Lunar New Year

旧正月(春節・ソルラル・テト)の由来と歴史(詳しく)

いつから?なぜ?名前の意味は? 旧正月(春節・ソルラル・テト)の本当の話を、確かな資料でたどります。

1旧正月の由来:「年」はもともと「実り」の字だった

漢字の「年」。そのいちばん古い形は、人が実った穀物を背負っている姿だとされます。中国の古い辞書『説文解字』も、「年」を「穀物が実ること」と説明しています。1年とは、もともと「1回の収穫」のこと。旧正月は、次の実りを願って新しい「年」を迎えるお祭りなのです。

旧正月の日付は、月と太陽の両方を使う「太陰太陽暦」で決まります。冬至をふくむ月を11月とし、そこから2回目の新月の日が元日。そのため毎年1月21日から2月20日のあいだを行ったり来たりします。2026年は2月17日、2027年は2月6日、2028年は1月26日です。春の始まり「立春」に近い新月の日になる年がほとんどで、だから中国では「春節(春のお祭り)」と呼ばれます。

旧正月の音といえば爆竹。「爆竹」という字のとおり、もとは竹を火にくべてパンパンとはじけさせ、悪いものを追いはらう習慣でした。のちに竹に火薬をつめるようになり、宋の時代には紙の筒になって、今の連なった爆竹が生まれます。

お年玉の「紅包(ホンバオ)」にも長い歴史があります。漢の時代には、縁起のよい言葉をきざんだお守りの硬貨がつくられました。清の時代の記録には「年長者が赤いひもに通した硬貨を子どもに与える」とあります。この「歳(年)をおさえるお金」が、赤い袋に入ったお年玉のルーツです。

旧正月(春節・ソルラル・テト)(Lunar New Year)のイラスト

2旧正月の歴史:1914年、「お正月」は「春節」に名前を変えた

中国でも、昔は旧暦の1月1日こそが「元旦」でした。それが変わったのは1912年。中華民国が建国されると、西洋と同じ太陽暦(グレゴリオ暦)を採用し、1月1日が新しい「元旦」になります。では、それまでのお正月はどうするのか。1914年、内務総長の朱啓鈐(しゅけいけん)が「旧暦の元日を春節とする」よう願い出て、大総統の袁世凱(えんせいがい)がこれを認めました。今わたしたちが使う「春節」という名前は、まだ100年ちょっとの歴史しかないのです。

韓国のソルラルは、もっと波乱の道をたどりました。日本の統治時代には旧暦の正月を祝うことがおさえつけられ、1月1日の新正月がおしつけられました。独立後も、政府は長く新暦の正月を重んじ、旧正月は1985年から「民俗の日」という名前の休日になります。1989年、ようやく「ソルラル」という名前で正式な祝日に戻りました。

中国では1983年、国営テレビの年越し番組「春節聯歓晩会(春晩)」が始まります。約4時間半の歌とコントの番組で、2012年には「国内ネットワークで最も多く見られた番組」としてギネス世界記録に認定されました。2014年にはスマホアプリのWeChatが「お年玉機能」を始め、2016年の春節には320億個以上のデジタル紅包が飛びかいました。

そして2023年12月、国連総会は旧正月を国連の「移動祝日」にすることを全会一致で決めました。2024年12月には、ユネスコが中国の「春節」の習わしを無形文化遺産に登録しています。農業の暦から生まれたお祭りが、いまや世界のお祝いになったのです。

🕰️ 旧正月(春節・ソルラル・テト)の年表

  1. 漢の時代(約2000年前)縁起のよい言葉をきざんだお守りの硬貨がつくられる。お年玉のルーツの一つ。
  2. 宋の時代(約1000年前)竹に代わって紙の筒に火薬をつめた爆竹が広まる。
  3. 1912年中華民国が太陽暦を採用。1月1日が「元旦」になる。
  4. 1914年袁世凱が、旧暦の正月を「春節」とする願い出を認める。
  5. 1983年中国の国営テレビで年越し番組「春晩」が始まる。
  6. 1985年韓国で旧正月が「民俗の日」として休日になる。
  7. 1987年長崎の新地中華街で春節の「灯籠祭」が始まる(1994年にランタンフェスティバルに改名)。
  8. 1989年韓国で「ソルラル」の名前で正式な祝日に戻る。
  9. 2014年WeChat がデジタル紅包を始める。2016年には320億個以上が送られる。
  10. 2023年12月国連総会が旧正月を国連の移動祝日にすると決める(2024年から)。
  11. 2024年12月ユネスコが中国の「春節」の習わしを無形文化遺産に登録。
  12. 2025年中国の春運で、地域をまたぐ移動がのべ約90億回と過去最高に。

