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「能力は伸びる」と信じれば成績が上がる? 成長マインドセット、メタ分析では効果が小さかった

「能力は伸びる」と信じれば成績が上がる? 成長マインドセット、メタ分析では効果が小さかった

読む前に予想してみよう!

成長マインドセットを教える授業は、ほとんどの生徒の成績を大きく上げることが確かめられている

研究カード(どんな研究?)
対象
小学生〜大学生
規模
メタ分析(数十〜数百研究・最大約37万人)+全米1万2千人の実験
研究の種類
メタ分析+大規模ランダム化比較試験
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

「能力は努力で伸びる」と考える成長マインドセット。大規模なメタ分析では、成績との関係も介入の効果も平均すると小さかった。ただし一部の生徒には効果も。

ひとことで言うと「のびる」と信じるだけでは足りない。やり方とセットで!

もくじ
  1. 2つのメタ分析が示した「小さな効果」
  2. 一方で、大規模実験では効果も
  3. 「信じる」だけでなく「やり方」とセットで
  4. 研究者の間でも、議論はまだ続いている
  5. まとめ

「頭の良さは生まれつきじゃない。努力でいくらでも伸びる」。こう考える心の持ち方を成長マインドセットと呼びます。

米スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエックが広めた考え方で、本はベストセラーになり、世界中の学校で取り入れられてきました。

ところが、たくさんの研究をまとめて調べてみると、成績への効果は思ったよりずっと小さいという結果が出てきたんです。

012つのメタ分析が示した「小さな効果」

「信じれば伸びる」というメッセージは魅力的ですが、考え方を変えるだけで成績がグンと上がるほど、話は単純ではなかったわけです。

02一方で、大規模実験では効果も

ただし、話はここで終わりません。2019年、テキサス大学オースティン校のヤーガーらは Nature 誌に、全米の公立高校65校の9年生(日本の中3にあたる)約1万2千人を対象にした大規模な実験結果を発表しました。

オンラインで合計1時間に満たないマインドセットの授業を受けたところ、もともと成績が低めだった生徒で、成績が少し上がりました。さらに全体では、上級の数学の授業を選ぶ生徒も増えたんです。

効果は小さめでも、たった1時間足らずの授業でこれだけ変わるなら意味がある、という見方もできます。

「伸びる」と信じる気持ちは種。育てるには水やり(方法)が必要
「伸びる」と信じる気持ちは種。育てるには水やり(方法)が必要

03「信じる」だけでなく「やり方」とセットで

つまり、成長マインドセットはそれだけで成績を上げる魔法ではないけれど、正しい勉強法とセットなら、粘り強く取り組む支えになるかもしれません。

「努力すれば伸びる」と信じても、効果の低い方法をくり返すだけでは伸びにくい。大事なのは、どう努力するかです。

04研究者の間でも、議論はまだ続いている

成長マインドセットの効果については、研究者の間でも意見が分かれています。

2023年には、マクナマラとバーゴインが新たなメタ分析を発表し、研究のデザインや報告のしかたに問題があるものを差し引くと、成績への効果ははっきりしないと指摘しました。一方で、同じ年の同じ専門誌には、バーネットらによる別のメタ分析も載り、「効果が出やすいのは、成績が伸び悩んでいる生徒や、きちんと実施された介入」という見方を示しました。ヤーガーらも「効果は小さくても、条件がそろえば意味のある差が出る」と主張しています。

こうした議論は、科学がきちんと機能している証拠でもあります。「有名だから正しい」ではなく、データを集め直して確かめる。その結果、「信じるだけで成績アップ」という単純な話から、「誰に・どんな条件で効くのか」を問う段階へと進んできたのです。

05まとめ

成長マインドセットは「信じれば何でも叶う」話ではありませんでした。でも、「伸びる」と信じて、正しい方法で努力を続けることには、ちゃんと意味があります。

信じる気持ちは種。それを育てるのは、毎日の具体的な勉強法です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerA growth mindset is the belief that intelligence can be developed through effort. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

A growth mindset is the belief that intelligence can be developed through effort. The idea, made popular by Stanford psychologist Carol Dweck, has been taught in schools around the world. However, in 2018, a research team published two meta-analyses. They found that having a growth mindset was only weakly related to grades, and that classes teaching it had a very small average effect.

