11月8日午前1時4分ごろ、静岡県西部を震源とする地震があり、愛知県知多市で震度5強を観測しました。SNSには「南海トラフの前ぶれでは」と心配する投稿も見られます。本当に関係があるのか、気象庁の会見と専門家の話から要点をまとめました。ニュースの英語もいっしょに覚えましょう。

30秒でわかる要点
  • 11月8日午前1時4分、震源は静岡県西部(深さ41km)、M5.7。最大は愛知県知多市の震度5強。津波の心配はなし
  • 気象庁は、南海トラフ地震の想定震源域の中で起きた地震だが、規模から見て、プレート間の固着状況の特段の変化を示す地震ではないと考えられると説明
  • 今回は沈み込むフィリピン海プレートの内部の地震。南海トラフ巨大地震(プレートの境目)とは、深さもしくみも違う
  • それでも今後1週間ほどは最大震度5強程度の地震に注意。特に発生から2〜3日程度は要注意
Q. 今回の地震は、南海トラフ巨大地震と関係あるの?
A. 気象庁と専門家の見方は「直接の関係は考えにくい」。
ただし「南海トラフが遠のいた」わけでもない。
気象庁と専門家は、起きた場所(深さ)やメカニズムが異なると説明しています。一方で、今回の地震で切迫度が高まったという情報はないものの、南海トラフ巨大地震の長期的な発生確率は高いままです。
この記事は11月8日午前5時ごろまでの気象庁の発表と報道をもとにしています。9日には気象庁の定例の検討会で、今回の地震も議論される予定です。

何が起きた?震度・震源・被害のまとめ

発生 2026年11月8日(日)午前1時4分ごろ
震源 静岡県西部、深さ41km
規模 マグニチュード5.7
最大震度 震度5強(愛知県知多市)
津波 心配なし
緊急地震速報 発表あり
震度5強愛知県:知多市
震度5弱愛知県:瀬戸市・半田市・刈谷市・豊田市・東海市・みよし市・東郷町・新城市/岐阜県:恵那市/長野県:売木村/静岡県:浜松市浜名区
震度4名古屋市の各区、岡崎市、豊橋市、一宮市、春日井市、浜松市中央区、磐田市、多治見市、飯田市、三重県木曽岬町など

揺れは広い範囲に伝わり、大阪・京都・奈良で震度3、東京23区でも震度1を観測しました。「震度5弱」と聞いた人も「5強」と聞いた人もいるのは、場所によって震度が違うからです。

被害と交通(午前5時ごろまでの報道)

愛知県内では、豊田市・常滑市・大府市・春日井市・西尾市など8市町で計10人がけがをしたと報じられています(避難中に階段で転倒して骨折、テレビが落ちて足をけが、など)。豊橋市でショーウィンドウのガラスが割れ、東浦町では約15軒が断水しました。

東海道新幹線は静岡〜岐阜羽島間で速度を落として運転し、始発から遅れ。JRは東海道線(豊橋〜名古屋)、中央線(中津川〜上松)、飯田線(新城〜天竜峡)、武豊線(大府〜武豊)で始発から運転を見合わせました。静岡県の浜岡原発に異常はないとされています。

なぜ「直接の関係は考えにくい」の?場所としくみの違い

ポイントは「プレートのどこで起きたか」です。東海の地下では、海側のフィリピン海プレートが、陸側のプレートの下へ斜めに沈み込んでいます。

愛知・静岡太平洋南海トラフ▼陸のプレート― 南海トラフ巨大地震の想定震源域(プレートの「境目」がずれる)フィリピン海プレート(海のプレート)今回の地震 M5.7プレートの「内部」・深さ41km
東海地方の地下のイメージ(位置関係を分かりやすくした模式図で、縮尺は正確ではありません)

南海トラフ巨大地震は、2枚のプレートの境目が一気にずれる地震です。今回の地震は、気象庁の会見によると、沈み込むフィリピン海プレートの内部で起きたとみられます。会見では、南海トラフ巨大地震が起きると考えられる境目付近は、今回の震源より10kmほど浅いと説明されました。

京都大学防災研究所の西村卓也教授もNHKの取材に、規模が小さいことと、プレートの境目ではなく内部で起きたことから「直接関係するとは考えにくい」と答えています。この付近では1983年・1997年・2020年にもM5クラスの地震が起きていて、もともと地震がくり返し起きている場所だそうです。

今回の地震 南海トラフ巨大地震(国の想定)
起きる場所 海のプレートの内部 2枚のプレートの境目
規模 M5.7 M8〜9クラス(内閣府の最大クラス想定はMw9.1)
揺れ 最大震度5強(実測) 最大クラスの想定では最大震度7。強い揺れが広い範囲に及ぶ
津波 なし 最大クラスの想定では30mを超える所も

