原田英語とっておきの話

【このsheってJapan?】国をsheで受けるのはなぜ?Xで話題の参考書「Japan, as she is now」の意味を超絶わかりやすく解説|国・船・車を「彼女」と呼ぶ理由・itとの違い・今も使う?・入試と英作文での扱い・as S isの構文

「このsheってJapan?」国や船を彼女と呼ぶ英語のナゾを解説。古い英語参考書から帆船・車・ギター・地球儀が金色の光とともに浮かび上がるイラスト
「このsheってJapan?」――英語参考書の例文「Japan, as she is now, is not yet fully democratic.」を撮った投稿がXで大きな話題になっています。答えは「はい、sheはJapanです」。なぜ国を「彼女」と呼ぶのか、今も使うのか、受験生はどう扱えばいいのかを、まず30秒で要点、そのあと詳しく解説します。

30秒でわかる要点
  • この she は Japan のこと。昔の英語では、国や船を女性にたとえて she で受けることがあった
  • 今は it が標準。アメリカの代表的な書き方の手引き『シカゴ・マニュアル』は「国に she は使わない」と明言、ケンブリッジ英英辞典も「古風」と表示
  • 構文では as she is now=「今の状態の」にも注目。代名詞だけ今の言い方にすると Japan, as it is now, …
  • 受験生は「読めればOK、書くなら it」。国の she は、古い英文を読むための知識として持っておけば十分

Xで何が話題になった?

きっかけは、受験生のアカウントが英語参考書のページを撮って「このsheってJapan?」と投稿したこと。例文は Japan, as she is now, is not yet fully democratic. 投稿画像に写っている訳は「日本は現状ではいまだに十分に民主化されていない」です(書名は投稿では示されていません)。投稿の表示回数は約174万回、いいねは8,000超(2026年10月21日夕方・日本時間の時点)。引用でさまざまな声が集まりました。

反応をざっくり分けると、次の3つです(実際の投稿を要約したもの)。

古すぎる!今の英語では使わないので、こんな参考書は捨てるべき。話せるようにならないのに古い表現ばかり覚えさせる、という嘆きも
へぇ〜!国や船、ギターまで she で受けるらしい、英語にも擬人化があるのか、という驚き
辞書を引こうshe のような誰でも知っている単語も、辞書を読み直すと発見がある、という声

つまり論点は①この she は何?②なぜ国が「彼女」?③今の英語で使う?④受験で覚える意味ある?の4つ。順番に答えます。

答え:この she は Japan。文の構造を分解

Japan,S(主語)as she is now,挿入:she=JapanisVnot yet fully democratic.C(中心は democratic)

今の状態の日本は、まだ十分に民主的とはいえない

骨組みは Japan / is / not yet fully democratic(日本は/まだ十分に民主的ではない)。コンマではさまれた as she is now は、その中に入った小さな文で、she が主語、is が動詞です。意味は「今そうであるとおりの日本は」=「今の状態の日本は」。「もし〜なら」という条件ではなく、その時点の日本の状態を補足しています。ここでの「今」は、この英文が書かれた時点のことで、2026年の日本のことではありません。

ちなみに she は主語の形。her には2つの役目があり、Britain and her allies の her は「その国の」(所有)で、it なら its。play her の her は「それを」(目的語)で、it なら it になります。訳すときも「彼女」とする必要はなく、「その国」「日本」で十分です。

英文
参考書の例文(古風) Japan, as she is now, is not yet fully democratic.
代名詞だけ今の言い方に Japan, as it is now, is not yet fully democratic.
書きかえたのは代名詞だけです。日本が今どうかという内容の評価をしているわけではありません。

「名詞 + as + 主語 + be動詞」は今も使われる

今回の as she is now は、前の名詞が「その時点でどんな状態か」を補足しています。be動詞は主語と時制に合わせて変わります(as I am / as it was など)。as にはほかに「〜なので」などの意味もあるので、意味は文脈で決まります。

Japan as it is now
今の(ありのままの)日本 ※この形で名詞のかたまり

次は、元の例文のようなコンマつきの挿入ではありませんが、「ありのまま」「そのまま」を表す関連表現です。

Accept me as I am.
ありのままの私を受け入れて
Leave it as it is.
そのままにしておいて
the world as we know it
私たちが知っているような世界(関連表現。be動詞ではなく know を使う形)

この例文の古い所は、国を she で受けている点です。構文の材料としては今も使えます。

なぜ国を「彼女」と呼ぶの?