3「Chinese New Year」か「Lunar New Year」か:名前の意味と論争

英語では、旧正月をいくつかの名前で呼びます。Chinese New Year(中国の新年)、Spring Festival(春節)、そして Lunar New Year(月の暦の新年)。実は正確にいうと、月だけでなく太陽も使う暦なので「Lunisolar New Year(太陰太陽暦の新年)」がいちばん正しい、という意見もあります。

近年、アメリカなどでは Lunar New Year がよく使われるようになりました。韓国やベトナムの人たちにとっては、自分たちの伝統のお正月でもあるからです。いっぽうシンガポールやマレーシア、ブルネイでは、祝日の正式な名前は今も Chinese New Year。どちらが正しいかではなく、だれが、どの立場で呼ぶかによって選ばれている名前なのです。

各地の呼び名にも意味がつまっています。韓国語の「ソル(설)」は新年、「ラル(날)」は日。ベトナム語の Tết Nguyên Đán は、漢字で書くと「節元旦」、つまり「最初の朝のお祭り」です。モンゴルの Tsagaan Sar は「白い月」という意味で、チベットの新年は「ロサル」と呼ばれます。

十二支(干支)にも国ごとのちがいがあります。ベトナムでは、ウシの代わりにスイギュウ、ウサギの代わりにネコ、ヒツジの代わりにヤギが入ります。日本でうさぎ年の人は、ベトナムでは「ねこ年」なのです。

4中国の春節はどう過ごす?大移動、大みそかのごちそう、真っ赤な飾り

春節の前後約40日間、中国では「春運(チュンユン)」と呼ばれる大移動が起こります。都会で働く人たちが、いっせいにふるさとへ帰るのです。2025年には、自家用車などもふくめて地域をまたぐ移動がのべ約90億回。鉄道だけでも約5億回です。「毎年くり返される、世界最大の人の移動」とも呼ばれます。

目標は、大みそか(除夕)の夜に家族そろって食べるごちそう「年夜飯」。北の地方では、みんなでギョーザを包みます。昔のお金「馬蹄銀(ばていぎん)」に形が似ていることから、お金がたまる食べ物とされます。そして魚。中国語の「魚(ユィ)」は「余(あまり)」と同じ発音なので、「年年有余(毎年ゆとりがありますように)」の願いをこめて、魚はわざと少し食べ残します。南の地方では、おもちの「年糕(ニェンガオ)」を食べます。「年々高くなる」に通じるからです。

家の門には赤い紙に書いた対句「春聯(しゅんれん)」を貼り、「福」の字をよく逆さまに貼ります。中国語で「逆さま(倒)」と「来る(到)」は同じ「ダオ」という発音。逆さまの福は「福が来た!」というしゃれなのです。ただし広東語の地域では「福がこぼれる」に聞こえるため、逆さまにしない家も多いそうです。

元日には、ほうきを使ってはいけないという言い伝えがあります。幸運まで掃き出してしまうからです。髪を切るのも年明け前にすませます。「髪(ファ)」が「発(発展・お金がふえる)」とよく似た音だからです。お祝いは15日間続き、最後の日の元宵節(ランタン・フェスティバル)で、満月の下に灯籠がともります。

