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心理学

体が早く育った子ほど、45歳で老化が速かった。身の回りのことや人付き合いが早くできた子は逆

体が早く育った子ほど、45歳で老化が速かった。身の回りのことや人付き合いが早くできた子は逆

読む前に予想してみよう!

子どものころの体の育ちの速さと、45歳での体の老け方の速さには、何の関係も見られなかった

研究カード(どんな研究?)
対象
ニュージーランド・ダニーデン市で1972〜73年に生まれた人(ダニーデン研究)と、米国の33〜44歳(全国調査 Add Health)
規模
ダニーデン研究1037人、Add Health 1537人
研究の種類
観察研究(実験ではなく、記録を見比べる研究。生まれてから45歳までの追跡など)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

ニュージーランドで生まれた時から追いかけている1037人を調べた研究。赤ちゃんから思春期までに体が早く育った人ほど、45歳での体の老化が速かった。育ちの早さは、体重の増え方や歩き始めた時期、背がぐんと伸びた時期などで見た。老化の速さは、心臓・肺・腎臓など6つの働きが年とともに衰える速さで測った。一方、身の回りのことや人付き合いが早くできた人は、老化が遅かった。どちらも平均で見た傾向で、原因かどうかはまだ分からない。

ひとことで言うと体が早く育った人ほど、45歳で心臓や肺などの老化も速め。身の回りのことや人付き合いが早くできた人は遅め!

もくじ
  1. 計画の段階では、正反対の予想が2つあった
  2. 「体の育ちの速さ」は、6つの目安を合わせた点数で表した
  3. 老化の速さは、心臓や肺など6つの働きの衰え方で測った
  4. 体が早く育つと老化は速く、社会性が早く育つと遅かった
  5. 早く育つと早く老ける、と決まったわけではない
  6. まとめ

「よく食べて、早く大きくなる子は丈夫に育つ」。そんなイメージがあるかもしれません。では、その子が45歳になったとき、体の老け方はどうなっているのでしょうか。

ニュージーランドのダニーデン市では、1972〜73年に生まれた1037人を、生まれた時から追いかけ続けている研究があります。その45歳までの記録を使って、2つのことを比べた論文が、2026年10月7日に心理学の学術誌『Psychological Science』に載りました。比べたのは「子どものころ、どれだけ早く育ったか」と「45歳のとき、体がどれだけ速く老けているか」です。ここでいう老け方は見た目ではなく、心臓や肺などの働きが、年とともに衰える速さのことです。

結果は2つです。1つ目、赤ちゃんから思春期までに体が早く育った人ほど、45歳での体の老化が速かった。 2つ目、身の回りのことを自分でしたり、人と関わったりする力(社会性)が早く育った人は、反対に老化が遅かったのです。ただし、どちらも大勢を平均した傾向です。早く育ったことが老化の原因なのかは、まだ分かっていません。

01計画の段階では、正反対の予想が2つあった

この研究は、米国デューク大学のシエ(Xie)さん、モフィット(Moffitt)さん、カスピ(Caspi)さんらのチームによるものです。チームは、データを分析する前の2024年1月に研究計画書を書いていました。そこには、正反対の2つの予想が並んでいました。

  • 予想A:早く育つ子は、老けるのも速い。生き物には「若いうちは役に立つ体の仕組みが、年をとると害になる」ことがある。そんな進化の考え方に合う予想
  • 予想B:出だしがゆっくりで弱かった子のほうが、大人になって速く老ける。体が作られている人生の早い時期に受けたダメージが、のちの病気のなりやすさにつながる。そんな考え方に合う予想

どちらもありえる話です。だからこそ、生まれてから45歳まで同じ人を追った記録で確かめる意味がありました。体の大きさと老け方のつながりは、犬でも調べられています(大型犬の記事)。

02「体の育ちの速さ」は、6つの目安を合わせた点数で表した

チームは、次の6つを合わせて1つの点数にし、体の育ちの速さを表しました。

  1. 生まれたときの体重(お母さんのおなかにいた週数のわりに、重かったか軽かったか)
  2. 幼いころに、体重がどれだけ増えたか
  3. 歩く・話すなどが、いつできるようになったか
  4. 体の太り具合が「再び増え始める」年齢
  5. 思春期に背がぐんと伸びる時期が、いつ来たか
  6. その時期に、どれだけ一気に伸びたか

4つ目は少し説明が要ります。身長と体重から出す「太り具合の目安」があります。この目安は、生まれてから1年ほどは増えます。そのあと、いったん下がっていきます。そして6歳ごろに、再び増え始めます(1984年に、子ども151人の成長を追った研究)。ぽっちゃりした赤ちゃんが、幼児になるとほっそりし、そのあとまたふっくらしてくる、という流れです。同じ研究では、この「折り返し」が5歳半より早く来た子は、7歳より後に来た子より、その後の太り具合が大きくなっていました。

