溶けたアイスが甘すぎるのは気のせいじゃない。甘味を伝える仕組みは「温度」でボリュームが変わっていた

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同じジュースでも、キンキンに冷えたときよりぬるいときのほうが甘く感じやすい
人の実験では5〜12℃まで冷やすと甘さが弱まった。甘味の信号を伝える仕組みが温度で強まることも、マウスで確かめられている。
- 対象
- マウス・培養細胞・成人の参加者
- 規模
- 基礎研究+小規模なヒト実験
- 研究の種類
- 実験研究
- 確かさ
- ★★★☆☆
甘味の信号を伝える舌のチャネル「TRPM5」は、15〜35℃では温度が上がるほど強く働く(マウスなどの実験)。溶けたアイスが甘く感じる一因と考えられている。
ひとことで言うと冷たすぎると甘さは感じにくい! 甘味を伝える仕組みは温度で変わる。
夏の日、食べるのが遅くて溶けてしまったアイス。ドロッとしたそれを口に入れると、「うわ、甘っ!」。
ぬるくなった炭酸ジュースも、冷えていたときよりやたら甘く感じますよね。
これは気のせいではなさそうです。マウスや細胞の研究で、舌が甘味を伝える仕組みそのものが、温度で"ボリューム"を変えていることが分かってきました。
01甘味の信号を中継する「TRPM5」
舌で甘いものを感じると、まず甘味の受容体が糖をキャッチします。そこから細胞の中で信号がリレーされ、最後にTRPM5というチャネル(細胞膜の通り道)が開いて、細胞が電気的に反応します。
TRPM5は、甘味・うま味・苦味の信号を伝える共通の「中継点」のような存在です。
02TRPM5は温度に超敏感だった
つまり、同じ量の砂糖でも、15〜35℃の範囲では、温度が高いほど「甘い!」という信号が大きくなるのです(マウスの場合)。冷たいアイスはTRPM5のボリュームが絞られた状態で、溶けてぬるくなるとボリュームが上がる、と考えられています。
03人の舌では「冷やしすぎ」で甘さが落ちる
人で確かめた実験もあります。2015年、アメリカのグリーンさんとナハティガルさんは、砂糖水などを5〜41℃のさまざまな温度にして、甘さを評価してもらいました。
すると、5〜12℃まで冷やすと、甘さそのものが弱まりました。一方、37℃から21℃くらいまで少し冷やしただけでは、口に入れた瞬間の甘さはほとんど変わりませんでした。そのかわり、甘さに慣れて感じにくくなる「慣れ」が強まることがありました。
研究者たちは、人での温度の効果はこれまで「小さく、結果もばらばら」だったと述べています。TRPM5だけでは説明しきれず、ほかの仕組みも関わっている可能性があるそうです。

04温めるだけで「甘い」と感じる人もいる
もっと不思議な現象もあります。2000年、アメリカ・イェール大学のクルスさんとグリーンさんは、何も味のついていない状態で、舌の一部を温めたり冷やしたりする実験を行いました。
その結果、いったん冷やした舌の先を温めていくと、甘味を感じる人がいました。逆に冷やすと、酸っぱさや塩味を感じる人もいました。この現象は「温度の味(サーマル・テイスト)」と呼ばれています。
2004年の研究では、この「温度の味」を感じる人は、ふつうの味の刺激にも、感じない人より強く反応する傾向があることも報告されています。味の感じ方の個人差は、思ったよりいろいろなところに隠れているようです。
05溶けたアイスが「甘すぎる」わけ
冷たい状態で食べるアイスは、冷えていても甘く感じるように、甘さを強めに作ってあるといわれます。だから、溶けてぬるくなると「甘すぎる」と感じやすいのでしょう。
06まとめ
溶けたアイスが甘すぎるのは、甘味の信号を伝えるTRPM5が、温度が上がるほど強く働くことが一因と考えられます。舌は、温度によって甘さの「ボリューム」を変えているようです。
次にアイスが溶けてしまったら、ちょっとだけ観察してみてください。「今、舌のボリュームが上がったな」と思えたら、あなたも立派な味覚研究者です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany people notice that melted ice cream or warm juice tastes much sweeter than when it is cold.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Melted ice cream often tastes too sweet. This may not be just your imagination. Your tongue has a part called TRPM5 that helps send sweet signals to the brain.
