
Obon
お盆の由来と歴史(詳しく)
いつから?なぜ?名前の意味は? お盆の本当の話を、確かな資料でたどります。
1お盆の由来:目連の母の話と、「逆さづり」説のゆくえ
お盆の正式な名前は「盂蘭盆会(うらぼんえ)」です。もとになったのは『盂蘭盆経(うらぼんきょう)』というお経に出てくる、ある親子の話でした。
お釈迦さまの弟子・目連(もくれん)は、亡くなった母が「餓鬼」の世界に落ち、やせ細って苦しんでいる姿を見てしまいます。食べ物を差し出しても、口に入れる前に燃えてしまう。困った目連にお釈迦さまは、夏の修行を終えた僧たちに7月15日にごちそうを供えなさい、と教えました。そのとおりにすると、母は救われた――という話です。旧暦7月15日がお盆の中心になったのは、ここから来ています。
ただし、このお経はインドではなく中国で作られた「偽経(ぎきょう)」だと、今では考えられています。
「盂蘭盆(うらぼん)」という言葉の意味も、実ははっきりしません。よく知られているのは、サンスクリット語の「ウッランバナ(逆さづり)」の音を漢字にしたという説です。「逆さにつるされるほどの苦しみから救う」という意味だと説明されてきました。でも、この説では「盆」の字とうまく合わないという指摘があります。ほかに、古代イランの言葉で「霊魂」を表す「ウルヴァン」から来たという説や、2013年に仏教学者の辛嶋静志(からしましずか)さんが発表した「ご飯をのせた盆」という説もあります。
日本で「お盆」と呼ぶのは盂蘭盆を短くしたものです。「盆」はもともと、霊へのお供えをのせる器のことだという説もあります。

2お盆の歴史:飛鳥時代の記録から「お中元」まで
日本の記録に盂蘭盆会がはっきり出てくるのは、『日本書紀(にほんしょき)』の斉明天皇3年(657年)です。飛鳥寺(あすかでら)の西に、世界の中心にそびえる山「須弥山(しゅみせん)」の像を作り、盂蘭盆会を開いたと書かれています。1,300年以上前から、7月の仏教行事が都で行われていたのです。
奈良・平安時代には、お盆は宮中や国の年中行事になりました。8世紀ごろには、夏にご先祖さまをまつる習わしができていたと考えられています。鎌倉時代からは、どこにもまつられていない霊にも食べ物を施す「施餓鬼(せがき)」と一緒に行われるようになりました。
1603年にポルトガルの宣教師たちが作った日本語の辞書『日葡辞書(にっぽじしょ)』にも、「Bon(盆)」の項目があります。旧暦7月14日・15日ごろに死者のために行う祭り、という説明です。江戸時代が始まるころには、外国人が辞書にのせるほど、お盆は日本中に根づいていたことがわかります。
お盆には中国の道教の影響もあります。道教では旧暦7月15日を「中元」と呼び、霊をなぐさめる日としてきました。この日に仏教の盂蘭盆が重なって、行事がとけ合っていきました。夏に「お中元」を贈る習慣も、この「中元」という言葉から来ています。もとはご先祖さまへの供え物を、親類や世話になった人に配ったものだといわれます。
🕰️ お盆の年表
- 6世紀ごろ(中国・梁の時代)中国で盂蘭盆が仏教の儀式として成り立つ。
- 657年『日本書紀』に、飛鳥寺の西で盂蘭盆会を開いた記録。
- 奈良・平安時代宮中や国の年中行事として盂蘭盆会が行われる。
- 鎌倉時代施餓鬼会と一緒に行われるようになる。
- 1603年『日葡辞書』に「Bon(盆)」の項目がのる。
- 1873年(明治6年)太陽暦に切り替わり、お盆は新暦7月15日が原則に。多くの地域は8月の月遅れ盆へ。
- 2014年京都の五山送り火が、5分おきに点火される形になる。
- 2022年11月30日西馬音内の盆踊・郡上踊などを含む「風流踊」41件がユネスコ無形文化遺産に。
3お盆はいつ?7月盆・8月盆・旧盆、日付が3つある理由
「お盆は8月」と思っている人が多いのですが、東京の下町では7月にお盆をする家が今もあります。日付がばらばらなのは、明治政府の暦の大変更が原因です。
1873年(明治6年)、日本は月の満ち欠けにもとづく旧暦をやめて、今の太陽暦(グレゴリオ暦)に切り替えました。お盆も新しい暦の7月15日に行うのが原則になります。ところが新暦の7月中旬は、旧暦のころより1か月ほど季節が早く、多くの農村では田畑の仕事がいちばん忙しい時期でした。
そこで広まったのが、1か月遅らせて8月15日に行う「月遅れ盆」です。季節感は旧暦のころに近くなり、今ではこれが全国でいちばん多い形です。会社の「お盆休み」も、たいていこちらに合わせています。
一方、新暦の7月15日をそのまま守ったのが、東京の下町、横浜の中心部、静岡市の旧市街、石川県の一部などです。新しい暦が早く浸透した都市部に多い形です。
さらに沖縄や奄美では、今も旧暦の7月15日にお盆をします。新暦では毎年日付が動き、2026年の旧暦7月15日は8月27日でした。旧暦13日を「ウンケー(お迎え)」、15日を「ウークイ(お送り)」と呼び、ウークイの夜にはあの世でお金に困らないよう、紙のお金「ウチカビ」を燃やします。
めずらしい例では、東京の多摩地区の一部や岐阜県中津川市の一部のように、8月1日にお盆をする地域もあります。養蚕の仕事が一段落する時期に合わせた名残とされています。
