
Hanukkah
ハヌカの由来と歴史(詳しく)
いつから?なぜ?名前の意味は? ハヌカの本当の話を、確かな資料でたどります。
1ハヌカの由来:奪われた神殿を取り戻した「奉献」の日
紀元前167年、エルサレムの神殿に、ギリシアの神ゼウスの祭壇が置かれました。命じたのは、今のシリアを中心に広い国を治めていたセレウコス朝の王、アンティオコス4世です。安息日(週に一度の休みの日)を守ることも、男の子の割礼(生まれてすぐの儀式)も禁じられました。
これに立ち上がったのが、地方の祭司マタティアと5人の息子たちです。父の死後、息子のユダが指揮をとりました。ユダのあだ名は「マカバイ」。「ハンマー」という意味だという説が有力で、一家はのちに「マカバイ家」と呼ばれます。
大きな王国の正規軍に対して、マカバイ家は山にこもって戦うゲリラ軍でした。それでも約3年後の紀元前164年、彼らはエルサレムを取り戻します。荒らされた神殿を清め、新しい祭壇を築き、キスレーウ月25日に、もう一度神にささげました。この「ささげ直す=奉献する」ことを、ヘブライ語でハヌカと言います。
では、なぜ8日間なのでしょう。いちばん古い記録である『マカバイ記二』は、こう説明しています。ちょうどその秋、人々は山や洞穴に隠れていて、8日間続く「仮庵(かりいお)の祭り」を祝えなかった。だから神殿を取り戻したとき、その祭りと同じように8日間祝った、というのです。
つまりハヌカは、もとは「遅れてきた秋の祭り」でもありました。冬の光の祭りというイメージとは、少しちがう出発点です。

2ハヌカの歴史:「油の奇跡」は600年後に登場した
ハヌカといえば「油の奇跡」です。神殿の燭台(しょくだい)に使える清い油は、大祭司の封印がついた小さな壺1つだけ。1日分しかないはずの油が、新しい油ができるまでの8日間燃え続けた――という話です。
ところが、この話は戦いを記録した『マカバイ記』には出てきません。初めて書かれたのは、ユダヤ教の学者たちの議論をまとめた『バビロニア・タルムード』の「シャバット篇21b」。出来事から600年ほどあとの書物です。そこでは「ハヌカとは何か?」という問いに、この奇跡の話で答えています。
同じページには、有名な論争も残っています。シャンマイ派は「初日に8本ともして、毎晩1本ずつ減らす」。ヒレル派は「初日は1本、毎晩1本ずつ増やす」。勝ったのはヒレル派でした。「聖なるものは増やすもので、減らさない」という考え方です。今、世界中のユダヤ教徒が1本から始めるのは、2000年前の議論の結果なのです。
その後、ハヌカは長いあいだ家の中の小さな祭りでした。大きく変わったのは19世紀のアメリカです。1842年、チャールストンの詩人ペニーナ・モイーズがハヌカの英語の賛美歌を書き、英語で祝う文化が広がり始めます。クリスマスが盛り上がる同じ季節に、ユダヤ教の指導者たちはハヌカを「子どものための祭り」として打ち出しました。
1951年には、イスラエルのベン・グリオン首相がトルーマン大統領に燭台を贈りました。1974年、フィラデルフィアの「自由の鐘」の前で、ユダヤ教の一派ハバドのラビが燭台をともします。これが公共の場での灯りの始まりとされ、1979年にはカーター大統領がホワイトハウス前の点灯式に参加しました。
🕰️ ハヌカの年表
- 紀元前167年セレウコス朝のアンティオコス4世が、エルサレムの神殿にゼウスの祭壇を置く。マタティアと息子たちが反乱を起こす。
- 紀元前164年ユダ・マカバイらがエルサレムを取り戻し、キスレーウ月25日に神殿を奉献し直す。8日間祝う。
- 1世紀歴史家ヨセフスが、この祭りを「光」と呼んで記録する。
- 500年代ごろ『バビロニア・タルムード』に、油の奇跡と「1本ずつ増やす」ヒレル派の決まりが記される。
- 1322年イタリアのラビ、カロニムス・ベン・カロニムスが、ハヌカの揚げたパンケーキを詩に書く。
- 1800年代東ヨーロッパでジャガイモのラトケが広まる。アメリカではハヌカが子ども向けの祭りとして盛り上がる。
- 1842年アメリカの詩人ペニーナ・モイーズが、ハヌカの英語の賛美歌を書く。
- 1951年イスラエルのベン・グリオン首相が、トルーマン大統領に燭台を贈る。
- 1974年フィラデルフィアの「自由の鐘」の前で、公共の場での燭台の点灯が始まる。
- 1979年カーター大統領が、ホワイトハウス前の点灯式に参加する(のちの「ナショナル・メノラー」)。
- 1993年NASAの宇宙飛行士ジェフリー・ホフマンが、スペースシャトルにドレイドルと燭台を持ちこむ。
