどい工程を、数値が代わりに引き受けてくれます。「もっとゆっくり」と教師が10回言うより、話速のグラフを1回見せるほうが早い場面があります。
無料プランあり。まずは英検二次試験の練習音声を1本入れてみるのがおすすめです。
TÜNDÜK V  /  KABAR / 報せ
📰 英語教育ニュース FLASH
🇯🇵 JAPAN  /  採用試験
熊本地震の影響で、熊本県・熊本市が教員採用選考試験を延期
7月28日に熊本県内で発生した地震を受け、熊本県教育委員会と熊本市教育委員会が第2次選考の延期を発表しました。県は7月29日〜31日、市は7月29日〜8月1日に予定されていた試験が対象で、新日程は各Webサイトで順次案内されています。受験を控えた同僚や卒業生がいる先生方は、公式の告知を直接確認してください。
🇯🇵 JAPAN  /  生成AI
元・高校英語科教諭による連載「AI時代の教育」がReseEdでスタート
文部科学大臣優秀教職員表彰を受けた林直宏氏(高校非常勤講師)による寄稿連載が始まりました。第1回はOECDの報告と文科省ガイドラインを突き合わせ、生成AIが教育現場をどう変えるのかを整理する内容。次回は「英語教材作成の具体例」がテーマと予告されており、英語科にとっては本命の回が控えています。
🌎 GLOBAL  /  米国
米国:「英語学習者かつ障害のある生徒」が制度の隙間に落ちている
Education Weekの調査報道によると、言語支援と特別支援の両方を必要とする生徒に対し、適切な訓練を受けた職員が足りないと感じている教育者が大多数を占めます。時間割の衝突が起きたとき、学校は特別支援を優先し、言語支援が後回しになりやすいという指摘も。日本でも外国につながる生徒が増えるなかで、「どちらの支援か」ではなく「両方をどう組むか」という問いは他人事ではありません。
TÜNDÜK VI  /  AShPAT / 道具
🛠 無料で使える英語学習ツール
📖 Linguapress
CEFRのA2〜C2でレベル分けされた読み物が約200本、全て無料・登録不要。文法ポイント別に教材を探せる索引があり、音声付きのテキストも多数。「今日の文法にちょうど合う長文」を5分で見つけたいときに強い老舗サイトです。
🎬 TubeQuizard
字幕付きYouTube動画から、穴埋め式のリスニング問題を自動生成。「could’ve / should’ve を聞き取る」「can と can’t を聞き分ける」など、狙う文法項目から問題を探せるのが特徴です。速い発話の聞き取り訓練に。
🔗 Ozdic
英語のコロケーション専門辞書。ある名詞にどの動詞・形容詞が自然につくかを一覧で示します。今日の帯活動「Spoke Words」の答え合わせにそのまま使えるので、生徒のタブレットに登録させておくと便利です。
🎤 Storyline Online
著名俳優が絵本を読み聞かせる無料動画ライブラリ(SAG-AFTRA Foundation運営、広告なし)。各作品に教育者作成のアクティビティガイド付き。「上手な音読とは何か」を生徒に一度見せるための教材として、中学でも十分使えます。
TÜNDÜK VII  /  DÜYNÖ / 世界
🌎 世界の教室から
🇰🇬 キルギス ── 「暗記」ではなく「語り直し」で受け継ぐ国
キルギスの英語教育は、三層の言語環境の上に立っています。学校の授業言語はキルギス語かロシア語、家庭では地域語、そして進学と就労のための英語。ソ連時代からロシア語が高等教育の言語で、独立後にキルギス語が国語となり、そこへ英語が加わりました。国は2010年代から公立校の英語開始学年を早め、教員研修と教科書改訂を進めていますが、都市と山間部の格差は大きく、ビシュケクの学校では英語で理科を学ぶクラスがある一方、地方では教員不足が続いています。
この国が世界に持っている最大の言語資産が、口承叙事詩『マナス』です。50万行を超えるとされ、マナスチと呼ばれる語り手が、台本なしで何時間も語り続けます。重要なのは、マナスチが一字一句を暗記しているわけではないという点。彼らは物語の骨格と定型表現の引き出しを持ち、その場の聴衆に合わせて毎回違う言葉で組み立て直します。同じ話が、二度と同じ形にはならない。
🔑 明日から使えるテクニック:Manas Relay
教科書の本文を4分割し、4人グループで1人1パートを担当します。ルールは1つだけ ── 本文の語をそのまま使ってよいのは半分まで。残りは自分の言葉に置き換えて語り直します。1周目は本文を見ながら、2周目は伏せて、3周目は担当パートを1つずらして。同じ内容を3回話すことになりますが、毎回言葉が変わるので「暗唱」になりません。
TÜNDÜK VIII  /  SÖZ / 言葉

 

TODAY’S QUOTE FOR TEACHERS
“Speaking is the vehicle par excellence of social solidarity, of social ranking, of professional advancement and of business.”
話すことは、社会的な結びつきの、社会的な序列の、職業上の前進の、そしてビジネスの、何よりの担い手である。
— Martin Bygate(マーティン・バイゲイト)
応用言語学者。Speaking(1985/1987, Oxford University Press)著者。同じタスクを繰り返すと注意資源が言語形式に回る、という「タスク・リピティション」研究で知られる。
TÜNDÜK IX  /  ISHEMBI / 土曜
🌌 Saturday TÜNDÜK(週末の3点点検)
週末は、1週間を建物にたとえて点検します。ユルトは壁(ケレゲ)・垂木(ウーク)・天窓(トゥンドゥク)の3つでできています。
KEREGE ── 壁:今週、崩さずに保てたルーティンは何でしたか。帯活動、宿題チェック、教室に入る前の一呼吸。地味で、なくなると全部が傾くものを1つ書き出してください。
UUK ── 垂木:今週いちばん力がかかっていたのはどの授業ですか。うまくいかなかったクラスではなく、自分が一番踏ん張ったクラスです。踏ん張りが必要だった理由を、生徒のせいにせず1文で。
TÜNDÜK ── 天窓:ユルトの天窓は、煙を出すためではなく光を入れるために開いています。来週、意図的に開けておきたい「余白」を1つ決めてください。予定を入れない放課後でも、答えを言わずに待つ10秒でも。
💡 今日の1分ティップス:「二度目」を設計に入れる
同じスピーキング課題を、間を空けずにもう一度やらせる。それだけです。1回目は内容を組み立てるのに手一杯で、言い方まで手が回りません。2回目は内容が決まっているぶん、注意が言葉のほうへ移る。だから2回目のほうが、必ず流暢になり、正確になります。
コツは、1回目と2回目のあいだにフィードバックを挟まないこと。挟むと生徒は「直された文」を再生しようとして、また内容に注意を取られます。まず2回続けて言わせて、講評はそのあと。所要時間は今までと同じで、質だけが変わります。
📎 今号の参考リンク
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haradaeigo.com
マナスチは同じ話を、二度と同じ言葉では語りません。
それでも物語は失われない。よい週末を。
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