
Day of the Dead
死者の日(ディア・デ・ムエルトス)の由来と歴史(詳しく)
いつから?なぜ?名前の意味は? 死者の日(ディア・デ・ムエルトス)の本当の話を、確かな資料でたどります。
1死者の日の由来:アステカの祭り?それともスペインのお祭り?
メキシコの11月の墓地は、夜になるほどにぎやかになります。ろうそくの火、オレンジ色の花、ギターの音。亡くなった人に会いに来た家族が、お墓のまわりで食べたり歌ったりしているのです。
この行事の由来には、大きく2つの見方があります。1つは、スペイン人が来る前の先住民の文化から来たという考え方です。アステカ(メシカ)の人々の暦には、死者のための祭りがありました。夏(今の7〜8月ごろ)には「小さな死者の祭り」「大きな死者の祭り」が開かれたと伝えられ、10月下旬から11月はじめにかけての祭り「ケチョリ(Quecholli)」が先がけだったという説もあります。死者の国ミクトランへ向かう魂を、犬が案内するという考えもありました。
もう1つは、16世紀にスペインから持ちこまれたカトリックの習慣が中心だという見方です。11月1日の「諸聖人の日」と11月2日の「死者の日(万霊節)」は、ヨーロッパのキリスト教の祝日です。墓に花を供え、骨の形のお菓子を作り、死者のために祈る習慣は、スペインにもありました。メキシコの歴史家エルサ・マルビドは、先住民起源説を否定し、今の形は20世紀に国の誇りとして作られた面が大きいと主張しています。
メキシコの学者の間でも意見は分かれていますが、一般には「両方が混ざり合った(習合した)」と説明されることが多いです。ユネスコも、この祭りがトウモロコシの1年の栽培の終わりと重なると説明しています。先住民の農業の暦と、カトリックの祝日。2つの流れが重なった場所に、今の死者の日があります。

2死者の日の歴史:村の行事から「メキシコの顔」へ
19世紀、ベニート・フアレス大統領の改革法によって、家族の墓は教会から町の公営墓地へ移されました。死者の日の舞台となる「墓地」の形が、このころ整っていきます。
20世紀の初め、版画家ホセ・グアダルーペ・ポサダが、おしゃれな帽子をかぶったガイコツの女性を描きました。のちに「ラ・カトリーナ」と呼ばれる絵です。1930年代には、ラサロ・カルデナス大統領の政府が、カトリック教会から切り離した「国の文化」として死者の日を後押ししました。そして1946〜47年、画家ディエゴ・リベラが巨大な壁画にカトリーナを描き、ガイコツはメキシコという国のシンボルになっていきます。
2003年、ユネスコは死者の日を「人類の口承及び無形遺産の傑作」に宣言し、2008年に無形文化遺産の代表一覧表に記載しました。正式な名前は「死者に捧げる先住民の祭り」です。
そして21世紀、映画が祭りを変えます。2015年の映画『007 スペクター』は、メキシコシティの巨大な死者の日パレードの場面から始まりました。でも当時、そんなパレードは実在しませんでした。映画が話題になった翌年の2016年10月29日、本物のパレードが初めて開かれ、約25万人が集まりました。2017年にはピクサーの『リメンバー・ミー(原題 Coco)』が公開され、メキシコで歴代1位のヒット作になります。今では死者の日は、アメリカのアリゾナ州ツーソンやカリフォルニア州の町など、国境の外でも祝われています。
🕰️ 死者の日(ディア・デ・ムエルトス)の年表
- スペイン到来以前アステカ(メシカ)の暦に、死者のための祭りがあった。
- 16世紀スペインの征服とともに、11月1日・2日のカトリックの祝日が持ちこまれる。
- 19世紀なかばフアレス大統領の改革法で、墓が教会から公営墓地へ移される。
- 1913年ポサダのガイコツの貴婦人の版画が、死者の日のちらしに印刷される。
- 1930年代カルデナス政権が死者の日を「国の文化」として後押しする。
- 1936年張り子職人ペドロ・リナレスが、熱にうなされた夢から空想の生き物「アレブリへ」を作り始める。
- 1946〜47年ディエゴ・リベラが壁画にカトリーナを描き、国のシンボルにする。
- 1990年アメリカ・アリゾナ州ツーソンで「オール・ソウルズ・プロセッション」が始まる。
- 2003年ユネスコが「人類の口承及び無形遺産の傑作」に宣言。
- 2008年ユネスコの無形文化遺産(代表一覧表)に記載される。
- 2016年映画『007 スペクター』をきっかけに、メキシコシティで初の大パレード。約25万人が集まる。
