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「テストで良い点ならお小遣い」は効く? 200校以上でお金を配った実験の意外な結末

「テストで良い点ならお小遣い」は効く? 200校以上でお金を配った実験の意外な結末

読む前に予想してみよう!

「良い点を取ったらごほうび」と約束すると、テストの点はぐんと上がる

研究カード(どんな研究?)
対象
アメリカの小中高生
規模
200校以上・数万人規模
研究の種類
ランダム化フィールド実験
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

米国200校以上で「成績にお金」を配った実験では、テストの点はほぼ伸びず。「本を読んだらお金」は一部で効果。ごほうびは「何に」「いつ」渡すかが勝負。

ひとことで言うと「点数」にごほうびより、「やること」にごほうびの方が効きやすい。

もくじ
  1. 3つの都市で「お金」を配ってみた
  2. 「どうすれば点が上がるか」がわからない問題
  3. 「今すぐ」もらえないと効かない
  4. どんでん返し:ごほうびは「やる気キラー」なのか
  5. まとめ

「次のテストで80点以上だったら、お小遣いアップね」。家庭でよく聞く交渉ですが、これ、本当に効くのでしょうか。

アメリカでは、この作戦を学校ぐるみで、本気のくじ引き実験として試した経済学者がいます。対象は3都市・200校以上。結果はかなり意外でした。

013つの都市で「お金」を配ってみた

「点数にお金」はほぼ空振り、「本を読むことにお金」は一部でヒット。この差について、Fryerさんは推測としての解釈を述べています。

02「どうすれば点が上がるか」がわからない問題

点数にごほうびを出されても、何をどう頑張れば点が上がるのかわからなければ、やる気だけが空回りします。一方、「本を1冊読む」は何をすればいいかが明確です。

つまり、ごほうびは「結果(アウトプット)」より「行動(インプット)」に結びつけた方が、うまく働きやすいのではないか、という考え方です。

ゴールだけ示されても、登り方がわからないと進めない
ゴールだけ示されても、登り方がわからないと進めない

03「今すぐ」もらえないと効かない

もう一つの重要な発見が、タイミングです。シカゴ周辺の学校で行われたLevittさんらの実験(2016年)では、テストの直前に「頑張ったらごほうび」と伝えると、点数が上がりました。

ところが、そのごほうびを1か月後に渡すと伝えたとたん、効果はほぼ消えてしまったのです。さらに、低学年ではお金よりトロフィーのようなお金以外のごほうびの方がコスパが良いこともわかりました。

04どんでん返し:ごほうびは「やる気キラー」なのか

「ごほうびを出すと、やる気がなくなる」という話もよく聞きます。40年分の研究をまとめたCerasoliさんらのメタ分析(2014年)によると、内側からのやる気(おもしろい・成長したい)は、ごほうびがあってもなくても成績をよく予測していました。

そして、ごほうびは「量」をこなす課題で、内側からのやる気は「質」が問われる課題でより効きやすい傾向がありました。両者は敵同士というより、役割分担しているイメージです。

一方で、GneezyさんらのJEPの論考(2011年)は、ごほうびが短期的には効いても、長い目で見ると「読書が好き」という気持ちを弱めるおそれを指摘しています。ごほうびは「きっかけ」として使い、いつか外していくのが理想かもしれません。

05まとめ

「テストで良い点ならお小遣い」は、大規模な実験ではほとんど効かなかった。効きやすいのは、具体的な行動に、すぐ渡す、小さなごほうびでした。

ごほうびは魔法の杖ではなく、習慣づくりの補助輪。いつか補助輪を外せるように、「何をすればいいか」を一緒に考えるところから始めてみましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany parents promise their children money for good test results, but does it really work? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many parents promise their children money for good test results, but does it really work? Fryer, an economist at Harvard, tested this in randomized experiments in more than 200 schools in three U.S. cities. In New York, students were paid for test scores, and in Chicago, high school students were paid for their grades.

In Dallas, second graders received money for each book they read and passed a quiz on. The effect on test scores was almost zero. The only clear effect appeared among English-speaking children in Dallas. Fryer suggested that students paid for scores may not know how to improve them, while reading a book is a specific action anyone can understand.

113 words ・ CEFR B1

和訳を見る

多くの親がテストで良い結果を出したらお金をあげると子どもに約束しますが、それは本当に効くのでしょうか。ハーバード大学の経済学者Fryerさんは、アメリカの3都市の200校以上で、ランダム化実験によってこれを確かめました。ニューヨークでは生徒はテストの点数に応じて、シカゴでは高校生が授業の成績に応じてお金をもらいました。

ダラスでは、小学2年生が本を1冊読んで内容テストに合格するたびにお金を受け取りました。テストの点への効果はほぼゼロでした。唯一はっきりした効果が見られたのは、ダラスの英語を話す子どもたちでした。Fryerさんは、点数に対してお金をもらう生徒は点数の上げ方がわからないのかもしれない一方、本を読むことは誰にでもわかる具体的な行動だ、という解釈を示しました。

4択リーディングクイズ

Q1. What was the purpose of Fryer's experiments?

Q2. In which city were students paid for reading books?

Q3. What does Fryer's explanation suggest?

重要単語

  • incentiveB2
    名詞やる気を引き出すもの・報奨Financial incentives did not raise test scores. financial incentive「金銭的報奨」、give A an incentive to do で「A に~する動機を与える」。経済の長文で頻出。
  • randomizedC1
    形容詞無作為に割り付けたThey ran randomized trials in many schools. randomized controlled trial(RCT)は「ランダム化比較試験」。因果を確かめる最も強い方法の一つ。
  • inputB2
    名詞投入・(成果を出すための)行動Rewarding inputs like reading worked better. in(中へ)+put(置く)。output(成果)と対で覚える。
  • outputB2
    名詞成果・生産量Students did not know how to improve the output. out(外へ)+put。経済では「生産高」の意味でも使う。
  • delayB1
    名詞・動詞遅れ・遅らせるThe effect disappeared when rewards came with a delay. without delay「すぐに」は頻出熟語。be delayed で「(電車などが)遅れる」。
  • intrinsicC1
    形容詞内側からの・本質的なIntrinsic motivation still predicted performance. intrinsic motivation(内発的動機づけ)⇔ extrinsic motivation(外発的動機づけ)のペアで出る。
「テストで良い点を取ったらお小遣い」作戦、アメリカの200校以上で本気で試したら、点数はほぼ伸びなかったらしい。逆に「本を1冊読んだら2ドル」の方が一部で効果あり。ごほうびは「結果」より「行動」に、が合言葉。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Fryer (2011) Financial Incentives and Student Achievement: Evidence from Randomized Trials, The Quarterly Journal of Economicsdoi.org
  2. Levitt et al. (2016) The Behavioralist Goes to School: Leveraging Behavioral Economics to Improve Educational Performance, American Economic Journal: Economic Policydoi.org
  3. Cerasoli, Nicklin & Ford (2014) Intrinsic motivation and extrinsic incentives jointly predict performance: A 40-year meta-analysis, Psychological Bulletindoi.org
  4. Gneezy, Meier & Rey-Biel (2011) When and Why Incentives (Don't) Work to Modify Behavior, Journal of Economic Perspectivesdoi.org