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塩味は「おいしい塩」と「しょっぱすぎる塩」で別ルートだった。濃い塩は“警報”を鳴らす

塩味は「おいしい塩」と「しょっぱすぎる塩」で別ルートだった。濃い塩は“警報”を鳴らす

読む前に予想してみよう!

塩辛すぎる味を「イヤだ」と感じるのにも、塩味専用のセンサーだけが使われている

研究カード(どんな研究?)
対象
マウス
規模
遺伝子改変マウスの実験
研究の種類
基礎研究(動物実験)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

マウスの研究で、ほどよい塩味は専用センサーENaCで「おいしい」と感じ、濃すぎる塩は酸味と苦味の細胞が「やめろ」と警報を出していた。

ひとことで言うと塩は「ちょうどいい」と「からすぎ」で、別の見張り役がいた!

もくじ
  1. 塩は「必要だけど、とりすぎは危険」
  2. 「おいしい塩」は専用センサーで
  3. 「しょっぱすぎる塩」は酸味と苦味が警報を鳴らす
  4. まとめ

おにぎりの塩加減がちょうどいいと「おいしい!」。でも、うっかり塩を入れすぎたスープは「しょっぱっ!」と顔をしかめますよね。

同じ「塩」なのに、量によって「おいしい」と「イヤだ」が正反対になる。これは、ほかの味にはない、塩味だけの不思議な特徴です。

研究によって、この秘密が見えてきました。塩味は、「おいしい塩」と「しょっぱすぎる塩」を、まったく別のルートで感じているらしいのです。

01塩は「必要だけど、とりすぎは危険」

ナトリウムは、体の水分や神経のはたらきを保つのに欠かせないミネラルです。だから動物は、塩を「おいしい」と感じて求めるようにできています。

一方で、とりすぎも危険。体の水分バランスがくずれてしまいます。つまり塩味には、「足りないときは食べたくなる」と「多すぎたら止める」の両方のしくみが必要なのです。

02「おいしい塩」は専用センサーで

つまり、「ちょうどいい塩加減」を感じて「おいしい」と思うのは、ナトリウム専用のセンサーの仕事でした。

2020年には、日本の研究チームが、このナトリウム専用の細胞がどうやって神経に信号を渡しているのかも解明しています。ほかの味細胞とはちがい、電気の信号だけですばやく情報を送っていることがわかりました。

03「しょっぱすぎる塩」は酸味と苦味が警報を鳴らす

では、塩辛すぎる味を「イヤだ」と感じるのは、どの細胞なのでしょうか。

2013年、同じズーカー研究室のチームは驚きの答えを発表しました。濃すぎる塩は、酸味を感じる細胞と苦味を感じる細胞を同時に刺激していたのです。

酸味と苦味は、もともと「腐っているかも」「毒かも」と知らせる警報の味。濃い塩は、この2つの警報を「借りて」、「今すぐやめろ!」というメッセージを送っていたわけです。

ちょうどいい塩は専用センサー、濃すぎる塩は酸味と苦味の「警報塔」が担当していた
ちょうどいい塩は専用センサー、濃すぎる塩は酸味と苦味の「警報塔」が担当していた

さらに驚くのは、酸味と苦味のルートを遺伝子操作で止めたマウスです。このマウスは、ふつうなら絶対に飲まないようなとても塩辛い水でも、どんどん飲み続けたのです。警報がなければ、塩の「おいしい」だけが残ってしまうのですね。

04まとめ

塩味は、「ちょうどいい塩」は専用センサーで「おいしい」、「しょっぱすぎる塩」は酸味と苦味の警報で「イヤだ」という、2段構えのしくみで管理されていました(少なくともマウスでは)。

「おいしい」と「危ない」の境目を、舌がこっそり見張っている。そう思うと、ひとつまみの塩にも、生き物のたくみな知恵が詰まっているように見えてきますね。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSalt is unusual among tastes. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Salt is unusual among tastes. A little makes food delicious, but too much is unpleasant. This makes sense, because sodium is essential for the body, yet too much can upset its water balance. Studies in mice have revealed two separate systems. In 2010, a US team showed that low levels of salt are detected by taste cells with a sodium channel called ENaC.

Mice whose taste cells lacked ENaC lost their liking for salt. In 2013, the same team found that very salty solutions activate the cells that sense sour and bitter tastes, which act as alarms. Amazingly, mice without these alarm pathways kept drinking extremely salty water.

108 words ・ CEFR B1

和訳を見る

塩は味の中でも珍しい存在です。少しなら食べ物をおいしくしますが、多すぎると不快になります。これは理にかなっています。ナトリウムは体に欠かせない一方、多すぎると体の水分バランスをくずすことがあるからです。マウスの研究で、2つの別々のしくみが明らかになりました。2010年、アメリカのチームは、低い濃度の塩は、ENaCというナトリウムの通り道をもつ味細胞で感知されることを示しました。

味細胞にENaCがないマウスは、塩を好まなくなりました。2013年、同じチームは、とても塩辛い溶液は、酸味と苦味を感じる細胞を活性化し、それらが警報の役割を果たしていることを発見しました。驚いたことに、この警報のルートをもたないマウスは、極端に塩辛い水を飲み続けたのです。

4択リーディングクイズ

Q1. Why does it make sense for salt to have two systems?

Q2. What happened to mice whose taste cells lacked ENaC?

Q3. What can we infer from the mice that kept drinking extremely salty water?

重要単語

  • saltyA2
    形容詞塩辛いThis soup is too salty. salt(塩)+-y。sweet / sour / bitter / salty / savory(うま味のある)と味の形容詞をセットで。
  • sodiumB2
    名詞ナトリウムTable salt contains sodium. 英語では「ナトリウム」ではなく sodium(ソウディアム)。元素記号 Na はラテン語 natrium から。
  • aversiveC1
    形容詞嫌悪を起こすVery bitter tastes are aversive. aversion(嫌悪)の形容詞形。have an aversion to ~「~が大嫌いだ」。
  • appetiteB1
    名詞欲求、食欲Animals have an appetite for salt. an appetite for ~「~への欲求」。比喩的にも使える。
  • concentrationB2
    名詞濃度The salt concentration was very high. 「集中(力)」の意味のほうが有名。科学文では「濃度」と訳すのが定番。
  • essentialB1
    形容詞欠かせない、不可欠なSodium is essential for the body. be essential for / to ~「~に不可欠だ」。essence(本質)と同じ語源。

4コマでわかる

塩味は「おいしい塩」と「しょっぱすぎる塩」で別ルートだった。濃い塩は“警報”を鳴らすの4コマ漫画
塩味は1種類じゃなかったらしい。マウスの研究で、ちょうどいい塩加減は専用センサーで「おいしい」、濃すぎる塩は“酸味”と“苦味”の細胞が警報を出していた。警報を止めたマウスは超しょっぱい水もゴクゴク。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Chandrashekar et al. (2010) The cells and peripheral representation of sodium taste in mice, Naturedoi.org
  2. Oka et al. (2013) High salt recruits aversive taste pathways, Naturedoi.org
  3. Nomura et al. (2020) All-Electrical Ca2+-Independent Signal Transduction Mediates Attractive Sodium Taste in Taste Buds, Neurondoi.org