🎁 シンボルと小物

🧧紅包(お年玉の赤い袋)red envelope

大人から子どもへお金を入れて渡す。8で終わる金額が好まれ、4はさけられる。

🏮赤いランタンred lantern

町や家を赤く飾る。15日目の元宵節は灯籠の祭り。

🧨爆竹firecrackers

もとは竹を燃やしてはじけさせ、悪いものを追いはらった。

🐉龍の舞dragon dance

長い龍を大勢であやつる踊り。獅子舞とともにパレードの主役。

🐴十二支の動物zodiac animal

毎年1つの動物がめぐってくる。2026年はうま、2027年はひつじ。ベトナムではネコ年もある。

🙃逆さまの「福」upside-down fu

「倒(逆さま)」と「到(来る)」が同じ音なので「福が来た」の意味。

🌸桃の花peach blossoms

ベトナム北部のテトの花。南部では黄色いマイの花を飾る。

🍽️ この日の食べ物

🥟ギョーザ(餃子)dumplings

中国北部の大みそかの定番。昔のお金に形が似ていて、金運の食べ物。

🐟魚fish

「魚」と「余」が同じ音。毎年ゆとりがあるよう、少し食べ残す。

🍘年糕(ニェンガオ)nian gao

南部のおもち菓子。「年々高く」に通じる縁起物。

🍲トッククtteokguk

韓国のおもちのスープ。ソルラルの朝ごはん。

🟩バインチュンbanh chung

ベトナムの四角いちまき。大地を表すといわれる。

🥗魚生(ユーシェン)yusheng

シンガポール・マレーシアのサラダ。みんなで高くかき混ぜて運を上げる。

5海外の旧正月:ソルラルとテトはここがちがう

韓国のソルラルは、前の日・当日・次の日の3日間の休み。朝、子どもたちは晴れ着の韓服を着て、祖父母や親に深くおじぎをする「セベ」をします。すると大人から「セベットン(お年玉)」がもらえます。中国の紅包とちがい、白い封筒や刺しゅう入りの絹の袋に入れて渡すことが多いのが特徴です。朝ごはんはおもちのスープ「トックク」。先祖をまつる儀式「チャレ」のあとは、木の棒を投げて遊ぶすごろく「ユンノリ」で盛り上がります。

ベトナムのテトは、ベトナムでいちばん大事なお祝いです。家族で作るもち米のちまき「バインチュン」は四角く、大地を表すといわれます。南の地方では円筒形の「バインテト」も作ります。飾る花は、北では桃の花、南では黄色い「マイ」の花。キンカンの鉢植えも定番です。新年に最初に家に入る客がその家の1年の運を決めると考えられ、だれに来てもらうかを前もって決めておく家もあります。

シンガポールやマレーシアでは「魚生(ユーシェン)」というサラダが名物です。刺身と細切り野菜を大皿に盛り、みんなで「ローヘイ!」と声を合わせて、箸で高く高くかき混ぜます。高く混ぜるほど運も上がるとされます。この食べ方が広まったのは1960年代で、シンガポールとマレーシアのどちらが元祖か、長く論争がありました。

モンゴルのツァガーン・サルでは、目上の人のひじを下から支えるようにして新年のあいさつをします。数日かけて、家族総出で肉まんじゅう「ボーズ」を大量に作るのも名物です。

6日本の旧正月:長崎のランタン1万5千個と、沖縄の漁師町

日本も明治5年(1872年)まで旧暦を使っていたので、昔のお正月はまさに「旧正月」でした。改暦のあとも、しばらくは旧暦で正月を祝う地域がたくさんありました。今でも沖縄の糸満や名護などの漁師町、奄美の島々では、旧正月を大切にする家が残っています。漁の仕事は潮の満ち引き、つまり月の動きと深く結びついているため、旧暦がなじみやすかったともいわれます。

いちばん華やかなのが長崎です。1986年、新地中華街に中国風の門が建ったのをきっかけに、1987年から春節に「灯籠祭」が開かれるようになりました。1994年に「長崎ランタンフェスティバル」と名前を変え、今では約1万5千個の赤いランタンが町をうめつくします。清朝の皇帝と皇后にふんした行列や、航海の女神・媽祖(まそ)の行列も見どころで、2018年には期間中の人出が106万人に達しました。横浜中華街や神戸の南京町でも、獅子舞や爆竹で春節を祝います。

