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心理学ビミョー

ゲーム・ネットが長い10代は、のちにうつ・不安が多い。でも双子で比べると差は大きく縮んだ

ゲーム・ネットが長い10代は、のちにうつ・不安が多い。でも双子で比べると差は大きく縮んだ

読む前に予想してみよう!

画面を見る時間が長い子ほど心の不調が多いのは、画面が原因だと確かめられている

研究カード(どんな研究?)
対象
スウェーデンの双子(9歳から最長28歳まで追跡)
規模
21,797人(双子の2人どうしを比べられたのは、平日の使い方で453組)
研究の種類
観察研究(長期追跡+双子どうしの比較)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

15歳のとき平日にゲームやネットを1日6時間より長く使っていた子は、2時間以下の子に比べて、のちにうつや不安と診断されやすさが3.37倍。でも同じ家で育った双子どうしで比べると1.65倍に縮み、厳しい基準では偶然の差と区別できなくなった。画面だけでなく、遺伝や家庭など家族に共通する何かも関わっているらしい。

ひとことで言うとゲームやネットが長い子は、あとで心の不調が多い。でも原因は画面だけじゃないかも!

もくじ
  1. 2万人を超える双子を、9歳から大人になるまで追いかけた
  2. 1日6時間超の15歳は、うつ・不安の診断などが3.37倍
  3. 同じ家で育った双子の中で比べると、差は1.65倍に縮んだ
  4. どんでん返し:それでも「画面は無害」とは言えない
  5. まとめ

「ゲームやネットばかりしている子は、心を病みやすい」。よく聞く話です。実際、画面を見る時間が長い10代ほど、落ち込みや不安が多いというデータはたくさんあります。

でも、それは本当に画面のせいなのでしょうか。画面を長く見がちな子の家には、もともと別の事情があるのかもしれません。

この疑問に、スウェーデンの研究チームが「双子」を使って挑みました。2026年10月8日に専門誌『Nature Human Behaviour』に載った結果は、「画面が原因」とも「関係ない」とも言い切れないものでした。

012万人を超える双子を、9歳から大人になるまで追いかけた

画面の使い方は2種類に分けています。テレビや動画を見るだけのものと、ゲーム・チャット・ブログ・ネット閲覧のように自分で操作したり、人とやり取りしたりするもの。「スマホ」と決めて聞いた質問ではなく、機器を問わない画面の時間です。

この記事では、次のどちらかを、まとめて「診断」と呼びます。1つは、病院の入院や専門の外来で、うつ病や不安症と初めて診断されたこと。もう1つは、抗うつ薬を初めて処方されて、薬局で受け取ったことです。抗うつ薬を数に入れたのは、専門の病院ではなく、かかりつけの医師のところで治療を受けた人も拾うためです。

021日6時間超の15歳は、うつ・不安の診断などが3.37倍

まず、双子であることを使わずに、全員を普通に比べました。

15歳と18歳では、画面の時間が長いほど、うつや不安の症状の点数が高くなっていました。この傾向は女子のほうがはっきりしていました。

その後の「診断」を見ると、15歳のときに平日のゲーム・チャット・ネットが1日6時間より長かった子は、2時間以下の子に比べて、のちに「診断」されやすさが3.37倍でした(週末の使い方で比べると2.30倍)。生まれ年・性別・親の学歴や、9歳のときの心の状態などの違いを計算でそろえた値です。

一方、テレビや動画を見るだけの時間では、のちの「診断」とのはっきりした関係は見られませんでした。

03同じ家で育った双子の中で比べると、差は1.65倍に縮んだ

ここで双子の出番です。双子は同じ家で、同じ親に育てられます。一卵性の双子は遺伝子がすべて同じで、二卵性の双子も平均して半分が同じです。

そこで、「片方は画面の時間が長く、もう片方は短い」という双子のペアを選んで、2人を比べます。こうすると、遺伝子や家庭の環境のような家族で共通する要因を、そろえたまま比べられます。