- 2017年ピクサー映画『Coco(リメンバー・ミー)』公開。メキシコで歴代興行収入1位に。
3「Día de Muertos」の意味:ガイコツは笑っている
スペイン語の Día de Muertos は「死者たちの日」。Día de los Muertos とも言います。英語では Day of the Dead です。
この日の主役は calavera(カラベラ)、スペイン語で「頭蓋骨」です。ところが、メキシコでは calavera にもう1つの意味があります。この時期に新聞や学校で作られる、ユーモアたっぷりの短い詩「カラベラ・リテラリア(文学のガイコツ)」です。生きている政治家や先生、友だちを「死んだことにして」からかう詩で、18〜19世紀から続いています。死をネタにして笑う、メキシコらしい言葉遊びです。
祭壇は ofrenda(オフレンダ)。「ささげもの」という意味で、英語の offering と同じ仲間の言葉です。
祭壇を飾るオレンジのマリーゴールドは、cempasúchil(センパスチル)と呼ばれます。もとはアステカの言葉ナワトル語の cempohualxochitl で、意味は「20の花」。アステカの数え方は20を1つのまとまりとする20進法なので、「20」は「たくさん、完全」を表すとも言われます。別名は flor de muerto(死者の花)。
切り絵の旗 papel picado(パペル・ピカド)は「穴をあけた紙」という意味です。うすい色紙を40〜50枚重ね、のみで一気に模様を打ち抜きます。祭壇では「風(空気)」を表すとされます。
4メキシコでの過ごし方:オレンジの花びらの道をたどって
10月の終わり、メキシコの市場はオレンジ色に染まります。山のように積まれたマリーゴールド、ガイコツ形の砂糖菓子、そして甘い香りのパン「パン・デ・ムエルト(死者のパン)」。家族は家に祭壇(オフレンダ)を作り始めます。
祭壇には、亡くなった人の写真、ろうそく、水、塩、花、そして故人の好物を並べます。おじいちゃんが好きだったテキーラ、おばあちゃんの得意だったタマレス。墓地から家まで花びらをまいて、魂が迷わないように道しるべを作ります。死者は食べ物の「本質(香りや気配)」を味わうと考えられていて、供えた料理は、あとで家族が食べることもあります。
どの日に誰を迎えるかは地域で違います。多くの場所で、11月1日は亡くなった子どもたち(アンヘリートス=小さな天使)、11月2日は大人の魂を迎える日です。10月28日は事故などで亡くなった人、10月27日はペットの日とする地域もあります。
夜の墓地は、この祭りのクライマックスです。メキシコシティ南部のミスキックでは、人々が墓のそばで一晩を過ごします。ミチョアカン州のパツクアロ湖では、11月2日の真夜中、「マリポサ(チョウ)」と呼ばれる小舟が湖に浮かび、島の墓地ハニツィオへ向かいます。数えきれないろうそくが水面に映る光景は、一度見たら忘れられません。
11月4日ごろには祭壇を片づけ、魂はまた1年後まで帰っていきます。
🎁 シンボルと小物
家に作る死者のための祭壇。写真・ろうそく・水・塩・花・好物を並べる。何段にも重ねた巨大な祭壇を作る町もある。
ナワトル語で「20の花」。強い色と香りが魂を家まで導くとされ、花びらで道を作る。
笑ったガイコツは死者の日の顔。砂糖菓子、張り子、化粧、そしてユーモアの詩にもなる。
帽子をかぶったガイコツの貴婦人。ポサダの版画(1910年代)から生まれ、リベラの壁画で有名になった。
40〜50枚の色紙を重ねてのみで打ち抜く。祭壇では風(空気)を表すとされる。
メキシコ原産の毛の少ない犬。魂を死者の国へ案内すると言われてきた。『リメンバー・ミー』のダンテ。
動物を組み合わせた色あざやかな空想の生き物の張り子。1936年にペドロ・リナレスが夢から生み出した。
🍽️ この日の食べ物
丸いパンの上に骨の形の飾りと、頭蓋骨を表す丸い玉。オレンジの花の香りやアニスで風味をつける。
砂糖で作ったカラフルなガイコツ。祭壇に供えるほか、子どもたちのお菓子にもなる。
トウモロコシの生地に具を包んで蒸した料理。故人の好物として供えられることが多い。
トウモロコシの粉でとろみをつけた温かい飲み物。チョコレート入りがチャンプラード。
かぼちゃを黒っぽい未精製の砂糖で煮た甘いお菓子。死者の日の祭壇によく供えられる。
5ラ・カトリーナの由来:おしゃれなガイコツは「風刺画」だった