- 2013年感謝祭とハヌカが重なり、「サンクスギヴカー」と話題に。初日との重なりは1888年以来。
3「ハヌカ」の意味:つづりがバラバラなのは、喉の音のせい
ハヌカ(חנוכה)は、ヘブライ語の「ささげる、奉献する」という動詞から来た言葉です。神殿をもう一度神にささげたことが、そのまま祭りの名前になりました。
英語のつづりは Hanukkah、Chanukah、Hanukah など、いくつもあります。理由は最初の文字ח(ヘット)の音。のどの奥で「ハッ」とこするような音で、英語のアルファベットにぴったりの文字がありません。だから H で書く人もいれば、Ch で書く人もいるのです。アメリカの辞書メリアム・ウェブスターは Hanukkah を主に採用し、イギリスのガーディアン紙は Hanukah と書きます。日本語でも「ハヌカ」「ハヌカー」「ハヌッカー」と表記が分かれます。
名前には、後の時代のことば遊びもあります。חנוכה を「חנו(彼らは休んだ)+כ״ה(25)」と分けて、「25日に彼らは戦いを休んだ」と読む解釈です。ヘブライ文字は数字も表すので、こうした読み方が生まれました。
「光の祭り」という呼び名も古く、1世紀の歴史家ヨセフスは、この祭りを「光(ライツ)」と呼んでいます。現代のヘブライ語でも「ハグ・ハウリム(光の祭り)」と言います。
燭台の名前にも注意が必要です。神殿にあった燭台(メノラー)は7本枝。ハヌカで使うのは9本枝で、イスラエルでは「ハヌキヤ」と呼んで区別します。9本のうち1本は「シャマシュ(お世話係)」。ほかの8本に火を分けるための、いわば点火係のろうそくです。
4ハヌカの過ごし方:日が沈んだら、窓辺に灯りを
冬の夕方、日が沈むと、家族が燭台のまわりに集まります。まずシャマシュに火をつけ、祝福の祈りを唱えてから、その晩の数だけろうそくをともします。1日目は1本、2日目は2本、8日目には8本。シャマシュも入れると、8日間で使うろうそくは全部で44本です。
燭台を置く場所も決まっています。タルムードは「家の入口の外側に置くこと」としています。目的は、奇跡を外の人にも知らせること。危険な時代には家の中のテーブルでもよいとされ、今では窓辺に置く家が多くなりました。灯りは日が暮れてから少なくとも30分は燃えていなければいけません。その間、ろうそくの光で本を読んだり作業をしたりしてはいけない、という決まりもあります。
灯りがともったら、歌の時間です。「マオズ・ツル(とりでの岩)」という古い歌が定番です。子どもたちはドレイドルという4面のコマを回し、チョコレートのコインを賭けて遊びます。台所からは、油で揚げるジャガイモのパンケーキ「ラトケ」のにおい。プレゼントを毎晩1つずつ渡す家庭もあります。
意外かもしれませんが、ハヌカの8日間は仕事をしてもよい日です。ユダヤ教の決まりをまとめた『シュルハン・アルーフ』は、断食や追悼の演説はしないが、仕事はかまわないとしています。ただ、ろうそくが燃えている間(特に最初の30分)は女性が家事を休む、という習慣も残っています。
金曜日の夜だけは特別です。日没後は安息日になって火をつけられないので、ハヌカのろうそくを日没前にともし、長く燃えるように大きめのものを使います。
🎁 シンボルと小物
9本枝の燭台。8本は8日間の灯り、残りの1本は点火係。神殿の7本枝の燭台とは別物です。
「お世話係」という意味の9本目のろうそく。ほかの灯りに火を分けるので、少し高い(または低い)位置に立てます。
4つの面にヘブライ文字が書かれたコマ。イスラエルでは「スヴィヴォン」と呼び、文字が1つちがいます。
イディッシュ語で「お金」。今は金色の紙に包んだチョコレートのコインが定番です。
神殿の燭台に使われた油。今もろうそくの代わりにオリーブ油の灯りを使う家庭があります。
灯りは外から見えるように置くのが決まり。奇跡を広く知らせるためです。
点灯のあとに歌う定番の歌。13世紀に、モルデカイという名の詩人が作ったとされます(名前は各節の頭文字に隠されています)。
🍽️ この日の食べ物
すりおろしたジャガイモを油で揚げ焼きにしたパンケーキ。アップルソースかサワークリームを添えます。
イスラエルの国民的ハヌカおやつ。ハヌカの時期に約2000万個売れるという報道もあります。
セファルディム系のユダヤ教徒が作る揚げ菓子。はちみつやシロップをかけて食べます。
ラトケの古い形。英雄ユディトの物語にちなんで、ハヌカに乳製品を食べる習慣があります。
ドレイドル遊びの賭け金にもなる、金色のチョコ。子どもたちのお楽しみです。
5ハヌカの食べ物:なぜ揚げ物ばかり?
