
The Emperor's Birthday
天皇誕生日の由来と歴史(詳しく)
いつから?なぜ?名前の意味は? 天皇誕生日の本当の話を、確かな資料でたどります。
1天皇誕生日の由来:1250年前の「天長節」
天皇の誕生日を国中で祝う。その最初の記録は、奈良時代の775年(宝亀6年)までさかのぼります。
この年、光仁天皇は「10月13日は自分の誕生日である」として、その日を「天長節(てんちょうせつ)」と呼び、お祝いの宴を開くように命じました。名前のもとになったのは、中国の古典『老子』にある「天長地久(てんちょうちきゅう)」という言葉。「天は長く、地は久しい」、つまり天地のように長く続くことを願う言葉です。
実は、天子の誕生日を祝う習慣は中国から来ました。唐の玄宗皇帝が自分の誕生日を祝日にしたのが始まりとされ、のちにその名前が「天長節」に改められました。日本はこれにならったのです。
その後、天長節の習慣はとだえた時期もありましたが、明治元年(1868年)に再びおこされ、1873年には国の祝日になりました。皇后の誕生日は「地久節(ちきゅうせつ)」と呼ばれ、天と地の一対になっていたのもおもしろいところです。
戦後の1948年、「国民の祝日に関する法律」で、天長節は「天皇誕生日」というわかりやすい名前に変わりました。法律の説明は「天皇の誕生日を祝う。」の一文。今の日本国憲法では、天皇は「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」とされています。
つまり天皇誕生日は、1250年前の宮中の宴から、象徴天皇の誕生日を国民の祝日として祝う日へと、形を変えながら続いてきた祝日なのです。

2天皇誕生日の歴史:日付が何度も変わった祝日
天皇誕生日ほど、日付が引っ越しをくり返してきた祝日はありません。天皇が代わるたびに、新しい天皇の誕生日に変わるからです。
明治天皇の天長節は、もとは旧暦の9月22日でした。1873年に太陽暦に切りかわると、新しい暦の11月3日になりました。
大正天皇の誕生日は8月31日。ところが真夏で、式典を開くのが大変でした。そこで1913年から、2か月後の10月31日を「天長節祝日」として式典を行うことにしたのです。8月31日も休日のまま残ったので、大正時代は天皇の誕生日の休日が年に2回ありました。なぜ1か月後でなく2か月後なのかというと、「9月31日」が存在しないから、と説明されています。
昭和天皇は4月29日。1927年から天長節、1948年からは「天皇誕生日」として、1988年まで祝われました。
上皇陛下(平成の天皇)は12月23日。1989年から2018年まで、30年間この日が天皇誕生日でした。
そして2019年4月30日に上皇陛下が退位され、5月1日に今の天皇陛下が即位されました。新しい天皇誕生日は2月23日。でもその年の2月23日はもう過ぎていて、12月23日はもう天皇誕生日ではありません。こうして2019年は、1948年の祝日法以来はじめて、天皇誕生日のない年になりました。2月23日が最初に祝日になったのは2020年です。
なお、この日付の変更は、祝日法を直接改正するのではなく、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」(2017年)の附則で行われました。
🕰️ 天皇誕生日の年表
- 775年(宝亀6年)光仁天皇が自分の誕生日を「天長節」とし、祝いの宴を開くよう命じる。記録に残る最初の天皇誕生日のお祝い。
- 1868年(明治元年)天長節が再びおこされる。明治天皇の誕生日は旧暦9月22日。
- 1873年(明治6年)天長節が国の祝日に。太陽暦で11月3日となる。
- 1913年(大正2年)大正天皇の誕生日8月31日に加え、10月31日を「天長節祝日」とする。
- 1927年(昭和2年)天長節が昭和天皇の誕生日の4月29日に。11月3日は明治節に。
- 1948年(昭和23年)祝日法で「天皇誕生日」(4月29日)に名前が変わる。
- 1960年(昭和35年)2月23日今の天皇陛下(浩宮徳仁親王(ひろのみやなるひとしんのう))が誕生される。
- 1989年(平成元年)天皇誕生日が12月23日に。4月29日は「みどりの日」に。
- 2007年(平成19年)4月29日が「昭和の日」になる。
- 2019年(平成31年・令和元年)4月30日に退位、5月1日に即位。祝日法ができて以来、初めて天皇誕生日のない年に。
- 2020年(令和2年)2月23日初めての2月23日の天皇誕生日。一般参賀は新型コロナウイルスの影響で中止。
- 2023年(令和5年)2月23日令和になって初めて、天皇誕生日の一般参賀が行われる。
3名前の意味:「天長節」と、英語での呼び方
「天長節」の「天長」は、『老子』の「天長地久」から来た言葉で、天皇の長寿と、世の中が長く続くことを願う意味がこめられていました。戦前の四大節(四方節・紀元節・天長節・明治節)の一つで、学校では式典が開かれ、天長節の唱歌が歌われました。
1948年、祝日法ができたときに、名前はだれにでもわかる「天皇誕生日」に変わりました。祝日法にある「天皇の誕生日を祝う。」という説明は、元日の「年のはじめを祝う。」に次いで短い一文です。
英語では The Emperor's Birthday と言います。日本の天皇は、英語では king ではなく emperor と訳されます。天皇陛下は His Majesty the Emperor。ニュースでは "Emperor Naruhito" と名前で呼ばれることもあります。