大きな飾り帽子をかぶり、ドレスを着た骸骨の貴婦人。死者の日の顔ともいえる「ラ・カトリーナ」は、アステカの女神……ではありません。生まれは20世紀の版画です。
描いたのは、メキシコの版画家ホセ・グアダルーペ・ポサダ(1852〜1913)。亜鉛板に刻まれたこの絵は1910〜1912年ごろの作品とされ、確実に印刷されたのは1913年のことです。当時はポルフィリオ・ディアス大統領の長い独裁の時代。ヨーロッパの流行をまねして着飾る上流階級の女性を、「どんなに着飾っても、死ねばみんな骨」と皮肉った絵だと考えられています。
おもしろいのは、最初にこの絵が載った1913年のちらしの文章が、ひよこ豆を売る働く女性たちをからかう内容だったこと。絵と文章で、ねらう相手が逆になっていました。しかもポサダはその年に亡くなり、この絵の大ブームを知ることはありませんでした。「カラベラ・カトリーナ」という題名が本に登場するのは1930年。catrín は「しゃれ男、気取り屋」という意味のスペイン語です。
カトリーナを国民的スターにしたのは、画家ディエゴ・リベラです。1946〜47年の長さ15.6メートルの壁画『アラメダ公園の日曜の午後の夢』の真ん中に、等身大のカトリーナを描きました。となりには黒い服のポサダ、カトリーナと手をつなぐ少年はリベラ自身、後ろには妻フリーダ・カーロ。今では人々がカトリーナの化粧や衣装でパレードに参加し、ハロウィンのジャック・オー・ランタンに対する「メキシコの顔」として扱われています。
6日本のお盆とそっくり?『リメンバー・ミー』と死者の日
死者の日の話を聞いて、「お盆みたい」と思った人は鋭いです。
年に一度、亡くなった家族が家に帰ってくる。家には写真を飾った祭壇を作り、故人の好物を供える。迎え火のように、ろうそくや花びらで帰り道を照らす。お墓に家族が集まり、また来年と送り出す。日本のお盆と死者の日は、驚くほどよく似ています。お盆の「精霊馬(キュウリの馬とナスの牛)」が魂の乗り物なら、メキシコでは毛の少ない犬ショロイツクインツレが魂を死者の国へ案内すると言われてきました。
違いは雰囲気です。日本のお盆は静かにしのぶ行事ですが、メキシコでは楽団が演奏し、ガイコツの仮装をした人々が踊り、墓地でにぎやかに再会を祝います。
日本で死者の日が広く知られたのは、ピクサー映画『リメンバー・ミー』がきっかけです。原題は主人公の曾祖母の名前『Coco』で、日本では2018年3月16日に公開され、興行収入は約50億円。死者の国の色あざやかな橋はマリーゴールドの花びらでできていて、主人公の相棒の犬ダンテはショロイツクインツレです。映画を見てから死者の日の飾りを見ると、細かいところまで本物の習慣にもとづいていることがわかります。
7死者の日のよくある誤解:「メキシコのハロウィン」ではない
誤解1:死者の日はメキシコ版ハロウィン
日付が近く、ガイコツも出てくるので混同されがちですが、別の行事です。ハロウィンはアイルランドやスコットランドから北米へ広まった仮装とお菓子の夜。死者の日は、亡くなった家族を家に迎え、思い出を語る家族の行事です。こわがるのではなく、会いたい人を待つ日なのです。メキシコでは最近、両方を楽しむ人も増えています。
誤解2:悲しくて暗いお祭り
もちろん故人をしのぶ日ですが、雰囲気は明るく、音楽や笑いがあふれます。死を遠ざけず、身近なものとして受け止める考え方が表れています。
誤解3:ラ・カトリーナはアステカの死の女神
アステカには死者の国の女神の神話がありますが、カトリーナそのものは1910年代のポサダの風刺版画から生まれ、1940年代のリベラの壁画で有名になりました。
誤解4:メキシコシティの大パレードは大昔からの伝統
最初の開催は2016年。映画『007 スペクター』(2015年)に出てくる架空のパレードがきっかけです。
誤解5:メキシコの国の祝日で、国中が休み
法律で定められた休日ではなく、会社や銀行はふつうに開いています。学校は休みになることが多いです。
💡Fun Facts死者の日(ディア・デ・ムエルトス)の豆知識 12連発
メキシコシティの大パレードは、2015年の映画『007 スペクター』の冒頭に出てくる架空のパレードがきっかけで、2016年に始まった。映画が現実の伝統を生んだ例として、「ピザ効果」と呼ばれることもある。
The big parade in Mexico City started in 2016, one year after a James Bond movie showed a parade that did not exist.