ハヌカの食卓は、とにかく油っぽいのが自慢です。油の奇跡を思い出すために、油で揚げた料理を食べるからです。
アメリカやヨーロッパのユダヤ教徒(アシュケナジム)の定番は、すりおろしたジャガイモを揚げ焼きにした「ラトケ」。アップルソースやサワークリームをつけて食べます。ところが、ラトケは昔からジャガイモだったわけではありません。ジャガイモは南米から来た作物で、東ヨーロッパでラトケの主役になったのは1800年代のことです。
もっと古い形は、チーズのパンケーキでした。1322年、イタリアのラビ、カロニムス・ベン・カロニムスは、ハヌカに食べる揚げたパンケーキを詩に書いています。チーズを使うのには理由があります。ユダヤの英雄ユディトが、敵の将軍に塩辛いチーズとワインをふるまい、眠ったすきに倒したという物語にちなむのです。今もハヌカに乳製品を食べる習慣があります。
イスラエルでいちばん人気なのは、ジャム入りの揚げドーナツ「スフガニヤ」です。2018年の報道では、ハヌカの時期にイスラエルで売れるスフガニヤは約2000万個。人口約900万人の国で、1人2個以上の計算です。パン屋の店先には、チョコやピスタチオのクリームを詰めた高級版まで並びます。
スペインやトルコにルーツをもつユダヤ教徒(セファルディム)は、「ブニュエロス(ビムエロス)」という揚げ菓子を、はちみつやシロップと一緒に楽しみます。国が変わっても「油で揚げる」という一点だけは、みんな同じです。
6日本とハヌカ:実は聖書の中で出会っている
日本でハヌカを知っている人は、まだ多くありません。でも、聖書を読んだことがある人は、実はもうハヌカに出会っています。キリスト教の新約聖書の中で、です。
「ヨハネによる福音書」10章22節には、冬のエルサレムで「奉献の祭り」が行われ、イエスが神殿を歩いていたと書かれています。英語の古い聖書では the feast of the dedication。これがハヌカです。おもしろいのは、ユダヤ教の聖書(キリスト教でいう旧約聖書)にはハヌカの話が入っていないこと。マカバイ記はユダヤ教の正典に入らなかったので、ハヌカは「ユダヤ教の聖書に出てこないのに、新約聖書には出てくる」不思議な祭りなのです。
日本国内にも、東京・広尾にユダヤ人コミュニティーの会堂(シナゴーグ)があり、ユダヤ教の祭日の礼拝や集まりが行われています。12月の東京では、クリスマスのイルミネーションのすぐそばで、9本枝の小さな灯りもともっているわけです。
日本の習慣と似ているところもあります。子どもにお金(ゲルト)を渡す習慣は、お年玉にそっくりです。もとは東ヨーロッパで、子どもが学校の先生にお金を贈った習慣がルーツだと言われます。また、年によってはハヌカとクリスマスが重なります。2027年は、ハヌカの最初の灯りがちょうど12月24日の夕方にともります。
7ハヌカのよくある誤解とホントのところ
誤解1:ハヌカは「ユダヤ教のクリスマス」
ホント:まったく別の祭りです。ハヌカはイエスの誕生とは関係なく、紀元前164年の神殿奉献を記念します。しかもユダヤ教の中では、聖書で定められた大祭日ではなく、比較的小さな祭りです。アメリカで大きく見えるのは、クリスマスと季節が重なり、プレゼントの習慣が広がったからです。
誤解2:ドレイドルは、ギリシア兵の目をごまかして聖書を勉強するために生まれた
ホント:よく聞く話ですが、それを裏づける記録はありません。19世紀のラビが広めた説明だとされます。研究者の多くは、イギリスやアイルランドで1500年ごろから遊ばれていた「ティートータム」というコマがドイツ経由で東欧に伝わったものと考えています。ドイツ語版の4面は、N(なし)、G(全部)、H(半分)、S(出す)。ユダヤ教徒はこれをヘブライ文字に置きかえ、あとから「大きな奇跡がそこで起きた」という意味をあてはめました。
誤解3:油の奇跡がハヌカのいちばん古い理由
ホント:いちばん古い記録『マカバイ記』は、8日間の理由を仮庵の祭りで説明しています。油の奇跡が書かれたのは約600年後のタルムードです。
誤解4:ハヌカの燭台はイスラエルの国章と同じ
ホント:国章の燭台は神殿の7本枝のメノラーです。ハヌカの燭台は9本枝で、別物です。
💡Fun Factsハヌカの豆知識 10連発
1993年12月、NASAの宇宙飛行士ジェフリー・ホフマンは、ハッブル宇宙望遠鏡の修理中のスペースシャトルにドレイドルと燭台を持ちこみました。ただし火は危ないので、燭台はともさずに持っていっただけでした。
In 1993, an astronaut took a dreidel and a menorah into space. He did not light the candles because fire is dangerous on a spaceship.