Students from poorer families or students who were struggling sometimes benefited more. In 2019, a national experiment with about 12,000 ninth-graders in the United States found that an online session of less than one hour slightly raised the grades of lower-achieving students. Belief alone is not magic, but it may help when combined with good study methods.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

成長マインドセットとは、知能は努力によって伸ばせるという信念のことです。スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエックが広めたこの考えは、世界中の学校で教えられてきました。しかし2018年、ある研究チームが2つのメタ分析を発表しました。彼らは、成長マインドセットを持つことと成績との関係は弱く、それを教える授業の平均的な効果はとても小さいことを見いだしました。

経済的に厳しい家庭の生徒や伸び悩んでいる生徒は、より多くの恩恵を受けることがありました。2019年、アメリカの9年生約1万2000人を対象にした全国規模の実験では、1時間未満のオンライン授業で、成績が低めの生徒の成績がわずかに上がりました。信じることだけで魔法のように効くわけではありませんが、良い勉強法と組み合わせれば役立つかもしれません。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the 2018 meta-analyses find?

Q2. Who benefited in the 2019 national experiment?

Q3. What is the writer's conclusion?

重要単語

  • mindsetB2
    名詞考え方、心の持ち方A growth mindset is the belief that abilities can improve. growth mindset(成長マインドセット)⇔ fixed mindset(固定マインドセット)の対比で覚える。
  • interventionC1
    名詞介入(効果を狙った働きかけ)The intervention lasted less than an hour. inter-(間に)+vene(来る)=「間に入ってくる」。動詞 intervene in ~「~に介入する」。
  • effect sizeC1
    名詞(句)効果量The average effect size was very small. 「効果があったか」ではなく「どれくらい大きいか」を表す数値。統計的に有意でも効果量が小さいことはよくある。
  • achievementB1
    名詞達成、学業成績Academic achievement is often measured by grades. achieve(達成する)の名詞形。academic achievement(学業成績)、a sense of achievement(達成感)。
  • heterogeneityC1
    名詞異質性、ばらつきHeterogeneity means results differ across studies. hetero-(異なる)+gen(種類)。反対は homogeneity(均質性)。形容詞 heterogeneous / homogeneous。
  • struggleB1
    動詞・名詞苦労する・もがく/奮闘Students who struggle in math may benefit more. struggle with ~「~に苦戦する」、struggle to do「~しようと奮闘する」。
  • cure-allC1
    名詞万能薬A growth mindset is no cure-all. cure(治す)+all。panacea(パナシーア)も同じ意味で難関大に出る。

動画でもっと知る

「頭の良さは努力で伸びる」と信じる“成長マインドセット”。世界中の学校で教えられてきたけど、たくさんの研究をまとめると成績への効果は平均すると小さかったらしい。ただ、ゼロでもなかった。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Sisk, Burgoyne, Sun, Butler & Macnamara (2018) To what extent and under which circumstances are growth mind-sets important to academic achievement? Two meta-analyses, Psychological Sciencedoi.org
  2. Yeager et al. (2019) A national experiment reveals where a growth mindset improves achievement, Naturedoi.org
  3. Macnamara & Burgoyne (2023) Do growth mindset interventions impact students' academic achievement? A systematic review and meta-analysis with recommendations for best practices, Psychological Bulletindoi.org
  4. Burnette et al. (2023) A systematic review and meta-analysis of growth mindset interventions: For whom, how, and why might such interventions work?, Psychological Bulletindoi.org