Tsukimi (Moon Viewing)

お月見(十五夜)の由来と歴史(詳しく)

いつから?なぜ?名前の意味は? お月見(十五夜)の本当の話を、確かな資料でたどります。

1お月見の由来:中国の「中秋」と、平安貴族の月の宴

昔の暦では、7月・8月・9月が秋でした。そのまん中の月の、まん中の日が8月15日。だから、この夜の月を「中秋の名月」と呼びます。秋のど真ん中の月を楽しむ習わしは、中国から伝わりました。

日本で記録に残るいちばん古い十五夜の宴は、859年(貞観元年)です。平安時代の学者・島田忠臣の詩集『田氏家集』に、八月十五夜の宴のことが書かれています。当時の月見は、漢詩や和歌を作り、楽器を奏でる、貴族たちのみやびな遊びでした。池に舟を浮かべ、水面に映る月をめでることもありました。空を見上げるだけでなく、水やさかずきに映る月まで楽しんだのです。

同じころの物語にも、十五夜は登場します。日本最古の物語といわれる『竹取物語』で、かぐや姫が月からの迎えに連れられて天に帰っていくのは、8月15日の夜です。十五夜の満ちた月は、当時の人にとって美しいだけでなく、どこか別の世界を感じさせるものだったのでしょう。

このころの月見は、庶民にはまだ縁遠いものでした。日本の農村には、もともと秋の満月のころに実りを祝う行事があったと考えられています。そこに中国から来た貴族の月見が重なって、今の「お月見」が形づくられていきました。

お月見(十五夜)(Tsukimi (Moon Viewing))のイラスト

2お月見の歴史:団子とすすきは江戸時代から

今のお月見に欠かせない月見団子。でも、団子を供える習慣が広まったのは江戸時代です。中国の風習にならったものと考えられています。

しかも、団子の形は東と西で違いました。江戸時代の終わりごろの風俗を記録した『守貞漫稿(もりさだまんこう)』によると、江戸では丸い団子、京都・大阪では里芋の形をした団子を供えたそうです。今でも関西には、細長い団子にあんこを巻いた月見団子があります。

なぜ里芋なのでしょう。十五夜はちょうど里芋がとれる時期で、とれたての芋を月に供えて収穫を祝いました。そのため十五夜は「芋名月」とも呼ばれます。特に西日本や京阪では、里芋を供えることが多いとされています。

すすきを飾るのも、全国共通ではありませんでした。江戸時代には、武蔵野や江戸から東北にかけての習わしでしたが、明治以降に全国へ広まったとされています。

日本には、もう一つの月見があります。旧暦9月13日の「十三夜」です。文献にはじめて出てくるのは1135年の藤原宗忠の日記『中右記』で、宇多法皇が始めたという説もあります。十三夜は「後の月」「栗名月(くりめいげつ)」「豆名月」とも呼ばれ、十五夜だけ見て十三夜を見ないことを「片見月」といって、縁起が悪いとする言い伝えもありました。

🕰️ お月見(十五夜)の年表

  1. 859年(貞観元年)島田忠臣『田氏家集』に八月十五夜の宴の記録。日本の文献で最も古いとされる。
  2. 平安時代前期『竹取物語』で、かぐや姫が8月15日の夜に月へ帰る。
  3. 1135年藤原宗忠の日記『中右記』に、九月十三夜の月見の記録。
  4. 平安時代後期『今昔物語集』に、月のうさぎの話がのる。
  5. 江戸時代月見団子を供える習慣が庶民に広まる。江戸は丸、京阪は里芋形。
  6. 明治時代以降すすきを飾る習慣が全国に広がる。
  7. 1991年ハンバーガーチェーンが「月見バーガー」を発売。
  8. 2007年日本の月探査機「かぐや」が打ち上げられる。
  9. 2008年中国で中秋節が祝日になる。
  10. 2021〜2023年3年続けて、十五夜と満月が同じ日になる。

3十五夜はいつ?2026年は9月25日、でも満月は2日後

十五夜は旧暦8月15日の夜なので、新暦の日付は毎年変わります。国立天文台によると、2025年は10月6日、2026年は9月25日、2027年は9月15日です。2028年は10月3日と計算されます。だいたい9月中旬から10月上旬のどこかです。

ここで問題です。「十五夜の月は必ず満月?」答えはノーです。2025年の十五夜は10月6日でしたが、満月は翌7日。2026年は9月25日の十五夜に対して、満月は27日でした。

ずれる理由は、旧暦のしくみにあります。旧暦では、新月の日を1日とします。新月から満月までは平均で約14.8日。しかも月は地球のまわりをだ円をえがいて回っているので、速く進むときとゆっくり進むときがあり、新月から満月までの日数は毎回少しずつ違います。そのため、満月が「15日」ではなく「16日」や「17日」になることがよくあるのです。

