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指紋は「すべり止め」じゃなかった? 物にふれる面積が減り、摩擦はむしろ下がる方向。役目は手ざわりを感じることかも

指紋は「すべり止め」じゃなかった? 物にふれる面積が減り、摩擦はむしろ下がる方向。役目は手ざわりを感じることかも

読む前に予想してみよう!

指紋がまったくない人がいる

研究カード(どんな研究?)
対象
ヒトの指先と生体模倣センサー
規模
実験複数(指先の摩擦測定、センサー実験)
研究の種類
物理測定・工学的モデル・発生生物学
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

指紋は摩擦を増やすと思われてきたが、測定では接触面積が約3分の1減っており、摩擦は下がる方向と考えられた。一方で、ざらつきを感じる振動を作り出す役割が示唆された。

ひとことで言うと指紋はすべり止めじゃなく、細かいざらざらを感じるための仕組みかも。

もくじ
  1. 指紋のでこぼこで、物にふれる面積が約3分の1減っていた
  2. もう一つの役目は「ざらつきセンサー」?
  3. 指紋はどうやってできる?
  4. 生まれつきの体質「無紋症」
  5. まとめ

指先のうずまき模様、指紋。「すべり止めのためにある」と習った人は多いでしょう。

タイヤの溝のように、摩擦を増やしてモノをつかみやすくする――とても納得できる説明です。

ところが、実際に測ってみた研究者たちは、通説とは逆向きの結果を見つけてしまいました。

01指紋のでこぼこで、物にふれる面積が約3分の1減っていた

ちなみに、押しつける力が強いほど摩擦係数が下がることもわかりました。これもゴム的な性質です。

02もう一つの役目は「ざらつきセンサー」?

では、何のためにあるのでしょう。同じ2009年に、まったく別の答えが示されました。

つまり指紋は、なでたときの細かいざらつきを、神経が感じ取りやすい振動に変える仕組みなのかもしれません。

うねのある表面をなぞると、特定の周波数の振動が生まれる
うねのある表面をなぞると、特定の周波数の振動が生まれる

03指紋はどうやってできる?

2023年、英国を中心とする研究チームは、指紋の模様がどのようにできるのか、その仕組みを報告しました。

指紋のうねは、毛を作る過程に似た仕組みで始まりますが、途中で止まるため毛にはなりません。そしてEDAR・WNT・BMPという3つのシグナル(細胞どうしが送り合う合図)が互いに促進・抑制し合う「チューリング・パターン」(シマウマの縞などを説明する数理モデル)によって、模様ができていくのです。

うねは指先の何か所かから波のように広がり、その波のぶつかり方によって、うずまき型・ループ型・弓型などの違いが生まれます。波の始まる場所は、指の形などのわずかな条件で変わります。そのため模様は人ごとに違ってきます(一卵性双生児でも指紋は一致しません)。

04生まれつきの体質「無紋症」

実は、生まれつき指紋がない人がいます。無紋症(adermatoglyphia)です。

2011年、イスラエルとスイスの研究チームは、この体質の家系を調べ、SMARCAD1という遺伝子の、皮膚だけで働く短い型の変異が原因だと報告しました。空港の入国審査で指紋認証ができず困ることから、「入国遅延病」というあだ名でも紹介されました。

指紋がなくても日常生活はおおむね送れるとされます。指紋は、物をつかむのに欠かせないものではなさそうです。

05まとめ

  • 指紋は、なめらかな面では接触面積を減らし、摩擦を下げる方向に働くと考えられる
  • 一方で、なでたときに特定の振動を生み、細かい手ざわりを感じ取るのに役立っている可能性がある
  • 模様はチューリング・パターンでできるため、同じ指紋は生まれにくい
  • 生まれつき指紋がない人もいる

「あたりまえの説明」を疑って測ってみる。すると、指先に隠れていた本当の仕事が見えてくるのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerFingerprints are often said to work like the grooves on a tire, helping us grip objects. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Fingerprints are often said to work like the grooves on a tire, helping us grip objects. In 2009, however, Warman and Ennos pressed people's fingertips against a smooth acrylic surface and measured friction. They found that the skin behaved like rubber, where friction depends on contact area, and that the ridges reduced the contact area by about a third.

As a result, fingerprints probably lowered friction. That same year, a French team built a sensor that copied a fingertip. When it had ridges like fingerprints, sliding it over a rough surface produced strong vibrations at frequencies that nerves deep in the skin detect best. This suggests fingerprints may help us sense texture.

112 words ・ CEFR B1

和訳を見る

指紋はタイヤの溝のようにはたらき、物をつかむのを助けるとよく言われます。しかし2009年、ワーマンとエノスは人の指先をなめらかなアクリル板に押しつけ、摩擦を測定しました。その結果、皮膚はゴムのようにふるまうこと(ゴムでは摩擦は接触面積で決まります)、そして隆起によって接触面積が約3分の1減ることがわかりました。

そのため、指紋はおそらく摩擦を下げていたのです。同じ年、フランスのチームは指先をまねたセンサーを作りました。指紋のような隆起をつけると、ざらざらした面の上をすべらせたときに、皮膚の奥の神経が最もよく感じ取る周波数で強い振動が生じました。これは、指紋が手ざわりを感じる助けになっているかもしれないことを示しています。

4択リーディングクイズ

Q1. Why did the ridges lower friction in the 2009 measurements?

Q2. What did the French team build?

Q3. What is the writer's conclusion about fingerprints?

重要単語

  • frictionB2
    名詞摩擦The ridges probably reduced friction. 比喩で「(人間関係の)不和・あつれき」の意味も入試頻出。friction between A and B。
  • gripB2
    名詞・動詞握る力・グリップ/しっかり握るFingerprints may not improve grip at all. get a grip「落ち着け・しっかりしろ」という口語表現もある。
  • ridgeC1
    名詞隆起・うねEach fingerprint is made of fine ridges. 山の「尾根」も ridge。細長く盛り上がった部分のイメージ。
  • textureB2
    名詞手ざわり・質感We feel texture through tiny vibrations. text(織られたもの)と同語源。textile(織物)も仲間。
  • vibrationB2
    名詞振動The sensor measured vibrations as it moved. 動詞 vibrate。スマホの「バイブ」もここから。
  • receptorC1
    名詞受容器(感覚のセンサー)A receptor deep in the skin detects vibration. receive(受け取る)の仲間。薬学では「受容体」と訳す。

動画でもっと知る

4コマでわかる

指紋は「すべり止め」じゃなかった? 物にふれる面積が減り、摩擦はむしろ下がる方向。役目は手ざわりを感じることかもの4コマ漫画
「指紋はすべり止め」に残念なお知らせ。実測では接触面積が約3分の1減っていて、摩擦はむしろ下がるはず、という結果に。代わりの役目は、なでたとき細かいざらつきを感じる振動を作ることかも。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Warman & Ennos (2009) Fingerprints are unlikely to increase the friction of primate fingerpads, Journal of Experimental Biologydoi.org
  2. Scheibert et al. (2009) The Role of Fingerprints in the Coding of Tactile Information Probed with a Biomimetic Sensor, Sciencedoi.org
  3. Glover et al. (2023) The developmental basis of fingerprint pattern formation and variation, Celldoi.org
  4. Nousbeck et al. (2011) A Mutation in a Skin-Specific Isoform of SMARCAD1 Causes Autosomal-Dominant Adermatoglyphia, The American Journal of Human Geneticsdoi.org