SNSの「いいね」で10代の脳の報酬系が光った。脳スキャン実験でわかったこと

読む前に予想してみよう!
「いいね」が多くついている写真ほど、自分も「いいね」を押したくなる
10代を対象にした実験では、同じような写真でも、「いいね」が多く表示されているほうに「いいね」を押しやすかった。
- 対象
- 13〜18歳の若者
- 規模
- 32人(追試61人)
- 研究の種類
- fMRI実験
- 確かさ
- ★★☆☆☆
10代32人の脳を調べた実験で、自分の写真に「いいね」が多くつくと、ごほうびに反応する脳の部位が活発になった。周りの「いいね」の数に判断も引っぱられた。
ひとことで言うと「いいね」は、脳にとって小さなごほうびみたいなもの!
写真を投稿したあと、何度もスマホを開いて「いいね」の数をチェックしてしまう。
数が増えるとうれしいし、なかなか増えないとちょっとモヤモヤする。
この「いいね」、実は脳の中で「ごほうび」と同じように処理されているかもしれない、という研究があります。アメリカの研究チームが、10代の若者の脳をスキャンして確かめました。
0110代32人の「いいね」実験
結果は、とてもわかりやすいものでした。
- 自分の写真に「いいね」が多くついているとき、脳の側坐核(そくざかく)という部分が活発になった
- 「いいね」が多い写真ほど、参加者自身も「いいね」を押しやすかった
側坐核は、おいしいものを食べたり、お金をもらったりしたときに反応する、脳の「ごほうびセンター」の一部です。つまり「いいね」は、脳にとって小さなごほうびのように働いていた可能性があります。
02みんなが「いいね」していると、つられる
2つめの結果も重要です。同じような写真でも、「いいね」がたくさんついていると、それだけで自分も「いいね」したくなる。
たとえるなら、行列のできているラーメン屋に、つい並びたくなる気持ち。みんなが良いと言っているものを、良いと感じてしまうのです。
さらにこの実験では、危険な行動(飲酒など)が写った写真を見ているとき、自分をコントロールする働きに関わる脳の部位の活動が下がる傾向も見られました。仲間の影響を受けやすい10代の脳の特徴を示す結果として注目されました。
ただし、32人というのは脳画像研究としても小さめです。同じチームが2018年に13〜21歳の61人で行った実験でも、「いいね」が多い写真に「いいね」を押しやすい傾向や、側坐核の反応は再び見られましたが、危険な写真でブレーキ役の部位が下がる傾向は高校生だけで、大学生では見られませんでした。脳の反応が「どれくらい強いか」「実生活の行動にどうつながるか」は、まだこれから確かめる段階です。

03大人の脳でも似た反応が
10代だけの話ではありません。2013年、ドイツのベルリン自由大学で研究していたメシさんらは、大人を対象に、自分の評判が上がる情報を受け取ったときの脳の反応を調べました。
すると、(他人の評判が上がったときと比べて)自分の評判が上がったときの側坐核の反応が大きい人ほど、Facebookを熱心に使っている傾向がありました。ただし、これも30人ほどの研究で、「脳の反応がSNSを使わせる」という因果関係までは示していません。「人から良く思われたい」という気持ちと、SNSの使い方には関係がありそうです。
04「SNSは脳に悪い」と言い切れる?
ここで注意したいのは、「いいね」で報酬系が反応する=SNSは危険、とすぐに結論づけられないことです。
2019年、イギリスの研究者オーベンさんとプシビルスキさんは、数十万人規模の10代のデータを分析しました。デジタル機器の使用と幸福感の間にはマイナスの関係がありましたが、その大きさはごくわずか。論文では、「じゃがいもを食べること」と幸福感の関係と同じくらい小さい、と表現されています。
SNSが心にどう影響するかは、使い方や人によって大きく変わると考えられていて、研究者の間でも議論が続いています。
スマホ通知とドーパミンの話は、スマホ通知の記事もどうぞ。
05まとめ
「いいね」がうれしいのは、脳のごほうびセンターが反応しているから。そして、みんなの「いいね」に、自分の判断もつい引っぱられます。
それ自体は、人間らしい自然な反応です。大切なのは、数字に振り回されず、自分のペースでSNSと付き合うこと。脳のしくみを知っていれば、ちょっと距離をとるのもラクになります。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhy do people keep checking their "likes"?
