
Diwali
ディワリ(光の祭り)の由来と歴史(詳しく)
いつから?なぜ?名前の意味は? ディワリ(光の祭り)の本当の話を、確かな資料でたどります。
1ディワリの由来:14年ぶりに帰ってきた王子を、ランプで迎えた夜
インドの古い叙事詩『ラーマーヤナ』の主人公、ラーマ王子。彼は国を追われ、14年もの間、森で暮らすことになりました。その間に妻のシーターを魔王ラーヴァナにさらわれ、長い戦いの末に取り戻します。そしてついに、故郷の都アヨーディヤーへ帰る日がやってきました。
その夜は新月で、空は真っ暗でした。そこで都の人々は、王子たちが道に迷わないように、家々に油のランプをずらりと並べて迎えた、と語られています。北インドでは、これがディワリの始まりとしてよく知られた物語です。
ただし、ディワリの物語は1つではありません。南インドでは、クリシュナ神が悪王ナラカースラを倒し、捕らわれていた娘たちを救った日として祝う人が多くいます。東インドのベンガル地方では、同じ夜に女神カーリーをまつります。そして全国で広く拝まれるのが、富と幸運の女神ラクシュミーです。ディワリの夜、ラクシュミーは明るく清らかな家を訪れると信じられています。
ヒンドゥー教以外の人たちにも、それぞれのディワリがあります。ジャイナ教では、24人の祖師(ティールタンカラ)の最後の1人、マハーヴィーラが亡くなって涅槃(ねはん)に入った日。伝承では紀元前527年のこととされます。シク教では、第6代グル・ハルゴービンドが牢獄から釈放された日を「バンディ・チョール・ディヴァス(囚われ人の解放の日)」として祝います。ネパールのネワール仏教徒の人々も、この時期を祝います。
物語も神さまも違うのに、どの宗教でも共通しているのは「光」です。光が闇に、善が悪に、知恵が無知に勝つ。ディワリは、そんな願いを、何百万もの小さな炎にたくして祝うお祭りなのです。

2ディワリの歴史:7世紀の劇から、ユネスコ無形文化遺産まで
ディワリのような灯明の祭りは、古いヒンドゥー教の聖典『パドマ・プラーナ』や『スカンダ・プラーナ』にも出てきます。
7世紀には、インド北部を治めたハルシャ王が書いたサンスクリット語の劇『ナーガーナンダ』に、「ディーパプラティパドゥトサヴァ(灯明の祭り)」が登場します。そこではランプが灯され、婚約したばかりの男女に贈り物が配られていました。今もディワリに贈り物をし合う習慣を思わせる場面です。
11世紀には、中央アジア出身の学者アル・ビールーニーがインドを詳しく記録し、カールッティカ月の新月の日にヒンドゥー教徒が「ディーパーヴァリー」を祝うと書き残しています。1000年前の外国人の目にも、ディワリはとても印象的だったのでしょう。
シク教のディワリには、こんな話が伝わっています。グル・ハルゴービンドは、ムガル帝国のジャハーンギール帝によってグワーリヤル城に閉じこめられていました。釈放が決まったとき、グルは「いっしょに捕らわれていた52人の王たちも解放してほしい」と願います。皇帝は「グルの服をつかんでいられる者だけ」と答えました。そこでグルは、52本のひもをつけた上着を作らせ、王たち全員を連れて出たというのです。グルがアムリトサルに戻った日、町は灯りで照らされたと伝えられています。
近年、ディワリは世界の行事になりました。アメリカのホワイトハウスでは2003年に初めてディワリの行事が開かれ、2009年にはオバマ大統領が初めて自ら出席しました。イギリスの首相官邸でも2009年から毎年祝われています。2025年10月の時点で、カリフォルニア州・コネチカット州・ペンシルベニア州がディワリを州の祝日に定めています(ただし、役所や会社が必ず休みになるわけではありません)。
そして2025年12月、ディワリはユネスコの無形文化遺産に登録されました。インドからの登録は、ヨガなどに続いて16件目です。同じ年の10月、ラーマ王子の都アヨーディヤーでは、ディワリの前夜に261万7,615個の油ランプが灯され、ギネス世界記録になりました。
🕰️ ディワリ(光の祭り)の年表
- 紀元前527年(ジャイナ教の伝承)マハーヴィーラが涅槃に入ったとされる。ジャイナ教のディワリの起源。
- 7世紀ハルシャ王の劇『ナーガーナンダ』に灯明の祭りが登場。
- 11世紀学者アル・ビールーニーが、カールッティカ月の新月の祭りとして記録。
- 17世紀前半シク教のグル・ハルゴービンドが52人の王とともに釈放されたと伝えられる。
- 2003年アメリカのホワイトハウスで初めてディワリの行事。
