「明日から本気出す!」宣言、やる気を下げているかも。ニューヨーク大の心理学者が見た落とし穴

読む前に予想してみよう!
目標を人に宣言すると、どんな場合でも必ず達成しやすくなる
「なりたい自分」を宣言して認められると、満足して努力が減ったという実験がある。
- 対象
- 大学生(アイデンティティ目標を持つ人)
- 規模
- 4つの小規模実験
- 研究の種類
- 実験研究(+進捗モニタリングのメタ分析)
- 確かさ
- ★★☆☆☆
「こういう自分になる」という目標を人に知られると、もう達成した気分になって努力が減ることがある。ただし進捗を報告する宣言は逆に効くことも。
ひとことで言うと「やるぞ!」と言うだけで満足しないように。言うなら「何を・いつ」を!
「よし、明日から毎日3時間勉強する!」とSNSに書き込んだら、友達から「すごい!」「がんばれ!」の反応。なんだか、もうやり遂げたような気分になって…。
そんな経験、ありませんか? 実は、目標を人に宣言することが、かえってやる気を下げる場合があることが、心理学の実験で示されています。
ただし、これは「宣言は全部ダメ」という話ではありません。どんな宣言かが分かれ道です。
01「なりたい自分」を認められると、満足してしまう
なぜこんなことが起こるのか。研究者たちが考えたのは、象徴的自己完結という心のしくみです。
むずかしい名前ですが、要は「〇〇な自分」になりたい人は、その証拠(シンボル)を集めようとする。そして、人に宣言して認められるだけでも、その証拠が手に入ったように感じてしまう。結果、「もう十分」と満足してしまうというわけです。

02でも「進み具合の報告」は効く
一方で、人に見せることが目標達成を助ける場合もあります。
2016年、ハーキンらは多くの研究をまとめたメタ分析(研究を束ねて全体の傾向を見る分析)で、目標の進み具合をチェックすることは達成を助け、特にその記録を人に報告したり、形に残したりすると効果が大きくなると報告しました。
つまり、ポイントはこうです。
- ✕「医者になる!」「英語ペラペラになる!」となりたい姿だけを宣言
- ○「今日は数学の問題集を10ページやった」とやったことを報告
03「宣言は全部逆効果」ではない
ここで誤解しないでほしいのは、ゴルヴィツァーらが調べたのは「〇〇な人になりたい」というアイデンティティ目標だという点です。
「医者になりたい」「英語が話せる人になりたい」のように、自分がどんな人間かに関わる目標は、人に認められること自体が「なりたい自分」の証拠のように感じられやすい。だから満足が起きやすいと考えられています。
一方で、「毎朝10分単語をやる」のような具体的な行動の約束や、仲間と進み具合を報告し合うしくみは、むしろ続ける助けになる可能性があります。また、この研究の結果がどんな目標や場面にまで当てはまるのかは、まだ議論の余地があります。
大切なのは、宣言して終わりにせず、宣言の直後に行動を1つ起こすこと。「言ったからには今すぐ1問」をルールにすると、満足のワナを避けやすくなります。さらに「〇時になったら単語帳を開く」のようにいつ・どこで・何をするかを決めておく計画(実行意図)は、別の研究群で行動を後押しすることが示されています。
なお、ゴルヴィツァーらの実験は参加者が数十人規模の小さな実験で、「宣言は逆効果」という話は動画やビジネス書で広まった一方、大規模な追試はまだ十分とはいえません。「宣言すると必ずダメになる」とまでは言えない、くらいの温度感で受け止めるのが科学的に誠実です。
SNSに書き込む場合も同じです。「絶対合格するぞ!」の投稿にたくさん反応がつくと、うれしい反面、それだけで達成感を得てしまうかもしれません。投稿するなら、大きな目標より今日の勉強記録の方が、やる気を保つ助けになりそうです。
04まとめ
宣言そのものが悪いのではなく、「なりたい自分」を語るだけで満足してしまうのが落とし穴でした。
言うなら、未来の夢ではなく、今日やったこと。毎日の小さな報告が、夢への一番の近道です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAnnouncing a goal to others is often seen as a good way to stay motivated, but research suggests it can…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many people tell their friends about their big goals. For example, they say, "I will become a doctor!" But a psychology study found a problem. When other people noticed and accepted students' goals, the students worked for a shorter time. They felt as if they had already done something.