研究計画書では、こんな問いも立てていました。「生まれたときに重い子は、幼いころの体重の増え方も大きく、思春期の背の伸びも早いのか」。つまり、速く育つ特徴が1人の子にそろって現れるのか、という問いです。

03老化の速さは、心臓や肺など6つの働きの衰え方で測った

では、45歳での老化の速さは、どう測ったのでしょうか。論文の短いまとめ(要旨)によると、次の6つの働きを何年もかけて調べ、その変化を見ています。

  • 心臓と血管
  • 代謝(食べた物からエネルギーを作って使う、体の仕組み)
  • 腎臓(血液をきれいにして、おしっこを作る臓器)
  • 免疫(ばい菌などから体を守る仕組み)
  • 歯
  • 肺

同じチームは2015年に、体の中の年のとり方を測る物差しを作り、手直ししながら使ってきました。名前は「老化のペース」。体の中が1年に何年分、年をとるかを表す物差しです。今回の6つは、2021年の論文でこの物差しが調べた6つと、同じ顔ぶれです。

この物差しの仕組みは、2021年の論文に詳しく書かれています。26歳・32歳・38歳・45歳の4回、同じ人に19項目の検査をしました。その数値の変わり方から、「1年のあいだに、体が何年分年をとったか」を出しています。ダニーデン研究の人たちの平均を「1年に1年分」とすると、一番遅い人は1年に0.4年分(約5か月分)でした。一番速い人は、1年に2.4年分(約2年5か月分)も年をとっていました。同い年でも、体の中の年のとり方には大きな差があるのです。老化の速い人は、45歳の時点で、見た目も年上に見られやすくなっていました。考える力の衰えや、脳の老化のサインも多めでした。

04体が早く育つと老化は速く、社会性が早く育つと遅かった

体の育ちについては、予想Aに合う結果でした。体が早く育った人ほど、45歳での老化が速かったのです。

チームは、アメリカの調査でも確かめました。「Add Health」という全国調査です。1994〜95年度に、日本の中学1年〜高校3年にあたる学年だった2万人以上を、その後も追いかけています。そのうち33〜44歳の1537人分のデータで調べました。すると、初潮(初めての生理)が早かった女性ほど、老化が速かったのです。なお、論文の要旨には、1537人のうち男女が何人ずつか、ここで老化をどう測ったかは書かれていません。

ところが、社会性の育ちでは向きが逆になりました。社会性は、1935年に発表されたチェック表で測っています。名前は「ヴァインランド社会成熟度尺度」です(尺度は「物差し」のこと)。食事や着替えを自分でする。言葉でやり取りする。人と関わる。こうしたことが、年齢のわりにどこまでできるかを見る表です。つまり、ここでいう社会性は、人付き合いのうまさだけではありません。身の回りのことを自分でこなす力も含みます。この社会性が早く育った人ほど、45歳での老化は遅かったのです。

同じ「早く育つ」でも、体と社会性では、45歳の老化との関係が反対向きでした。

平均で見ると、体が早く育った人ほど老化は速め。身の回りのことや人付き合いが早く育った人ほど遅め。同じ「早く育つ」でも、向きが逆だった(イメージ)
平均で見ると、体が早く育った人ほど老化は速め。身の回りのことや人付き合いが早く育った人ほど遅め。同じ「早く育つ」でも、向きが逆だった(イメージ)

05早く育つと早く老ける、と決まったわけではない

ここで、この研究から言えないことをはっきりさせておきます。

  • 原因とは言えない:子どものころの記録と、45歳の体を見比べた研究です。何かを変えて結果を見る実験ではありません。たとえば遺伝や栄養、家庭の環境など、別の何かが「育ちの速さ」と「老化の速さ」の両方に関わっているのかもしれません。この形の研究では、その可能性を消せません
  • 差の大きさは分からない:論文の要旨には、老化の速さがどれくらい違ったかの数字が書かれていません。「早く育った人は何年分速く老ける」とは言えません
  • アメリカでの確認は一部だけ:要旨によると、Add Health で確かめたのは女性の初潮の時期です。6つの目安すべてや男性でも同じ結果が出たとは、書かれていません
  • 社会性が早く育った人の老化が遅い理由も、まだ分からない
  • 「遅く育つほど良い」とも言えない:2015年の英国の研究では、約45万人に、自分の思春期の時期を思い出して答えてもらいました。すると、思春期が平均より早い人だけでなく、遅い人でも、さまざまな病気のなりやすさが高かったのです(これも平均の傾向)

