チョコを食べる国ほどノーベル賞が多い!? 「チョコは体にいい」を冷静に読み解く

読む前に予想してみよう!
カカオの成分のサプリを2万人以上が飲んだ大規模試験で、心臓病などの発症全体がはっきり減った
発症全体の減少は統計的にはっきりしなかった。一部の指標では差が見られた。
- 対象
- アメリカの高齢者
- 規模
- 約2万1千人
- 研究の種類
- ランダム化比較試験(プラセボ対照)
- 確かさ
- ★★★★☆
カカオの成分には研究で注目される働きがあるが、2万人超の大規模試験でも心臓病の発症全体ははっきり減らなかった。チョコには砂糖と脂質も多い。
ひとことで言うとカカオの成分は注目されてる。でもチョコを食べまくれば健康、ではない!
「チョコレートは体にいい」「高カカオなら毎日食べてもOK」。お菓子売り場でも、そんなキャッチコピーをよく見かけます。
本当なら最高ですよね。でも、論文をのぞいてみると、話はそんなに甘くありませんでした。
まずは、医学界で有名な“ちょっと笑える”論文から紹介しましょう。
01チョコを食べる国ほどノーベル賞が多い?
2012年、世界トップクラスの医学誌『New England Journal of Medicine』に、ある短い記事が載りました。
アメリカの医師メッセリ(Messerli)さんが、国ごとのチョコレート消費量と、人口あたりのノーベル賞受賞者数をグラフにしたところ、きれいな右肩上がりの関係が出たというのです。
もちろん、これは「チョコを食べると頭がよくなる」という話ではありません。チョコをたくさん買える豊かな国ほど、研究にお金をかけられるので、受賞者も多い――そんな別の要因(交絡因子)で説明できてしまいます。
この論文は今でも、「相関(いっしょに動く)と因果(原因と結果)はちがう」を教えるための鉄板ネタになっています。

02カカオの成分は、たしかに注目されている
とはいえ、カカオに何もないわけではありません。カカオにはフラバノールという、ポリフェノールの一種が含まれています。ポリフェノールは、植物が紫外線などから身を守るために作る成分のグループです。
これまでの小規模な研究では、カカオのフラバノールが血管の広がり方や血圧に小さな良い変化をもたらす可能性が報告されてきました。
信頼性の高いまとめで知られるコクランのレビュー(2017年、35の試験・40の比較を統合)でも、カカオ製品で上の血圧が平均で約2mmHg下がるという結果でした。ただし、試験期間はどれも2〜18週間(平均9週間)と短く、下がり幅も「ほんの少し」。病気そのものを防ぐかどうかは、この結果だけではわかりません。
032万人超の大規模試験の結果は…
プラセボとは、見た目は同じでも有効成分が入っていない「ニセのサプリ」のこと。「飲んだから効くはず」という思い込みの影響を取り除くために使います。
ここで大事なのは、この試験で使われたのはチョコレートではなく、成分を濃縮したサプリだったという点。同じ量のフラバノールをチョコでとろうとすると、砂糖や脂質もかなりの量をとることになります。
04まとめ
チョコのカカオ成分には研究で注目される働きがあるものの、「チョコを食べれば健康になる」とはまだ言えない、というのが現時点の冷静な答えです。
チョコは「薬」ではなく「おいしいお菓子」。好きな一枚を、ゆっくり味わって楽しむのがいちばんです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 2012, a famous medical journal published a short article showing that countries that eat more chocolate…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many people think chocolate is healthy. In 2012, a doctor made a graph. Countries that ate more chocolate had more Nobel Prize winners! But chocolate does not make people smart. Rich countries can buy more chocolate and spend more money on research.
A big study gave more than 20,000 older people a cocoa supplement or a fake one. The cocoa did not clearly reduce heart problems and strokes. Chocolate also has a lot of sugar and fat.