なお、日本と中国では時差が1時間あるため、新月の時刻によっては旧暦の元日が1日ずれることがあります。旧正月は「同じアジアのお正月」でも、少しずつちがう顔をもっているのです。日本の新暦のお正月については「元日・お正月」のページでくわしく紹介しています。

7旧正月のよくある誤解とホントのところ

誤解1:怪物「年(ニェン)」の伝説は、何千年も前からある。 「年という怪物が村を襲いに来たが、赤い色と大きな音を怖がって逃げた。だから赤い飾りと爆竹を使う」という話は有名です。でも、怪物としての「年」を書いた文章で見つかっている最も古いものは、なんと20世紀の初めのもの。古い書物には爆竹や赤い飾りの記録はあっても、「年」という怪物は出てきません。昔からの言い伝えなのか、近代に広まった話なのかは、分かっていないのです。

誤解2:旧正月は「月の暦」のお正月。 英語では Lunar(月の)と呼びますが、実際は月と太陽の両方を使う暦です。月だけで決めると、イスラム暦のように季節とどんどんずれてしまいます。旧正月がいつも冬の終わりから春先におさまるのは、太陽の動きで調整しているからです。

誤解3:アジアの旧正月は全部同じ日。 ほとんどの年は同じですが、ずれることもあります。2007年、ベトナムのテトは2月17日で、中国や日本より1日早くなりました。時差のせいで新月の日付が変わったのです。チベットのロサルやモンゴルのツァガーン・サルは、春節より約1か月おそくなる年もあります。

誤解4:日本人は旧正月とは無関係。 先に見たように、長崎や沖縄では今も旧正月がいきています。そもそも日本のお正月も、明治の初めまでは旧正月でした。

💡Fun Facts旧正月(春節・ソルラル・テト)の豆知識 10連発

No.1

2025年の春運(春節前後の40日間)では、地域をまたぐ移動がのべ約90億回。2026年は約94億回と、さらに記録を更新しました。

In 2025, people in China made about nine billion trips in 40 days around the holiday.

No.2

2016年の春節には、WeChat で320億個以上のデジタル紅包が送られました。前の年の約10倍です。

In 2016, people sent over 32 billion digital red envelopes on WeChat.

No.3

2007年、ベトナムのテトは中国より1日早い2月17日でした。1時間の時差で新月の日付が変わったためです。

In 2007, Vietnam celebrated Tet one day before China because of the time difference.

No.4

ベトナムの十二支にはネコがいます。日本のうさぎ年は、ベトナムではねこ年です。

The Vietnamese zodiac has a cat instead of a rabbit.

No.5

中国では髪を年明け前に切ります。「髪」と「発(お金がふえる)」がよく似た音なので、新年すぐに切ると運も切ってしまうと考えられたからです。

Many Chinese people cut their hair before New Year. Hair sounds like the word for getting rich.

No.6

紅包の金額は8で終わる数が好まれます。「8」が「発」に近い音だからです。4は「死」とよく似た音なのでさけられます。

People like to give money with the number 8. They do not like the number 4.

No.7

逆さまの「福」は「福が来た」というしゃれ。でも広東語では「福がこぼれる」と聞こえるので、香港などでは逆さまにしない家も多いです。

Some people hang the word for luck upside down. It means luck has arrived.

No.8

春晩は2012年に「国内ネットワークで最も多く見られたテレビ番組」としてギネス世界記録になりました。

China's New Year TV show was in the Guinness World Records in 2012.

No.9

韓国では2016年のソルラルに、約3600万人が帰省などで移動すると見こまれました。人口の約7割にあたります。

In 2016, about 36 million people in Korea were expected to travel for Seollal.

No.10

長崎ランタンフェスティバルでは約1万5千個のランタンが飾られ、2018年の人出は106万人でした。

In Nagasaki, Japan, about 15,000 lanterns light up the city for the Lunar New Year.

▶️Videos & Links旧正月(春節・ソルラル・テト)の動画とリンク集

The Story of Chinese New Year | Kids Learning Cartoon | Dr. Panda TotoTime Season 3Dr. Panda TotoTime – Official Channel

Lunar New Year for Kids | Educational VideoScholastic

Chinese New Year for Kids | What It Is and How It’s CelebratedHomeschool Pop

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