Ramadan & Eid al-Fitr

ラマダンとイードの由来と歴史(詳しく)

いつから?なぜ?名前の意味は? ラマダンとイードの本当の話を、確かな資料でたどります。

1ラマダンの由来:洞窟で始まった「最初の言葉」

アラビア半島の町メッカの近くに、ヒラーという山の洞窟があります。イスラム教では、預言者ムハンマドがここで神の言葉を初めて受け取ったと信じられています。それがラマダンの月の、ある夜だったとされます。西暦610年ごろのことと考えられています。

この夜は「ライラト・アル=カドル(力の夜、定めの夜)」と呼ばれます。イスラム教の聖典コーランには、この夜は「千の月よりもすぐれている」と書かれています。ラマダンの最後の10日間の、奇数の夜のどれかだとされ、特に27日目の夜を大切にする人が多くいます。この10日間、モスクにこもって祈りに集中する人もいます。

つまりラマダンは、ムスリムにとって「コーランが初めて下された、特別な月」です。だからこの月に断食をして、ふだんより多く祈り、コーランを読むのです。

断食が信者の務めとされたのは、ムハンマドがメッカからメディナへ移ってから2年目(ヒジュラ暦2年)、西暦624年ごろです。ラマダンの断食は、イスラム教の大切な5つの柱(五行)のひとつになりました。五行とは、信仰の告白、1日5回の礼拝、喜捨(貧しい人への施し)、ラマダンの断食、そしてメッカへの巡礼です。

この記事では、ラマダンとイードを、イスラム教を信じる人々の大切な信仰として、できるだけ正確に紹介します。信仰の内容は人や地域によって幅があるので、詳しいことは身近なムスリムの人やモスクに聞いてみるのがいちばんです。

ラマダンとイード(Ramadan & Eid al-Fitr)のイラスト

2ラマダンはいつ?毎年11日ずつ早くなる「月の暦」

ラマダンの日付は、毎年変わります。理由は、イスラム暦が月の満ち欠けだけで数える「純粋な太陰暦」だからです。

月の満ち欠けの12回分は約354日。太陽の暦(365日)より約11日短くなります。そのためラマダンは毎年約11日ずつ早まります。2025年は3月1日に始まり、2026年は2月18日、2027年は2月8日、2028年は1月28日ごろに始まります。

日付が少しずつずれていくので、ラマダンは30年あまりかけて、冬・秋・夏・春とすべての季節をめぐります。計算すると、2030年には1月と12月の2回、ラマダンが始まることになります。1年に2回ラマダンが来る、めずらしい年です。

さらに面白いのが、月の始まりの決め方です。イスラム暦の月は、日没後の西の空に、細い三日月(ヒラール)が見えたときに始まります。見えなければ、その月は30日で終わり、次の日から新しい月になります。だから1か月は29日か30日です。

三日月が見えるかどうかは、場所や天気で変わります。肉眼で月を探す国もあれば、天文学の計算を使う国もあります。そのため、ラマダンの始まりやイードの日が、国や地域によって1日ずれることがよくあります。サウジアラビアで今日がイードでも、ほかの国では明日、ということも起きるのです。

このページの日付は、サウジアラビアのウンム・アル=クラー暦にもとづく代表的なものです。イード・アル=フィトルは、2025年が3月30日、2026年が3月20日、2027年は3月9日ごろ、2028年は2月26日ごろの予定です。実際の日付は、直前の月の観測で決まります。

🕰️ ラマダンとイードの年表

  1. 610年ごろラマダンの夜、ヒラーの洞窟でムハンマドに最初の啓示が下ったとされる。
  2. 622年ムハンマドがメッカからメディナへ移る(ヒジュラ)。のちにこの年がイスラム暦の元年に。
  3. 624年(ヒジュラ暦2年)ラマダンの断食が信者の務めとされる。
  4. 1891年野田正太郎がイスタンブールでイスラム教に入る。記録に残る最初の日本人ムスリムとされる。
  5. 1935年日本で最初のモスク、神戸モスクが完成。
  6. 1938年東京ジャーミイのもととなるモスクが東京に完成。
  7. 2007年マレーシアの宇宙飛行士が、ラマダンの終わりに国際宇宙ステーションへ。国の宗教評議会が宇宙での断食や礼拝の手引きを作り、宇宙でイードを祝った。
  8. 2014年夏のラマダン。アイスランドやノルウェーでは断食が22時間近くに。
  9. 2024年インドネシアのイード前の帰省「ムディック」が約1億9,300万人で過去最多。
  10. 2025年ラマダンは3月1日〜29日ごろ、イードは3月30日(サウジアラビア)。日本のムスリムは約42万人と推計。
  11. 2026年ラマダンは2月18日〜3月19日ごろ、イードは3月20日ごろ。
  12. 2030年(計算上)ラマダンが1月と12月の2回始まる年になる。

