
New Year's Day
元日(世界のお正月)の由来と歴史(詳しく)
いつから?なぜ?名前の意味は? 元日(世界のお正月)の本当の話を、確かな資料でたどります。
1元日の由来:1年の始まりは、もとは「春」だった
9月は英語で September。でも、ラテン語の septem は「7」という意味です。9月なのに、なぜ「7番目の月」なのでしょう。
答えは古代ローマの暦にあります。ローマの古い暦では、1年は3月から始まりました。3月から数えると、9月はちょうど7番目。October(10月)の octo は「8」、December(12月)の decem は「10」です。月の名前の中に、昔の「春スタート」の名残がそのまま残っているのです。
もっと昔、約4000年前のメソポタミア(今のイラク)でも、新年は春でした。バビロンでは、春に「アキトゥ」という12日間の祭りが開かれ、神マルドゥクの像が町を練り歩きました。王の位をあらためて認める儀式もこの祭りで行われたとされます。冬のまん中に新年を祝うのは、歴史の中では新しい考え方なのです。
では、なぜ真冬の1月1日になったのか。よく挙げられるきっかけは戦争です。紀元前154年、ローマが支配していたスペインで反乱が起きます。ローマのトップである執政官(コンスル)は、それまで3月15日に就任する決まりでした。でも、それを待っていては軍の出発が遅れてしまいます。そこで紀元前153年から、執政官は1月1日に仕事を始めることになりました。こうして「国の1年」が1月1日に始まるようになったのです。

2元日の歴史:ヨーロッパの「お正月」は国ごとにバラバラだった
紀元前46年、ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)は、季節とずれてしまった暦を作り直しました。ずれを一気に直すため、この年はなんと445日もありました。そして紀元前45年1月1日から、新しい「ユリウス暦」が始まります。
ところが中世のヨーロッパでは、1月1日の新年がいったん影をひそめます。クリスマスの12月25日、キリストの受胎が告げられた日とされる3月25日、イースターなど、地域によって新年の日がバラバラになりました。町を移動するだけで「今は何年?」が変わってしまうこともあったのです。
フランスでは1564年、国王シャルル9世が「1年は1月1日から」と定めました(実際の切りかえは1567年)。1582年にはローマ教皇グレゴリウス13世が今の「グレゴリオ暦」をつくります。ただし、多くの国は新しい暦を使い始めるより少し前に、1月1日を新年にしていました。スコットランドは1600年、ロシアは1700年。ロシアのピョートル大帝は、それまで9月1日だった新年を1月1日に移し、家や通りをモミやマツの枝で飾るよう命令を出しました。
いちばん遅かった国の一つがイングランドです。1752年まで、法律上の新年は3月25日でした。1月1日に切りかえたため、1751年は3月25日から12月31日までの282日しかない、短い1年になりました。イギリスの個人の税金の年度が今も4月5日で終わり、6日に始まるのは、このころの暦の切りかえの名残です。
🕰️ 元日(世界のお正月)の年表
- 約4000年前メソポタミアのバビロンで、春の新年祭「アキトゥ」が行われる。
- 紀元前153年ローマの執政官が1月1日に就任するようになる。スペインの反乱に早く対応するため。
- 紀元前46年カエサルが暦を作り直す。ずれを直すため、この年は445日になる。
- 紀元前45年1月1日からユリウス暦が始まる。
- 1564年フランス王シャルル9世が「1年は1月1日から」と定める(実施は1567年)。
- 1582年教皇グレゴリウス13世がグレゴリオ暦を定める。
- 1700年ロシアのピョートル大帝が新年を9月1日から1月1日に移す。
- 1752年イングランドなどが新年を3月25日から1月1日に移す。前の1751年は282日だけ。
- 1804年1月1日ハイチが独立を宣言。スープ・ジュムーが自由のしるしになる。
- 1873年(明治6年)日本が太陽暦に切りかえ。明治5年12月3日が明治6年1月1日になる。
- 1890年アメリカ・パサデナで最初のローズパレード。
- 1941年ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートが1月1日に開かれるようになる。