However, telling people about your progress can help. So do not just talk about your dream. Report what you did today.
70 words ・ CEFR A2
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多くの人は友達に自分の大きな目標を話します。たとえば「医者になる!」と言います。しかし、心理学の研究で問題が見つかりました。ほかの人が学生の目標に気づいて認めると、その学生たちが取り組む時間は短くなったのです。
彼らはもう何かを成し遂げたかのように感じました。しかし、自分の進み具合を人に伝えることは役に立つことがあります。だから、夢について話すだけにしないでください。今日やったことを報告しましょう。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
目標を人に話すと努力が減ることがある一方、進み具合の報告は役立つ、という内容なので D。
Q2. What happened when other people accepted the students' goals?
the students worked for a shorter time とあるので B。
Q3. In this passage, "progress" means ...
progress は「進歩・進み具合」。直後の Report what you did today. とつながるので A。
Announcing a goal to others is often seen as a good way to stay motivated, but research suggests it can sometimes backfire. In 2009, Gollwitzer and his colleagues reported four experiments with German university students who had identity goals, such as becoming a lawyer or a psychologist.
When the experimenter read and acknowledged the students' plans, those students spent less time and effort on related tasks than students whose plans were kept private. The researchers think that being recognized by others makes people feel as if they have already partly become the person they want to be. On the other hand, a later review of many studies found that monitoring and reporting actual progress helps people reach their goals.
119 words ・ CEFR B1
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目標を他人に宣言することは、やる気を保つ良い方法だと考えられがちですが、研究によるとそれが逆効果になることもあります。2009年、ニューヨーク大学のゴルヴィツァーと同僚たちは、弁護士や心理学者になるといった「なりたい自分」の目標を持つ学生を対象に4つの実験を行いました。
実験者が学生の計画を読んで認めると、その学生たちは、計画を誰にも知られなかった学生よりも、関連する課題にかける時間と努力が少なくなりました。研究者たちは、他人に認められると、なりたい自分にもう一部なれたように感じてしまうのだと考えています。一方で、その後に多くの研究をまとめた分析では、実際の進み具合をチェックし報告することが目標達成を助けると分かりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What kind of goals did the 2009 study focus on?
identity goals, such as becoming a lawyer or a psychologist とあり、「なりたい自分」の目標なので C。
Q2. According to the passage, why might announcing a goal reduce effort?
makes people feel as if they have already partly become the person they want to be とあるので A。
Q3. Which advice best fits the passage?
最後に、実際の進み具合を報告することは目標達成を助けると述べているので D。宣言を全否定しているわけではないので A は言いすぎ。
Telling people about a goal is supposed to lock you into it. A 2009 study by Gollwitzer and colleagues found that it can do the reverse. Across four experiments, students with identity goals, such as becoming a lawyer, wrote down actions they planned to take. For some of them, an experimenter read the list and acknowledged it. Those students then spent less time and effort on goal-related tasks than students whose plans went unnoticed.
The authors called this symbolic self-completion. People working toward an identity gather symbols of it, and recognition from others can act as one of those symbols, giving a sense of achievement before anything has been achieved. The experiments were modest in scale, though. Each had only a few dozen participants, effort was measured only over a week or less, and few large replications have been carried out.
Nor does the result mean that every announcement is harmful. A 2016 meta-analysis by Harkin and colleagues found that monitoring progress toward a goal helps people reach it, especially when that progress is reported or recorded. By that standard, a weekly post listing the chapters you actually finished is the useful kind of announcement.