- 2009年オバマ大統領が自ら出席。イギリス首相官邸でも毎年祝うように。
- 2016年パキスタン国会が、ディワリをヒンドゥー教徒の祝日とする決議。
- 2023年ニューヨーク市がディワリを公立学校の休日にすると決定。
- 2025年10月アヨーディヤーで261万7,615個の油ランプが灯され、ギネス世界記録に。
- 2025年12月ユネスコの無形文化遺産に登録。
3「Diwali」の意味:サンスクリット語で「ランプの列」
Diwali(ディワリ)は、サンスクリット語の Deepavali(ディーパーヴァリ) が短くなった言葉です。dīpa(ディーパ)は「灯り、ランプ」、āvali(アーヴァリ)は「列、並び」。合わせて「ランプの列」という意味になります。家の戸口や窓、屋上のへりに、小さなランプがずらりと並ぶ光景そのものが、お祭りの名前になっているのです。
呼び方は地域によって少しずつ違います。南インドやシンガポール、マレーシアでは Deepavali(ディーパバリ)と言うことが多く、カリブ海のトリニダード・トバゴでは Divali とつづります。ネパールでは「ティハール」と呼び、5日間それぞれに独自の名前がついています。
英語では Festival of Lights(光の祭り)と説明されます。あいさつは Happy Diwali! がいちばん簡単です。インドではヒンディー語で「シュブ・ディーパーヴァリ(よいディワリを)」と言うこともあります。
ディワリの言葉には、日本語と意外なつながりをもつものがあります。ディワリの主役の女神ラクシュミーは、サンスクリット語で「シュリー(吉祥)」とも呼ばれ、仏教に取り入れられて日本の吉祥天になりました。奈良の薬師寺にある吉祥天の絵は国宝です。また、ディワリ初日の夜には、死の神ヤマのために灯りをともす習わし(ヤマ・ディーパム)がある地域があります。このヤマこそ、日本の閻魔大王(えんまだいおう)のもとになった神です。
つまり、日本人は名前を知らないうちに、ディワリの神さまたちとすでに出会っているのです。
4インドのディワリの過ごし方:5日間でこんなに違う
ディワリはふつう5日間続きます。日ごとに意味と主役が変わるのがおもしろいところです。
1日目 ダンテラス 大掃除をして、家をぴかぴかにします。金や銀、新しい台所の道具など、金属の物を買うと縁起がよいとされ、この日は宝石店がにぎわいます。夜には死の神ヤマのためにランプを灯す地域もあります。
2日目 ナラカ・チャトゥルダシー(小さなディワリ) クリシュナ神が悪王ナラカースラを倒した日。南インドではこの日の夜明け前に油を体に塗って沐浴し、新しい服を着るのが習わしで、ここをディワリの本番とする地域もあります。
3日目 ラクシュミー・プージャー いちばん大切な夜です。新月で真っ暗な夕方、家族そろって女神ラクシュミーと、知恵の神ガネーシャに祈ります。そのあと、素焼きのランプディヤを家じゅうに並べ、花火を上げ、ごちそうを囲みます。インドの商人にとっては新しい帳簿を開く「仕事のお正月」でもあります。株式市場は休みですが、夕方に1時間だけ「ムフラト取引」という縁起かつぎの取引が行われます。
4日目 ゴーヴァルダン・プージャー(アンナクート) クリシュナ神が山を持ち上げて村人を大雨から守った話にちなみ、たくさんの料理を山のように盛って神に供えます。西インドのグジャラート州では、この日が新年です。
5日目 バイ・ドゥージ きょうだいの日。姉妹が兄弟の額に赤い印(ティラカ)をつけて幸せを祈り、兄弟は贈り物を返します。
5日間を通して欠かせないのが、玄関前のランゴーリです。色の粉や米の粉、花びらで、床に花や幾何学もようの大きな絵を描きます。そして近所や親せきの家を訪ね、色とりどりのお菓子の箱を贈り合います。日本のお歳暮やお年賀に少し似た、人と人をつなぐ習慣です。
🎁 シンボルと小物
粘土を焼いた小皿に油を入れ、綿の芯で灯す。戸口や窓辺にずらりと並べる。
色の粉や米粉、花びらで玄関前の床に描く模様。女神を迎える入り口の飾り。
女神ラクシュミーはハスの花の上に座る姿で描かれることが多い。
本番の夜は月のない真っ暗な夜。だからこそ灯りがいちばん美しく見える。
夜空を彩る人気の楽しみ。ただし大気汚染のため制限する町も増えている。
初日のダンテラスに金属の物を買うと縁起がよいとされる。
ネパールのティハール2日目は犬に感謝する日。マリーゴールドの花輪をかける。
🍽️ この日の食べ物