In tests with mice, it worked more strongly when it was warmer, from about 15°C to 35°C. Tests with people also found that very cold drinks taste less sweet. So the same amount of sugar can taste sweeter when food is not so cold.
73 words ・ CEFR A2
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溶けたアイスクリームは、甘すぎる味がすることがよくあります。これはただの気のせいではないかもしれません。舌には、甘味の信号を脳に送るのを助けるTRPM5という部分があります。マウスの実験では、それはおよそ15℃から35℃の範囲で、温かいほど強くはたらきました。
人で調べた実験でも、とても冷たい飲み物は甘さを感じにくいことが分かりました。だから、同じ量の砂糖でも、食べ物が冷たすぎないほうが甘く感じることがあるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
温かいと甘く感じる理由(TRPM5 が温度で強くはたらく)を説明しているので C。
Q2. Between what temperatures does TRPM5 work more strongly as it gets warmer?
from about 15°C to 35°C とあるので D。
Q3. In this passage, "not just your imagination" means ...
「ただの想像(気のせい)ではない」=本当に起きている、という意味。本文では may(かもしれない)が付いているので B。
Many people notice that melted ice cream or warm juice tastes much sweeter than when it is cold. Research suggests this is not just a feeling. When we eat something sweet, the signal passes through a channel in taste cells called TRPM5. In 2005, an international team reported that TRPM5 is very sensitive to temperature.
As the temperature rose from 15°C to 35°C, the electric current through the channel increased sharply. In mice, nerve responses to sweet substances were also stronger at higher temperatures, but not in mice without TRPM5. Cold ice cream is said to contain plenty of sugar so that it tastes sweet enough, so it can taste too sweet once it melts.
115 words ・ CEFR B1
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溶けたアイスクリームやぬるいジュースは、冷たいときよりもずっと甘く感じることに、多くの人が気づいています。研究によると、これは単なる気のせいではないようです。甘いものを食べると、その信号は味細胞のTRPM5というチャネルを通ります。2005年、国際的なチームは、TRPM5が温度にとても敏感であることを報告しました。
温度が15℃から35℃に上がるにつれて、チャネルを流れる電流が急激に増えたのです。マウスでは、甘い物質に対する神経の反応も、温度が高いほうが強くなりましたが、TRPM5をもたないマウスではそうなりませんでした。冷たいアイスクリームは十分に甘く感じるよう砂糖をたっぷり使って作られているといわれるので、溶けると甘すぎる味になることがあるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the 2005 team report about TRPM5?
TRPM5 is very sensitive to temperature と報告したので B。
Q2. What happened in mice without TRPM5?
nerve responses ... were also stronger at higher temperatures, but not in mice without TRPM5 とあるので A。
Q3. Why can melted ice cream taste too sweet?
冷たくても甘く感じるよう砂糖が多めで、溶けて温度が上がると甘さの信号が強まるので D。
Anyone who has tasted melted ice cream or lukewarm soda knows that warm sweet foods can seem cloying. Research suggests this reflects the machinery of taste itself. When sugar binds to sweet receptors on the tongue, the signal is relayed inside the taste cell until a channel called TRPM5 opens, a step shared by sweet, umami and bitter tastes.
In 2005, an international team led from KU Leuven in Belgium, with participation from Kyushu University, reported in Nature that TRPM5 is highly temperature-sensitive. Between 15 and 35 degrees Celsius, the current flowing through it rose steeply with warmth. In mice, taste nerve responses to sweet substances grew stronger as temperature rose, whereas mice lacking TRPM5 showed no such change. Temperature can even create a taste out of nothing.