195 words ・ CEFR B2
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目標を人に話せば、引っ込みがつかなくなって頑張れるはずだと考えられています。ところが、ゴルヴィツァーらによる2009年の研究では、その逆が起こりうることが分かりました。4つの実験で、弁護士になるといった「なりたい自分」の目標を持つ学生が、自分がとるつもりの行動を書き出しました。一部の学生については、実験者がそのリストを読んで認めました。すると、その学生たちはその後、計画が誰にも気づかれなかった学生よりも、目標に関連する課題にかける時間と努力が少なくなったのです。
著者たちはこれを「象徴的自己完結」と呼びました。ある自己像を目指す人はその象徴を集めるもので、他人からの承認がそうした象徴の一つとして働き、まだ何も成し遂げていないうちに達成感を与えてしまうというのです。ただし、実験の規模は大きくありませんでした。どの実験も参加者は数十人ほどで、努力が測られたのは長くても1週間ほどで、大規模な追試も行われていません。
また、この結果はあらゆる宣言が有害だという意味でもありません。ハーキンらによる2016年のメタ分析では、目標への進み具合をチェックすることが達成を助け、特に進み具合が報告されたり記録されたりするとその効果が大きいことが分かりました。この基準でいえば、実際に読み終えた章を毎週投稿するのは、役に立つ種類の宣言なのです。
4択リーディングクイズ
Q1. According to the theory of symbolic self-completion, why can social recognition reduce effort?
recognition from others can act as one of those symbols, giving a sense of achievement before anything has been achieved とあるので B。
Q2. Which of the following is mentioned as a limitation of the 2009 experiments?
Each had only a few dozen participants, effort was measured only over a week or less とあるので C。
Q3. What would the author most likely recommend to a student preparing for an exam?
最終文で a weekly post listing the chapters you actually finished is the useful kind of announcement と述べているので、学習記録を投稿する A が最も合う。
重要単語
- intentionB1名詞意図、やろうとする気持ちGood intentions are not enough without action.
intend to do(~するつもりだ)の名詞形。have no intention of doing「~するつもりはまったくない」は入試頻出。 - identity goalC1名詞(句)「こういう人になりたい」という目標Becoming a doctor is an identity goal for many students.
identity(自分が何者であるか)+goal。「何をするか」ではなく「どんな人になるか」の目標。 - acknowledgeB2動詞(存在や価値を)認めるHer friends acknowledged her hard work.
know が中に隠れている=「知っていると表明する」。acknowledge that ~「~と認める」、名詞は acknowledgment。 - prematureC1形容詞早すぎる、時期尚早のFeeling proud before you start is a premature reward.
pre-(前に)+mature(熟した)=「熟す前の」。It is premature to conclude ~「~と結論づけるのは早い」は評論文の定番。 - monitorB2動詞継続的にチェックするMonitor your progress by writing down what you did each day.
画面の「モニター」と同じ語。monitor A closely「A を注意深く監視する」の形で使う。 - backfireC1動詞裏目に出る・逆効果になるAnnouncing your goal can sometimes backfire.
銃が後ろに火を吹くイメージ。The plan backfired on him.「計画が彼に跳ね返ってきた」のように on と使う。 - commitmentB2名詞決意・献身・約束Writing a plan can strengthen your commitment.
commit to ~(~に打ち込む)の名詞形。m は2つ、t は1つのつづりに注意(committed と違い t は重ねない)。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Gollwitzer, Sheeran, Michalski & Seifert (2009) When intentions go public: Does social reality widen the intention-behavior gap?, Psychological Sciencedoi.org
- Wicklund & Gollwitzer (1981) Symbolic self-completion, attempted influence, and self-deprecation, Basic and Applied Social Psychologydoi.org
- Harkin et al. (2016) Does monitoring goal progress promote goal attainment? A meta-analysis of the experimental evidence, Psychological Bulletindoi.org
- Gollwitzer (1999) Implementation intentions: Strong effects of simple plans, American Psychologistdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。