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Do you check how many "likes" your photos get? In a 2016 study, scientists scanned the brains of 32 teenagers. When their own photos had many likes, a part of the brain linked to rewards became more active.
The teenagers also liked photos more when other people had already liked them. But a large study found that phone and internet use has only a very small link with teenagers' happiness.
70 words ・ CEFR A2
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自分の写真に「いいね」がいくつつくか、チェックしていますか?2016年の研究で、科学者たちは32人の10代の脳をスキャンしました。自分の写真に「いいね」が多くついていると、ごほうびに関わる脳の一部がより活発になりました。
10代の若者たちはまた、他の人がすでに「いいね」している写真に、より「いいね」を押しました。しかしある大規模な研究では、スマホやインターネットの利用と10代の幸福感の結びつきはとても小さいことがわかりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
SNSの「いいね」に10代の脳がどう反応するかがテーマなので A。
Q2. How many teenagers had their brains scanned?
scanned the brains of 32 teenagers とあるので C。
Q3. What did the large study find?
only a very small link with teenagers' happiness とあるので B。
Why do people keep checking their "likes"? In 2016, researchers at UCLA scanned the brains of 32 people aged 13 to 18 while they viewed photos in an app similar to Instagram. The number of likes on each photo was secretly set by the researchers.
When participants' own photos appeared to have many likes, a reward area of the brain called the nucleus accumbens became more active. They were also more likely to like photos that already had many likes, showing the power of peer influence. A 2018 study with 61 participants found similar results. However, a large 2019 analysis showed that the link between digital technology use and teenagers' well-being was very small.
114 words ・ CEFR B1
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なぜ人は「いいね」を何度もチェックしてしまうのでしょうか?2016年、UCLAの研究者たちは、13〜18歳の32人がInstagramに似たアプリで写真を見ている間、その脳をスキャンしました。各写真の「いいね」の数は、研究者たちがひそかに決めていました。
参加者自身の写真に「いいね」が多くついているように見えると、側坐核と呼ばれる脳の報酬領域がより活発になりました。彼らはまた、すでに「いいね」が多い写真に「いいね」を押しやすく、仲間の影響の強さを示しました。61人が参加した2018年の研究でも同様の結果が見られました。しかし2019年の大規模な分析では、デジタル技術の利用と10代の幸福感の結びつきはとても小さいことが示されました。
4択リーディングクイズ
Q1. Who decided the number of likes on each photo?
The number of likes on each photo was secretly set by the researchers. とあるので D。
Q2. What is the nucleus accumbens?
a reward area of the brain called the nucleus accumbens とあるので B。
Q3. What does the 2019 analysis suggest?
デジタル技術と幸福感の関連はとても小さいとあるので、害を誇張すべきでないと推論できる。A。
Why are "likes" so compelling? In 2016, researchers at UCLA used functional MRI to scan 32 adolescents aged 13 to 18 as they viewed photographs in a simulated Instagram-like feed, including pictures they had submitted themselves. Unknown to the participants, the number of likes on each image had been assigned by the researchers.
When their own photos appeared to receive many likes, activity increased in the nucleus accumbens, part of the brain's reward circuitry that also responds to food and money. Participants were also more inclined to like images that already displayed many likes, a clear sign of peer influence, and when viewing photos of risky behavior such as drinking, regions involved in self-control tended to show reduced activity.
A 2018 follow-up with 61 participants aged 13 to 21 replicated the behavioral effect and the reward response, but the reduced control-region activity appeared only among high school students. Several cautions apply. Thirty-two is a small sample even for brain imaging, and reward activation should not be equated with addiction. A 2019 analysis of hundreds of thousands of adolescents also found that the negative association between digital technology use and well-being, though real, was extremely small.