3「ラマダン」「イード」の意味:焼けつく暑さと、断食を破る祭り

「ラマダン」はアラビア語です。もとになった言葉は「焼けつくように暑い」という意味の語根だと言われます。それなのに、今では真冬にラマダンが来る年もあるのが面白いところです。

日本語では「ラマダン」のほか、アラビア語の発音に近い「ラマダーン」とも書きます。トルコやイラン、パキスタンなどでは「ラマザン(Ramazan)」と発音します。

「イード」はアラビア語で「祭り、祝日」。「アル=フィトル」は「断食を破ること」です。つまりイード・アル=フィトルは「断食明けの祭り」。ラマダンが終わった次の月、シャウワール月の1日に祝います。

国ごとの呼び名も楽しいです。トルコでは「シェケル・バイラム(砂糖の祭り)」と呼びます。お菓子をたくさん食べるからです。英語でも Sweet Eid(甘いイード)と呼ばれることがあります。インドネシアでは「ルバラン」、マレーシアでは「ハリラヤ・アイディルフィトリ」、西アフリカのセネガルでは「コリテ」です。

実はイスラム教には、もう一つ大きなイードがあります。メッカ巡礼の時期に祝う「イード・アル=アドハー(犠牲祭)」です。こちらと区別するため、パキスタンなどではイード・アル=フィトルを「小さいイード」とも呼びます。

4ラマダンの1日:夜明け前のスフールから、日没のイフタールまで

午前3時。エジプトの町の暗い路地に、太鼓の音が響きます。「メサハラティ」と呼ばれる人が、太鼓をたたきながら家々を回り、人々を起こしているのです。夜明け前の食事「スフール」の時間です。

スフールで水分と栄養をとったら、夜明けから日没まで、食べ物も飲み物も口にしません。水も飲みません。この間、仕事も学校もふつうに続きます。多くのムスリムの断食は1日11〜16時間ほどですが、場所と季節によって大きく変わります。2014年の夏、アイスランドのレイキャビクやノルウェーでは断食が22時間近く、オーストラリアのシドニーでは約11時間でした。

そして日没。モスクから礼拝の呼びかけが聞こえると、断食を破る食事「イフタール」です。最初に口にするのは、たいていナツメヤシの実と水。預言者ムハンマドがナツメヤシで断食を破ったという言い伝えにならっています。そのあと家族や友だち、近所の人とテーブルを囲みます。モスクや町が、誰でも食べられるイフタールをふるまうこともあります。

エジプトのカイロでは、ラマダンになると「ファヌース」というカラフルなランタンが通りにつるされます。夜には特別な礼拝「タラウィーフ」があり、モスクは人でいっぱいになります。

断食しなくてよい人もいます。子ども、病気の人、旅行中の人、高齢の人、妊娠中や授乳中の人などです。体調のために休んだ日は、あとで別の日に断食をするなどして補います。ラマダンは、体に無理をさせるための月ではありません。

この月は、ふだんより多く寄付をする月でもあります。空腹を体で知ることで、食べ物に困っている人の気持ちがわかる、とも言われます。

🎁 シンボルと小物

🌙三日月(ヒラール)crescent moon (hilal)

