
Hanami (Cherry Blossom Viewing)
お花見の由来と歴史(詳しく)
いつから?なぜ?名前の意味は? お花見の本当の話を、確かな資料でたどります。
1お花見の由来:はじめの主役は「梅」だった
奈良時代の貴族にとって、「花を見る」といえば梅のことでした。
梅は中国から伝わったばかりの、おしゃれな花でした。『万葉集』には、梅を詠んだ歌が110首ほどあるのに対し、桜の歌は43首ほど。梅の木の下で歌を詠み合う「梅花の宴」も開かれていました。元号「令和」の出典になったのも、この梅花の宴の歌の序文です。
それが平安時代に入ると、逆転します。10世紀はじめの『古今和歌集』では、桜の歌が70首、梅は18首。「花」と言えば桜を指すようになったのも、このころからです。
記録に残るいちばん古い桜のお花見は、812年(弘仁(こうにん)3年)。平安時代の歴史書『日本後紀』に、嵯峨天皇(さがてんのう)が京都の神泉苑(しんせんえん)で「花宴の節(はなのえんのせち)」を開いたと書かれています。嵯峨天皇は京都の地主神社(じしゅじんじゃ)の桜がたいへん気に入り、毎年桜を献上させていたと伝えられます。831年からは、天皇が開く宮中の決まった行事になりました。その華やかな様子は『源氏物語』の「花宴(はなのえん)」の巻にも描かれています。
つまりお花見は、中国風の梅の文化から、日本の桜の文化へと主役が交代したところから始まったのです。日本の山に自生していたヤマザクラは、咲くとすぐに散ってしまいます。そのはかなさが、平安の人々の心をとらえたのかもしれません。

2お花見の歴史:秀吉の1300人パーティーから、江戸の庶民の宴へ
戦国の世が終わると、お花見はぐっと派手になります。
1594年、豊臣秀吉は奈良の吉野山で、徳川家康や伊達政宗(だてまさむね)に仮装をさせ、5000人が参加したと伝わる大花見を開きました。そして1598年(慶長3年3月15日)の醍醐(だいご)の花見。秀吉は京都の醍醐寺(だいごじ)に700本の桜を植えさせ、北政所や淀殿(よどどの)をはじめ約1300人の女性たちを招きました。女性たちは2回の衣装替えを命じられ、一人3着ずつ着物を新調したと言われます。宴では、杯を受ける順番をめぐって淀殿と松の丸殿が争ったという話まで伝わっています。秀吉はこの花見の約5か月後に亡くなりました。
お花見が庶民の楽しみになったのは、江戸時代の中ごろです。江戸でいちばんの名所は上野でしたが、寛永寺の境内で浮かれ騒ぐのは許されませんでした。そこで1720年(享保5年)、8代将軍徳川吉宗が隅田川の堤や飛鳥山(あすかやま)に桜を植えさせ、庶民が花見を楽しめる場所をつくりました。お酒を飲み、歌い、踊る。お花見はお見合いの場にもなったと言われます。
明治になると、江戸の大名屋敷が取りこわされ、多くの桜が切られて品種が消えかけました。それを救ったのが、東京・駒込の植木職人、高木孫右衛門(たかぎまごえもん)です。84の品種を自宅の庭に集めて守り、荒川の堤の桜並木づくりに協力しました。この荒川の桜の苗木が、1912年、日米友好のしるしとしてワシントンD.C.へ贈られることになります。
🕰️ お花見の年表
- 奈良時代貴族が中国から伝わった梅を愛でる。『万葉集』には梅の歌が約110首、桜は約43首。
- 812年嵯峨天皇が神泉苑で「花宴の節」を開く。記録に残る最初の桜の花見とされる。
- 831年花見が天皇主催の宮中の定例行事になる。
- 10世紀はじめ『古今和歌集』で桜の歌が70首、梅が18首に。「花」といえば桜の時代へ。
- 1598年豊臣秀吉が醍醐寺に700本の桜を植え、約1300人の女性を招いて「醍醐の花見」を開く。
- 1720年徳川吉宗が隅田川堤や飛鳥山に桜を植えさせ、庶民の花見の場をつくる。
- 1900年藤野寄命の調査で、「吉野桜」がヤマザクラとちがう桜とわかり、「ソメイヨシノ」と名づけられる。
- 1910年アメリカに贈られた桜2000本が、害虫と病気のため焼かれる。
- 1912年東京市から3020本の桜がワシントンD.C.に届き、3月27日に最初の2本が植えられる。
- 1953年気象庁が生物季節観測を始める。サクラの開花・満開の記録が全国で続く。
- 1992年日本さくらの会が3月27日を「さくらの日」に定める。
- 1995年遺伝子の研究で、ソメイヨシノが1本の木から増えたクローンだと明らかになる。
3「花」といえば桜?ソメイヨシノの名前の秘密