ニューヨークには「世界最大の燭台」を名乗るものが2つあります。どちらも高さ約32フィート(約9.8m)。ユダヤ教の決まりでは、ハヌカの灯りは20キュビト(約9〜10m)より高く置いてはいけないとされ、ほぼ上限いっぱいです。
Jewish law says a Hanukkah light should not be too high. People must be able to see it easily.
8日間で使うろうそくは、1+2+…+8=36本に、毎晩のシャマシュ8本を足して、全部で44本です。
For all 8 nights, a family uses 44 candles. That includes the helper candle every night.
2013年11月28日、アメリカの感謝祭とハヌカの初日が重なり、「サンクスギヴカー(Thanksgivukkah)」と呼ばれました。感謝祭がハヌカの初日と重なったのは、1888年以来のことです。
In 2013, Thanksgiving and Hanukkah came on the same day. People called it Thanksgivukkah.
ドレイドルの4つの文字は、もとはドイツ語のゲームの「なし・全部・半分・出す」でした。「大きな奇跡がそこで起きた」という意味は、あとから当てはめられたものです。
The letters on a dreidel first meant nothing, all, half, and put in. The miracle meaning came later.
ハヌカのお金(ゲルト)は、5日目の晩に渡すという習慣もあります。5日目は安息日(お金にさわらない日)に絶対に重ならないからです。
Some families give money on the fifth night. That night never falls on the Sabbath.
ラトケがジャガイモになったのは1800年代。それまではチーズのパンケーキでした。ジャガイモは南米から来た「新しい」食べ物なのです。
Potato latkes are not very old. Before the 1800s, people made them with cheese.
1996年、アメリカの郵便局はイスラエルと共同で、32セントのハヌカ切手を発行しました。
In 1996, the United States and Israel made a Hanukkah stamp together.
ハヌカの話は、ユダヤ教の聖書には入っていませんが、新約聖書のヨハネによる福音書10章22節には「冬」の「奉献の祭り」として登場します。
Hanukkah is not in the Hebrew Bible. But it appears in the New Testament.
1日の始まりが日没なので、ハヌカの「1日目」(キスレーウ月25日)の灯りは、その前の晩にともします。2025年なら1日目は12月15日で、最初の灯りは12月14日の夕方です。
Jewish days start at sunset. So the first candle comes on the evening before the first day.
▶️Videos & Linksハヌカの動画とリンク集
Hanukkah: The Festival of Lights Starts Tonight | National GeographicNational Geographic
Here's a Hanukkah for Kids Cartoon. See why Hanukkah Around the World is celebratedFresberg Cartoon – Learning & History for Students
The Story of HanukkahBegin Learning for Kids
▶ YouTubeで「Hanukkah explained for kids」をもっと見る
Hanukkah - Wikipedia英語版ウィキペディア。歴史・日付・各地の習慣がとても詳しい。
ハヌカー - Wikipedia日本語版ウィキペディア。基本をおさえるのに。
Chanukah - Hebcalユダヤ暦の祝日カレンダー。毎年の正確な日付がわかる。
Hanukkah 101 - My Jewish Learningユダヤ教の学習サイトによる、ハヌカの入門解説。
Shabbat 21b - Sefaria油の奇跡とヒレル派・シャンマイ派の論争が書かれたタルムードの原文と英訳。
Public menorah - Wikipedia公共の場での燭台点灯の歴史(1974年〜)。
Chag HaBanot - Hebcalハヌカ中の「娘たちの祭り」の解説。