でも、ここに外国の人が驚くポイントがあります。日本では、普通天皇を名前で呼ばず、「天皇陛下」と呼びます。そして天皇が亡くなられたあとは、「昭和天皇」「明治天皇」のように、その時代の元号で呼ばれるようになります。皇室の方々には名字(姓)もありません。
外国の人に説明するなら、"In Japan, people do not usually call the Emperor by his name. They say Tenno Heika, His Majesty the Emperor." と言うと伝わります。
4天皇誕生日の過ごし方:皇居の一般参賀と記者会見
2月23日の朝、東京・皇居の正門前には、小さな日の丸の旗を持った人たちの長い列ができます。天皇誕生日の一般参賀です。
宮内庁によると、一般参賀では午前中に天皇皇后両陛下が皇族方とともに宮殿のベランダに何度か姿を見せられ、天皇陛下が短いお言葉を述べられます。参賀に来た人たちは、皇居の正門から入り、宮殿の東庭でお祝いをして帰ります。午後はお出ましはなく、坂下門から入って記帳をしたり、名刺を出したりしてお祝いの気持ちを伝えます。
令和になって最初の天皇誕生日の一般参賀(2020年)は、新型コロナウイルスの影響で中止になりました。2021年と2022年も中止となり、ようやく2023年から行われるようになりました。
宮中では、ほかにも行事が続きます。皇族や総理大臣、衆参両院の議長、最高裁判所長官などからお祝いを受ける「祝賀の儀」、各界の代表を招く「宴会の儀」、外国の大使夫妻を招く「茶会の儀」です。宮中三殿では、天皇陛下の誕生日を祝う祭典「天長祭」も行われます。
もう一つ、毎年ニュースになるのが、誕生日を前にした記者会見です。天皇陛下が、この1年の出来事や、ご家族のこと、自然災害で被害にあった人々への思いなどをご自分の言葉で語られます。
とはいえ、多くの人にとって2月23日は、冬の終わりのうれしい休日。2020年からは、2月に建国記念の日と天皇誕生日という2つの祝日がある形になりました。
🎁 シンボルと小物
東京の中心にある天皇のお住まいと宮殿。誕生日には一般参賀で宮殿の東庭に入れる。
一般参賀で、参賀者がベランダに向かって振る小さな日の丸の旗。
16枚の花びらの菊の紋。皇室の紋章として知られる。
午後の一般参賀では、記帳や名刺でお祝いの気持ちを伝える。
誕生日を前に、天皇陛下がこの1年についてご自分の言葉で語られる。
2月23日は語呂合わせで「富士山の日」でもある。
🍽️ この日の食べ物
お祝いの日の定番。紅白はめでたい色とされる。
お祝いの行事で配られる定番のお菓子。
祝日の名前にちなんで、家でケーキを食べる家庭も。
宮中の「茶会の儀」では、天皇皇后両陛下が外国の大使夫妻をもてなされる。
5昔の天皇誕生日はどうなった?文化の日・昭和の日・12月23日
天皇誕生日が引っ越したあと、もとの日付はどうなったのでしょう。実は、その運命は3つに分かれています。
11月3日(明治天皇の誕生日)は、1927年に「明治節」という祝日になり、戦後の1948年からは「文化の日」です。この日は、1946年に日本国憲法が公布された日でもあります。文化の日に「明治の日」に名前を変えようという運動もあり、意見が分かれています。
4月29日(昭和天皇の誕生日)は、1989年に「みどりの日」という祝日になりました。昭和天皇が植物の研究者で、自然を愛したことにちなんだ名前です。そして2007年からは「昭和の日」になり、みどりの日は5月4日に移りました。
8月31日と10月31日(大正天皇の誕生日と天長節祝日)は、大正天皇が亡くなったあと、祝日にはなりませんでした。
そして12月23日(上皇陛下の誕生日)は、2019年からふつうの平日です。平成のころは、12月23日の天皇誕生日とクリスマス・イブがつながる「年末の連休」を楽しみにしていた人も多かったので、少しさびしく感じた人もいたかもしれません。
こうして見ると、今の祝日のうち2つ(文化の日・昭和の日)は、もとをたどると昔の天皇の誕生日です。カレンダーには、歴代の天皇の誕生日が形を変えて残っているのです。
ちなみに2月23日は、山梨県と静岡県が「ふじ(2)さん(23)」の語呂合わせで定めた「富士山の日」でもあります。山登りが趣味として知られる天皇陛下の誕生日と、富士山の日が重なっているのは、ちょっとした偶然です。
6海外に似た日はある?世界の「王さまの誕生日」と2月23日
イギリスの王さまは、誕生日を年に2回祝います。本当の誕生日と、「公式の誕生日」です。
今のチャールズ3世の本当の誕生日は11月14日。でも国のお祝いは6月に行われ、ロンドンでは軍隊の大パレード「トゥルーピング・ザ・カラー」が開かれます。公式の誕生日を祝う習慣は1748年のジョージ2世のときから続いていて、屋外の式典にはお天気のよい初夏がぴったりだから、と説明されます。真夏をさけて10月31日に式典をした大正時代の日本と、考え方がよく似ています。オーストラリアの多くの州でも、6月の第2月曜日が「国王誕生日」の祝日です。
オランダの4月27日は「国王の日」。ウィレム=アレクサンダー国王の誕生日で、国中がオレンジ色の服を着た人であふれ、街じゅうがフリーマーケットになります。タイでは7月28日のワチラロンコン国王の誕生日が祝日です。ブータンでは、2月21日の国王の誕生日をはさんで2月21〜23日が祝日になります。