今の日本でお花見の主役になっている桜の8割ほどは、ソメイヨシノという品種です。でもこの桜、古い和歌に詠まれた桜とは別ものです。中世以前の歌に出てくる桜の多くは、山に自生するヤマザクラでした。
ソメイヨシノは、江戸時代の終わりから明治のはじめにかけて、江戸の染井村(そめいむら、今の東京都豊島区駒込のあたり)の植木職人たちが育てた桜です。エドヒガンとオオシマザクラのかけ合わせから生まれました。
はじめは、昔から桜の名所として名高い奈良の吉野山にちなんで「吉野」「吉野桜」という名前で売られていました。ところが1900年、植物学者の藤野寄命(ふじのよりなが)が上野公園の桜を調べたところ、吉野山に多いヤマザクラとはちがう桜だとわかります。このままでは混乱するので、染井村の名前をとって「染井吉野」と名づけられました。翌1901年には学名もつけられています。
そしてソメイヨシノの最大の秘密は、すべてが1本の木から増えたクローンだということです。1995年の遺伝子の研究で、はっきりしました。ソメイヨシノは主に接ぎ木(つぎき)で増やされるので、日本中のソメイヨシノは、遺伝子がほぼ同じなのです。
だから、同じくらいの気温の場所では、いっせいに咲いて、いっせいに散ります。これが、地図の上に「桜前線」という線を引けるわけです。
英語では、桜は cherry blossoms、お花見は hanami または cherry blossom viewing と言います。cherry は「さくらんぼ」の木のことでもあるので、the cherry trees in Japan are for flowers, not fruit と説明を足すとわかりやすいでしょう。
4お花見の過ごし方:花より団子、夜桜、北海道のジンギスカン
お花見の基本は、桜の木の下にシートを広げ、お弁当を食べながら花をながめることです。江戸時代から、重箱に料理をつめた「花見弁当」が欠かせないものでした。
花見団子も定番です。ピンク・白・緑の三色の団子で、ピンクは桜で春の息吹、白は雪で冬のなごり、緑はよもぎで夏の予兆を表すと言われます。花をながめるより、団子を食べるほうがいい。「花より団子」ということわざは、この花見団子から生まれました。
桜餅も春の味。江戸時代に隅田川の堤にある長命寺(ちょうめいじ)の門前で売り出され、花見客に喜ばれたとされます。小麦粉の生地で巻く関東風の「長命寺」と、もち米のつぶつぶが残る関西風の「道明寺」の二つの系統があります。
夜は夜桜。上野公園や靖国神社などの名所ではぼんぼりがともり、ライトアップされた桜が闇に浮かびます。
地域によって、お花見の味も変わります。桜が4月下旬から5月中旬に咲く北海道では、花見の宴でジンギスカン(羊肉の焼き肉)を食べるのが定番。青森では、トゲクリガニが「花見ガニ」と呼ばれて宴席に並びます。沖縄の桜はカンヒザクラで、1〜2月に咲き、宴会よりも眺めて楽しむ人が多いそうです。
ただ、人気の行事だからこそ、ゴミの放置や場所取り、大声のカラオケなどが問題にもなっています。福岡市の天神中央公園では、場所取り対策として予約制を取り入れ、2018年には1区画2時間500円の有料制にしました。桜も、ほかの人も大切にするのが、お花見の一番のマナーです。
🎁 シンボルと小物
お花見の主役。日本の桜の8割ほどがソメイヨシノ。
気象台が開花・満開を判断する木。東京は靖国神社の3本のソメイヨシノ。
夜桜見物のために名所にともされる明かり。
桜の下に広げる。場所取りは春の風物詩だが、マナーも問われる。
同じ日に開花する地点を結んだ線。約4か月かけて日本列島を北上する。
風で花びらがいっせいに舞い散るようす。散ったあとは「葉桜」になる。
🍽️ この日の食べ物
ピンク・白・緑の三色団子。「花より団子」の語源。
江戸時代から欠かせない重箱のお弁当。
桜の葉の塩漬けで包んだ餅菓子。関東の長命寺と関西の道明寺の二系統がある。
北海道の花見の定番。羊肉を焼いて桜の下で食べる。
青森で花見の時期に親しまれるカニ。
桜の花の塩漬けにお湯を注いだ飲み物。お祝いの席でも出される。
5お花見はいつ?桜前線と「開花宣言」のしくみ
お花見の時期を決めるのは、気象庁の「さくらの開花・満開」の観測です。
気象庁は1953年から、植物や動物の季節の変化を記録する「生物季節観測」を続けています。2021年に多くの観測項目を廃止したときも、サクラの開花と満開は残されました。
