語学・英語学習ウソ

「聞き流すだけで話せる」は本当? 赤ちゃんですら録画からは学べなかった実験

「聞き流すだけで話せる」は本当? 赤ちゃんですら録画からは学べなかった実験

読む前に予想してみよう!

赤ちゃんは、外国語のビデオを見せるだけでもその言語の音を聞き分けられるようになる

研究カード(どんな研究?)
対象
アメリカの生後9か月の赤ちゃん
規模
数十人
研究の種類
実験(生の対話・ビデオ・音声の条件比較)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

意味のわからない英語を流しておくだけで話せるようになる、という証拠はない。赤ちゃんでさえ、録画の外国語からは音の聞き分けを学べなかった。

ひとことで言うと聞き流すだけでは話せない。「わかる英語」を「注意して」聞こう!

もくじ
  1. 赤ちゃんは「ビデオの中国語」から学べなかった
  2. 大人の脳は「気づかないもの」を覚えにくい
  3. 「聞き流し」が役立つ、ただ一つの使い方
  4. まとめ

「英語を流しっぱなしにするだけで、ある日突然しゃべれるようになる」。忙しい大人にとって、こんなに魅力的な話はありません。

赤ちゃんだって、周りの言葉を聞いているうちに話せるようになる。だから大人も、聞いていればいつか話せるはず——。そう考えたくなりますよね。

ところが、その赤ちゃん自身が、「録画や録音をただ聞かせるだけ」では学べなかったという有名な実験があります。

01赤ちゃんは「ビデオの中国語」から学べなかった

言葉を吸収する天才のはずの赤ちゃんでさえ、画面やスピーカーから流れてくるだけの言葉からは、音を学べなかったのです。

研究チームは、人との関わりが赤ちゃんの注意や意欲を高めることが、学習のスイッチになると考えています。

02大人の脳は「気づかないもの」を覚えにくい

大人の外国語学習でも、似たことが言われています。第二言語習得の研究者リチャード・シュミットは、1990年の論文で、学習者が意識して「気づいた」ものが身につくという考え方(気づき仮説)を提案しました。

BGMのように英語を流していると、脳はそれを「意味のない雑音」として処理してしまいがちです。

実際、英語の音声を聞くだけで新しい単語がどれだけ身につくかを調べた研究では、聞くだけで覚えられる単語は、限られていることがわかっています。

注意を向けない英語は、頭の上を素通りしやすい
注意を向けない英語は、頭の上を素通りしやすい

03「聞き流し」が役立つ、ただ一つの使い方

では、聞き流しはまったくのムダなのか。実は、そうとも言い切れません。

外国語の音の区別を学ぶ実験で、集中して練習する時間と、練習せずにその音をただ聞く時間を交互に組み合わせると、練習だけを続けたときと同じくらい学習が進んだという報告があります。

ポイントは、先にしっかり練習していること。ゼロから聞き流すのではなく、「一度ちゃんと学んだ英語を、すきま時間に流して復習する」なら、聞き流しにも意味がありそうです。

04まとめ

英語は「BGM」にしているうちは、なかなか身につきません。

大切なのは、わかる英語を、注意して聞き、自分でも使ってみること。聞き流しは、その後の「おかわり復習」として使えば、ちゃんと味方になってくれます。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerCan you learn English just by playing it in the background while you cook or drive? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Can you learn English just by playing it in the background while you cook or drive? A famous 2003 study suggests that even babies cannot learn this way.

Researchers gave nine-month-old American babies twelve sessions of Mandarin Chinese. Some babies played with a live Chinese speaker. They learned to tell apart Chinese sounds almost as well as babies growing up in Taiwan. Other babies watched the same person on video or heard only the audio. They learned nothing.

For adults, the researcher Richard Schmidt argued that we learn what we notice. English that we do not pay attention to may simply become noise. Background listening does have one use. After focused practice, hearing the same sounds again may support learning.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

料理や運転をしながら英語をBGMとして流しておくだけで、英語は身につくのでしょうか。2003年の有名な研究は、赤ちゃんでさえこの方法では学べないことを示しています。

研究者たちは、生後9か月のアメリカの赤ちゃんに、標準中国語に触れるセッションを12回行いました。生身の中国語話者と遊んだ赤ちゃんもいました。その赤ちゃんたちは、台湾で育つ赤ちゃんとほぼ同じくらい中国語の音を聞き分けられるようになりました。ほかの赤ちゃんは、同じ人をビデオで見たり、音声だけを聞いたりしました。その赤ちゃんたちは何も学びませんでした。

大人については、研究者のリチャード・シュミットが、人は気づいたものを学ぶと主張しました。注意を向けない英語は、単なる雑音になってしまうかもしれません。それでも、聞き流しにも1つ使い道があります。集中して練習した後に同じ音をもう一度聞くと、学習の助けになるかもしれないのです。

4択リーディングクイズ

Q1. How well did babies who played with a live speaker learn?

Q2. What did Richard Schmidt argue?

Q3. When can background listening be useful, according to the passage?

重要単語

  • passive listeningB2
    名詞(句)受け身の聞き方(注意を向けず聞き流すこと)Passive listening alone will not make you fluent. passive「受け身の」⇔ active「能動的な」。文法の passive voice(受動態)と同じ語。
  • comprehensible inputC1
    名詞(句)理解可能なインプット(だいたい意味がわかる言語の入力)Learners need lots of comprehensible input. クラッシェンの用語。「少しだけ難しい」レベル(i+1)が理想とされた。わからない英語は雑音になりやすい。
  • noticingC1
    名詞気づき(言語の形に意識的に注意を向けること)Noticing new expressions is the first step to learning them. シュミットの Noticing Hypothesis(気づき仮説)はSLAの重要理論。notice「気づく」の動名詞。
  • exposureB2
    名詞(言語への)接触・触れることExposure without attention has limited effects. expose A to B「AをBにさらす」。exposure to English「英語との接触量」。
  • outputB2
    名詞アウトプット(話す・書くなど自分で言語を出すこと)Speaking practice is a kind of output. スウェインの Output Hypothesis は、話す・書く中で自分の弱点に気づくことが習得を進めると主張。input と対。
  • social interactionB2
    名詞(句)人との社会的なやりとりSocial interaction helped babies learn new sounds. interact with ~「~とやりとりする」。言語習得では「生身の相手」の効果が注目されている。
  • attentiveB2
    形容詞注意深いAttentive listening helps you notice new words. attention の形容詞形。be attentive to ~「~に気を配る」。

動画でもっと知る

4コマでわかる

「聞き流すだけで話せる」は本当? 赤ちゃんですら録画からは学べなかった実験の4コマ漫画
生後9か月の赤ちゃんに中国語を聞かせる実験で、目の前の人が話しかけた子は中国語の音を聞き分けられるようになったのに、同じ内容をビデオや音声で見聞きした子はまったく学べなかったらしい。聞き流し、赤ちゃんにも効かなかった。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Kuhl, Tsao & Liu (2003) Foreign-language experience in infancy: Effects of short-term exposure and social interaction on phonetic learning, PNASdoi.org
  2. Schmidt (1990) The role of consciousness in second language learning, Applied Linguisticsdoi.org
  3. van Zeeland & Schmitt (2013) Incidental vocabulary acquisition through L2 listening: A dimensions approach, Systemdoi.org
  4. Wright et al. (2015) Enhancing speech learning by combining task practice with periods of stimulus exposure without practice, The Journal of the Acoustical Society of Americadoi.org