195 words ・ CEFR B2
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なぜ「いいね」はこれほど人を引きつけるのでしょうか?2016年、UCLAの研究者たちは機能的MRIを使い、13〜18歳の若者32人が、自分で提出した写真を含め、Instagramに似せたフィードで写真を見ている様子をスキャンしました。参加者には知らされていませんでしたが、各画像の「いいね」の数は研究者が割り当てていました。自分の写真が多くの「いいね」を得ているように見えると、側坐核の活動が高まりました。
側坐核は脳の報酬回路の一部で、食べ物やお金にも反応します。参加者はまた、すでに多くの「いいね」が表示されている画像に「いいね」を押しやすく、これは仲間の影響のはっきりした表れでした。
そして飲酒のような危険な行動の写真を見ているときは、自制に関わる領域の活動が下がる傾向がありました。13〜21歳の61人による2018年の追跡研究は、行動面の効果と報酬反応を再現しましたが、制御領域の活動低下は高校生にだけ見られました。いくつかの注意点があります。32人は脳画像研究としても小さなサンプルであり、報酬系の活性化を依存症と同一視すべきではありません。数十万人の若者を対象にした2019年の分析でも、デジタル技術の利用と幸福感の間の負の関連は、実在するものの、きわめて小さいことがわかりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the 2018 follow-up study find?
replicated the behavioral effect and the reward response, but the reduced control-region activity appeared only among high school students とあるので C。
Q2. Why does the author warn that reward activation "should not be equated with addiction"?
側坐核は食べ物やお金にも反応する報酬回路の一部なので、活性化=依存とは言えない。A。
Q3. What is the author's overall attitude toward the findings?
興味深い結果を紹介しつつ、Several cautions apply. として小標本・依存との同一視・関連の小ささを述べているので D。
重要単語
- rewardB1名詞・動詞ほうび、報酬/報いるPraise can work as a reward for children.
in reward for ~(~のほうびに)。reward system(報酬系)は脳科学の頻出語。 - adolescentC1名詞・形容詞10代の若者/思春期のAdolescents are very sensitive to what their friends think.
名詞 adolescence(思春期)。teenager より学術的な語。 - peer influenceB2名詞(句)仲間からの影響Peer influence is strong during the teenage years.
peer は「同輩・仲間」。peer pressure(同調圧力)、peer review(査読)もセットで。 - brain scanB2名詞(句)脳スキャンThe brain scan showed which areas were active.
scan は「精査する・ざっと目を通す」の両義。fMRI は機能的磁気共鳴画像法。 - well-beingB2名詞幸福感、心身の健康Exercise is good for your well-being.
subjective well-being=主観的幸福感。健康・幸福を広く含む語。 - compellingC1形容詞人を強く引きつける、説得力のあるThe story was so compelling that I couldn't stop reading.
compel(強いる)の現在分詞から。compelling evidence=説得力のある証拠。 - inclinedC1形容詞~する傾向がある、~したい気がするI'm inclined to agree with you.
be inclined to do の形で。名詞 inclination(傾向・好み)。
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自分の写真に「いいね」がたくさんつくと、10代の脳では「ごほうび」に反応する部位が活発になったらしい。しかも「いいね」が多い写真ほど、自分も「いいね」を押しやすかった。脳スキャンで見えたSNSのしくみ。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Sherman et al. (2016) The power of the Like in adolescence: Effects of peer influence on neural and behavioral responses to social media, Psychological Sciencedoi.org
- Sherman et al. (2018) Peer influence via Instagram: Effects on brain and behavior in adolescence and young adulthood, Child Developmentdoi.org
- Meshi, Morawetz & Heekeren (2013) Nucleus accumbens response to gains in reputation for the self relative to gains for others predicts social media use, Frontiers in Human Neurosciencedoi.org
- Orben & Przybylski (2019) The association between adolescent well-being and digital technology use, Nature Human Behaviourdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










