英語を話すと性格が変わる? バイリンガルの「文化スイッチ」を調べた研究

読む前に予想してみよう!
2つの言語を話す人は、使う言語によって性格テストの結果が変わることがある
言語が、その言語の文化で「ふつう」とされるふるまい方を呼び起こすと考えられている。
- 対象
- 2言語話者(米国・メキシコ・香港など)
- 規模
- 数十〜数百人規模の研究を複数
- 研究の種類
- 実験・質問紙調査
- 確かさ
- ★★★☆☆
バイリンガルが使う言語によって、性格テストの結果や話し方が変わる研究がある。ただ「別人格」ではなく、場面に合わせた“出し方”の変化と考えられる。
ひとことで言うと言葉を変えると、ふるまい方のスイッチも切り替わるかも!
英語を話しているとき、なんだか声が大きくなる、ジェスチャーが増える、自分の意見をはっきり言える。そんな経験はありませんか?
実はこれ、気のせいとは言い切れません。2つの言語を話す人が、使う言語によって性格テストの結果まで変わるという研究がいくつもあるのです。
ただし、話はそう単純ではありません。研究者たちがたどり着いたのは、「別人格」とは少し違う答えでした。
01英語で答えると「外向的」になった
つまり、英語で答えると「英語圏っぽい」性格の出方になっていたのです。
香港で行われたチェンとボンドの研究(2010年)でも、中国語と英語を話す人が英語を使うと、より外向的・自己主張的にふるまう傾向が見られました。しかも、会話の相手がどんな人かによっても変化したといいます。
この研究では、本人の自己評価だけでなく、実際の会話の様子を観察したデータでも、言語による違いが確認されています。
02正体は「文化フレームの切り替え」
心理学では、これを文化フレーム切り替え(cultural frame switching)と呼びます。
2つの文化を持つ人は、それぞれの文化の「ものの見方」を頭の中に持っていて、言語や周りの手がかりがスイッチになって、どちらかが前に出てくるという考え方です。
香港の人に、アメリカっぽい写真(国旗など)か中国っぽい写真を見せるだけで、出来事の原因の考え方が変わったという研究もあります(ホンら、2000年)。

03「別人みたい」と感じる人は多い
ロンドン大学のデワールと中野は2013年、さまざまな母語を持つ106人の多言語話者に、言語ごとの「自分の感じ方」をたずねました。
すると、後から学んだ言語になるほど、論理的・まじめ・感情的と感じる度合いが下がり、「作っている感じ」が増える傾向がありました。外国語の自分は、少し「演じている」感覚があるわけです。
04「性格が変わる」は半分ホント
では、英語を話すと本当に性格が変わるのでしょうか。
研究から言えるのは、その場での「性格の出し方」は言語で変わりうるということ。一方で、性格の土台そのものが入れ替わる証拠はありません。
内気な人が英語を話した瞬間に別人になる、というより、その言語の文化で「ふさわしい」とされるふるまいが引き出されやすくなる、と考えるのが近そうです。
言語による差は、その人らしさの「味つけ」が少し変わる程度。基本的な傾向まで入れ替わるわけではない、と考えるのが妥当でしょう。
05まとめ
英語を話すと明るくなる気がするのは、頭の中で「英語モード」の文化フレームに切り替わっているからかもしれません。
性格が丸ごと変わるわけではないけれど、言葉を変えると、出てくる自分も少し変わる。それも外国語を学ぶ楽しさのひとつです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn a 2006 study, Spanish-English bilinguals in the US and Mexico took the same personality test twice, once…
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原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Do you feel different when you speak English? Maybe you talk louder or use more gestures. Some studies found that bilingual people answer personality tests a little differently in each language.
For example, Spanish and English speakers seemed more outgoing when they answered in English. But they do not become a different person. Each language may bring out the way people usually act in that culture. So enjoy your "English self" when you speak.
74 words ・ CEFR A2
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英語を話すとき、自分が違うように感じますか。もしかすると、声が大きくなったり、ジェスチャーが増えたりするかもしれません。いくつかの研究で、バイリンガルの人は言語ごとに性格テストの答え方が少し違うことがわかりました。
たとえば、スペイン語と英語を話す人は、英語で答えたときの方が外向的に見えました。しかし、彼らが別人になるわけではありません。それぞれの言語が、その文化で人々がふつうにふるまうやり方を引き出すのかもしれません。ですから、話すときは自分の「英語の自分」を楽しみましょう。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
使う言語によってふるまい方が変わるかもしれない、という話なので C。
Q2. How did Spanish and English speakers seem when they answered in English?
seemed more outgoing when they answered in English とあるので A。
Q3. In this passage, "outgoing" means ...
outgoing は「社交的な・外向的な」。人と話すのが好きな様子なので D。
In a 2006 study, Spanish-English bilinguals in the US and Mexico took the same personality test twice, once in each language. In English, they scored higher in extraversion, agreeableness and conscientiousness. These differences matched the typical gap between American and Mexican people.
A study in Hong Kong found something similar. Chinese-English bilinguals acted more outgoing and assertive in English, and their behavior also changed depending on who they were talking to. Psychologists call this cultural frame switching.
A language works like a switch and brings one culture's way of thinking to the front. There is no evidence that a person's basic personality is replaced. So if you feel louder or more confident in English, that feeling may come from the culture that goes with the language.
