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心理学ホント

あくびだけじゃない。イライラも笑顔も「うつる」感情伝染のしくみ

あくびだけじゃない。イライラも笑顔も「うつる」感情伝染のしくみ

読む前に予想してみよう!

一瞬すぎて「見えた」と気づかない笑顔でも、見た人の顔の筋肉は反応する

研究カード(どんな研究?)
対象
実験の参加者・SNS利用者・町の住民
規模
実験室実験は小規模、SNS実験は約69万人
研究の種類
実験室実験・大規模フィールド実験・縦断観察
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

人は相手の表情を無意識にまねし、気分まで似てくる。0.03秒しか見えない顔にも表情筋が反応し、SNSの投稿でもごく小さな「感情のうつり」が観察された。

ひとことで言うと笑顔もイライラも、あくびみたいに人から人へうつっちゃう!

もくじ
  1. 気分は「顔まね」から始まる
  2. 0.03秒の笑顔にも、顔は反応していた
  3. SNSでも感情はうつる?
  4. 幸せは「友だちの友だちの友だち」まで広がる?
  5. まとめ

誰かがあくびをすると、なぜか自分もあくびが出る。これは有名ですよね。

でも実は、うつるのはあくびだけではありません。笑顔も、イライラも、不安も、人から人へとうつっていきます。

心理学ではこれを「感情伝染」と呼びます。しかも、その一部は本人が気づかないうちに起きているんです。

01気分は「顔まね」から始まる

アメリカの心理学者ハットフィールドさんらは、感情伝染のしくみをこう説明しました。

  1. 人は相手の表情や声、姿勢を無意識にまねる
  2. 自分の顔や体がその形になると、脳がその感情を少し感じる
  3. 結果として、相手と気分が似てくる

つまり、相手の笑顔をまねると、自分の中にも「楽しい」気持ちが少しわいてくる、という考え方です。

ただし、ステップ2の「表情を作ると気分が変わる(表情フィードバック)」には、今も議論があります。大規模な追試で、効果がとても小さい、または再現できないという結果も出ているのです(くわしくは表情フィードバック仮説の記事)。顔まね以外に、「相手の状況を想像する」「同じ出来事を一緒に体験する」といったルートも考えられています。

ちなみに、おなじみの「あくびのうつり」も、見知らぬ人より家族や親しい友だちとの間でうつりやすいという研究があります。気持ちの距離が近い相手ほど、無意識のまねが起きやすいのかもしれません。

020.03秒の笑顔にも、顔は反応していた

つまり、「見た」という自覚がなくても、顔は勝手に相手の表情をコピーしようとしている。感情伝染が「意識する前」から始まっていることを示す実験です。

相手の表情を、顔の筋肉が無意識にまねしている
相手の表情を、顔の筋肉が無意識にまねしている

03SNSでも感情はうつる?

顔が見えないSNSではどうでしょう。

2014年に発表された研究では、Facebookとアメリカの大学の研究者が、約69万人のユーザーを対象に実験をしました(実験そのものは2012年)。1週間だけ、タイムラインに表示される投稿を調整したのです。

  • ポジティブな投稿を減らされた人は、自分の投稿でもポジティブな言葉が少し減った
  • ネガティブな投稿を減らされた人は、ネガティブな言葉が少し減った

ただし、変化はごくわずかでした。感情を表す言葉の増減は、いちばん大きくても1,000語あたり1語ほどです。また、ユーザーに個別の同意をとらずに行われたため、研究倫理の面で大きな批判を受け、掲載誌も「懸念」を表明する文章を出しました。それでも、文字だけでも感情がうつる可能性を示した研究として有名です。

04幸せは「友だちの友だちの友だち」まで広がる?

2008年には、アメリカの研究者ファウラーさんとクリスタキスさんが、心臓病の研究で有名な「フラミンガム研究」(アメリカのある町の住民を長年調べている研究)のデータを分析しました。参加者は約4700人、追跡期間は20年です。

すると、近く(約1.6km以内)に住む友だちが幸せになると、本人も幸せになりやすい、という関係が見つかりました。幸せな人どうしのつながりは、3人先(友だちの友だちの友だち)まで見られたといいます。

ただしこの研究には、「似た者同士が友だちになりやすいだけでは?」「同じ環境にいるからでは?」という反論もあります。実際、同じ年に同じ雑誌で、別の研究者が反論を出しました(Cohen-Cole & Fletcher)。よく似た分析方法を使うと、ニキビや身長、頭痛まで友だちから「うつる」ように見えてしまうというのです。人間関係のデータから「うつった」と言い切るのは難しい、という教訓です。

05まとめ

感情は、あくびのように人から人へうつります。しかもその入り口と考えられているのが、0.03秒の表情にも反応する無意識の顔まねです。

自分の笑顔は、自分だけのものではなく、まわりの人の気分にも少しうつっていくかもしれない。そう思うと、ちょっと口角を上げてみたくなりませんか?

