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炭酸のピリピリは「泡」じゃなく「酸」の刺激だった。泡が出なくても刺激はほぼ同じ

炭酸のピリピリは「泡」じゃなく「酸」の刺激だった。泡が出なくても刺激はほぼ同じ

読む前に予想してみよう!

炭酸のピリッとした刺激は、泡が舌に当たる感触がなければ感じない

研究カード(どんな研究?)
対象
マウス・成人の参加者
規模
遺伝子改変マウスの実験+14人ずつが刺激の強さを答えた実験2つ
研究の種類
基礎研究+実験研究
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

炭酸の刺激の主役は、泡がはじける感触ではない。口の中で二酸化炭素が酸に変わり、酸味の細胞や痛みの神経を刺激することで生まれる。泡が出ない高い気圧でも刺激はほぼ同じだった。

ひとことで言うと炭酸のピリピリは、口の中で二酸化炭素が「酸」に変わって起きていた!

もくじ
  1. 泡ができない部屋で炭酸を飲んだら?
  2. 口の中で「炭酸 → 酸」に変わっていた
  3. 「痛いのに好き」の不思議
  4. 登山の薬で「ビールが気の抜けた味」に
  5. まとめ

暑い日に飲む炭酸水の、あのシュワッ、ピリッとした刺激。泡が舌の上ではじけて、ツンツン刺しているような感じがしますよね。

ところが、研究者が確かめてみると、泡は主役ではなかったのです。

炭酸のピリピリの正体は、口の中で起きている小さな化学反応。しかも、それを感じ取っている細胞のひとつは、なんと「酸っぱさ」を感じる細胞でした。

01泡ができない部屋で炭酸を飲んだら?

ただし、同じ研究で、炭酸水の中で舌のまわりに空気の泡を流すと、ピリピリ感は強まりました。泡は「主役」ではないけれど、刺激を盛り上げる「わき役」だったようです。

02口の中で「炭酸 → 酸」に変わっていた

では、何がピリピリを生んでいるのでしょうか。

二酸化炭素(CO₂)は水と反応すると、炭酸という弱い酸になります。この反応はふだんはゆっくりですが、体の中には炭酸脱水酵素という酵素があって、反応をものすごく速く進めます。

2009年、カリフォルニア大学サンディエゴ校などのチームが『Science』で報告しました。マウスの舌の酸味を感じる細胞の表面に、この酵素の一種(CA4)がついていたのです。酸味の細胞をなくしたマウスでは、炭酸への味の神経の反応がなくなりました。

つまり、舌の表面でCO₂がその場で酸に変えられ、酸味センサーが「すっぱい!」と反応しているわけです(ここまではマウスの実験で分かったこと)。さらに、痛みを伝える神経も刺激されて、あのチクチク感が加わると考えられています。

舌の表面の酵素が二酸化炭素をすばやく酸に変え、酸味の細胞が反応する
舌の表面の酵素が二酸化炭素をすばやく酸に変え、酸味の細胞が反応する

03「痛いのに好き」の不思議

こうして見ると、炭酸の刺激は「酸味の細胞の反応」と「軽い痛み」の組み合わせです。本来なら、どちらも「避けたほうがいいかも」という警告の信号のはず。それなのに、多くの人は炭酸をわざわざ選んで飲んでいます。

これは、唐辛子の辛さを楽しむのと少し似ています。体に害のない範囲の刺激を、スリルや爽快感として楽しむ——そんな楽しみ方なのかもしれません。なぜ一部の人が強い炭酸を好むのかは、まだよくわかっていない研究テーマのひとつです。

04登山の薬で「ビールが気の抜けた味」に

この仕組みを裏づける、ちょっと変わった報告があります。

高山病の予防などに使われるアセタゾラミドという薬は、まさにこの炭酸脱水酵素の働きを抑えます。この薬を飲んだ人からは、「炭酸飲料やビールの味が気の抜けたようになる」という声が出ることがあります。1988年には、この現象が「シャンパン・ブルース」という題で医学誌に報告されました。

