高い音の曲でお菓子が甘くなる? 確かめ直す実験では、甘さそのものの変化は見られなかった

読む前に予想してみよう!
「音楽で甘さが変わる」という効果は、追試でもはっきり確認されている
同じやり方では結果が再現されたが、甘さや苦さを別々に評価すると、音で特定の味が強まる効果は見られなかった。議論は続いている。
- 対象
- 大人の参加者
- 規模
- 追試は各20人の実験2つ
- 研究の種類
- 実験研究(追試を含む)
- 確かさ
- ★★☆☆☆
高い音の曲で甘く、低い音の曲で苦く感じるという研究が話題になった。しかし追試では、効果は「評価のしかた」の影響だった可能性が示され、決着はついていない。
ひとことで言うと音楽で味が変わる…かもしれないけど、まだ研究中!
「この曲を聴きながら食べると、甘く感じますよ」
そんな"音のスパイス"が、一時期レストランや食品業界で大きな話題になりました。名前はソニック・シーズニング(音で味付け)。高い音の音楽で甘く、低い音で苦く感じるというのです。
本当なら、砂糖を減らしても音楽で甘さを補えるかもしれない——夢のある話ですよね。ところが、ドイツの研究者が同じ実験を確かめ直す(追試する)と、話は思わぬ方向に進みました。
01「甘い曲」と「苦い曲」でトフィーを食べ比べ
もともと人には、「高い音=甘い」「低い音=苦い」と感じる音と味の対応づけがあることが知られていました。この実験は、その対応づけが、実際に食べたときの味の評価まで動かすことを示した、と受け止められました。

たとえば、「甘い」に合う音を選んでもらうと、多くの人が高い音や、なめらかなピアノの音を選び、「苦い」には低い音や、ざらついた金管の音を選ぶ傾向があります。国や文化が違っても、こうした対応づけは似ていることが多いといわれます。
02確かめ直す実験で、味の評価のしかたを変えたら効果が消えた
2018年、ドイツの研究者ヘッヒェンベルガーさんとオーラさんは、この実験を確かめ直しました。
まず、元の実験と同じやり方(苦い〜甘いの1本のものさし)で行うと、元の結果は再現されました。ところが、「音なし」で食べた回も比べる基準として分析に入れると、その差は消えてしまいました。
さらに2つ目の実験で、甘味・苦味・酸味・塩味をそれぞれ別のものさしで評価してもらうと、音によって特定の味が強まる効果は見られませんでした。音があると味が「全体的に強く」感じられることはあったものの、「甘い音で甘さだけが増える」というわけではなかったのです。
研究者たちの結論はこうです。最初の効果は、味そのものが変わったのではなく、評価のしかた(ものさし)が生んだ見かけの結果だった可能性がある。
03それでも「音と味」の研究は続く
これで「音楽は味に関係ない」と決まったわけではありません。音と味のイメージの対応は確かにありますし、BGMが食事の楽しさや雰囲気を変えることは多くの研究者が認めています。スペンスさんは2015年の総説で、厨房で流れる音楽が料理人の味付けそのものに影響するかもしれない、という話題まで取り上げています。
「音楽が砂糖の代わりになる」と言えるほどの証拠は、今のところありません。
04まとめ
「高い音で甘く、低い音で苦く」というソニック・シーズニング。同じやり方では結果が再現されたものの、評価のしかたを変えると効果が消えました。なんとも"ビターでスイート"な結末です。
科学では、ひとつの実験だけで結論を出さず、やり方を変えて何度も確かめることが大切。音楽はまず、食事を楽しくするスパイスとして楽しみましょう。
この研究を英語で読もう原田英語の English Corner"Sonic seasoning" is the idea that music can change the taste of food.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Can music change the taste of candy? In 2012, scientists in Britain played two kinds of sounds while people ate toffee. With high piano sounds, the toffee seemed sweeter. With low brass sounds, it seemed more bitter. People called this "sonic seasoning."
But in 2018, scientists in Germany tested it again in a different way. This time, the effect was not clear. So the idea is still being studied.
69 words ・ CEFR A2
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音楽でお菓子の味は変わるのでしょうか。2012年、イギリスの科学者たちは、人々がトフィーを食べている間に2種類の音を流しました。高いピアノの音では、トフィーはより甘く感じられました。低い金管楽器の音では、より苦く感じられました。人々はこれを「ソニック・シーズニング(音で味付け)」と呼びました。
しかし2018年、ドイツの科学者たちが別の方法でもう一度テストしました。今回は、効果ははっきりしませんでした。つまり、この考えはまだ研究中なのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
音楽で味が変わるか(ソニック・シーズニング)を調べた研究とその追試の話なので A。
Q2. What happened when people heard low brass sounds in 2012?
With low brass sounds, it seemed more bitter. とあるので C。
Q3. In this passage, "tested it again" means the scientists ...
test again は「もう一度試す」。結果を確かめるために実験をやり直した(追試した)ので D。
"Sonic seasoning" is the idea that music can change the taste of food. In a 2012 study at Oxford University, people ate toffee while listening to two soundtracks, a high-pitched "sweet" one made with instruments like the piano, and a low "bitter" one with brass instruments. They rated the toffee on a single scale from bitter to sweet, and their ratings moved in the direction of the music.
However, in 2018, two researchers in Germany repeated the study. When they added a silent condition, the difference disappeared. When people rated sweetness and bitterness on separate scales, the music did not increase any specific taste. The original effect may have come from the rating method.