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerYawns are famously contagious, but so are smiles and irritation. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Yawns are famously contagious, but so are smiles and irritation. Psychologists call this emotional contagion. According to Elaine Hatfield and her colleagues, people unconsciously copy others' facial expressions, voices, and postures, and this copying may make their feelings more similar.

In a 2000 experiment in Sweden, participants were shown happy or angry faces for only about 0.03 seconds, too quickly to notice. Even so, their cheek muscles reacted to smiles and their brow muscles reacted to angry faces. Emotions may spread online, too.

In a 2014 study, researchers adjusted the Facebook news feeds of about 690,000 users for one week. People who saw fewer positive posts used slightly fewer positive words themselves. The change was tiny, and the study was criticized because users had not given individual consent.

128 words ・ CEFR B1

和訳を見る

あくびがうつることは有名ですが、笑顔やイライラもうつります。心理学者はこれを感情伝染と呼びます。エレイン・ハットフィールドらによれば、人は他人の表情、声、姿勢を無意識にまね、このまねによって気持ちが似てくることがあります。

2000年のスウェーデンの実験では、参加者は笑顔や怒り顔を約0.03秒だけ、気づかないほど速く見せられました。それでも、笑顔には頬の筋肉が、怒り顔には眉間の筋肉が反応しました。感情はネット上でも広がるかもしれません。

2014年に発表された研究で、研究者たちは約69万人のユーザーのFacebookのニュースフィードを1週間調整しました。ポジティブな投稿をあまり見なかった人は、自分でもポジティブな言葉をわずかに少なく使いました。その変化はごく小さく、ユーザーが個別に同意していなかったため、この研究は批判されました。

4択リーディングクイズ

Q1. According to Hatfield and her colleagues, how does emotional contagion happen?

Q2. In the 2000 experiment, how did muscles react to angry faces?

Q3. Why was the Facebook study criticized?

重要単語

  • contagionC1
    名詞伝染、うつることLaughter spreads like a contagion in the classroom. 形容詞 contagious「うつりやすい」。a contagious smile「つられる笑顔」。
  • mimicC1
    動詞まねるBabies often mimic their parents' faces. 過去形は mimicked(k が入る)。名詞 mimicry「模倣」。
  • facial expressionB1
    名詞(句)表情Her facial expression showed she was surprised. facial は face の形容詞。expression は「表現」で、表情は facial expression。
  • unconsciousB2
    形容詞無意識のBiting your nails can be an unconscious habit. 「意識を失った」の意味もある。副詞 unconsciously。
  • consentC1
    名詞・動詞同意(する)Researchers must get consent from participants. informed consent「インフォームド・コンセント(説明を受けた上での同意)」は医療・研究倫理の必須語。
  • postureB2
    名詞姿勢People often copy each other's posture. good / bad posture「良い/悪い姿勢」。比喩で「態度・姿勢」の意味にも。
  • ethicalB2
    形容詞倫理的なThe study raised ethical questions. ethics(倫理)の形容詞。ethical issues / concerns が科学技術系長文で頻出。
感情はあくびみたいに「うつる」らしい。0.03秒しか見えない笑顔の写真でも、見た人の頬の筋肉が無意識に動いたという実験も。Facebookの約69万人を対象にした実験では、タイムラインに流れる投稿の気分が、本人の投稿の気分にごくわずかにうつった。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Hatfield, Cacioppo & Rapson (1993) Emotional contagion, Current Directions in Psychological Sciencedoi.org
  2. Dimberg, Thunberg & Elmehed (2000) Unconscious facial reactions to emotional facial expressions, Psychological Sciencedoi.org
  3. Kramer, Guillory & Hancock (2014) Experimental evidence of massive-scale emotional contagion through social networks, PNASdoi.org
  4. Fowler & Christakis (2008) Dynamic spread of happiness in a large social network: longitudinal analysis over 20 years in the Framingham Heart Study, BMJdoi.org
  5. Cohen-Cole & Fletcher (2008) Detecting implausible social network effects in acne, height, and headaches: longitudinal analysis, BMJdoi.org