4お盆の過ごし方:迎え火から送り火までの4日間
お盆のあいだ、多くの家では仏壇の前に「精霊棚(しょうりょうだな)」や盆棚を作り、ご先祖さまをもてなします。月遅れ盆の場合、流れはおおよそ次のとおりです。
13日(迎え火):夕方、家の門口や玄関でおがらを燃やし、その煙を目印に霊を迎えます。お墓まで提灯を持って迎えに行く地域もあります。
棚には、きゅうりとなすに割りばしやおがらで4本の足をつけた「精霊馬(しょうりょううま)」を飾ります。きゅうりは足の速い馬で、「早く帰ってきて」という願い。なすは歩みの遅い牛で、「ゆっくり戻ってね」「お供えをたくさん運んでね」という願いがこめられているといわれます。この飾りは東日本でとくに広く見られます。
14日・15日:お墓参りをし、僧侶にお経をあげてもらう家もあります。亡くなって四十九日を過ぎてから初めて迎えるお盆は「初盆」「新盆(にいぼん・あらぼん)」と呼ばれ、特にていねいに供養します。白一色の提灯を飾る地方もあります。
16日(送り火):もう一度火をたいて、霊をあの世へ送り出します。いちばん有名なのが京都の五山送り火です。8月16日の夜、20時に東山の「大文字」に火がともり、そこから5分おきに「妙法」「船形」「左大文字」「鳥居形」が続きます。5分おきになったのは2014年からです。灯籠を川や海に流す「灯籠流し」で霊を送る地域もあります。
🎁 シンボルと小物
足の速い馬。ご先祖さまに早く帰ってきてほしいという願い。
歩みの遅い牛。ゆっくり帰ってほしい、供え物を運んでほしいという願い。
13日に霊を迎え、16日に送る火。京都の五山送り火が有名。
霊が迷わないための明かり。初盆では白い提灯を使う地方もある。
火をともした灯籠を川や海に流して霊を送る。
盆踊りの輪のまん中に立つ台。上で太鼓をたたく。
お盆にはお墓を掃除し、花や線香を供える。
盆踊りや夏祭りで着る、木綿のうすい着物。
🍽️ この日の食べ物
迎え団子・送り団子など、地域によって形や供える日がちがう。
精霊棚に季節の果物を供え、あとで家族でいただく。
肉や魚を使わない料理。お盆のあいだ精進料理を食べる家もある。
暑い時期にさっぱり食べられ、お盆に仏壇へ供えたり、家族で食べたりする地域が多い。
夏の贈り物。道教の「中元」(旧暦7月15日)という言葉から来ている。
5盆踊りの意味:月明かりの下、夜通し踊ったわけ
お盆の夜といえば盆踊りです。やぐらの上で太鼓が鳴り、浴衣姿の人たちが輪になって踊ります。でも、なぜお盆に踊るのでしょう。
一つの説は、地獄の苦しみからのがれた亡者たちが喜んで踊るようすをまねた、というものです。もともとは15日の翌晩、つまり16日の夜に寺や神社の境内で踊るのが本来の形とされています。旧暦の16日は「十六夜(いざよい)」で、満月を過ぎたばかりの明るい月が夜空にあります。電灯のない時代でも、月明かりで夜通し踊ることができたのです。
2022年11月30日、盆踊りの一部がユネスコの無形文化遺産になりました。登録されたのは、華やかな衣装や歌・太鼓で踊る「風流踊(ふりゅうおどり)」で、24都府県の41件です。顔を編み笠や黒い頭巾でかくして踊る秋田県の「西馬音内(にしもない)の盆踊」、7月から9月にかけて30夜以上開かれ、お盆には夜通し踊る岐阜県の「郡上踊」などが入っています。
いっぽうで、全国的に有名な徳島の阿波踊りは、この41件には入っていません。「有名=世界遺産」とは限らないのです。
今では駅前の広場や商店街、学校の校庭など、宗教色のない場所でも盆踊りが開かれます。東京音頭や炭坑節に、アニメソングを流す盆踊りまであり、夏祭りとしての顔も持つようになりました。
6海外にお盆はある?中元節・チュソク・死者の日とくらべてみる
「ご先祖さまが帰ってくる日」は、世界のあちこちにあります。
いちばん近い親せきは、中国や台湾、東南アジアの華人社会の中元節です。旧暦7月は「鬼月」と呼ばれ、霊がこの世に出てくる月とされます。15日には食べ物を供え、紙のお金を燃やし、水に灯籠を流します。日本のお盆とほぼ同じ時期で、2026年は8月27日でした。
ベトナムでは同じ日をヴーラン(Vu Lan)と呼びます。「盂蘭(うらん)」と同じ言葉です。今では「親に感謝する日」にもなっていて、親が元気な人は赤いバラ、亡くした人は白いバラを胸につけるという習わしがあります。
韓国では、旧暦8月15日のチュソク(秋夕)に、家族が故郷に集まり、朝にご先祖さまへの儀式「茶礼(チャレ)」をして、お墓の草刈りをします。民族大移動が起きる点は、日本のお盆休みとそっくりです。
カンボジアのプチュム・バンは15日間も続きます。7代前までのご先祖さまのために、お米のだんごを空中に投げて供える風習があります。
地球の反対側、メキシコの死者の日(11月1日・2日)も考え方がよく似ています。家に祭壇を作り、オレンジ色のマリーゴールドを飾ります。花の明るい色と強い香りが、霊を墓から家へ導くと考えられています。日本の迎え火と同じ「道しるべ」の役目です。死者の日は2008年にユネスコの無形文化遺産になりました。
7よくある誤解とホント:お盆は祝日?大文字焼き?