結果は、3.37倍だったリスクが1.65倍に(週末の使い方では2.30倍が1.43倍に)。平日の使い方で比べられた双子は453組です。

どれだけ縮んだかは、測り方で数字が変わります。2時間以下の子を1とすると、3.37倍は1より2.37多く、1.65倍は0.65多い。この「上乗せ分」で見ると、約73%減った計算です。

論文には57〜59%(平日59%・週末57%)という数字も出てきます。これは倍率を「対数」という目盛りに直して測った値で、同じ縮み方を別の物差しで測ったものです。

この研究では、たくさんの比較を一度に行っています。比較が多いと、偶然の差がたまたま「意味のある差」に見えることがあるので、それを防ぐ厳しい基準も使いました。その基準で見ると、残った1.65倍も偶然の差と区別できませんでした。

双子どうしなら、育った家や共通の遺伝子をそろえたまま比べられる(イメージ)
双子どうしなら、育った家や共通の遺伝子をそろえたまま比べられる(イメージ)

9歳のときに毎日ゲームをしていた子(親の回答)も、のちの「診断」のリスクが1.38倍(週2回以下の子と比べて、22歳までの追跡)でしたが、双子どうしで比べると同じような関係は見られませんでした。

研究チームの結論は、画面の時間と心の不調の結びつきの一部は、遺伝や家庭環境など、家族で共通する要因で説明される、というものです。

04どんでん返し:それでも「画面は無害」とは言えない

「じゃあゲームもネットも心配いらない」と考えるのは早すぎます。理由は4つあります。

1つ目。双子どうしで比べても、推定値は「差なし」を表す1倍までは下がらず、1.65倍が残りました。比べられたペアの数が限られるため、小さな影響があっても見逃した可能性がある、と著者たち自身が書いています。

2つ目。双子の比較にも弱点があります。2012年に、同じカロリンスカ研究所の研究者らが示したものです。きょうだいや双子どうしの比較では、2人の間で違うこと(たとえば友だち関係)の影響は取り除けません。むしろ全員で比べるときより、その影響を受けやすくなります。また、画面の時間の答えが不正確だと、本当は関係があっても小さく見えやすいのです。

3つ目。データ集めが始まったのは2004年で、スマホやSNSが広まる前です。時間の答えも大まかで、画面で具体的に何をしていたかまでは分かりません。今のSNSや短い動画にそのまま当てはまるとは限りません。

4つ目。画面の時間を実際に減らす実験もあります。2025年、オーストリアの研究チームは、健康な学生111人を2組に分けました。片方だけスマホの画面時間を3週間、1日2時間以下にしてもらうと、うつの症状・睡眠・ストレス・心の元気さが小〜中くらい良くなりました。ただし大人の短期間の結果で、実験後は画面時間がすぐ元に戻りかけていました。

逆向きの関係も見つかっています。15歳で落ち込みや不安が強かった子は、18歳でゲームやネットの時間がやや長くなる傾向がありました。「心の不調があるから画面に向かう」という向きです。ただし、この関係はごく小さなものでした。

ほかの研究とも話は合います。米英の約35万人を分析した2019年の研究では、デジタル機器を使う時間が長いほど、10代の幸福感はわずかに低くなっていました。ただ、幸福感が人によって違う理由のうち、デジタル機器の利用で説明できるのは最大でも0.4%でした。2023年の研究は、アメリカの9〜11歳4,262人(ヨーロッパ系の子)の遺伝子データを使いました。その結果、画面の時間と不安・落ち込みなどとの関係の42.7%は、遺伝の影響で説明できると推定されています(双子研究の値を使った別の計算では、関係のすべてが遺伝で説明されました)。

05まとめ

ゲームやネットを長く使う10代ほど、のちに心の不調が多い。この関係は、2万人を超える双子のデータでもはっきり出ました。でも同じ家で育った双子どうしで比べると、3.37倍は1.65倍に縮みました。

画面だけを悪者にすると、家庭や遺伝のような見えにくい要因を見落とします。かといって「無害」と言える証拠もありません。何時間使ったかに加えて、何をして、どんな気分で使っていたか。次の研究が確かめるべきなのは、そこです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerResearchers at Karolinska Institutet in Sweden used a long-running study of twins born in the country since… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Researchers at Karolinska Institutet in Sweden used a long-running study of twins born in the country since 1992. When the children were 9, their parents answered questions on the phone. Later, at 15 and 18, the twins reported their own screen time. The team also checked national health records up to age 28.