3New Year's Day の意味:1月は「門の神さま」の月
January(1月)の名前は、ローマの神ヤヌス(Janus)から来ています。ヤヌスは門や出入り口、そして「始まり」の神さまです。顔が2つあり、1つは後ろ(過ぎた年)を、もう1つは前(来る年)を見ているとされました。年の境目にぴったりの神さまです。ローマの人々は1月1日にヤヌスへささげ物をし、新しい年によいことが起きるよう願いました。
英語の New Year's Day は「新しい年の日」。New Year's Eve(大みそか)と対になる言い方です。あいさつは Happy New Year!。日本の年賀状でよく見る "A Happy New Year!" は、それだけを書くと英語としては少し不自然です。英語では I wish you a happy new year. のように、文の中で a をつけるのがふつうです。
ほかの言葉も見てみましょう。フランス語は Jour de l'An(年の日)、ドイツ語は Neujahr(新年)、スペイン語は Año Nuevo(新しい年)。中国語の「元旦」は1月1日そのものを指します。いっぽう日本語の「元旦」は、「旦」が地平線から日がのぼる形を表すことから、本来は「元日の朝」を指す言葉です。同じ漢字でも、国によって少し意味が変わるのはおもしろいところです。
4海外の元日はどう過ごす?花のパレード、ワルツ、真冬の海
アメリカ西海岸のパサデナでは、元日の朝に「ローズパレード」が通りを進みます。始まりは1890年。雪にうもれた東部の人たちに「こちらは冬でも花が咲いている」と見せるため、地元のクラブが花で飾った馬車を走らせたのが最初でした。今の山車(フロート)は、表面をすべて花・種・木の皮など自然の材料でおおう決まり。色も植物で出し、黒にはタマネギの種などが使われてきました。午後は大学アメフトの「ローズボウル」。1902年の第1回はミシガン大がスタンフォード大に49対0で大勝し、試合はしばらく戦車(チャリオット)レースに置きかえられてしまいました。
オーストリアのウィーンでは、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の「ニューイヤー・コンサート」。ワルツやポルカが続き、最後の「ラデツキー行進曲」では指揮者の合図に合わせて会場が手拍子をします(この手拍子は1958年から)。テレビで90以上の国に中継され、視聴者は約5000万人といわれます。チケットは1年前から申しこむ抽選です。
寒い国では「冷たい海に飛びこむ」のが元日の名物です。オランダのスヘフェニンゲン海岸では、毎年約1万人が北海へ走りこみます。ニューヨークのコニーアイランドでは、1903年にできた「ポーラーベア(ホッキョクグマ)クラブ」が、毎年元日に大勢の参加者といっしょに寒中水泳をします。
地球の果てにも元日の行事があります。南極点の位置を示す標識は、毎年1月1日に新しいものに立てかえられます。下の氷が1年に約10メートル動くため、標識が本当の南極点からずれてしまうからです。
🎁 シンボルと小物
ローマの門と始まりの神。前と後ろに2つの顔をもつ。January の語源。
元日はカレンダーが新しくなる日。1月1日が新年になるまで、2000年近い歴史がある。
アメリカ・パサデナの元日の花のパレード。山車は自然の材料だけでおおわれる。
ウィーン・フィルの元日の演奏会。最後は「ラデツキー行進曲」で手拍子。
ドイツ語圏の縁起物。マジパンのブタを贈り合う。
ギリシャのケーキ「ヴァシロピタ」に焼きこまれる。豆やレンズ豆もコインに見立てられる。
日本や韓国では、1年で最初の日の出を見に出かける人が多い。
🍽️ この日の食べ物
アメリカ南部の豆とお米の料理。豆はコイン、青菜はお札の意味。
ドイツなどで贈る幸運のお菓子。「ブタを持っていた」は「ついてた」の意味。
イタリアの年越しの料理。コインの形のレンズ豆で、お金がたまるよう願う。
ギリシャの元日のケーキ。中にかくれた硬貨が当たると、その年は幸運。
ハイチのカボチャのスープ。1804年1月1日の独立から、自由のしるし。
韓国のおもちのスープ。白いおもちは清らかな新しい始まりを表す。
5元日に食べる世界の縁起物:豆はコイン、ブタは幸運