酵素の働きを抑えると、シュワシュワ感も弱まる。2000年の実験でも、舌の半分にこの薬を塗っておくと、そちら側では炭酸水の刺激が弱く感じられました。炭酸の刺激が「化学反応」であることを示す証拠です。

05まとめ

炭酸のシュワシュワは、舌の上でCO₂が酸に変わり、酸味の細胞と痛みの神経が反応することで生まれていました。泡は気分を盛り上げるわき役です。

次に炭酸を飲むとき、「今、舌の上で小さな化学実験が起きているんだ」と思い出してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe sharp feeling of a fizzy drink seems to come from bubbles popping on the tongue. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The sharp feeling of a fizzy drink seems to come from bubbles popping on the tongue. But research suggests that bubbles are not the main cause.

In a 2013 study, people tasted carbonated water at normal pressure and in a room pressurized to two atmospheres, where no bubbles could form. The bite felt about the same in both rooms.

So what causes it? When carbon dioxide meets water, it forms a weak acid. An enzyme in the mouth makes this reaction happen very quickly. A 2009 study in mice found this enzyme on the surface of sour-sensing taste cells. The tongue, it seems, turns the gas into acid, and our sour sensors react to it.

115 words ・ CEFR B1

和訳を見る

炭酸飲料のピリッとした感覚は、舌の上で泡がはじけることから来ているように思えます。しかし研究によると、泡は主な原因ではないようです。

2013年の研究で、人々は通常の気圧と、泡ができない2気圧に加圧した部屋で、炭酸水を味わいました。刺激はどちらの部屋でもほぼ同じに感じられました。

では、何が刺激を生んでいるのでしょうか。二酸化炭素は水と出会うと、弱い酸になります。口の中の酵素が、この反応をとても速く進めます。2009年のマウスの研究では、この酵素が酸味を感じる味細胞の表面で見つかりました。どうやら舌がガスを酸に変え、私たちの酸味センサーがそれに反応しているようです。

4択リーディングクイズ

Q1. Why did the researchers use a room pressurized to two atmospheres?

Q2. What does the enzyme in the mouth do?

Q3. What can we infer from the passage?

重要単語

  • carbonationC1
    名詞炭酸(ガスを含ませること)The carbonation gives soda its bite. carbon(炭素)から。形容詞 carbonated(炭酸入りの)で carbonated water(炭酸水)。
  • bubbleA2
    名詞泡Bubbles rose to the top of the glass. 経済の「バブル」も同じ語。burst(はじける)とセットで使われやすい。
  • enzymeB2
    名詞酵素An enzyme speeds up chemical reactions. 発音は /ˈenzaɪm/(エンザイム)。生物系の長文で頻出。digestive enzyme(消化酵素)。
  • sourA2
    形容詞すっぱいLemons taste sour. 牛乳が「腐ってすっぱくなる」も go sour。比喩で「関係が悪くなる」にも使う。
  • pressureB1
    名詞圧力、気圧No bubbles formed under high pressure. press(押す)の名詞形。under pressure「圧力をかけられて」は比喩でも頻出。
  • attributeC1
    動詞(原因を)~のせいにするThe bite is often attributed to bubbles. attribute A to B「A を B のせいにする・A の原因を B とみなす」は難関大の頻出構文。

4コマでわかる

炭酸のピリピリは「泡」じゃなく「酸」の刺激だった。泡が出なくても刺激はほぼ同じの4コマ漫画
炭酸のシュワシュワ感、泡がはじける感触だと思ってた。でも実験では、泡ができない2気圧の部屋で飲んでもピリピリ感はほぼ同じだったらしい。正体は、口の中で二酸化炭素が酸に変わって「酸っぱさセンサー」を刺激すること。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Chandrashekar et al. (2009) The Taste of Carbonation, Sciencedoi.org
  2. Dessirier et al. (2000) Psychophysical and neurobiological evidence that the oral sensation elicited by carbonated water is of chemogenic origin, Chemical Sensesdoi.org
  3. Wise et al. (2013) The influence of bubbles on the perception carbonation bite, PLOS ONEdoi.org
  4. Graber & Kelleher (1988) Side effects of acetazolamide: the champagne blues, American Journal of Medicinedoi.org