77 words ・ CEFR A2
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多くの人がチョコレートは健康によいと思っています。2012年、ある医師がグラフを作りました。チョコレートをたくさん食べる国ほど、ノーベル賞の受賞者が多かったのです!でも、チョコレートで人の頭がよくなるわけではありません。豊かな国は、チョコレートをたくさん買えるうえに、研究にもたくさんお金を使えるのです。
ある大きな研究では、2万人以上の高齢者に、カカオのサプリか、ニセのサプリを飲んでもらいました。カカオは、心臓の病気や脳卒中をはっきりとは減らしませんでした。それに、チョコレートには砂糖や脂肪もたくさん含まれています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
チョコと健康について、グラフの話と大規模研究の結果から冷静に考える内容なので D。
Q2. How many older people were in the big study?
more than 20,000 older people とあるので C。
Q3. In this passage, "a fake one" means ...
fake は「ニセの」。見た目は同じでも有効成分の入っていないサプリ(プラセボ)のことなので A。
In 2012, a famous medical journal published a short article showing that countries that eat more chocolate have more Nobel Prize winners per person. This does not mean chocolate makes people smarter. Rich countries can afford more chocolate and also spend more on research, so wealth may explain both. This is a classic example of how correlation is different from causation. Cocoa does contain flavanols, a type of polyphenol, and small studies suggest they may slightly lower blood pressure.
However, in the COSMOS trial, more than 20,000 older adults took either a cocoa flavanol supplement or a placebo for several years, and total heart disease and stroke events did not clearly decrease. Chocolate is also high in sugar and fat.
120 words ・ CEFR B1
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2012年、有名な医学誌に、チョコレートをたくさん食べる国ほど人口あたりのノーベル賞受賞者が多いことを示す短い記事が載りました。これは、チョコレートで人が賢くなるという意味ではありません。豊かな国はチョコレートをたくさん買う余裕があり、研究にも多くのお金を使えるので、豊かさが両方を説明しているのかもしれません。これは、相関と因果がちがうことを示す典型的な例です。カカオには確かにポリフェノールの一種であるフラバノールが含まれており、小規模な研究では血圧をわずかに下げる可能性が示されています。
しかしCOSMOS試験では、2万人以上の高齢者が数年間、カカオフラバノールのサプリかプラセボを飲みましたが、心臓病や脳卒中の発症全体ははっきりとは減りませんでした。チョコレートには砂糖や脂肪も多く含まれています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main message of the passage?
カカオ成分には注目点があるが、大規模試験では発症全体ははっきり減らず、砂糖や脂肪も多い、という流れなので A。
Q2. In the COSMOS trial, what did participants take?
took either a cocoa flavanol supplement or a placebo とあるので D。チョコそのものではない点に注意。
Q3. What can be inferred about the chocolate and Nobel Prize graph?
wealth may explain both とあり、豊かさという別の要因が両方に関わっている可能性が示されているので B。
In 2012, a short article in a leading medical journal plotted each country's chocolate consumption against its number of Nobel laureates per capita. The correlation was very strong. Hardly anyone took it literally. National wealth could easily explain the pattern, since rich countries can afford both more chocolate and more research. The graph is now a standard example of why correlation does not imply causation.
Cocoa does contain flavanols, though, and these have been tested more seriously. A 2017 Cochrane review of 35 trials found that cocoa products lowered systolic blood pressure by only about 2 millimeters of mercury on average, and every trial was short. The most rigorous test so far is the COSMOS trial, published in 2022.
More than 21,000 older adults were randomly assigned to take either a cocoa flavanol supplement or a placebo for several years. Total cardiovascular events did not fall significantly, although some secondary outcomes, such as deaths from cardiovascular disease, appeared lower. The trial used a concentrated supplement. Getting the same dose from chocolate bars would mean eating a lot of sugar and fat along with it.