エネルギーにすると、ケタ違い

マグニチュードは1上がるとエネルギーが約32倍。今回のM5.7を1とすると、こうなります。

地震のエネルギー比べ(今回=1として)
今回の地震(M5.7)約1倍
三河地震 1945年(M6.8)約45倍
昭和東南海地震 1944年(M7.9)約2,000倍
南海トラフ巨大地震の最大想定(Mw9.1)約126,000倍
今回と三河地震のバーは小さすぎて、ほとんど見えません。最大クラスの南海トラフ巨大地震は、数値の差から単純に計算すると今回の約13万倍。M(気象庁マグニチュード)とMw(モーメントマグニチュード)は求め方が違うので、あくまで目安です。

「今回の揺れの超強化版が南海トラフ?」という疑問もSNSにありましたが、気象庁や専門家の説明では、大きさが違うだけでなく起きる場所としくみが別です。今回の地震を巨大地震の前ぶれとみなす根拠は示されていません。

「南海トラフ地震臨時情報」が出なかったのはなぜ?

南海トラフの想定震源域やその周辺でM6.8以上の地震が起きると、気象庁は「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」を出して、巨大地震につながるかを調べます。今回のM5.7はその基準に届いていません。M6.8との差は、エネルギーで約45倍です。

Mw8.0以上
(想定震源域内の境目で)
巨大地震警戒…沿岸の一部の住民は1週間の事前避難
Mw7.0以上
巨大地震注意(「警戒」に当たる場合を除く)…1週間ほど、日ごろの備えを確かめ、必要ならすぐ避難できるように。2024年8月の日向灘の地震(気象庁マグニチュード7.1)で初めて出た
M6.8以上
臨時情報(調査中)…専門家が集まって調べ始める
今回
M5.7
地震の大きさの基準に届かず、臨時情報は出ていない
Mw=モーメントマグニチュード(断層のずれの大きさから求める値)。対象は南海トラフの監視領域で起きた地震です。

なお、臨時情報の基準には、地震の大きさのほかに「プレートの境目でふだんと違うゆっくりすべりが見つかった」などの条件もあります。気象庁は「今後も地震活動や地殻変動を注意深く監視する」としています。

SNSのウワサをファクトチェック

愛知の地震の後にSNSで広がった南海トラフの前兆説などのウワサを、虫めがねで確かめるイメージ

地震の直後、X(旧Twitter)には今回の地震を南海トラフと結びつける投稿が見られました。その中から代表的なものを、気象庁の発表と専門家の話で確かめます。

根拠なし「南海トラフの前ぶれ(前震)だ」
気象庁は、プレート間の固着状況の特段の変化を示す地震ではないと考えられると説明しています。ただし、日時や場所を決めた地震の予知は今の科学ではできません。「前ぶれではない」は「巨大地震が起きない保証」ではない、という点も覚えておきましょう。
見た目だけ「南海トラフのシミュレーション動画にそっくり」
震源が東海なので、揺れが東海から広がる様子は似て見えます。でも最大クラスの南海トラフ巨大地震の想定は、最大震度7の揺れが広い範囲に及ぶもの。今回とは規模(エネルギーは単純計算で約13万分の1)も、震源域の広さも、しくみも大きく違います。
感じ方の問題「揺れ方が南海トラフっぽかった」
震源が40kmほどとやや深い地震は、揺れが広い範囲に伝わることがあります(揺れ方は地盤などにも左右されます)。今回は大阪や東京でも揺れを観測しました。体で感じた揺れ方だけで、地震の種類は見分けられません。
別タイプ「三河地震・濃尾地震級を警戒しよう」
1945年の三河地震(M6.8)や1891年の濃尾地震(M8.0)は、陸の浅いところの活断層がずれた地震で、今回とはタイプが違います。ただ、愛知は活断層の地震も南海トラフの地震も起こりうる地域。備えるのは大正解です。
一部は事実「ずっと来ると言われているのに来ない。エネルギーはたまる一方」
プレートの境目に長い時間をかけてひずみがたまっていく、という考え方は正しいのですが、「たまる一方で、たまった分だけ必ず大きくなる」という単純な話ではなく、いつ起きるかも予測できません。気象庁は、南海トラフの地震は過去におおむね90〜150年の間隔で起きてきて、前回の昭和南海地震(1946年)から今年で80年だと説明。国の評価では、30年以内に起きる確率は「60〜90%程度以上」(別の計算方法では「20〜50%」)です。気象庁は、過度に恐れる必要はないが発生確率は高まっているので、日ごろから備えてほしいと呼びかけています。

これから1週間、何に気をつける?