日没後の西の空に見える細い月。これが見えるとラマダンが始まり、ラマダン明けの三日月でイードが決まる。

🏮ファヌース(ランタン)fanous

エジプトのラマダンのシンボル。金属とガラスでできたカラフルなランタンを、通りや家につるす。

🥁メサハラティの太鼓mesaharati's drum

夜明け前、太鼓をたたいて家々を回り、スフールの時間を知らせる人の太鼓。中東の町のラマダンの音。

🕌モスクmosque

イスラム教の礼拝所。ラマダンの夜は特別な礼拝タラウィーフで人があふれる。

📖コーラン(クルアーン)Quran

イスラム教の聖典。ラマダンに最初の言葉が下ったとされ、この月に全体を読み通す人も多い。

💰イーディーEidi

イードに子どもがもらうお金やプレゼント。日本のお年玉に近い。

🍽️ この日の食べ物

🌴ナツメヤシの実(デーツ)dates

イフタールの最初のひと口の定番。預言者ムハンマドがナツメヤシで断食を破ったという言い伝えから。甘くて栄養がある。

🍚クトゥパットketupat

インドネシアやマレーシアのイード料理。ヤシの若葉で編んだ小さな袋にお米を入れて炊く。

🍪カハク/マアムールkahk and ma'amoul

エジプトやレバノンなどでイードに食べるクッキー。ナツメヤシやナッツが入ったものも多い。

🥛シール・クルマsheer khurma

パキスタンのイードの甘いデザート。牛乳に細い麺とナツメヤシを入れて煮る。

🍯バクラヴァbaklava

トルコの「砂糖の祭り」に欠かせない、薄い生地を重ねてシロップをかけたお菓子。

5イードの過ごし方:朝の礼拝、新しい服、子どもへのお年玉

ラマダン最後の夕方、人々は西の空を見上げます。細い三日月が見えたら、明日はイードです。

イードの朝は、まず「ザカート・アル=フィトル」という施しから。礼拝の前に、貧しい人に食べ物やお金を届けるのが決まりです。誰もがお祝いできるように、という考え方です。それから新しい服や一番いい服を着て、広場や大きなホールに集まり、みんなで特別な礼拝をします。あいさつは「イード・ムバラク(祝福されたイードを)」。

そのあとは、親せきや友だちの家を回ります。子どもたちは大人から「イーディー」と呼ばれるお金やプレゼントをもらいます。日本のお年玉にそっくりです。

イードの規模がとびぬけて大きいのが、世界でいちばんムスリムの多い国、インドネシアです。イードの前に、都会で働く人々がいっせいにふるさとへ帰る「ムディック(帰省)」が起こります。2024年には、警察の発表で約1億9,300万人が移動しました。日本の人口の1.5倍以上です。ふるさとでは、ヤシの葉で編んだ入れものでお米を炊いた「クトゥパット」を食べ、両親や年長者に「1年間のあやまちを許してください」とあいさつします。

マレーシアでは、家を開放して誰でも招く「オープンハウス」が名物です。ムスリムでない近所の人や友だちも、気軽に遊びに来ます。トルコではバクラヴァなどの甘いお菓子、エジプトではクッキーの「カハク」、パキスタンでは牛乳と細い麺の甘いデザート「シール・クルマ」が定番です。

イードのお祝いは、国によって1日から3日ほど。ナイジェリアでは3日間続くこともあります。

6日本のラマダン:42万人のムスリムと、113のモスク

日本にも、ラマダンに断食をする人たちがいます。早稲田大学の店田廣文(みせだひろふみ)さん(人口学)の推計では、日本に暮らすムスリムは2025年に約42万人。日本の人口の約0.3%です。2019年末の推計(約23万人)から、わずか数年で大きく増えました。インドネシアやパキスタン、バングラデシュなどから来た人に加え、日本人のムスリムもいます。

モスク(礼拝所)も増えています。2001年には24か所ほどでしたが、2021年には113か所になりました。日本で最初のモスクは、1935年にできた神戸モスクです。第二次世界大戦の空襲にも、1995年の阪神・淡路大震災にも耐えて、今も建っています。東京・代々木上原の東京ジャーミイは1938年に完成したモスクが始まりで、今は見学ツアーも開かれています。

日本人とイスラム教の出会いは、明治時代にさかのぼります。記録に残る最初の日本人ムスリムは、1891年にイスタンブールでイスラム教に入ったジャーナリストの野田正太郎だとされます。1909年には山岡光太郎がイスラム教に入り、日本人として初めてメッカ巡礼を果たしました。

学校や職場にラマダン中の友だちがいたら、どうすればいいでしょう。断食中も、ふだんどおり接してかまいません。目の前で食べてもいいかどうか、体育や部活をどうするかは人によって考えがちがうので、本人に聞いてみるのがいちばんです。日没後のイフタールに誘われたら、それは大きな歓迎のしるしです。