126 words ・ CEFR B1
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2006年の研究で、アメリカとメキシコのスペイン語・英語のバイリンガルが、同じ性格テストをそれぞれの言語で1回ずつ、計2回受けました。英語では、外向性・協調性・誠実性の点数が高くなったのです。この違いは、アメリカ人とメキシコ人の典型的な差と一致していました。
香港の研究でも似たことがわかりました。中国語・英語のバイリンガルは英語のときの方が外向的で自己主張的にふるまい、その行動は話す相手によっても変わりました。心理学者はこれを文化フレーム切り替えと呼びます。
言語がスイッチのように働き、ある文化の考え方を前面に出すのです。人の基本的な性格が入れ替わるという証拠はありません。ですから、英語だと声が大きくなったり自信が出たりすると感じるなら、その感覚は言語についてくる文化から来ているのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the 2006 study ask bilinguals to do?
took the same personality test twice, once in each language とあるので D。
Q2. What else affected behavior in the Hong Kong study?
their behavior also changed depending on who they were talking to とあるので B。
Q3. What would the writer most likely say about a shy person who speaks English?
文化フレームの切り替えでふるまいは変わりうるが、There is no evidence that a person's basic personality is replaced. とあるので C。
In 2006, Ramírez-Esparza and colleagues handed Spanish-English bilinguals in the United States and Mexico the same personality inventory in Spanish and in English. In English, the same people reported higher extraversion, agreeableness and conscientiousness, and the gaps mirrored the average contrast between American and Mexican samples. Self-reports can only go so far, so a 2010 study in Hong Kong observed real conversations. Chinese-English bilinguals behaved more assertively in English, although their behavior also shifted with the person across the table.
Psychologists call this cultural frame switching. People who have internalized two cultures can have either set of norms activated by a cue, whether that cue is a language or a national flag. The research has gaps. A translated questionnaire may not measure exactly the same trait as the original, much of the evidence comes from self-reports, and few studies have followed bilinguals through ordinary days.
So far, the data point to a change in how personality is expressed. Nobody has shown that a second self takes over. Even so, in a 2013 survey of 106 multilinguals, many said they felt less logical, less serious, less emotional and more "fake" in a language learned later in life.
196 words ・ CEFR B2
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2006年、ラミレス=エスパルサらは、アメリカとメキシコのスペイン語・英語のバイリンガルに同じ性格検査をスペイン語と英語の両方で受けてもらいました。同じ人たちが、英語では外向性・協調性・誠実性を高く答え、その差はアメリカ人とメキシコ人のサンプルの平均的な違いを映し出していました。自己報告でわかることには限りがあるため、香港での2010年の研究は実際の会話を観察しました。中国語・英語のバイリンガルは英語のときの方が自己主張的にふるまいましたが、その行動は向かいに座る相手によっても変わりました。
心理学者はこれを文化フレーム切り替えと呼びます。2つの文化を内面化した人は、何かの手がかりによってどちらかの規範が活性化されることがあり、その手がかりは言語の場合もあれば、国旗の場合もあります。研究には穴もあります。翻訳された質問紙は元の質問紙とまったく同じ特性を測っていないかもしれず、証拠の多くは自己報告によるもので、バイリンガルの普段の生活を追った研究はほとんどありません。
今のところ、データが示しているのは性格の表れ方の変化です。第二の自分が取って代わることを示した人はいません。それでも、106人の多言語話者を対象とした2013年の調査では、多くの人が、大人になってから学んだ言語では論理的でなくなり、まじめさも感情も薄れ、「偽っている」感じが強くなると答えました。
4択リーディングクイズ
Q1. How did the 2010 Hong Kong study differ from many other studies?
Self-reports can only go so far, so a 2010 study in Hong Kong observed real conversations とあるので B。
Q2. Which is NOT mentioned as a limitation of the research?
The research has gaps. の後に挙げられているのは翻訳質問紙・自己報告・日常生活の追跡不足の3つ。英語力不足は述べられていないので D。
Q3. What is the author's view of the evidence?
the data point to a change in how personality is expressed. Nobody has shown that a second self takes over. とあるので C。
重要単語
- bilingualB1名詞・形容詞2言語を話す(人)She became bilingual after moving to Canada.
bi-(2)+lingua(舌・言語)。bicycle の bi- と同じ。multilingual は「多言語の」。 - personalityB1名詞性格・人柄Your personality is not fixed in every situation.
person+-ality。テレビの「パーソナリティ(司会者)」の意味もある。personality trait「性格特性」。 - extravertedC1形容詞外向的なI feel more extraverted when I speak English.
extra-(外へ)+vert(向く)。extroverted とも綴る。反対は introverted(内向的な)。 - normB2名詞規範・ふつうとされることSocial norms differ from culture to culture.
normal と同語源。social / cultural norms の形で社会系長文に頻出。 - assertiveC1形容詞自己主張のできる・はっきり意見を言うTry to be more assertive in discussions.
assert「断言する」の形容詞。aggressive(攻撃的)とは違い、ポジティブな意味で使われることが多い。 - interlocutorC2名詞対話の相手Adjust your speed to your interlocutor.
inter-(間で)+locut(話す)。SLAの interaction 研究で頻出。speaking test の説明文にも出る。 - switchB1動詞・名詞切り替える・スイッチMany bilinguals switch languages without thinking.
code-switching は「会話の途中で言語を切り替えること」を指すSLA・社会言語学の用語。
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スペイン語と英語のバイリンガルに性格テストをしたら、英語で答えたときの方が外向的に出たという研究がある。英語だと明るくなる気がするの、気のせいじゃなかったかも。
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- Ramírez-Esparza et al. (2006) Do bilinguals have two personalities? A special case of cultural frame switching. Journal of Research in Personalitydoi.org
- Chen & Bond (2010) Two languages, two personalities? Personality and Social Psychology Bulletindoi.org
- Hong et al. (2000) Multicultural minds: A dynamic constructivist approach to culture and cognition. American Psychologistdoi.org
- Dewaele & Nakano (2013) Multilinguals' perceptions of feeling different when switching languages. Journal of Multilingual and Multicultural Developmentdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











