鼻をつまむとジュースの味がわからない。「味」の多くは“口から鼻へ抜ける香り”だった

読む前に予想してみよう!
いちご味とぶどう味のちがいは、主に舌の味覚で感じ分けている
甘さや酸っぱさは舌で感じるが、「いちごらしさ」「ぶどうらしさ」は主に口から鼻へ抜ける香りで感じている。
- 対象
- 成人の参加者
- 規模
- 小規模な脳画像実験+約4,000人の国際調査
- 研究の種類
- 実験研究・脳画像研究・横断調査
- 確かさ
- ★★★★☆
食べ物の「風味」の多くは、口の中から喉の奥を通って鼻へ抜ける香り(レトロネーザル)で感じている。脳はそれを「口で味わった」と勘違いしていた。
ひとことで言うと鼻をつまむと、いちごジュースもぶどうジュースも「ただ甘い水」に!
かき氷のシロップ、いちご味もメロン味もレモン味も、実は味の成分はほとんど同じ——そんな話を聞いたことはありませんか? 色と香りがちがうだけで、私たちはまったく別の味だと感じています。
試しに、鼻をつまんでジュースを飲んでみてください。いちごジュースもぶどうジュースも、「甘くて少し酸っぱい液体」になってしまうはずです。
そう、私たちが「味」と呼んでいるものの多くは、実は舌ではなく鼻で感じているのです。
01舌が感じられるのは5つだけ
舌の味覚がキャッチできるのは、基本的に甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の5つ。
一方、「いちごっぽい」「バニラっぽい」「焼き肉の香ばしさ」といった、食べ物ごとの個性は、ほとんどが香り(嗅覚)によるものです。においのセンサーは、ヒトでは約400種類もあり、組み合わせで膨大な数のにおいを区別できます。
02香りの「2つのルート」
においには、2つのルートがあります。
- オルソネーザル:鼻の穴から吸い込むにおい(花やカレーの匂いを「かぐ」とき)
- レトロネーザル:口の中の食べ物から、喉の奥を通って鼻へ抜けるにおい(食べているとき)
食べ物を噛んだり飲み込んだりすると、香りの成分が口の奥から鼻の中へ上がっていきます。これがレトロネーザルの香りで、食べ物の「風味」の中心です。鼻をつまむと空気の流れが止まり、このルートが使えなくなるため、風味が消えてしまうのです。

03脳は「鼻で感じた」ことに気づかない
つまり脳は、口の奥から上がってきた香りを「口の中で味わっている」ことにしてしまうのです。だから私たちは、香りの力を「味」だと思い込んでいるわけですね。
04風邪や感染症で「味がしない」の正体
風邪で鼻がつまると、ごはんの味がしなくなります。多くの場合、これは舌の問題ではなく、レトロネーザルの香りが届かなくなったためです。
ただし、新型コロナウイルス感染症では少し事情がちがいました。2020年、新型コロナと診断されたと答えた世界の約4,000人への調査では、嗅覚だけでなく、舌の味覚や、辛さ・冷たさなどの刺激の感覚も落ちたと報告する人が多くいました。においと味は、病気の種類によって、別々に影響を受けることもあるのです。
05まとめ
食べ物の「味」の多くは、口から鼻へ抜ける香りが作っていました。しかも脳は、それを舌で感じた味だと思い込んでいるのです。
次に食事をするとき、一口だけ鼻をつまんで食べてみてください。香りがどれだけ「味」を作っているか、驚くほど実感できるはずです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf you pinch your nose while drinking juice, strawberry and grape flavors become hard to tell apart.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
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Try this. Hold your nose and drink some juice. Strawberry juice and grape juice will both taste like sweet, slightly sour water. Your tongue can only feel five basic tastes, like sweet and salty.
The special flavor of strawberry comes from smell. When you eat, smells move from the back of your mouth up into your nose. But your brain thinks you are tasting them with your tongue.
68 words ・ CEFR A2
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こんなことを試してみてください。鼻をつまんで、ジュースを飲むのです。いちごジュースもぶどうジュースも、どちらも甘くて少しすっぱい水のような味になるでしょう。舌が感じられるのは、甘味や塩味のような5つの基本味だけです。
いちごの特別な風味は、香りから来ています。食べるとき、香りは口の奥から鼻の中へと上っていきます。しかし、脳はそれを舌で味わっていると思っているのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
食べ物の風味の多くは香りから来ていて、脳はそれを舌の味だと思っている、という内容なので B。
Q2. What happens when you hold your nose and drink juice?
Strawberry juice and grape juice will both taste like sweet, slightly sour water. とあり、ちがいがわからなくなるので C。
Q3. In this passage, "flavor" is ...
flavor は「風味」。味と香りが合わさった、その食べ物らしさのことなので D。
If you pinch your nose while drinking juice, strawberry and grape flavors become hard to tell apart. This is because the tongue detects only five basic tastes (sweet, salty, sour, bitter and umami). The unique character of each food comes mostly from smell. There are two routes for smell. One is through the nostrils, as when we sniff flowers.
The other, called retronasal smell, goes from the back of the mouth up into the nose while we chew and swallow. In 2005, a brain imaging study showed that the same smell activates different brain areas depending on its route. This may explain why the brain mistakes retronasal smell for taste in the mouth.