ディワリに箱で贈り合う甘いお菓子の総称。牛乳や豆の粉、ナッツ、砂糖をたっぷり使う。
豆の粉などを丸めた甘いボール形のお菓子。お祝いの定番で、神さまへのお供えにもなる。
カシューナッツと砂糖で作るひし形のお菓子。銀箔をのせることもある。
牛乳で米を甘く煮たインドのライスプディング。お祝いの日によく作られる。
4日目に、たくさんの料理を山のように盛って神に供える習わし。名前は「食べ物の山」の意味。
5海外のディワリ:ネパールでは「犬の日」、イギリスでは「黄金の1マイル」
ディワリは、インドの外でも大きなお祭りです。特に驚かされるのが、ネパールのティハールです。5日間のうち、1日目はカラス、2日目は犬、3日目は牛に感謝をささげます。
2日目の「ククル・ティハール(犬の日)」には、飼い犬にも野良犬にも、首にマリーゴールドの花輪をかけ、額に赤いティカをつけ、ごちそうをあげます。ちなみに1日目のカラスは、死の神ヤマの使いと考えられています。3日目の夜には家々に灯りがともされ、子どもたちは「デウシ・バイロ」という歌を歌いながら家々を回り、お金やお菓子をもらいます。ハロウィンや、日本の昔の正月の門付けに少し似ています。
イギリス中部の町レスターは、インド系の住民が多いことで知られます。インド料理店やサリーの店、宝石店が並ぶベルグレイブ通りは「ゴールデン・マイル(黄金の1マイル)」と呼ばれ、ディワリの祝いは「インド亜大陸の外で最大級」と言われます。
シンガポールでは、リトル・インディアの通りが光の飾りでいっぱいになり、ディワリは国の祝日です。マレーシアでも祝日で、家を開放して友だちを招く「オープンハウス」でにぎわいます。
19世紀にインドから多くの人が移り住んだカリブ海のトリニダード・トバゴや、南米のガイアナ、太平洋のフィジーでも、ディワリは国の祝日です。インドから遠く離れた島々でも、同じ夜にディヤが灯されます。
アメリカでは、ニューヨーク市が2023年にディワリを公立学校の休日にすると決めました。パキスタンでも2016年に、国会がディワリを少数派のヒンドゥー教徒の祝日とする決議をしています。
6日本とディワリ:吉祥天・閻魔(えんま)さま、そして西葛西
ディワリは日本の祝日ではありません。でも、日本とディワリの距離は、思ったよりずっと近いのです。
まず神さまのつながりです。ディワリの夜に迎えられる女神ラクシュミーは、仏教に取り入れられ、日本では吉祥天になりました。美と幸福と富をもたらす女神で、奈良時代には吉祥天に罪をわびて国の平安を祈る「吉祥悔過(きちじょうけか)」という儀式が行われていました。薬師寺の吉祥天の絵は国宝です。仏教では毘沙門天(びしゃもんてん)の妻とされています。
ディワリ初日の夜に灯りをささげられる死の神ヤマは、日本では閻魔大王です。そして、ラクシュミー・プージャーでいっしょに拝まれる象の頭の神ガネーシャも、日本では「聖天(歓喜天)」として、お寺でまつられています。ディワリの夜の神さまたちが、名前と姿を変えて日本のお寺にいるのです。
次に、今の日本に住むインドの人たちです。東京都江戸川区の西葛西は、インド人が多く住む町として知られています。きっかけは「2000年問題」。コンピューターが2000年を正しく扱えないかもしれないという問題に対応するため、インドから多くのIT技術者が招かれました。都心のIT企業に地下鉄1本で通える西葛西に、少しずつコミュニティができていきます。2018年には、日本に住むインド人約3万5,000人のうち、約1割が江戸川区に住んでいたとされます。
こうした町では、秋になると家の中でディヤを灯し、お菓子を分け合ってディワリを祝う家庭があります。
日本にも、灯りで大切な人を迎える行事があります。お盆の迎え火や、灯籠流しです。ディワリが王子を迎えるランプなら、お盆はご先祖さまを迎える火。国も宗教も違いますが、「暗い夜に灯りをともして、大切な人を迎える」という気持ちは、よく似ています。
7ディワリのよくある誤解とホントのところ
誤解1:ディワリはヒンドゥー教だけのお祭り
ホント:ジャイナ教ではマハーヴィーラの涅槃の日、シク教ではグル・ハルゴービンドの釈放の日として祝われます。ネパールのネワール仏教徒も祝います。
誤解2:毎年同じ日の1日だけのお祭り
ホント:ヒンドゥー暦の新月にもとづくので、毎年10月中旬から11月中旬の間で日付が変わります。祝う期間もふつう5日間です。地域によって「本番」の日が1日ずれることもあります。