各地の気象台は「標本木(ひょうほんぼく)」と呼ばれる決まった木を観察します。東京の標本木は、千代田区の靖国神社の境内にある3本のソメイヨシノです。
開花とは、標本木で5〜6輪以上の花が開いた最初の日。満開とは、標本木のつぼみの80%以上が開いた最初の日です。つまり「開花宣言」が出た日は、まだ咲き始め。お花見の見ごろは、普通満開のころです。
2026年の東京は、3月19日に開花、3月28日に満開しました。開花は平年(3月24日)より5日早く、満開も平年(3月31日)より3日早い年でした。2025年の東京は、開花が3月24日、満開が3月30日です。
日本の桜の季節は、とても長いのが特徴です。2026年は、那覇のカンヒザクラが1月18日に開花し、釧路のエゾヤマザクラの開花は5月3日でした。北海道の北部や東部ではソメイヨシノが育たないため、エゾヤマザクラなどを標本木にしています。南の島から北の大地まで、桜前線はおよそ4か月かけて日本列島を北上するのです。
青森県弘前市の弘前城は、関東の桜が散ったあとのゴールデンウィークごろに満開になることが多く、花見の旅行先として人気です。同じ「お花見」でも、住む場所によって季節がまったくちがうのです。
6海外の花見:ワシントンの桜は一度燃やされた
日本の桜は、海を渡って世界に花を咲かせています。
いちばん有名なのは、アメリカの首都ワシントンD.C.の桜です。実は最初の贈り物は失敗でした。1909年、東京市長の尾崎行雄らが2000本の桜を贈る約束をし、苗木がアメリカに着きます。ところが1910年1月、アメリカ農務省の検査で害虫や病気が見つかり、タフト大統領の許可のもと、すべて焼かれてしまったのです。
東京市はあきらめませんでした。1912年3月26日、12品種3020本の桜が改めてワシントンに届きます。翌27日、タフト大統領夫人と駐米日本大使夫人の珍田子爵夫人が、タイダル・ベイスンのほとりに最初の2本を植えました。1915年には、アメリカからお返しにハナミズキが日本へ贈られています。1935年からは「桜祭り」が毎年開かれるようになり、今ではアメリカでも最大級の日本文化の祭りになっています。
韓国の鎮海(チネ)では1963年から「鎮海軍港祭」が開かれ、30万本をこえるとされる桜が町をうめます。ソウルの汝矣島(ヨイド)の桜並木の祭りにも、数百万人が訪れます。台湾では、旧正月が明けるころから陽明山や阿里山に花見客が集まります。
ブラジルのサンパウロには、日系移民が植えた桜があります。南半球なので見ごろは8月。ちょうど七夕祭りの時期と重なるため、満開の桜の枝に七夕の短冊を結ぶという、ここだけの風習も生まれました。
イタリアのシチリア島アグリジェントでは、桜と同じサクラ属のアーモンドの花祭りが開かれます。春の花を祝う気持ちは、世界共通なのです。
7よくある誤解とホント:吉野山の桜はソメイヨシノじゃない
誤解1:吉野山の桜はソメイヨシノ。 名前に「ヨシノ」と入っていますが、吉野山に多いのはヤマザクラです。ソメイヨシノは江戸の染井村で生まれた桜で、もともと吉野山にちなんで「吉野桜」として売られていたため、この名前になりました。
誤解2:お花見は昔から桜。 奈良時代の花見の主役は梅でした。『万葉集』では梅の歌が桜の倍以上あります。桜が主役になったのは平安時代からです。
誤解3:「開花宣言」の日がいちばんの見ごろ。 気象庁の「開花」は、標本木で5〜6輪以上の花が開いた日のこと。まだ咲き始めです。見ごろの目安は、つぼみの80%以上が開く「満開」のころです。東京では、開花から満開まで1週間前後かかるのがふつうです(平年は3月24日開花、3月31日満開)。
誤解4:ソメイヨシノは種をまけば増える。 ソメイヨシノは1本の木から増えたクローンで、主に接ぎ木で増やされています。種から育てると、ほかの桜と交ざって、ソメイヨシノとはちがう木になってしまいます。
誤解5:桜は日本にしかない。 サクラの仲間は北半球の温帯に広く分布しています。日本に自生する野生のサクラは10〜11種とされ、そこから800ほどの栽培品種が生まれたと言われます。日本が特別なのは、桜の数より、桜をめぐる文化の深さなのです。
誤解6:お花見は祝日。 お花見の日は祝日ではありません。ちなみに、日本さくらの会が定めた「さくらの日」は3月27日(1992年制定)。偶然ですが、1912年にワシントンで最初の2本の桜が植えられたのと同じ日付です。
💡Fun Factsお花見の豆知識 10連発
