レモンが甘くなる「ミラクルフルーツ」の謎を東大が解明。甘味センサーを“酸”で起動していた

読む前に予想してみよう!
ミラクルフルーツを食べると、レモンの酸っぱさの成分が甘い成分に変わる
レモンの成分は変わらない。舌の甘味センサーが、酸によってミラクリンに起動されるので甘く感じる。
- 対象
- 培養細胞(ヒトの甘味受容体)
- 規模
- 基礎研究
- 研究の種類
- 受容体の機能実験+分子モデリング
- 確かさ
- ★★★★☆
ミラクルフルーツのたんぱく質ミラクリンは、中性では甘味センサーにフタをし、酸性になると逆にセンサーをオンにする。だから食べたあとはレモンが甘く感じる。
ひとことで言うとミラクルフルーツは、すっぱいと甘味スイッチが入る不思議な実!
西アフリカ原産の小さな赤い実、ミラクルフルーツ。それ自体はほとんど味がしません。ところが、この実をしばらく口の中で転がしたあとにレモンをかじると……甘い!
まるで魔法のような果物ですが、その仕組みは長いあいだナゾでした。2011年、東京大学などの研究チームが、ついにそのしくみを細胞実験で明らかにします。甘味センサーを、"酸っぱさ"をきっかけに起動させていたのです。
01味を変える「ミラクリン」
ミラクルフルーツの不思議な力の正体は、実に含まれるミラクリンというたんぱく質です。
1968年、日本の栗原堅三さんとアメリカのビドラーさんが、このたんぱく質の存在を『Science』で報告しました。その後1988年には、栗原良枝さんらがミラクリンを純粋に取り出し、性質を詳しく調べています。ミラクリンそのものには甘味はほとんどないのに、酸っぱいものを口に入れたときだけ甘くなる——そんな"味を変えるたんぱく質"でした。
02中性では「フタ」、酸性では「スイッチ」
つまりミラクリンは、
- ふだん(中性):甘味センサーにくっついて、フタのようにはたらく
- 酸っぱいものが来たとき(酸性):形が変わって、センサーのスイッチを押す
という、"二重人格"のようなたんぱく質だったのです。一度舌にくっつくと、1時間ほど、酸っぱいものを口にするたびに甘く感じる状態が続きます。

03レモンの「酸っぱさ」はどこへ消えた?
ここで注意したいのは、レモンの成分は何も変わっていないということ。酸はちゃんと口の中にあります。
変わったのは、舌の甘味センサーの反応だけ。酸が来るたびにミラクリンが甘味センサーを強く押すので、脳には「甘い!」という信号が大量に届きます。その結果、酸っぱさが甘さに覆い隠されたように感じられるのです。
この性質を使って、砂糖を使わずに酸っぱい食べ物を甘く感じさせる研究も行われています。
04まとめ
ミラクルフルーツの魔法の正体は、甘味センサーにくっつき、酸が来たときだけスイッチを入れるたんぱく質ミラクリンでした。レモンが変わったのではなく、舌のセンサーの反応が変わっていたのです。
もし機会があれば、ミラクルフルーツを試してみてください。「味は舌と脳が作るもの」ということを、体でまるごと実感できるはずです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMiracle fruit is a small berry from West Africa.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
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Miracle fruit is a small red berry from West Africa. It has almost no taste. But after you eat it, a lemon tastes sweet!
Why? The berry has a protein called miraculin. It sticks to the sweet sensors on your tongue.
When something sour comes into your mouth, miraculin turns on these sensors. The lemon does not change. Only your tongue's reaction changes. The effect lasts about an hour.
69 words ・ CEFR A2
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ミラクルフルーツは、西アフリカ原産の小さな赤い実です。それ自体にはほとんど味がありません。しかし、それを食べた後は、レモンが甘く感じられるのです!
なぜでしょうか。この実にはミラクリンというたんぱく質があります。それは舌の甘味センサーにくっつきます。
すっぱいものが口に入ると、ミラクリンがこれらのセンサーをオンにします。レモンは変わりません。変わるのは舌の反応だけです。この効果は約1時間続きます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ミラクルフルーツを食べるとレモンが甘く感じる理由を説明しているので B。
Q2. How long does the effect last?
The effect lasts about an hour. とあるので D。
Q3. In this passage, "sticks to" means ...
stick to ~ は「~にくっつく」。attach to(~に付く)と同じ意味なので A。
Miracle fruit is a small berry from West Africa. It has almost no flavor of its own. But after you eat one, sour foods such as lemons taste sweet. The secret is a protein called miraculin, which was first reported in 1968.
In 2011, a team at the University of Tokyo studied how it works. They used cells that contained the human sweet taste sensor. At a neutral pH, miraculin did not switch the sensor on. It even blocked other sweeteners.
But as the conditions became more acidic, it strongly activated the sensor. So the lemon itself does not change at all. The acid makes miraculin press the "sweet" button on the tongue.
113 words ・ CEFR B1
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ミラクルフルーツは西アフリカ原産の小さな実です。それ自体にはほとんど味がありません。でも、これを食べた後は、レモンのような酸っぱい食べ物が甘く感じられます。その秘密は、1968年に初めて報告されたミラクリンというたんぱく質です。
2011年、東京大学のチームは、ミラクリンがどのようにはたらくかを調べました。チームは、ヒトの甘味センサーをもつ細胞を使いました。中性のpHでは、ミラクリンはセンサーをオンにしませんでした。ほかの甘味料のはたらきさえ妨げました。
しかし、条件が酸性になるにつれて、センサーを強く活性化しました。つまり、レモンそのものはまったく変わらないのです。酸がミラクリンに、舌の「甘い」ボタンを押させているのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the University of Tokyo team use in their study?