Fifteen-year-olds who spent more than six hours on a school day gaming, chatting or browsing were 3.37 times as likely to need care for depression or anxiety later, compared with those who used two hours or less. Watching TV or videos showed no clear link. Then the researchers compared the two twins in each pair. The number fell to 1.65, and by the team's strict standard, it could still be chance.

124 words ・ CEFR B1

和訳を見る

スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究者たちは、1992年以降に同国で生まれた双子を追う長期調査を使った。子どもが9歳のとき、親が電話で質問に答えた。その後、15歳と18歳で、双子が自分の画面の時間を答えた。研究チームは、28歳までの国の医療の記録も調べた。

平日に1日6時間を超えてゲーム・チャット・ネット閲覧をしていた15歳は、2時間以下の子に比べ、のちにうつや不安で医療を必要とするリスクが3.37倍だった。テレビや動画を見るだけの時間には、はっきりした結びつきはなかった。次に研究者たちは、それぞれのペアの双子2人を比べた。数字は1.65に下がり、研究チームの厳しい基準では、偶然の可能性も残った。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What happened when the researchers compared the two twins in each pair?

Q3. What can we infer from the passage?

重要単語

  • identical twinsB1
    名詞一卵性双生児(遺伝子がすべて同じ双子)Identical twins share all of their genes. identical は「まったく同じ」。二卵性は fraternal twins。英語では twin 1人を指すので、2人なら twins と複数形
  • associationB2
    名詞関連、結びつきThe study found an association between late nights and low mood. an association between A and B(A と B の関連)の形で研究の英文に頻出。「原因」を意味する cause とは区別する。入試頻出
  • anxietyB1
    名詞不安Her anxiety got worse before the exam. 形容詞は anxious(不安な/切望して)。発音は「アングザイエティ」で、x の部分が「グズ」と濁る
  • diagnoseB2
    動詞診断するHe was diagnosed with depression at nineteen. be diagnosed with ~(~と診断される)の形で使うことが多い。名詞は diagnosis、複数形は diagnoses
  • confounding factorC1
    名詞交絡因子(両方に影響して、見かけの関係を作る別の要因)Family income can be a confounding factor in health studies. confound は「混同させる」。相関と因果を見分ける話で必ず出てくる。confounder とも言う
  • heavy useB1
    名詞長時間の利用、使いすぎHeavy use of games was linked to later problems. heavy は「重い」だけでなく「量が多い」。heavy rain(大雨)、heavy traffic(交通渋滞)と同じ使い方
スウェーデンの双子2万人超を追跡。15歳で平日にゲームやネットを1日6時間超使う子は、2時間以下の子に比べ、のちにうつ・不安と診断されやすさが3.37倍。でも同じ家で育った双子どうしで比べると1.65倍に縮んだ。画面だけが犯人とは言えないらしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Gong et al. (2026) Recreational screen use and internalizing problems from preadolescence to young adulthood in a longitudinal twin cohort with co-twin comparison, Nature Human Behaviourdoi.org
  2. Frisell et al. (2012) Sibling comparison designs: bias from non-shared confounders and measurement error, Epidemiologydoi.org
  3. Pieh et al. (2025) Smartphone screen time reduction improves mental health: a randomized controlled trial, BMC Medicinedoi.org
  4. Orben & Przybylski (2019) The association between adolescent well-being and digital technology use, Nature Human Behaviourdoi.org
  5. Zhang et al. (2023) Shared genetic risk in the association of screen time with psychiatric problems in children, JAMA Network Opendoi.org