気象庁は、揺れの強かった地域では今後1週間ほど、最大震度5強程度の地震に注意するよう呼びかけています。特に地震の発生から2〜3日程度は、規模の大きな地震が起きることが多いとしています。落石やがけ崩れの危険も高まっているので、雨のときは特に注意しましょう。

専門家によると、プレートの内部で起きた地震は、一般に余震が少ないとされますが、しばらくは同程度の地震が起きる可能性があるとのこと。気象庁の「1週間ほどは注意」を優先しましょう。なお気象庁の地震情報の一覧では、8日午前5時の時点で、今回と同じ静岡県西部を震源とする震度1以上の地震は観測されていません。

📚本棚・タンス・テレビを固定。寝る場所の近くに倒れる物を置かない
👟枕元に底の厚い靴とライト。夜中の地震で割れたガラスを踏まない
💧飲み水と携帯トイレを数日分。家族の人数で備蓄を計算
📱スマホを充電。家族の集合場所と連絡方法を確かめておく

今回、常滑市では避難中に階段で転倒した人が骨折したと報じられています。強い揺れの最中は、まず頭を守り、倒れたり落ちたりする物からできるだけ離れて身を低く。慌てて外へ飛び出さず、揺れが収まってから足元に気をつけて動きましょう。

地震ニュースの英語:気象庁の英語版で覚える

実は気象庁の地震情報には英語版もあります。今回の発表に実際に入っていた英文がこちら。

気象庁の発表(英語版)より
This earthquake poses no tsunami risk.
この地震による津波の心配はありません。
Hypocenter: Western Shizuoka Prefecture
震源:静岡県西部

pose は「(危険などを)もたらす」。pose a risk / pose a threat はニュースの定番の形です。

Nankai Trough
南海トラフ。trough(発音は英 /trɒf/・米 /trɔːf/。カタカナなら「トロフ」に近い)は、家畜のエサや水を入れる細長い「おけ」のこと。形が似た細長い海底のくぼみにも使う → trough の意味と使い方
seismic intensity
震度。5 Upper=震度5強、5 Lower=震度5弱(気象庁の英語表記)
magnitude
マグニチュード。a magnitude 5.7 earthquake(M5.7の地震)
hypocenter / epicenter
震源(地下)/震央(その真上の地表)。ニュースでは epicenter をよく使う
subduct
(プレートが)沈み込む。subduction zone=沈み込み帯
plate boundary
プレートの境目。今回は within the Philippine Sea Plate(フィリピン海プレートの内部)
foreshock / aftershock
前震/余震。foreshock は、あとでもっと大きな地震が起きて初めて「前震だった」と分かる
megaquake
巨大地震(報道でよく使う語)。Nankai Trough megaquake=南海トラフ巨大地震

今回のニュースを英語でいうと

A magnitude 5.7 earthquake struck western Shizuoka Prefecture early Sunday. It registered a maximum seismic intensity of 5 Upper in Chita City, Aichi Prefecture.日曜未明、静岡県西部でM5.7の地震があり、愛知県知多市で最大震度5強を観測した。
The Japan Meteorological Agency said the quake likely occurred within the subducting Philippine Sea Plate and was not considered to indicate any notable change in the coupling between the plates along the Nankai Trough.気象庁は、地震は沈み込むフィリピン海プレートの内部で起きたとみられ、南海トラフ沿いのプレート間の固着状況の特段の変化を示すものではないと考えられると説明した。

strike(地震が襲う、過去形 struck)と register(震度などを記録する)は、地震ニュースでよく使われる動詞です。

3秒クイズ:英語で言える?

Q. 「今後の地震に注意してください」
Be alert for further earthquakes.余震なら Be alert for aftershocks.
Q. 「津波の心配はありません」
There is no tsunami risk.気象庁の英語版は This earthquake poses no tsunami risk.
Q. 「用心に越したことはない」
Better safe than sorry.「備えあれば憂いなし」にも近い、防災の合言葉

よくある質問

Q. 11月8日の愛知の地震は南海トラフ地震と関係ありますか?
気象庁は、南海トラフ地震の想定震源域の中で起きた地震だが、規模から見てプレート間の固着状況の特段の変化を示す地震ではないと考えられるとしています。今回はフィリピン海プレートの内部で起きた地震で、プレートの境目で起きる南海トラフ巨大地震とは深さやしくみが異なります。
Q. 今回の地震は南海トラフ巨大地震の前兆ですか?
前兆だと言える根拠は示されていません。ただし、地震の予知は今の科学ではできないため、巨大地震が起きない保証でもありません。日ごろの備えが大切です。
Q. なぜ南海トラフ地震臨時情報は出なかったのですか?
臨時情報(調査中)は、想定震源域やその周辺の監視領域でM6.8以上の地震が起きたときなどに出されます。今回はM5.7で、地震の大きさの基準に届いていません。
Q. 震源と規模、最大震度は?
2026年11月8日午前1時4分ごろ、震源は静岡県西部で深さ41km、マグニチュードは5.7。最大震度は愛知県知多市の5強で、瀬戸市・豊田市・浜松市浜名区などで震度5弱を観測しました。津波の心配はありません。
Q. 今回と同じくらいの強い揺れが、また起きる可能性はありますか?
あります。気象庁は、今後1週間ほどは最大震度5強程度の地震に注意し、特に発生から2〜3日程度は規模の大きな地震が起きることが多いと呼びかけています。
Q. 震度5強は英語で何と言いますか?
気象庁の英語表記では seismic intensity 5 Upper です。英文ニュースでは registered a maximum seismic intensity of 5 Upper のように書かれます。震度5弱は 5 Lower です。

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