113 words ・ CEFR B1
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ジュースを飲みながら鼻をつまむと、いちご味とぶどう味の区別がつきにくくなります。これは、舌が感じとれるのは甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の5つの基本味だけだからです。それぞれの食べ物の独特な個性は、主に香りから来ています。においには2つのルートがあります。1つは、花のにおいをかぐときのように鼻の穴を通るルートです。
もう1つはレトロネーザルと呼ばれ、かんだり飲み込んだりする間に、口の奥から鼻へと上っていくルートです。2005年、脳画像の研究は、同じにおいでもルートによって活動する脳の場所がちがうことを示しました。これが、脳がレトロネーザルの香りを口の中の味と取りちがえる理由なのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is retronasal smell?
goes from the back of the mouth up into the nose while we chew and swallow とあるので C。A は鼻の穴から入るもう1つのルート。
Q2. What did the 2005 brain imaging study show?
the same smell activates different brain areas depending on its route とあるので A。
Q3. What can we infer from the passage?
食べ物の個性は主に香りから来るので、香りがないと個性の多くが失われると推測できる。正解は B。
Pinch your nose while drinking juice, and strawberry becomes almost impossible to tell apart from grape. The tongue registers just five basic tastes. The distinctive character of foods depends largely on smell, detected by some 400 types of olfactory receptors. Smell reaches these receptors by two routes. Orthonasal smell comes in through the nostrils when we sniff.
Retronasal smell travels the other way, as aroma compounds released by chewing and swallowing rise from the back of the mouth into the nasal cavity. In 1982, the psychologist Paul Rozin proposed that these two routes function almost like separate senses, and that smells arriving from the mouth are easily confused with taste. A 2005 brain imaging study by Dana Small and colleagues supported this idea.
The same odor produced different patterns of brain activity depending on its route, and retronasal delivery engaged regions near those that process sensations from the mouth. This helps explain why food seems tasteless when a cold blocks the nose. COVID-19 complicates the story. In a 2020 international survey of about 4,000 people with the disease, many said they had lost taste itself as well as smell, though these were self-reports and not measurements.
196 words ・ CEFR B2
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ジュースを飲みながら鼻をつまむと、いちごとぶどうの区別がほとんどつかなくなります。舌が感じとるのは5つの基本味だけです。食べ物の独特な個性は主ににおいに左右され、においはおよそ400種類の嗅覚受容体で感知されます。においがこれらの受容体に届くルートは2つあります。オルソネーザルのにおいは、かいだときに鼻の穴から入ってきます。レトロネーザルのにおいは逆向きに進みます。
かんだり飲み込んだりして出た香り成分が、口の奥から鼻腔へ上がっていくのです。1982年、心理学者のポール・ロジンさんは、この2つのルートはほとんど別々の感覚のようにはたらき、口から届くにおいは味と混同されやすいと提唱しました。2005年のダナ・スモールさんらによる脳画像研究はこの考えを裏づけました。
同じにおいでも、ルートによって脳の活動パターンがちがい、レトロネーザルで届けると、口からの感覚を処理する領域の近くがはたらいたのです。これは、風邪で鼻がつまると食べ物の味がしなくなる理由の説明に役立ちます。新型コロナウイルス感染症は、話をややこしくします。この病気にかかった約4,000人を対象にした2020年の国際調査では、においだけでなく味そのものも失ったと答えた人が多くいました。ただし、これは自己申告で、においや味を測定した結果ではありません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
風味の多くはレトロネーザルの香りによるもので、脳はそれを味と混同しやすい、という内容なので D。
Q2. According to the passage, what did Paul Rozin propose in 1982?
these two routes function almost like separate senses と提唱したので B。
Q3. Why does the writer say "COVID-19 complicates the story"?
新型コロナでは、においだけでなく味そのものも失ったという報告が多くあり、「味がしない=においの問題」とは限らないことを示しているので A。
重要単語
- flavorB1名詞風味Flavor is a mix of taste and smell.
イギリス式は flavour。taste(舌の味)より広く、香りや食感も含む。 - smellA2名詞におい、嗅覚I lost my sense of smell when I had a cold.
the sense of smell「嗅覚」。動詞 smell +形容詞で「~なにおいがする」(It smells good.)。 - retronasalC1形容詞(口から)鼻へ抜けるRetronasal smell comes from food in your mouth.
retro-(後ろへ)+nasal(鼻の)。反対は orthonasal(鼻の穴からかぐ)。 - aromaB2名詞香りThe aroma of coffee filled the room.
良い香りに使う語。形容詞 aromatic(香りのよい)。 - illusionB2名詞錯覚The brain creates the illusion that smell is taste.
optical illusion「目の錯覚」。allusion(ほのめかし)とつづりが似ているので注意。 - indistinguishableC1形容詞区別できないWith your nose pinched, the two juices are almost indistinguishable.
in-(否定)+distinguish(区別する)+-able。be indistinguishable from ~ の形で使う。
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鼻をつまんでジュースを飲むと、いちご味かぶどう味かわからなくなる。食べ物の「味」と思っているものの多くは、口から喉の奥を通って鼻へ抜ける香りだから。しかも脳はそれを「舌で感じた」と勘違いしているらしい。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Rozin (1982) "Taste-smell confusions" and the duality of the olfactory sense, Perception & Psychophysicsdoi.org
- Small et al. (2005) Differential neural responses evoked by orthonasal versus retronasal odorant perception in humans, Neurondoi.org
- Parma et al. (2020) More Than Smell—COVID-19 Is Associated With Severe Impairment of Smell, Taste, and Chemesthesis, Chemical Sensesdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