184 words ・ CEFR B2
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2012年、一流医学誌に載った短い記事は、国ごとのチョコレート消費量と人口あたりのノーベル賞受賞者数をグラフにしました。相関はとても強いものでした。これを文字どおりに受け取った人はほとんどいませんでした。豊かな国はチョコレートにも研究にも多くのお金をかけられるので、国の豊かさでこのパターンは簡単に説明できるからです。このグラフは今では、相関が因果を意味しない理由を示す定番の例になっています。
とはいえ、カカオには確かにフラバノールが含まれており、こちらはもっと真剣に検証されてきました。2017年のコクランレビュー(35の試験・40の比較を統合)では、カカオ製品によって上の血圧が平均でわずか約2mmHg下がっただけで、どの試験も短期間のものでした。これまでで最も厳密な検証は、2022年に発表されたCOSMOS試験です。
2万1千人以上の高齢者がくじ引きで、カカオフラバノールのサプリかプラセボのどちらかを数年間とるように割り当てられました。心血管の病気の発症全体は有意には減りませんでしたが、心血管の病気による死亡など一部の副次的な指標では少ない傾向が見られました。この試験で使われたのは濃縮されたサプリです。同じ量を板チョコからとろうとすれば、大量の砂糖と脂肪もいっしょにとることになります。
4択リーディングクイズ
Q1. Why does the author mention the chocolate and Nobel Prize graph?
The graph is now a standard example of why correlation does not imply causation とあるので C。
Q2. What did the COSMOS trial find?
Total cardiovascular events did not fall significantly とあるので B。一部の副次的な指標で少ない傾向はあったが、主な結果は有意差なし。
Q3. Why does the author stress that the trial used a supplement, not chocolate?
最終文 Getting the same dose from chocolate bars would mean eating a lot of sugar and fat along with it から D。サプリの結果をそのままチョコに当てはめられないという指摘。
重要単語
- correlationC1名詞相関Correlation does not prove causation.
co-(共に)+relation(関係)。「いっしょに動く」関係。a correlation between A and B の形で使う。 - causationC1名詞因果関係Scientists need experiments to show causation.
cause(原因)の名詞形。Correlation does not imply causation. は入試の長文・英作文で頻出のフレーズ。 - placeboC1名詞プラセボ(偽薬)Half of the participants took a placebo.
ラテン語で「私は喜ばせるだろう」。the placebo effect「プラセボ効果(思い込みで効く)」もセットで。 - supplementB2名詞・動詞サプリメント/補うThe supplement contained cocoa extract.
supply(供給する)と同語源で「足りない分を補うもの」。動詞は /ˈsʌplɪment/ と語尾の発音が変わる。 - confounding factorC1名詞(句)交絡因子Wealth is a confounding factor in this graph.
confound は「混乱させる」。2つのものの両方に影響し、関係をまぎらわしくする第3の要因。 - per capitaC1副詞・形容詞1人あたり(の)Switzerland has a high income per capita.
ラテン語で「頭ごとに」。capital(首都・大文字)と同じく caput(頭)が語源。グラフ問題で頻出。 - rigorousC1形容詞厳密なThe drug was tested in a rigorous trial.
rigor(厳しさ)の形容詞。rigorous test / rigorous study のように研究の質をほめる語。
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「チョコをたくさん食べる国ほどノーベル賞受賞者が多い」というグラフが一流医学誌に載ったことがあるらしい。もちろん“相関と因果は別”を教えるネタ。チョコの健康効果も、期待しすぎは禁物。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Messerli (2012) Chocolate Consumption, Cognitive Function, and Nobel Laureates, New England Journal of Medicinedoi.org
- Sesso et al. (2022) Effect of cocoa flavanol supplementation for the prevention of cardiovascular disease events: the COcoa Supplement and Multivitamin Outcomes Study (COSMOS), American Journal of Clinical Nutritiondoi.org
- Ried et al. (2017) Effect of cocoa on blood pressure, Cochrane Database of Systematic Reviewsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