114 words ・ CEFR B1
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「ソニック・シーズニング」とは、音楽で食べ物の味が変わるという考えです。オックスフォード大学の2012年の研究で、人々は2種類の音源を聞きながらトフィーを食べました。ピアノなどの楽器で作った高い音の「甘い」音源と、金管楽器を使った低い「苦い」音源です。
彼らはトフィーを「苦い〜甘い」の1本のものさしで評価し、その評価は音楽の方向へ動きました。しかし2018年、ドイツの2人の研究者がこの研究をくり返しました。音のない条件を加えると、その差は消えました。甘さと苦さを別々のものさしで評価してもらうと、音楽は特定の味を強めませんでした。最初の効果は、評価の方法から生まれたのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. How did participants rate the toffee in the 2012 study?
They rated the toffee on a single scale from bitter to sweet とあるので D。
Q2. What happened when the 2018 researchers added a silent condition?
When they added a silent condition, the difference disappeared. とあるので B。
Q3. What does the writer suggest in the last sentence?
The original effect may have come from the rating method. とあり、評価方法が効果を生んだ可能性を示唆しているので C。
In the 2010s, "sonic seasoning," the claim that music can alter the taste of food, attracted considerable attention from restaurants and food companies. Its scientific basis was a 2012 Oxford study in which participants ate cinder toffee while hearing either a high-pitched, piano-based "sweet" soundtrack or a low, brassy "bitter" one.
Rated on a single bitter-to-sweet scale, the toffee seemed sweeter with the sweet soundtrack and more bitter with the bitter one. The finding fitted well-known crossmodal correspondences, in which many people tend to link high pitches with sweetness and low pitches with bitterness. In 2018, however, two German researchers ran a replication. Using the original method, they reproduced the effect, but it vanished once a no-sound condition was included as a baseline.
In a second experiment, where each taste was rated on its own scale, sound raised overall intensity ratings but did not selectively enhance sweetness or bitterness. They concluded that the original result may have been an artifact of the single-scale rating method rather than a genuine change in taste. Since the German experiments involved only twenty people each, the debate continues, but there is currently no evidence that music can replace sugar.
195 words ・ CEFR B2
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2010年代、音楽で食べ物の味を変えられるという主張「ソニック・シーズニング」が、レストランや食品会社からかなりの注目を集めました。その科学的な根拠は2012年のオックスフォード大学の研究で、参加者はシンダートフィーを食べながら、ピアノを中心にした高い音の「甘い」音源か、低い金管の「苦い」音源のどちらかを聞きました。
「苦い〜甘い」の1本のものさしで評価すると、トフィーは甘い音源では甘く、苦い音源では苦く感じられました。この発見は、多くの人が高い音を甘さと、低い音を苦さと結びつけやすいという、よく知られた感覚間の対応とよく合っていました。しかし2018年、ドイツの2人の研究者が追試を行いました。元の方法を使うと効果は再現されましたが、音なしの条件を基準として含めると効果は消えました。
それぞれの味を別々のものさしで評価した2つ目の実験では、音は全体的な強さの評価を上げましたが、甘さや苦さだけを選んで強めることはありませんでした。彼らは、最初の結果は味の本当の変化というより、1本のものさしによる評価方法が生んだ見かけの結果だったかもしれないと結論づけました。ドイツの実験にはそれぞれ20人しか参加していないので議論は続いていますが、今のところ音楽が砂糖の代わりになるという証拠はありません。
4択リーディングクイズ
Q1. Which statement best summarizes the passage?
話題になった効果が、方法を変えた追試で弱まった(評価方法による見かけの結果かもしれない)という流れなので A。
Q2. What did the second German experiment find?
sound raised overall intensity ratings but did not selectively enhance sweetness or bitterness とあるので B。
Q3. In this passage, what does "an artifact of the single-scale rating method" mean?
artifact は「(方法によって生じた)見かけの結果」。味の本当の変化ではなく評価方法が生んだ結果、という意味なので D。
重要単語
- soundtrackB1名詞(背景の)音楽・音源The soundtrack played softly during the meal.
映画の「サントラ」と同じ語。実験では「流した音源」の意味で使われる。 - pitchB2名詞音の高さHigh pitch sounds are often linked to sweetness.
野球の「投球」、営業の「売り込み」も pitch。多義語として頻出。 - replicateC1動詞(実験を)再現する、追試するScientists tried to replicate the result.
名詞 replication。replication crisis(再現性の危機)は心理学の重要テーマ。 - correspondenceC1名詞対応関係There is a correspondence between sounds and tastes.
「文通・通信」の意味もある。correspond to ~「~に対応する」。 - artifactC1名詞(測定方法による)見かけの結果The effect may be an artifact of the rating scale.
本来は「人工物・遺物」。研究では「方法のせいで生じたニセの結果」という意味になる。 - baselineC1名詞基準(となる条件)The no-sound condition was used as a baseline.
比較の出発点となる値や条件。実験の説明でよく使う。
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高くてキラキラした曲を聴くとお菓子が甘く、低い金管の曲だと苦く感じる「音で味付け」研究が話題に。でもドイツの追試では、評価のものさしを変えたら効果が消えたらしい。音と味の関係、まだ決着していない。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Crisinel et al. (2012) A bittersweet symphony: Systematically modulating the taste of food by changing the sonic properties of the soundtrack playing in the background, Food Quality and Preferencedoi.org
- Höchenberger & Ohla (2018) A bittersweet symphony: Evidence for taste-sound correspondences without effects on taste quality-specific perception, Journal of Neuroscience Researchdoi.org
- Spence (2015) Music from the kitchen, Flavourdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