博物館のケースに化石のように展示された古い英文法の参考書と、それをスマホで撮る高校生

今の英語には、フランス語やドイツ語のように名詞を「男性名詞・女性名詞」に分ける仕組みはありません(古い時代の英語にはありました)。それでも国や船を she と呼んできたのは、ものを人にたとえる「擬人化」の習慣です。下の3つは、国を女性としてとらえる言葉や文化の例としてよく挙がるもので、これらが英語の she の使い方を生んだと決まっているわけではありません。

よく挙がる話 中身
ラテン語・フランス語 ラテン語では Britannia, Germania, Italia などの地名が文法上の女性名詞。フランス語でも la France は女性名詞。ただし、これだけで英語の国名全体の she は説明できません
「母なる国」のイメージ mother country, motherland(母国)のように、国を自分を育てる母にたとえる言い方がある
女性の姿の国のシンボル イギリスのブリタニア、フランスのマリアンヌなど、国を女性像で表す文化がある

「政治なら she、地理なら it」という昔の説明

辞書や文法書では、国を政治・経済・文化の主体として見るときは she、地理的な土地として見るときは it、と説明されてきました(英語史研究者・堀田隆一さんの「hellog〜英語史ブログ」でも紹介されています)。例文も日本の政治のあり方を述べた文なので、この説明に沿った例といえます。ただし今の英語では、どちらの場合も it がふつうです。

国だけじゃない! she と呼ばれてきたもの

⛵船伝統イギリス海軍など海の世界では今も she の慣習が残る。The Titanic sank on her maiden voyage.(タイタニック号は初めての航海=処女航海で沈んだ)
🚗車・バイクくだけた会話愛車を自慢して Isn’t she beautiful?(きれいだろ?)。愛着をこめた言い方
🎸ギター愛着B.B.キングは愛用のギターを「ルシール(Lucille)」と名づけ、1968年のアルバムの解説では本人が When I play her(彼女を弾くと)と語っている
🌙月・太陽詩・物語詩などでは太陽を男性(he)、月を女性(she)として擬人化する例がある。Mother Nature(母なる自然)も同じ発想。ふつうの説明文ではどちらも it
別もの注意:オーストラリア英語の she
She’ll be right.(なんとかなるさ)のように、オーストラリアやニュージーランドのくだけた英語では she が it の代わりに使われます。この she は女性にたとえているわけではなく、「状況」などを指す地域の言い方で、今も現役です。

ちなみに大西洋のハリケーンには、1953年から女性の名前だけが付けられ、1979年から男性の名前も使われるようになりました(代名詞とは別の、名前の歴史です)。台風の名前が今どう決まっているかは台風の名前チェッカーでまとめています。

データで見る「she 離れ」(本の中の言い方)

Google が集めた大量の本の文章(コーパス)から、言い方の多さを調べられる Google Books Ngram で、たとえば「Britain and her」と「Britain and its」を比べました。グラフは2つの言い方の合計のうち、her 側が占める割合です。

「〜 and her」と「〜 and its」のうち her の割合

0%25%50%75%100%1900194019802020イギリス 30%船 23%日本 9%

比べた組み合わせ:Britain and her/its、the ship and her/its、Japan and her/its、Japan as she is/it is(割合=A÷(A+B))。Google Books Ngram Viewer の英語データ(2026年10月21日取得、大文字小文字は区別、平滑化3=おおむね前後3年を含む7年平均・端の年は少なめ)で、平滑化した各頻度から割合を計算。her が女性を指す例や古い文章の引用もまじるので、今の人の使用率ではなく「本の中での傾向」の目安です。
82%→30%「Britain and her」の割合
(1940年→2022年)
36%→2%「Japan as she is」の割合
(1930年→2022年)

「Japan and her」の割合は1940年の約55%から2022年は約9%に、例文と同じ「Japan as she is」も「Japan as it is」と比べると約2%まで下がりました。一方、2022年の値でも「Britain and her」の組は約3割、「the ship and her」の組は約2割が her で、イギリスや船については her の形が本の中にまだ残っています。

今の英語ではどう扱われている?