十五夜と満月が同じ日になった年は、2021年・2022年・2023年と3年続きました。でも、その後はずれる年が続き、次に重なるのは2030年と計算されます。

ちなみに、十五夜は国の祝日ではありません。学校も会社もふだんどおりです。夜になったら窓を開けて、空を見上げるだけ。それが、日本でいちばん手軽な年中行事かもしれません。

4お月見の過ごし方:団子、すすき、そして「お月見どろぼう」

十五夜の夜、月が見える窓辺や縁側に台を置き、お供えをします。定番は月見団子とすすき。団子は十五夜にちなんで15個を山のように積む家が多いといわれます。そのほか、里芋、枝豆、栗、季節の果物などを並べます。

すすきには、魔よけの意味があるとも、まだ実っていない稲穂の代わりだともいわれます。秋の実りを月に感謝し、来年の豊作を祈る気持ちがこめられているのです。

おもしろいのは、各地にあった「お月見どろぼう」です。十五夜の夜だけは、子どもたちが近所の家のお供えの団子や芋をこっそり持っていってもよい、とされていました。とられた家は「お月さまが食べてくれた」と喜んだともいわれます。ただ、盗みはよくないとして、やめてしまった地域が多いとされています。今では、玄関に置いたお菓子を子どもたちが「お月見どろぼうでーす」ともらいに回る、ハロウィンのような形で残っている地域もあります。

名所での月見もおすすめです。京都・大覚寺の大沢池、奈良の猿沢池、滋賀の石山寺は「日本三大名月観賞地」として知られ、池に映る月を楽しむ観月の催しが開かれてきました。平安貴族と同じように、空と水面の「2つの月」を楽しめます。

🎁 シンボルと小物

🌕中秋の名月harvest moon

旧暦8月15日の月。満月とは1〜2日ずれることも多い。

🎑お月見の飾りmoon-viewing offerings

団子・すすき・里芋などを台にのせて月に供える。

🌾すすきsusuki (Japanese pampas grass)

稲穂の代わり、魔よけなどといわれる。江戸時代は東日本の習わしだった。

🐇月のうさぎmoon rabbit

日本では餅つき、中国では不老不死の薬をつくとされる。

👸かぐや姫Princess Kaguya

『竹取物語』の主人公。8月15日の夜に月へ帰る。

🏮灯籠lantern

ベトナムの中秋では、子どもたちが灯籠を持って町を歩く。

🪞水面の月the moon in the water

平安貴族は池や酒に映る月も楽しんだ。

🍽️ この日の食べ物

🍡月見団子tsukimi dango (moon-viewing dumplings)

江戸時代に広まる。十五夜にちなんで15個積む家が多いといわれる。関西には里芋形のものも。

🥔里芋taro

十五夜は里芋の収穫期。だから十五夜は「芋名月」とも呼ばれる。

🫛枝豆edamame

お月見のお供えの一つ。十三夜は「豆名月」とも。

🌰栗chestnuts

十三夜は「栗名月」。秋の実りを月に供える。

🥮月餅mooncake

中国・台湾の中秋節に食べる丸い焼き菓子。

🍳月見うどん・月見バーガーtsukimi udon / tsukimi burger

卵の黄身を月に見立てた料理。月見バーガーは1991年に登場。

5月のうさぎの意味:なぜ「餅つき」をしているの?

日本では、月の模様は「うさぎの餅つき」に見えるといいます。このうさぎには、インドの仏教説話がもとになった話があります。

平安時代の『今昔物語集』に、うさぎ・きつね・さるが、おなかをすかせた老人を助けようとする話がのっています。さるは木の実を、きつねは魚をとってきましたが、うさぎは何も持ってこられません。そこでうさぎは「私を食べてください」と、自分から火の中に飛びこみました。老人の正体は帝釈天という神さまで、うさぎの姿を月に移して、みんなに見えるようにした――という話です。

中国では、月のうさぎがついているのは餅ではなく、不老不死の薬です。月の宮殿には、薬を飲んで月へのぼった仙女・嫦娥(じょうが)が住むと伝えられます。日本で「餅つき」になったのは、満月を意味する「望月(もちづき)」と「餅つき」の音が似ているから、という説がよく知られています。

国が変われば、月の模様の見え方も変わります。英語には "the man in the moon"(月の男)という言い方があり、月の模様を人の顔に見立てます。

月の伝説は宇宙開発にもつながっています。中国の月探査計画の名前は「嫦娥」、2013年に月に降りた探査車は「玉兎(ぎょくと)」、つまり月のうさぎです。日本が2007年に打ち上げた月の探査機の愛称は「かぐや」でした。また、月見うどんや月見バーガーのように、丸い卵の黄身を月に見立てる「月見」料理も、日本の秋の定番です。