They used cells that contained the human sweet taste sensor. とあるので C。
Q2. What did miraculin do at a neutral pH?
At a neutral pH, miraculin did not switch the sensor on. It even blocked other sweeteners. とあるので B。
Q3. What does the writer mean by "press the 'sweet' button"?
比喩表現。酸があるときにミラクリンが甘味センサーをオンにする、という意味なので D。
Miracle fruit, a small red berry native to West Africa, is nearly tasteless. After it has coated the tongue, though, lemons and vinegar taste sweet. Its active ingredient, a protein named miraculin, was reported in Science in 1968 and purified in 1988, but for decades nobody could explain how it worked. In 2011, researchers at the University of Tokyo expressed the human sweet taste receptor, a pair of proteins called T1R2 and T1R3, in cultured cells.
At a neutral pH of about 6.7 or above, miraculin did not activate the receptor and suppressed responses to other sweeteners. As the pH dropped from 6.5 to 4.8, it activated the receptor more and more strongly, and it did so again each time acid was added. Miraculin therefore behaves like a lid under neutral conditions and a switch under acidic ones.
Its effect lasts about an hour. The acid itself never goes away. The sour taste is not removed but masked by a strong sweet signal. All of this was measured in cells grown in a dish, so the details on a real human tongue have yet to be checked. Researchers are exploring whether miraculin could make sour foods enjoyable without added sugar.
200 words ・ CEFR B2
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西アフリカ原産の小さな赤い実ミラクルフルーツは、ほとんど味がしません。ところが、それが舌をおおった後では、レモンや酢が甘く感じられます。有効成分であるミラクリンというたんぱく質は、1968年に『Science』で報告され、1988年に純粋に取り出されましたが、どのようにはたらくのかは何十年もだれにも説明できませんでした。2011年、東京大学の研究者たちは、T1R2とT1R3という2つのたんぱく質のペアであるヒトの甘味受容体を培養細胞に作らせて調べました。
pH約6.7以上の中性では、ミラクリンは受容体を活性化せず、むしろほかの甘味料への反応を抑えました。pHが6.5から4.8へと下がるにつれて、受容体をますます強く活性化し、酸を加えるたびにまたそうなりました。したがってミラクリンは、中性の条件ではフタのように、酸性の条件ではスイッチのようにふるまいます。
その効果は約1時間続きます。酸そのものがなくなることはありません。酸味は取り除かれたのではなく、強い甘味の信号によって覆い隠されているのです。これはすべて皿の中で育てた細胞で測られたものなので、実際のヒトの舌の上で起きていることの細部は、まだ確かめられていません。研究者たちは、ミラクリンを使って砂糖を加えずに酸っぱい食べ物をおいしくできないか探っています。
4択リーディングクイズ
Q1. Which statement best summarizes the 2011 findings?
中性では受容体を抑え、酸性では活性化する(a lid ... and a switch)のが2011年の発見なので C。
Q2. According to the passage, what happens to the acid in a lemon after eating miracle fruit?
The acid itself never goes away. The sour taste is not removed but masked by a strong sweet signal. とあるので A。
Q3. Why does the writer say some details "have yet to be checked"?
All of this was measured in cells grown in a dish とあり、ヒトの舌そのものではまだ確かめられていないという限界なので B。
重要単語
- miracleB1名詞奇跡The berry is called a miracle fruit.
形容詞は miraculous(奇跡的な)。work miracles「奇跡を起こす・驚くほど効く」。 - acidicB2形容詞酸性のLemon juice is very acidic.
acid(酸)の形容詞形。反対は alkaline(アルカリ性の)、中間が neutral。 - neutralB2形容詞中性のWater has a neutral pH.
「中立の」の意味でも頻出。remain neutral「中立を保つ」。 - bindB2動詞結合する、くっつくThe protein binds to the sweet receptor.
活用は bind-bound-bound。be bound to do「きっと~する」も入試頻出。 - switch onA2動詞句スイッチを入れるAcid switches on the receptor.
turn on とほぼ同じ。反対は switch off。科学では activate(活性化する)の言い換えに使われる。 - maskB2動詞覆い隠すThe strong sweetness masks the sour taste.
名詞「仮面・マスク」から。mask a smell / mask a problem のように「隠す」の意味で使う。
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ミラクルフルーツを食べたあとにレモンをかじると、なんと甘い。東大などの研究で、実に含まれるミラクリンが、ふだんは甘味センサーにフタをして、酸っぱくなると逆にスイッチを入れる“二重人格”だとわかった。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Koizumi et al. (2011) Human sweet taste receptor mediates acid-induced sweetness of miraculin, PNASdoi.org
- Kurihara & Beidler (1968) Taste-Modifying Protein from Miracle Fruit, Sciencedoi.org
- Theerasilp & Kurihara (1988) Complete purification and characterization of the taste-modifying protein, miraculin, from miracle fruit, Journal of Biological Chemistrydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