『万葉集』では梅の歌が約110首、桜は約43首。奈良時代の「花見」の主役は梅だった。
In an old book of Japanese poems, plum flowers appear more than twice as often as cherry blossoms.
記録に残る最初の桜の花見は812年、嵯峨天皇が神泉苑で開いた「花宴の節」。
The first recorded cherry blossom party was held by an emperor in 812.
1598年の醍醐の花見で、豊臣秀吉は700本の桜を植えさせ、約1300人の女性を招いた。秀吉はその約5か月後に亡くなった。
In 1598, a powerful ruler planted 700 cherry trees and invited about 1,300 women to a party.
1720年、徳川吉宗は飛鳥山や隅田川の堤に桜を植えさせた。庶民がお酒を飲んで騒げる花見の場をつくるためだった。
In 1720, a shogun planted cherry trees so that ordinary people could enjoy hanami.
東京の開花を決める標本木は、靖国神社の境内にある3本のソメイヨシノ。
Tokyo's official cherry trees for checking the bloom are three trees at a shrine.
気象庁の「開花」は、標本木で5〜6輪以上の花が開いた日。「満開」は、つぼみの80%以上が開いた日。
The weather agency says the blossoms open when 5 or 6 flowers bloom on the sample tree.
ソメイヨシノは、もともと「吉野桜」として売られていた。1900年にヤマザクラとはちがうとわかり、染井村の名前がついた。
Somei-yoshino trees were first sold with the name Yoshino. They got their new name in 1900.
ワシントンに最初に贈られた2000本の桜は、1910年に害虫と病気のため焼かれた。2年後の1912年に3020本が改めて届いた。
The first 2,000 trees sent to Washington had bugs, so they were burned in 1910.
日本さくらの会の「さくらの日」は3月27日。ワシントンで最初の2本の桜が植えられた1912年3月27日と同じ日付。
Japan's Cherry Blossom Day is March 27. The first two trees in Washington were planted on March 27, 1912.
ブラジル・サンパウロの桜の見ごろは8月。七夕祭りと重なるので、桜の枝に七夕の短冊を結ぶ。
In Sao Paulo, cherry trees bloom in August. People tie Tanabata wishes on the branches.
▶️Videos & Linksお花見の動画とリンク集
Learn Japanese HANAMI Words 🌸 Cherry Blossom Viewing in Japan - 花見 VocabularyLearn Japanese with JapanesePod101.com
▶ YouTubeで「hanami cherry blossom viewing Japan explained」をもっと見る
国民の祝日について - 内閣府国民の祝日の一覧。お花見の日は祝日ではないことも確かめられる。
さくらの開花状況 - 気象庁各地の開花日と平年値・昨年値。
さくらの満開状況 - 気象庁各地の満開日と平年値・昨年値。
花見 - Wikipedia日本語版ウィキペディア。花見の歴史と各地・海外の花見が詳しい。
Hanami - Wikipedia英語版ウィキペディア。英語で説明するときの参考に。
History of the Cherry Trees - National Park Serviceアメリカ国立公園局による、ワシントンの桜の歴史。
Yoshino cherry - Wikipediaソメイヨシノの英語の解説。起源や命名の経緯。