日本のおせちに「まめに働けるように」と黒豆が入るように、海外の元日にも、かたちや言葉に願いをこめた料理があります。
アメリカ南部の定番は「ホッピン・ジョン」。ササゲ豆(ブラックアイドピー)とお米を煮こんだ料理で、豆はコイン、青菜(コラードグリーン)はお札、コーンブレッドは金を表すといわれます。西アフリカにルーツをもつ料理で、レシピが本にのった早い例は1847年です。
ドイツやオーストリアではブタが幸運のしるし。マジパン(アーモンドのお菓子)でできた小さなブタを贈り合います。ドイツ語の Schwein gehabt!(ブタを持っていた!)は「ついてた!」という意味の決まり文句です。イタリアでは大みそかの夜の食卓で、コインに見えるレンズ豆を、コテキーノというブタ肉の腸詰めといっしょに食べます。
ギリシャでは1月1日は聖バシレイオスの日。「ヴァシロピタ」というケーキに硬貨を1枚焼きこみ、年が明けた真夜中などに切り分けて、硬貨が当たった人が1年の幸運をもらいます。韓国では、白いおもちのスープ「トックク」を1月1日にも食べる家庭が多くあります。
そしてハイチの「スープ・ジュムー」。カボチャのスープです。フランスの植民地だったころ、奴隷にされた人々はこのスープを作らされても、食べることは許されませんでした。1804年1月1日、ハイチは独立を宣言し、スープは自由のしるしになりました。今も1月1日の「1年で最初の食事」として家族で食べられ、2021年にはユネスコの無形文化遺産に登録されています。
6日本では:明治6年、12月はたった2日で終わった
日本で1月1日がお正月になったのは明治時代です。1872年(明治5年)11月9日、政府は「12月3日を明治6年1月1日とする」と発表しました。発表から実施まで、わずか約23日。明治5年の12月は、2日間で終わってしまいました。翌年のこよみはもう売られていたので、こよみ屋さんは大損をしたといいます。
なぜそんなに急いだのか。大隈重信の回想によると、お金の問題もありました。古い暦のままだと、明治6年には「閏月(うるうづき)」が入って1年が13か月になり、役人の月給を13回払わなければなりません。新しい暦にすれば12回ですみ、しかも明治5年の12月分は「2日しかない」として払わずにすんだのです。
それまでの日本は、月の満ち欠けをもとにした旧暦を使っていて、お正月は今の1月下旬〜2月中旬ごろでした。つまり昔の日本のお正月は、中国の春節や韓国のソルラルと同じ仲間です。今の日本の元日は、初日の出、初詣、おせちやお雑煮など独自の行事でいっぱいです。詳しくは「元日・お正月」のページをどうぞ。
7元日のよくある誤解とホントのところ
誤解1:世界中の人が1月1日を「いちばん大事な新年」として祝う。 1月1日は多くの国で祝日ですが、心の中の「本当のお正月」は国によって違います。中国・韓国・ベトナムは旧正月、イランは春分のノウルーズ、ユダヤ教は秋のロシュ・ハシャナ、エチオピアは9月11日ごろが新年です。スコットランドのフーラ島やウェールズのグワン渓谷では、古いユリウス暦にしたがって1月13日に新年を祝う人たちがいます。
誤解2:1月1日には天文学的な意味がある。 冬至でも春分でもなく、1月1日は太陽の動きとは関係ありません。もとをたどれば、ローマの執政官の就任日。人間が都合で決めた日なのです。
誤解3:新年の抱負はバビロニアで始まった。 「バビロニア人が神に借金を返す約束をしたのが始まり」とよく紹介されますが、今の「抱負」と同じものと言えるかは分かっていません。New Year's resolutions という言葉が新聞に出てくる早い例は、1813年のボストンの新聞とされます。
誤解4:エリス島の最初の移民は、その日が誕生日だった。 1892年1月1日、ニューヨークのエリス島に移民の受け入れ所が開き、最初に手続きをしたのはアイルランドの少女アニー・ムーアでした。当時の新聞は「15歳の誕生日」と書きましたが、後の調査で、実は17歳で誕生日は5月だったことが分かっています。
💡Fun Facts元日(世界のお正月)の豆知識 10連発
紀元前46年は、暦のずれを直すために445日もありました。のちに「混乱の年」と呼ばれます。
The year 46 BC had 445 days. Julius Caesar made it long to fix the calendar.