6海外のお月見:中秋節・チュソク・ベトナムの子どもの祭り

同じ旧暦8月15日を祝う国は、アジアにたくさんあります。2026年は9月25日が、日本の十五夜であり、中国の中秋節であり、韓国のチュソクの当日でもありました。

中国では中秋節が、春節・清明節・端午節と並ぶ大切な行事で、2008年から祝日になりました。家族が集まって月餅(げっぺい)を食べ、丸い月と丸い月餅に「家族円満」の願いをかさねます。

台湾も中秋節は祝日です。月餅や、文旦(ぶんたん)という大きなかんきつを食べます。1980年代の半ばごろからは、なぜか「屋外でバーベキュー」をするのが定番になりました。中秋節の夜、町のあちこちから焼き肉のけむりが上がるのです。

韓国のチュソク(秋夕)は3日間の休みで、家族が故郷に集まり、ご先祖さまに儀式をしてお墓の草を刈ります。食べるのは、半月の形をしたもちのソンピョン。松の葉といっしょに蒸します。満月の夜には、女性たちが韓服を着て輪になって踊る「カンガンスルレ」という踊りもあります。

ベトナムの中秋は「テト・チュン・トゥ」と呼ばれ、子どものための祭りです。子どもたちは星の形などの灯籠を持って夜の町を歩き、獅子舞が通りをにぎわせます。

日本の沖縄・宮古島では、旧暦8月15日ごろに豊年祭が行われます。同じ月を見上げながら、それぞれの国や地域が、収穫と家族への思いを自分たちのやり方で祝っているのです。

7よくある誤解とホント:十五夜は満月?9月15日?

誤解1:十五夜の月はいつも満月。
旧暦の15日と満月の日は、1〜2日ずれることがよくあります。2025〜2028年は、どの年も満月が十五夜の1〜2日あとに来ます。

誤解2:十五夜は9月15日。
「十五」は旧暦の15日のことです。新暦では9月中旬から10月上旬のあいだで毎年変わります。2028年は10月3日です。

誤解3:お月見は国の祝日。
祝日ではありません。秋分の日とは別の行事で、法律で休みになったこともありません。

誤解4:すすきは昔から全国で飾っていた。
江戸時代には、すすきを飾るのは江戸から東北にかけての習わしだったとされます。全国に広がったのは明治以降です。

誤解5:月のうさぎはどの国でも餅つき。
中国では薬をつくうさぎです。餅つきになっているのは、日本ならではの見方です。

誤解6:十三夜も中国から来た。
十五夜は中国から伝わりましたが、旧暦9月13日の十三夜は日本で生まれた月見とされています。1135年の『中右記』に記録があります。

💡Fun Factsお月見(十五夜)の豆知識 10連発

No.1

日本の文献で最も古い十五夜の宴の記録は859年。島田忠臣の詩集『田氏家集』にあります。

The oldest record of a moon-viewing party in Japan is from 859.

No.2

『竹取物語』のかぐや姫が月へ帰るのは、8月15日の夜です。

In an old Japanese story, Princess Kaguya goes back to the moon on the 15th night of the eighth month.

No.3

2026年の十五夜は9月25日。でも満月は2日後の9月27日でした。

In 2026, the harvest moon night was September 25, but the full moon was on September 27.

No.4

十五夜と満月が同じ日になったのは2021〜2023年。次に重なるのは2030年と計算されます。

From 2021 to 2023, the harvest moon night and the full moon were on the same day.

No.5

江戸時代、江戸の月見団子は丸く、京都・大阪では里芋の形でした。

Long ago, dumplings in Edo, now Tokyo, were round, but in Kyoto and Osaka they looked like taro.

No.6

すすきを飾る習慣は、江戸時代には東日本のもの。全国に広まったのは明治以降です。

Putting out pampas grass spread across Japan only in the late 1800s.

No.7

中国の月のうさぎは、餅ではなく不老不死の薬をついています。

In China, the moon rabbit makes medicine, not rice cakes.

No.8

中国の月探査車の名前「玉兎」は、月のうさぎのこと。日本の月探査機は「かぐや」でした。

China's moon rover was named Jade Rabbit, and Japan's moon explorer was called Kaguya.

No.9

台湾では中秋節の夜にバーベキューをするのが定番。1980年代半ばから広まりました。

In Taiwan, people have barbecues on Mid-Autumn night.

No.10

子どもがお供えをこっそり持っていってよい「お月見どろぼう」という風習が、各地にありました。

In some towns, children could take moon offerings from their neighbors on this night.

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