「どう書くべきか」を決める書き方の手引き(スタイルガイド)と、「実際どう使われているか」を記録する辞書に分けて見ます。

書き方の手引き・新聞の方針

手引き・媒体 国や船の she について
シカゴ・マニュアル 国に she は使わない。使えば「英語を知らない人か、1950年で勉強が止まった人」に聞こえる、とまで書く(公式Q&A、2024年の第18版準拠)
AP通信・NYタイムズ 英語ブログ Grammarphobia(2007年)によると、両社の手引きは国や船を it で受けるよう勧めている
ロイズ・リスト 1734年創刊の海運紙。2002年、同紙の方針として船を she から it に変更

辞書の記述

辞書 国や船の she について
ケンブリッジ英英辞典 国・船・乗り物を指す she に「old-fashioned(古風)」の表示
メリアム・ウェブスター 「擬人化などで女性とみなすものを指す」she を載せる(例:she was a fine ship)
オックスフォード現代英英辞典 国・船の擬人化は独立した意味としては載せず、オーストラリア・ニュージーランド英語の she(=it)を載せる(例:She’s a big country.)

まとめると、国の she は古風な言い方で、船の she は海の世界の慣習として残り、愛車などの she は愛着をこめた会話で使われる、という状態です。辞書によって書き方が違うのも面白いところです。

じゃあ参考書は捨てるべき?受験生の答え

⭕ 読むときは知っておく古い文章や、その引用を読むときに役立ちます。her が国や船を指していたら、人物と勘ちがいしないことが大事。
❌ 書くときは it を基本に入試の英作文やふつうの説明文では、国も船も it を使いましょう。国を she で受けると古風に読まれます。

「捨てるべき」は言いすぎで、as she is now のような構文を学ぶ例文としては今も使えるというのが原田先生の考えです。ただ、古い例文を「今の英語」として覚えないよう、辞書の「古風」などの表示を確かめるクセをつけておきましょう。

as は使い方が多い単語です。今回とは別の用法の「疑似関係代名詞の as」は「as is often the case with」の記事で解説しています。

1分クイズ:この her / she は何を指す?

Q1. Britain and her allies won the war.
答え:Britain(イギリス) 「イギリスとその同盟国が戦争に勝った」。古い歴史の文章に出てくる形。今なら Britain and its allies。
Q2. The ship lost her anchor in the storm.
答え:the ship(船) 「船は嵐でいかりを失った」。船の she・her は海の世界で今も見かけます。
Q3. Don’t worry, mate. She’ll be right.
答え:特定の物ではなく「状況」 オーストラリアの決まり文句で「心配ないって、なんとかなるさ」。
Q4. France and her colonies
答え:France(フランス) 「フランスとその植民地」。今の英語なら France and its colonies と書きます。

よくある質問

Q. 国を she で受けるのはまちがいですか?
まちがいとまではいえませんが、古風な言い方です。今の英語では国は it で受けるのが標準で、シカゴ・マニュアルは国に she を使わないよう明言しています。
Q. 「Japan, as she is now, is not yet fully democratic.」の意味は?
「今の状態の日本は、まだ十分に民主的とはいえない」という意味です。she は Japan を指し、as she is now は「今そうであるとおりの」と日本の今の状態を補足する挿入です。今の一般的な英語なら she を it にします。
Q. 船は今も she と呼びますか?
イギリス海軍など海の世界では慣習として she が残っていますが、海運紙ロイズ・リストは2002年に it に変えました。ふつうの説明文では it が無難です。
Q. 入試の英作文で国を she にしたら減点されますか?
採点基準によるので断定はできませんが、古風な英語と受け取られるおそれがあります。英作文では国も船も it を使うのが無難です。
Q. 昔の「政治的には she、地理的には it」という説明は今も正しい?
かつてはそう説明されていましたが、今の英語ではどちらの場合も it がふつうです。古い英文を読むときの知識として覚えておけば十分です。

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