誤解3:インド中で同じ神さまに、同じ話で祝う
ホント:北インドはラーマ王子の帰還、南インドはクリシュナ神のナラカースラ退治、ベンガル地方は女神カーリーと、地域によって主役が違います。
誤解4:ホーリーと同じ「色の祭り」
ホント:色の粉をかけ合うホーリーは春のお祭りです。ディワリは秋の「光の祭り」で、主役はランプです。どちらもインドの大きなお祭りなので、よく混同されます。
誤解5:ディワリといえば花火が主役
ホント:名前の意味は「ランプの列」で、中心は灯りと祈りです。花火も人気ですが、大気汚染が深刻な問題になっています。2023年には、ディワリの夜にニューデリーの大気汚染が一時的に世界最悪の水準になりました。花火を制限する町も増えています。
誤解6:インドのお正月
ホント:インド全体の新年ではありません。ただし、グジャラート州ではディワリの4日目が新年で、商人にとっては新しい帳簿を開く「仕事の新年」でもあります。
💡Fun Factsディワリ(光の祭り)の豆知識 10連発
2025年10月、アヨーディヤーでディワリの前夜に261万7,615個の油ランプが灯され、ギネス世界記録になった。
In 2025, people in Ayodhya lit more than 2.6 million oil lamps. It was a world record.
ネパールのティハールには「犬の日」があり、犬にマリーゴールドの花輪をかけてごちそうをあげる。
In Nepal, there is a day for dogs. People give dogs flowers and good food.
シク教のグル・ハルゴービンドは、52本のひもをつけた上着を作り、いっしょに捕らわれていた52人の王を連れて牢獄を出たと伝えられる。
A Sikh teacher wore a coat with 52 strings. He led 52 kings out of prison.
インドの株式市場はディワリに休むが、夕方に1時間だけ「ムフラト取引」という縁起かつぎの取引をする。
Indian stock markets close for Diwali, but they open for one special hour.
ディワリの女神ラクシュミーは、日本では吉祥天。薬師寺の吉祥天の絵は国宝になっている。
The goddess Lakshmi became Kisshoten in Japan.
アメリカのホワイトハウスで初めてディワリの行事が開かれたのは2003年。2009年にはオバマ大統領が初めて自ら出席した。
The White House first celebrated Diwali in 2003.
グジャラート州では、ディワリの4日目が新年。商人はこの時期に新しい帳簿を開く。
In Gujarat, the New Year starts on the fourth day of Diwali.
7世紀のハルシャ王の劇には、ランプを灯し、婚約したばかりの男女に贈り物をする灯明の祭りが出てくる。
A play from the 600s shows a festival of lamps and gifts.
2023年のディワリの夜、ニューデリーの大気汚染指数が680に達し、一時的に世界最悪になった。
In 2023, the air in New Delhi was very dirty after Diwali fireworks.
ディワリは2025年12月にユネスコの無形文化遺産に登録された。インドから16件目の登録だった。
In 2025, Diwali joined UNESCO's list of important world traditions.
▶️Videos & Linksディワリ(光の祭り)の動画とリンク集
Diwali - Festival of Lights | National GeographicNational Geographic
Story of Ramayana | Why is Diwali called the Festival of Light? | Diwali Mythology | The Dr. BinocsPeekaboo Kidz
Hindu festival of Diwali celebrated by millions around globe - BBC NewsBBC News