どれも、たくさんの人を平均した傾向です。1人1人の将来を決めたり、言い当てたりするものではありません。2021年の論文も、中年になってからの老化の速さを変えられるのかは、これから確かめる段階だとしています。

06まとめ

子どものころに体が早く育った人ほど、45歳で体の中の老化が速い。身の回りのことや人付き合いが早く育った人は、その逆。生まれてから45歳までを追い続けた記録だからこそ見えた関係です。

ただし、これは平均で見た傾向で、原因かどうかは分かっていません。体の速い成長と、のちの老化をつなぐものは何なのか。社会性の育ちは、なぜ反対向きになるのか。答えを出すのは、次の研究です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn the city of Dunedin, New Zealand, researchers have studied the same 1,037 people from birth to age 45. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In the city of Dunedin, New Zealand, researchers have studied the same 1,037 people from birth to age 45. A new paper used these records to ask a simple question. Do fast-growing children age faster as adults? The team scored each child's physical growth with six signs, such as birth weight, weight gain as a toddler and the timing of the teenage growth spurt.

They measured aging by checking the heart, lungs, kidneys, teeth and other body systems again and again over the years up to age 45. Children whose bodies developed faster were aging faster at 45. A US study found the same pattern in women who had their first period early. Children whose social skills developed faster, though, were aging more slowly at 45.

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ニュージーランドのダニーデン市で、研究者たちは同じ1037人を生まれた時から45歳まで調べてきた。新しい論文は、この記録を使って単純な問いを立てた。速く育つ子どもは、大人になって速く老けるのか。チームは、出生体重、幼児期の体重の増え方、10代で背が急に伸びる時期など、6つの目安で一人一人の子どもの体の成長を点数にした。

老化は、45歳までの何年にもわたって、心臓、肺、腎臓、歯など体のしくみを何度も調べて測った。体の発達が速かった子どもは、45歳で速く老けていた。米国の研究でも、初めての生理が早かった女性で同じ傾向が見られた。ところが、社会的な力の発達が速かった子どもは、45歳でゆっくり老けていた。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. How did the team measure aging?

Q3. What can we infer from the last sentence?

重要単語

  • paceB1
    名詞速さ、ペースSome people age at a faster pace than others. at a ~ pace(~の速さで)の形でよく使う。keep pace with ~ は「~に遅れずについていく」
  • pubertyB2
    名詞思春期Many children reach puberty between ten and fourteen. reach puberty(思春期を迎える)がセット。形容詞 pubertal は論文でよく見る
  • growth spurtB2
    名詞(背などが)急に伸びる時期He grew ten centimeters during his growth spurt. spurt は「ほとばしり、急な勢い」。have a growth spurt(急に背が伸びる)
  • milestoneB2
    名詞節目、発達の目安になる出来事Taking the first steps is a big milestone for a baby. もとは道のわきに立てた「1マイルごとの石」。人生や計画の大きな区切りにも使う
  • organB1
    名詞臓器、器官The heart and the lungs are organs. 楽器のオルガンと同じつづり。organ donor(臓器提供者)は入試にも出る
  • matureB2
    動詞・形容詞成熟する/成熟したSome children mature earlier than their classmates. 名詞は maturity。immature(未熟な)とセットで覚える
  • declineB2
    名詞・動詞衰え、低下/衰えるLung function shows a slow decline with age. 「下へ(de-)傾く」イメージ。断る(decline an offer)の意味もあり、入試頻出
生まれた時から45歳まで追いかけたニュージーランドの1037人。子どものころ体が早く育った人ほど、45歳で心臓や肺などの老化が速かった。一方、身の回りのことや人付き合いが早くできた人は、老化が遅かった。どちらも平均の傾向で、原因かはまだ不明。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Xie et al. (2026) Do Children Who Develop Faster Go on to Age Faster in Midlife?, Psychological Sciencedoi.org
  2. Elliott et al. (2021) Disparities in the pace of biological aging among midlife adults of the same chronological age have implications for future frailty risk and policy, Nature Agingdoi.org
  3. Belsky et al. (2015) Quantification of biological aging in young adults, PNASdoi.org
  4. Rolland-Cachera et al. (1984) Adiposity rebound in children: a simple indicator for predicting obesity, The American Journal of Clinical Nutritiondoi.org
  5. Day et al. (2015) Puberty timing associated with diabetes, cardiovascular disease and also diverse health outcomes in men and women: the UK Biobank study, Scientific Reportsdoi.org