A 2000 Yale study found that warming a cooled area of the tongue tip, with no chemical present, made some people perceive sweetness, a phenomenon called thermal taste. Only some people experience it, and since the channel evidence comes from mice and cultured cells, individual differences in humans are poorly understood. Later work suggested that these "thermal tasters" also respond more strongly to ordinary tastes.
193 words ・ CEFR B2
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溶けたアイスクリームやぬるい炭酸飲料を口にしたことがある人なら、温かい甘い食べ物がくどく感じられることがあると知っているでしょう。研究によると、これは味覚の仕組みそのものを反映しています。砂糖が舌の甘味受容体に結合すると、その信号は味細胞の中でリレーされ、最後にTRPM5というチャネルが開きます。これは甘味・うま味・苦味に共通する段階です。
2005年、九州大学も参加し、ベルギーのルーヴェン・カトリック大学が中心となった国際チームは、TRPM5が温度にとても敏感であることを『Nature』で報告しました。15℃から35℃のあいだで、そこを流れる電流は温かくなるにつれて急激に増えました。マウスでは、温度が上がるにつれて甘い物質に対する味の神経の反応が強まりましたが、TRPM5をもたないマウスではそのような変化は見られませんでした。温度は、何もないところに味を生み出すことさえあります。
2000年のイェール大学の研究では、化学物質が何もない状態で、冷やした舌の先の一部を温めると、甘味を感じる人がいることがわかりました。これは「温度の味(サーマル・テイスト)」と呼ばれる現象です。これが起こるのは一部の人だけで、チャネルについての証拠はマウスと培養細胞によるものなので、ヒトの個人差はよくわかっていません。その後の研究は、こうした「サーマル・テイスター」はふつうの味にもより強く反応することを示唆しました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
TRPM5 の温度感受性が甘さの感じ方に影響するが、ヒトの個人差はまだよくわかっていない、という内容なので C。
Q2. What is "thermal taste"?
化学物質なしで舌を温めると甘味を感じる現象を thermal taste と呼んでいるので A。
Q3. Which limitation does the writer mention?
the channel evidence comes from mice and cultured cells とあるので B。
重要単語
- temperatureA2名詞温度Temperature changes how sweet food tastes.
発音は /ˈtemprətʃər/。take one's temperature「体温を測る」。 - lukewarmC1形容詞ぬるいThe juice was lukewarm and too sweet.
比喩で「気乗りしない・熱意のない」(a lukewarm response)。 - sensitiveB1形容詞敏感なThe channel is very sensitive to heat.
be sensitive to ~「~に敏感だ」。sensible(分別のある)との混同に注意。 - channelB2名詞(細胞膜の)通り道、チャネルIons pass through the channel.
テレビの「チャンネル」、「経路」の意味もある多義語。 - thermalC1形容詞熱の、温度のThermal taste happens without any tastant.
thermo-(熱)は thermometer(温度計)と同じ語根。 - cloyingC1形容詞(甘すぎて)くどいThe melted ice cream was cloying.
甘さが過剰で胸やけしそうな感じ。比喩で「感傷的すぎる」にも使う。
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溶けたアイスやぬるくなったジュースが「甘すぎる」と感じるのは気のせいじゃなかった。甘味の信号を伝える舌のチャネルTRPM5は、温度が上がるほど強く働くらしい(マウスの実験)。舌を温めるだけで甘く感じる「温度の味」を体験する人までいる。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Talavera et al. (2005) Heat activation of TRPM5 underlies thermal sensitivity of sweet taste, Naturedoi.org
- Cruz & Green (2000) Thermal stimulation of taste, Naturedoi.org
- Green & George (2004) 'Thermal Taste' Predicts Higher Responsiveness to Chemical Taste and Flavor, Chemical Sensesdoi.org
- Green & Nachtigal (2015) Temperature Affects Human Sweet Taste via At Least Two Mechanisms, Chemical Sensesdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