ラマダンの時期は毎年早まるので、日本の真夏に重なる年もあれば、短い冬の日に重なる年もあります。夏は日が長く暑いので、断食はとくに大変になります。

7ラマダンのよくある誤解とホント

誤解1:ラマダンの1か月間、ずっと何も食べない。
断食するのは、夜明けから日没までの昼間だけです。夜明け前のスフールと、日没後のイフタールではしっかり食事をします。むしろ夜は家族や友人と食卓を囲む、にぎやかな時間です。

誤解2:水なら飲んでもいい。
昼間は水も飲みません。だから暑い季節のラマダンは、特にたいへんです。

誤解3:ムスリムなら誰でも必ず断食する。
子ども、病気の人、旅行中の人、妊娠中の人、高齢の人などは断食しなくてよいとされています。健康を損なってまで断食することは求められていません。

誤解4:ラマダンはイスラム教のお正月、またはお祭り。
ラマダンはイスラム暦の9月で、お正月(1月1日)ではありません。またラマダン自体は祈りと断食の月で、お祭りは月が明けた翌日の「イード」です。

誤解5:イードは1つだけ。
イスラム教には大きなイードが2つあります。断食明けのイード・アル=フィトルと、巡礼の時期の「犠牲祭」イード・アル=アドハーです。

誤解6:ラマダンは毎年同じ季節にある。
月の暦なので、毎年約11日ずつ早まります。2026年は2月〜3月でしたが、2030年には1年に2回始まります。

誤解7:世界中で同じ日に始まる。
三日月の観測や計算方法のちがいで、国や地域によって1日ずれることがよくあります。

💡Fun Factsラマダンとイードの豆知識 10連発

No.1

イスラム暦は1年が約354日なので、計算すると2030年にはラマダンが1月と12月の2回始まる。

Ramadan will start two times in 2030, in January and in December.

No.2

2014年の夏のラマダン、アイスランドのレイキャビクでは断食が22時間近く。同じ日、オーストラリアのシドニーでは約11時間だった。

In 2014, people in Iceland fasted for almost 22 hours a day. In Sydney, it was about 11 hours.

No.3

宇宙ステーションでは1日に16回も日の出と日の入りがある。2007年、ラマダン中に宇宙へ行くマレーシアの宇宙飛行士のために、マレーシアの宗教評議会は宇宙での断食や礼拝の手引きを作った。彼は宇宙ステーションでイードを祝い、仲間にサテ(串焼き)とクッキーを配った。

In space, the sun rises 16 times a day. In 2007, a Malaysian astronaut had a special guidebook for fasting and prayer in space.

No.4

2024年、インドネシアのイード前の帰省「ムディック」では、約1億9,300万人が移動した。日本の人口の1.5倍以上。

In 2024, about 193 million people traveled home for Eid in Indonesia.

No.5

「ラマダン」という名前は、アラビア語の「焼けつくように暑い」という意味の言葉から来たと言われる。

The word Ramadan may come from an Arabic word for very hot weather.

No.6

イフタールの最初のひと口はナツメヤシ。預言者ムハンマドがナツメヤシ3粒で断食を破ったという言い伝えにならう家庭が多い。

Many people break the fast with three dates, just like the Prophet Muhammad did.

No.7

日本最初のモスク、神戸モスク(1935年)は、戦争中の空襲にも、1995年の大地震にも耐えて残った。

Kobe Mosque was built in 1935. It survived bombs in the war and a big earthquake in 1995.

No.8

トルコではイードを「シェケル・バイラム(砂糖の祭り)」と呼ぶ。英語でも Sweet Eid、Sugar Feast というニックネームがある。

In Turkey, Eid al-Fitr is called the Sugar Festival.

No.9

日本のムスリムは2025年に約42万人と推計され、2019年末の約23万人から大きく増えた。モスクは2021年に113か所。

About 420,000 Muslims live in Japan. There are more than 100 mosques.

No.10

コーランは、ラマダンの最後の10日間のある夜「力の夜」を「千の月よりもすぐれている」とたたえている。

The Quran says one special night in Ramadan is better than a thousand months.

▶️Videos & Linksラマダンとイードの動画とリンク集

Ramadan Diaries: The Secret Life Of Migrant Workers | CNA InsiderCNA Insider

What is Ramadan? | Explainer | NewsroundBBC Newsround

Yusuf Islam & Children – Ramadan Moon | I Look I See Animated SeriesMountain of Light

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