2013年、ディズニーが「Día de los Muertos」を商標登録しようとして大きな反発を受けた。反対の署名は2万1000人以上集まり、ディズニーは約1週間で申請を取り下げた。
In 2013, Disney tried to own the name Día de los Muertos for its products. People got angry, and Disney stopped after about a week.
『リメンバー・ミー(Coco)』はメキシコでアメリカより約1か月早く公開され、それまで1位だった『アベンジャーズ』を抜いて、メキシコの歴代興行収入1位になった。
The movie Coco opened in Mexico about one month before the United States. It became the top movie ever in Mexico.
日本語の題名『リメンバー・ミー』は、映画の中で歌われる歌の題名。この歌は2018年のアカデミー賞で歌曲賞に選ばれ、映画も長編アニメ映画賞をとった。
Remember Me is a song in the movie Coco. In 2018, the song and the movie both won Academy Awards.
アレブリへ(色あざやかな空想の生き物の張り子)は、1936年、重い病気で熱にうなされた職人ペドロ・リナレスの夢から生まれた。夢の中で生き物たちが「アレブリへ!」と叫んでいたという。
In 1936, an artist named Pedro Linares had a strange dream when he was very sick. Colorful animals in the dream shouted, Alebrijes!
『リメンバー・ミー』の犬のダンテと猫のペピータは、死者の国で魂を導くアレブリへの姿になる。ペピータはジャガーの頭と体に、ヒツジの角、ワシの翼と後ろ足、イグアナのしっぽ。夢から生まれた張り子の生き物が、映画では魂の案内役になった。
In Coco, the dog Dante and the cat Pepita become alebrijes. Pepita has the wings of an eagle and the tail of an iguana.
マリーゴールドを表すセンパスチルは、アステカの言葉で「20の花」。アステカの人々は20を1つのまとまりとして数えていた。
The name of the orange marigold flower means twenty flowers in the Aztec language.
パペル・ピカド(切り絵の旗)は、うすい紙を40〜50枚重ねて、のみと小さな木づちで一気に打ち抜く。プエブラ州のサン・サルバドル・ウィスコロトラが発祥の地とされる。
Artists cut 40 to 50 sheets of colorful paper at the same time to make papel picado.
ラ・カトリーナを描いたポサダは1913年に亡くなり、自分の絵がメキシコの顔になる日を見ることはなかった。有名にしたのは、30年以上あとのディエゴ・リベラの壁画。
Posada made the famous skeleton lady, but he died in 1913. He never knew how famous she became.
グアテマラの「フィアンブレ」は、何十種類もの具が入る冷たいサラダ。家族がそれぞれ故人の好物を墓地に持ち寄るうちに、全部がまざって1つの料理になった、と言われている。
Fiambre is a cold salad from Guatemala. It may have dozens of ingredients.
パン・デ・ムエルトの上の飾りは、骨と頭蓋骨を表す。死者はパンの「本質」だけを味わうと考えられているので、供えたあとのパンを家族が食べることもある。
The shapes on top of pan de muerto look like bones. Some people say the dead enjoy only the smell of the food.
ボリビアのラパス中央墓地には、11月8日の「ニャティタスの日」に約1万2000人が訪れる。頭蓋骨に帽子やサングラスをつけて供え物をする。
About 12,000 people visit a cemetery in La Paz, Bolivia, on Ñatitas Day. They bring decorated skulls.
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▶️Videos & Links死者の日(ディア・デ・ムエルトス)の動画とリンク集
Day Of The Dead | All Souls Day | The Dr Binocs Show | Peekaboo KidzPeekaboo Kidz
What is Day of the Dead? | National GeographicNational Geographic
Mexico's Day of the Dead celebrationsCBS Sunday Morning
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Indigenous festivity dedicated to the dead - UNESCOユネスコ無形文化遺産の公式ページ。2008年記載。トウモロコシの栽培の終わりとのつながりも説明。
Day of the Dead - Wikipedia英語版ウィキペディア。起源をめぐる学説、各地の風習、2016年のパレードまで詳しい。
死者の日 (メキシコ) - Wikipedia日本語版ウィキペディア。祭壇に供える物やカトリーナの由来を日本語で確認できる。
Día de Muertos - Wikipedia(スペイン語)スペイン語版。10月27日〜11月2日の日ごとの意味など、メキシコ側の説明が詳しい。
La Calavera Catrina - Wikipediaポサダの版画からリベラの壁画まで、カトリーナの歴史。
リメンバー・ミー (2017年の映画) - Wikipedia映画『リメンバー・ミー』の日本語解説。日本公開日や興行収入など。