さらに2月23日は、ほかの国にとっても特別な日です。ブルネイでは建国記念日(ナショナル・デー)。1984年1月1日にイギリスから独立したブルネイは、2月23日を記念日として祝っています。南米のガイアナでは「共和国の日」の祭りマシュラマニ、ロシアでは「祖国防衛者の日」です。
王さまの誕生日を、国中のお祭りにする国。式典の日を別に決める国。2月23日の地球は、あちこちでお祝いムードです。
7よくある誤解とホントのところ
誤解1:天皇誕生日はずっと同じ日。
ホントは、天皇が代わるたびに日付が変わります。明治は11月3日、大正は8月31日(式典は10月31日)、昭和は4月29日、平成は12月23日、令和は2月23日です。
誤解2:天皇誕生日は毎年必ずある。
ホントは、2019年には天皇誕生日がありませんでした。2月23日が新しい天皇誕生日になる前に過ぎていて、12月23日はもう天皇誕生日ではなかったからです。
誤解3:12月23日は今も祝日。
ホントは、2019年から平日です。平成の天皇誕生日だった日です。
誤解4:天皇誕生日は戦後にできた祝日。
ホントは、775年の「天長節」までさかのぼり、明治以降は国の祝日でした。名前が「天皇誕生日」になったのが1948年です。
誤解5:天皇誕生日の一般参賀では、一日中天皇陛下に会える。
ホントは、天皇皇后両陛下が宮殿のベランダに姿を見せられるのは午前中だけです。午後は記帳などの受付になります。
誤解6:日付の変更は祝日法を改正して決めた。
ホントは、2017年にできた「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」の附則で祝日法が改められ、天皇の退位にあわせて2月23日になりました。
💡Fun Facts天皇誕生日の豆知識 10連発
2019年は、1948年に祝日法ができてから初めて「天皇誕生日」のない年でした。
In 2019, Japan had no Emperor's Birthday holiday at all, for the first time since 1948.
大正時代、天皇の誕生日の8月31日は真夏で式典が大変なため、10月31日を「天長節祝日」にしました。1か月後でなく2か月後なのは、9月31日がないからと説明されています。
In the Taisho era, the birthday was in hot August, so the big ceremony moved to October 31.
記録に残る最初の天長節は775年。光仁天皇が10月13日の誕生日を祝うよう命じました。
The first record of an emperor's birthday holiday in Japan is from the year 775.
「天長節」は『老子』の「天長地久」から。皇后の誕生日は「地久節」と呼ばれました。
The old name, Tenchosetsu, comes from a Chinese saying about heaven and earth lasting long.
文化の日(11月3日)は明治天皇の、昭和の日(4月29日)は昭和天皇の誕生日です。
Culture Day and Showa Day were once the birthdays of past emperors.
日本では天皇を名前で呼ばず、亡くなったあとは「昭和天皇」のように元号で呼びます。皇室には名字もありません。
In Japan, people do not call the Emperor by his name. The Imperial family has no family name.
天皇陛下は若いころイギリスのオックスフォード大学に留学し、18世紀のテムズ川の水運を研究されました。その思い出は『テムズとともに』という本になっています。
When he was young, the Emperor studied at Oxford. He researched boats on the River Thames.
令和で最初の天皇誕生日の一般参賀は、新型コロナウイルスの影響で2020年から3年続けて中止。初めて行われたのは2023年でした。
Because of COVID-19, the first public birthday visit for the new Emperor happened in 2023.
イギリスの国王は誕生日が2つ。本当の誕生日と、お天気のよい6月の「公式の誕生日」です。
The British king has two birthdays, his real one and an official one in June.
2月23日は、山梨県と静岡県が語呂合わせで定めた「富士山の日」でもあります。
February 23 is also Mount Fuji Day in Yamanashi and Shizuoka, because 2 and 23 sound like 'Fujisan.'
▶️Videos & Links天皇誕生日の動画とリンク集
The rise and fall of the Mongol Empire - Anne F. BroadbridgeTED-Ed
Ten Minute History - The Meiji Restoration and the Empire of Japan (Short Documentary)History Matters
The Entire History of JapanThis Is History

