Doyo no Ushi no Hi (Eel Day)

土用の丑の日の由来と歴史(詳しく)

いつから?なぜ?名前の意味は? 土用の丑の日の本当の話を、確かな資料でたどります。

1土用の丑の日とは?意味は「季節の終わり」と「12日に1回の日」

「丑の日」と聞いて牛を食べる日だと思う人もいますが、食べるのはうなぎです。この名前は、昔の暦の言葉を2つ組み合わせたものです。

まず「土用」。昔の中国の考え方(五行説)では、世の中は木・火・土・金・水の5つでできているとされました。春は木、夏は火、秋は金、冬は水。すると「土」だけが余ります。そこで、それぞれの季節の終わりの約18日間を「土」の期間、つまり土用にしました。国立天文台の暦計算室も、こう説明しています。だから土用は本当は年に4回あり、立春・立夏・立秋・立冬の前にそれぞれやってきます。

次に「丑」。十二支(子・丑・寅…)は年だけでなく、日にもふり分けられています。日の十二支は12日でひと回りするので、丑の日は12日に1回来ます。

夏の土用は、太陽の位置で決まり、7月19日か20日ごろに始まって、立秋の前日(8月6日か7日ごろ)に終わります。長さは18日か19日ほど。この中に丑の日が2回入る年は、1回目を「一の丑」、2回目を「二の丑」と呼びます。暦から計算すると、2025年は7月19日と7月31日、2026年は7月26日だけ、2027年は7月21日と8月2日、2028年は7月27日です。

土用の丑の日(Doyo no Ushi no Hi (Eel Day))のイラスト

2うなぎを食べる由来:平賀源内説はホント?

いちばん有名なのは、江戸時代の学者・発明家の平賀源内の話です。夏にうなぎが売れずに困っていたうなぎ屋に、源内が「本日丑の日」と書いた紙を店先に貼るようすすめた。するとお店が大はやりし、ほかの店もまねをした、というものです。

ただ、この話には、はっきりした証拠がありません。よく出典にあげられる本を調べても、この話は書かれていないと指摘されています。研究書の中には、源内の話も、狂歌師の大田南畝が広めたという別の話も、比較的新しい「伝説」だろうとするものがあります。ほかに、うなぎ屋の春木屋が始めたという説もありますが、こちらも確かな記録は見つかっていません。

一方で、江戸時代の『明和誌』という本は、土用の丑の日にうなぎを食べる習慣は安永・天明のころ(1770〜80年代)に始まったと書いています。「誰が始めたか」はわからなくても、「江戸の町で広まった」ことは確かなようです。

夏にうなぎで元気をつけるという考えは、もっと古くからあります。奈良時代の『万葉集』には、大伴家持が、やせた友人の石麻呂に「夏やせによいというから、うなぎ(むなぎ)をとって食べなさい」とからかう歌があります。

また、丑の日には「う」のつく食べ物を食べると夏負けしないとも言われ、昔は瓜やうどん、梅干しなども食べられました。

🕰️ 土用の丑の日の年表

  1. 奈良時代(8世紀)『万葉集』に、大伴家持が夏やせの友人に「むなぎ(うなぎ)を食べなさい」とからかう歌がのる。
  2. 1770〜80年代(安永・天明)『明和誌』によると、このころ土用の丑の日にうなぎを食べる習慣が始まる。
  3. 1869年(明治2年)土用の始まりを太陽の位置(黄経)で決める方法が暦に取り入れられる(国立天文台)。
  4. 2000年日本で出回るうなぎの量がピークの約16万トンに。多くは輸入。
  5. 2010年日本の研究機関が、卵から育てたうなぎに卵を産ませる「完全養殖」に世界で初めて成功。
  6. 2025年土用の丑が7月19日と7月31日の2回。ワシントン条約でウナギ全種の規制案が否決される。

3土用の丑の日の過ごし方:関東と関西でうなぎがちがう

当日は、うなぎ屋の前に行列ができ、スーパーには「う」の大きなのぼりが立ちます。家でうな丼やうな重を食べる人も多い日です。

おもしろいのは、同じかば焼きでも東と西で作り方がちがうことです。関東では、うなぎを背中から開き、一度素焼きしてから蒸して脂を落とし、たれをつけて焼きます。ふっくら、さっぱりした味になります。関西ではおなかから開き、蒸さずにそのまま焼くので、外はパリッと香ばしくなります。

