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高い音のBGMでお菓子が甘くなる? 「音で味付け」ソニック・シーズニングを追試したら意外な結末に

高い音のBGMでお菓子が甘くなる? 「音で味付け」ソニック・シーズニングを追試したら意外な結末に

読む前に予想してみよう!

「音楽で甘さが変わる」という効果は、追試でもはっきり確認されている

研究カード(どんな研究?)
対象
大学の参加者
規模
各数十人の実験が複数
研究の種類
実験研究(追試を含む)
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

高い音の曲で甘く、低い音の曲で苦く感じるという研究が話題になった。しかし追試では、効果は「評価のしかた」の影響だった可能性が示され、決着はついていない。

ひとことで言うと音楽で味が変わる…かもしれないけど、まだ研究中!

もくじ
  1. 「甘い曲」と「苦い曲」でトフィーを食べ比べ
  2. 追試で「ものさし」を変えたら…
  3. それでも「音と味」の研究は続く
  4. まとめ

「この曲を聴きながら食べると、甘く感じますよ」

そんな"音のスパイス"が、一時期レストランや食品業界で大きな話題になりました。名前はソニック・シーズニング(音で味付け)。高い音の音楽で甘く、低い音で苦く感じるというのです。

本当なら、砂糖を減らしても音楽で甘さを補えるかもしれない——夢のある話ですよね。ところが、ドイツの研究者が追試をしたところ、意外な結末が待っていました。

01「甘い曲」と「苦い曲」でトフィーを食べ比べ

もともと人には、「高い音=甘い」「低い音=苦い」と感じる音と味の対応づけがあることが知られていました。この実験は、それが実際の味の評価にまで影響しうることを示した、と受け止められたのです。

「苦い〜甘い」の1本のものさしで評価すると、音によって針が動いた
「苦い〜甘い」の1本のものさしで評価すると、音によって針が動いた

たとえば、「甘い」に合う音を選んでもらうと、多くの人が高い音や、なめらかなピアノの音を選び、「苦い」には低い音や、ざらついた金管の音を選ぶ傾向があります。国や文化がちがっても、こうした対応づけは似ていることが多いといわれます。

02追試で「ものさし」を変えたら…

2018年、ドイツの研究者ヘッヒェンベルガーさんとオーラさんは、この実験を確かめ直しました。

まず、元の実験と同じやり方(苦い〜甘いの1本のものさし)で行うと、元の結果は再現されました。ところが、「音なし」の条件を比べる基準として分析に入れると、その差は消えてしまいました。

さらに2つ目の実験で、甘味・苦味・酸味・塩味をそれぞれ別のものさしで評価してもらうと、音によって特定の味が強まる効果は見られませんでした。音があると味が「全体的に強く」感じられることはあったものの、「甘い音で甘さだけが増える」というわけではなかったのです。

研究者たちは、最初の効果は味そのものの変化というより、評価のしかた(ものさし)がつくり出した見かけの結果だった可能性がある、と結論づけています。

03それでも「音と味」の研究は続く

これで「音楽は味に関係ない」と決まったわけではありません。音と味のイメージの対応は確かにありますし、BGMが食事の楽しさや雰囲気を変えることは多くの研究者が認めています。スペンスさんは2015年の総説で、厨房で流れる音楽が料理人の味付けそのものに影響するかもしれない、という話題まで取り上げています。

大事なのは、「音楽で砂糖の代わりになる」と言えるほどの証拠は、今のところない、ということです。

04まとめ

「高い音で甘く、低い音で苦く」というソニック・シーズニングは、最初の実験は再現されたものの、評価方法を変えると効果が消えたという、なんとも"ビターでスイート"な結末でした。

科学では、ひとつの実験だけで結論を出さず、やり方を変えて何度も確かめることが大切。音楽はまず、食事を楽しくするスパイスとして楽しみましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English Corner"Sonic seasoning" is the idea that music can change the taste of food. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

"Sonic seasoning" is the idea that music can change the taste of food. In a 2012 study at Oxford University, people ate toffee while listening to two soundtracks, a high-pitched "sweet" one made with instruments like the piano, and a low "bitter" one with brass instruments. They rated the toffee on a single scale from bitter to sweet, and their ratings moved in the direction of the music.

However, in 2018, two researchers in Germany repeated the study. When they added a silent condition, the difference disappeared. When people rated sweetness and bitterness on separate scales, the music did not increase any specific taste. The original effect may have come from the rating method.

114 words ・ CEFR B1

和訳を見る

「ソニック・シーズニング」とは、音楽で食べ物の味が変わるという考えです。オックスフォード大学の2012年の研究で、人々は2種類の音源を聞きながらトフィーを食べました。ピアノなどの楽器で作った高い音の「甘い」音源と、金管楽器を使った低い「苦い」音源です。

彼らはトフィーを「苦い〜甘い」の1本のものさしで評価し、その評価は音楽の方向へ動きました。しかし2018年、ドイツの2人の研究者がこの研究をくり返しました。音のない条件を加えると、その差は消えました。甘さと苦さを別々のものさしで評価してもらうと、音楽は特定の味を強めませんでした。最初の効果は、評価の方法から生まれたのかもしれません。

4択リーディングクイズ

Q1. How did participants rate the toffee in the 2012 study?

Q2. What happened when the 2018 researchers added a silent condition?

Q3. What does the writer suggest in the last sentence?

重要単語

  • soundtrackB1
    名詞(背景の)音楽・音源The soundtrack played softly during the meal. 映画の「サントラ」と同じ語。実験では「流した音源」の意味で使われる。
  • pitchB2
    名詞音の高さHigh pitch sounds are often linked to sweetness. 野球の「投球」、営業の「売り込み」も pitch。多義語として頻出。
  • replicateC1
    動詞(実験を)再現する、追試するScientists tried to replicate the result. 名詞 replication。replication crisis(再現性の危機)は心理学の重要テーマ。
  • correspondenceC1
    名詞対応関係There is a correspondence between sounds and tastes. 「文通・通信」の意味もある。correspond to ~「~に対応する」。
  • artifactC1
    名詞(測定方法による)見かけの結果The effect may be an artifact of the rating scale. 本来は「人工物・遺物」。研究では「方法のせいで生じたニセの結果」という意味になる。
  • baselineC1
    名詞基準(となる条件)The no-sound condition was used as a baseline. 比較の出発点となる値や条件。実験の説明でよく使う。

動画でもっと知る

高くてキラキラした曲を聴くとお菓子が甘く、低い金管の曲だと苦く感じる「音で味付け」研究が話題に。でもドイツの追試では、評価のものさしを変えたら効果が消えたらしい。音と味の関係、まだ決着していない。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Crisinel et al. (2012) A bittersweet symphony: Systematically modulating the taste of food by changing the sonic properties of the soundtrack playing in the background, Food Quality and Preferencedoi.org
  2. Höchenberger & Ohla (2018) A bittersweet symphony: Evidence for taste-sound correspondences without effects on taste quality-specific perception, Journal of Neuroscience Researchdoi.org
  3. Spence (2015) Music from the kitchen, Flavourdoi.org