誤解1:お盆は国の祝日。
お盆は「国民の祝日」ではありません。1873年に新しい暦になったときの休日の決まりからも外され、旧暦・新暦・月遅れのどの形でも法律上の休日になったことはありません。お盆休みは、会社や学校がそれぞれ決めている休みです。
誤解2:関東は7月、関西は8月。
英語の資料でもよく見かける説明ですが、正確ではありません。7月にお盆をするのは東京の下町など一部の地域で、関東でも多くの家は8月です。
誤解3:京都の「大文字焼き」。
京都の人は「焼く」とは言わず、「送り火」と呼びます。ご先祖さまを送るための火を「たく」行事だからです。「大文字焼き」の呼び名は、箱根の「大文字焼」と混同されて広まったと考えられています。
誤解4:どの家でも迎え火や精霊馬をする。
宗派や地域でちがいます。たとえば浄土真宗では、お盆を「先祖の霊を迎えて供養する行事」ではなく、亡くなった人をしのび、仏の教えにふれる行事と考えます。
誤解5:「盂蘭盆」は「逆さづり」という意味で決まり。
有名な説ですが、反対の意見も多く、語源はまだはっきりしていません。
💡Fun Factsお盆の豆知識 10連発
日本の記録に盂蘭盆会が出てくるのは657年。『日本書紀』に、飛鳥寺の西に須弥山の像を作って行ったと書かれています。
Japan's first record of Obon is from 657.
お盆のもとになった『盂蘭盆経』は、インドではなく中国で作られたお経だと考えられています。
The Obon story was probably written in China, not in India.
「盂蘭盆=逆さづり」は有名な説ですが、語源には「霊魂」説や「ご飯をのせた盆」説もあり、まだ決着していません。
No one is sure what the word urabon first meant.
1603年の『日葡辞書』に「Bon」がのっています。ポルトガルの宣教師も知っている行事でした。
A Portuguese Japanese dictionary from 1603 already had the word Bon.
お盆は、旧暦・新暦・月遅れのどの形でも、法律上の休日になったことはありません。
Obon has never been an official national holiday in Japan.
東京の多摩地区や岐阜県中津川市の一部には、8月1日にお盆をする地域があります。養蚕の仕事の都合といわれます。
Some towns hold Obon on August 1. It was a break time for silk farmers.
京都の五山送り火は、20時の「大文字」から5分おきに点火します。この形になったのは2014年からです。
In Kyoto, five mountain fires start one by one, every 5 minutes.
盆踊りの一部(風流踊)は2022年にユネスコ無形文化遺産に。でも阿波踊りはその41件に入っていません。
Some Bon dances became UNESCO heritage in 2022.
夏の贈り物「お中元」は、道教で旧暦7月15日を指す「中元」から来た言葉です。
The summer gift ochugen got its name from a Chinese festival day.
沖縄の旧盆では、あの世でお金に困らないよう、紙のお金「ウチカビ」を燃やします。
In Okinawa, families burn paper money for their ancestors.
▶️Videos & Linksお盆の動画とリンク集
Learn Japanese Holidays - Obon - 日本の祝日を学ぼう - お盆Learn Japanese with JapanesePod101.com
What You Need To Know About Obon - Inside Japan - お盆Inside Japan
Festivals - ObonTheJapanSociety
▶ YouTubeで「Obon festival Japan explained」をもっと見る
国民の祝日について(内閣府)国民の祝日の一覧。お盆が祝日に入っていないことが確認できる。
お盆 - Wikipedia7月盆・8月盆・旧盆の地域や、精霊馬・初盆など各地の習わし。
盂蘭盆 - Wikipedia盂蘭盆経・語源の諸説・日本書紀の記録。
Bon Festival - Wikipedia英語版。海外への説明に使える英語表現が多い。
Ghost Festival - Wikipedia中元節・ヴーランなど、アジア各地の「お盆」の比較に。
五山送り火 - Wikipedia点火の時刻や「大文字焼き」と呼ばない理由。
風流踊 - Wikipedia2022年にユネスコ無形文化遺産になった41件の一覧。