北半球のサラブレッド(競走馬)は、生まれた日に関係なく、全頭1月1日に1歳年をとります。南半球では8月1日です。
Racehorses in the north all turn one year older on January 1. In the south, the day is August 1.
イギリスの個人の税金の年度は4月5日で終わり、6日に始まります。4月5日は、昔の新年(3月25日)に、1752年の暦の切りかえで消えた11日を足した日です。
The British tax year ends on April 5. That is the old New Year, March 25, plus the 11 days lost in 1752.
ローズパレードは「日曜日にはやらない」決まり。1893年、教会の外につないだ馬をおどろかせないよう、1月2日にずらしたのが始まりです。
The Rose Parade never happens on a Sunday. In 1893, people did not want to scare horses outside churches.
南極点の標識は毎年1月1日に立てかえられます。下の氷が1年に約10メートル動くためです。新しい標識のデザインは、南極で冬を越した基地のメンバーが考えます。
Every January 1, a new marker is placed at the South Pole. The ice under it moves about 10 meters a year.
ウィーンのニューイヤー・コンサート第1回は、実は元日ではなく1939年12月31日でした。
The first Vienna New Year's Concert was on December 31, 1939, not on New Year's Day.
韓国では2023年6月まで、生まれた時に1歳で、新年が来るとみんな一緒に1歳年をとる数え方も広く使われていました。2023年6月からは、法律や役所の書類では満年齢を使うことになりました。
In Korea, many people used to get one year older together at New Year. A new law changed this in 2023.
1月1日は歴史の大事件も多い日。1863年にはリンカーンの奴隷解放宣言が出され、2002年にはヨーロッパで共通通貨ユーロの紙幣と硬貨が使われ始めました。
Many big things started on January 1. Euro coins and bills went into use in Europe on January 1, 2002.
ロシアの新年のツリーは、ピョートル大帝が1700年に「モミやマツの枝で飾れ」と命じたのが始まりの一つとされます。
In 1700, Peter the Great told Russians to decorate their homes with green branches for the New Year.
1月1日はカトリック教会の「世界平和の日」でもあります。1968年に教皇パウロ6世が始めました。
January 1 is also the World Day of Peace in the Catholic Church. It started in 1968.
▶️Videos & Links元日(世界のお正月)の動画とリンク集
The Story of Chinese New Year | Kids Learning Cartoon | Dr. Panda TotoTime Season 3Dr. Panda TotoTime – Official Channel
Why Is January 1st The “New Year”? | Happy New Year | The Dr Binocs Show | Peekaboo KidzPeekaboo Kidz
Chinese New Year for Kids | What It Is and How It’s CelebratedHomeschool Pop
▶ YouTubeで「history of New Year's Day for kids」をもっと見る
年賀状特集(このサイトの特集)日本の年賀状:いつまでに出す?1月2日の配達、干支の年賀状デザイン、英語の年賀状
New Year's Day - Wikipedia英語版ウィキペディア。国ごとに1月1日を新年にした年の一覧がある。
元日 - Wikipedia日本語版ウィキペディア。元日と元旦のちがいも分かる。
New Year's: Eve, Day, Traditions & Resolutions - HISTORYアメリカの歴史専門チャンネルの解説。バビロニアからローマまでの流れが読みやすい。
Joumou soup - UNESCO Intangible Cultural Heritageユネスコ無形文化遺産のページ。ハイチのスープ・ジュムーの歴史。
History - Tournament of Rosesローズパレードの公式サイト。1890年の始まりや第1回ローズボウル。
Vienna New Year's Concert - Wikipediaウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートの歴史と伝統。
Calendar (New Style) Act 1750 - Wikipediaイギリスが新年を1月1日に移した法律。282日しかなかった1751年。
明治改暦 - Wikipedia日本が太陽暦に切りかえた経緯。大隈重信の回想も。