「武士の町の江戸では切腹を思わせる腹開きをきらった」という話もありますが、これは俗説とされています。背開きのほうが蒸しても身がくずれにくいなど、料理としての理由があったと考えられています。

「かば焼き」という名前は、昔はうなぎを丸ごと串に刺して焼き、その形が植物の蒲(がま)の穂に似ていたから、という説が有力です。

土用の食べ物はうなぎだけではありません。土用しじみ、土用餅、土用卵などもあります。また、梅雨明けのこの時期に、梅干しや衣類・本を日に当てる「土用干し」をする家もあります。

🎁 シンボルと小物

🐂丑(うし)ox (ushi)

十二支の2番目。日にも十二支があり、丑の日は12日に1回来る。

🚩「う」ののぼりnobori banner

うなぎ屋やスーパーの店先に立つ旗。ひらがなの「う」1文字で伝わる。

🔥炭火charcoal grill

かば焼きは炭火で焼く。たれが焦げる甘い香りが通りまで広がる。

🍱うな重unaju (eel on rice in a box)

重箱に入ったうなぎご飯。どんぶりに入れたものはうな丼。

🌿山椒sansho pepper

うなぎにかける、ぴりっとしびれる香りの粉。

4よくある誤解とホント:うなぎの旬は夏じゃない?

誤解1:土用の丑の日は毎年1回。
12日に1回めぐる丑の日が18〜19日の土用に入るので、2回ある年も珍しくありません。2025年の二の丑は7月31日でした。

誤解2:うなぎの旬は夏。
天然のうなぎは、冬にそなえて脂をためる秋の終わりから冬が一番おいしいとも言われます。源内の話で「夏はうなぎが売れなかった」と語られるのも、そのためかもしれません。今は養殖がほとんどなので、季節の差は小さくなっています。

誤解3:うなぎはいくらでもとれる。
ニホンウナギは、環境省のレッドリストで2013年に「絶滅危惧IB類」とされました。日本で出回るうなぎの量は、水産庁によると2000年の約16万トンがピークで、2025年は約6万4千トンです。ニホンウナギは日本から約2,000km離れたマリアナ諸島の近くの海で生まれます。その産卵場所が突き止められたのは2011年のことでした。

卵からうなぎを育てる「完全養殖」には2010年に日本の研究機関が世界で初めて成功しました。ただ、人工の稚魚は1匹作るのに約1,800円かかり、天然の稚魚の取引価格よりかなり高いのが課題です。2025年にはワシントン条約でウナギ全種の取引を規制する案が出され、反対多数で否決されました。夏の楽しみを、これからも続けられるか。土用の丑の日は、そんなことを考える日にもなっています。

💡Fun Facts土用の丑の日の豆知識 6連発

No.1

丑の日がいちばん早く「二の丑」になるのは7月31日。2025年はその年で、計算では次に7月31日が二の丑になるのは2041年です。

In 2025, the second Day of the Ox was July 31. It will not be on July 31 again until 2041.

No.2

土用は年に4回あるので、丑の日も冬・春・秋の土用にあります。長野県岡谷市の「うなぎのまち岡谷の会」は、冬の土用の丑の日を「寒の土用の丑の日」として記念日に登録しています。

There is also a Day of the Ox in winter. One town in Nagano eats eel on that day too.

No.3

『万葉集』の大伴家持の歌は、やせた友人をからかう冗談の歌。1300年近く前から「夏やせにはうなぎ」と言われていたことがわかります。

About 1,300 years ago, a poet joked that his thin friend should eat eel in summer.

No.4

新選組の土方歳三の家に伝わる薬「石田散薬」は、土用の丑の日にだけ作られたと伝えられています。

A family medicine of Hijikata Toshizo was made only on the Day of the Ox, people say.

No.5

人工のうなぎの稚魚は1匹作るのに約1,800円(2023年度)。天然の稚魚の取引価格は1匹180〜600円ほどで、まだ大きな差があります(水産庁)。

One baby eel from a lab costs about 1,800 yen to make. That is still very expensive.

No.6

ニホンウナギの産卵場所は、日本から約2,000kmも離れたマリアナ諸島の近くの海。突き止められたのは2011年です。

Japanese eels are born in the sea near the Mariana Islands, about 2,000 kilometers away.

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