10代の脳は「アクセル強め・ブレーキ発達中」? 11か国5000人で見えた冒険心の正体

読む前に予想してみよう!
自分の衝動を抑える力は、高校卒業くらいで大人と同じレベルに完成する
11か国の調査では、自己制御は20代前半〜半ばまで伸び続けていた。
- 対象
- 10〜30歳
- 規模
- 11か国・5000人超
- 研究の種類
- 国際横断調査(質問紙+課題)
- 確かさ
- ★★★★☆
10代はスリルを求める気持ちが19歳ごろピーク、自分を抑える力は20代半ばまで成長。11か国で似た形。ただし「脳のせい」だけでは単純すぎる。
ひとことで言うと10代は「やってみたい!」が強く、「待てよ」がまだ育ち中。
自転車で坂道をノーブレーキで下る。夜中にノリで海まで行く。テスト前なのに新作ゲームを始める。大人から見ると「なんでそんなことを?」という行動、10代のころに心当たりはありませんか。
実はこれ、頭が悪いからでも、性格の問題だけでもないかもしれません。発達心理学では、10代の脳を「アクセルが先に強くなり、ブレーキはあとからゆっくり育つ」とたとえる考え方が有名です。
ただし、このたとえには専門家からのツッコミもあります。両方を見ていきましょう。
01「アクセル」と「ブレーキ」の成長スピードがちがう
この考え方は「二重システムモデル」と呼ばれます。
- アクセル役:ごほうびや刺激にワクワクする脳のしくみ(線条体など)。思春期に入るころから反応が強まる
- ブレーキ役:先のことを考えて衝動を抑えるしくみ(前頭前野など)。10代〜20代にかけてじわじわ成熟する
アメリカのCaseyさんらは2008年のレビューで、「子どもでも大人でもなく、10代だけがリスクを取りやすい」という“山なり”のパターンは、この成長スピードのズレで説明しやすいと論じました。
実際、脳のMRIを同じ子どもで何年も追いかけた研究(Giedd et al., 1999)では、前頭葉の灰白質が思春期のはじめごろにピークを迎え、その後に減っていく(いわゆる「刈り込み」で配線が整理されていく)様子が報告されています。ブレーキ側の“工事”は、10代のあいだもずっと続いているわけです。

0211か国・5000人超で確かめた
「それってアメリカの話でしょ?」という疑問に答えたのが、Steinbergさんらの国際研究です。
つまり、「やってみたい!」がピークを迎えるタイミングと、「待てよ」が完成するタイミングの間に、数年のすき間があるのです。
03どんでん返し:「脳のせい」で片づけるのは単純すぎる
ここで注意したいのが、このモデルへの批判です。PfeiferさんとAllenさんは2012年、「アクセル対ブレーキ」という二項対立の図式は単純すぎると指摘しました。脳の領域どうしはネットワークでつながって働いており、「この部位がアクセル、この部位がブレーキ」ときれいに分けられるわけではない、という指摘です。
さらに、モデルの提唱者側のShulmanさんらも2016年のレビューで、これはあくまで単純化した“見取り図”だと認めています。現実の危険行動の一部が、統計上もう少し上の年齢でピークになるのは、脳の違いだけでなく、車に乗れる・お金がある・親の目が届かないといった「機会」の違いも大きいと考えられています。
04まとめ
10代の冒険心は、アクセルが先に育ち、ブレーキがゆっくり育つという発達のズレで、ある程度説明できそうです。11か国で似たパターンが見られたのは、なかなかの「マジか」ポイントです。
ただし、「脳がそうなってるから仕方ない」は言いすぎ。環境や機会、そして本人の工夫で、リスクの出方は大きく変わります。アクセルの強さは、うまく使えば挑戦のエンジンにもなるのです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany adults wonder why teenagers take risks that children and adults usually avoid.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Why do teenagers sometimes do risky things? Scientists studied more than 5,000 people aged 10 to 30 in 11 countries. They found that the wish for excitement grows in the teenage years and is strongest around age 19.
But self-control grows slowly and keeps improving until the mid-twenties. So the "accelerator" grows before the "brake." This gap may explain teen risk-taking. But the brain is not the only reason. Having money, cars, and freedom also matters.
76 words ・ CEFR A2
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なぜ10代はときどき危ないことをするのでしょうか。科学者たちは、11か国の10〜30歳の5000人以上を調べました。その結果、刺激を求める気持ちは10代に強くなり、19歳ごろにいちばん強くなることがわかりました。
しかし、自分を抑える力はゆっくり育ち、20代半ばまで伸び続けます。つまり「アクセル」が「ブレーキ」より先に育つのです。このズレが10代のリスクの取りやすさを説明するかもしれません。でも、脳だけが理由ではありません。お金や車、自由があることも関係しています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
第1文の問いかけ(なぜ10代は危ないことをするのか)に、脳の成長のズレで答えている文章なので B。「頭が悪い」とは書かれていない。
Q2. When is the wish for excitement strongest?
is strongest around age 19 とあるので C。
Q3. In this passage, the "brake" means ...
直前で self-control(自分を抑える力)が遅れて育つと述べ、それを「ブレーキ」にたとえているので A。B は「アクセル」の方。
Many adults wonder why teenagers take risks that children and adults usually avoid. One popular idea is the "dual systems model." It says that the part of the brain that reacts to rewards becomes strong early in adolescence, while the part that controls impulses develops more slowly. To test whether this pattern is universal, Steinberg and his colleagues studied more than 5,000 people aged 10 to 30 in 11 countries, using both questionnaires and tasks.
Sensation seeking rose through the teens and peaked at around 19, but self-regulation kept improving until about 23 to 26. The overall pattern was similar across countries. However, experts warn that the brain is not the whole story. Opportunities, such as access to cars and money, also play a role.
125 words ・ CEFR B1
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多くの大人は、子どもや大人がふつう避けるリスクを、なぜ10代が取るのかと不思議に思います。よく知られた考え方の一つが「二重システムモデル」です。これによると、ごほうびに反応する脳の部分は思春期の早い時期に強くなる一方、衝動を抑える部分はもっとゆっくり発達します。このパターンが世界共通かどうかを確かめるため、Steinbergさんらは11か国の10〜30歳の5000人以上を、質問紙と課題の両方を使って調べました。
刺激を求める傾向は10代を通して高まり19歳ごろにピークを迎えましたが、自己制御は23〜26歳ごろまで伸び続けました。全体の形は国が違っても似ていました。しかし専門家は、脳がすべてではないと注意を促しています。車やお金を使えるかどうかといった「機会」も関係しているのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What did Steinberg's team want to find out?
To test whether this pattern is universal(このパターンが世界共通かを確かめるため)とあるので A。
Q2. According to the passage, until when does self-regulation keep improving?
self-regulation kept improving until about 23 to 26 とあるので D。19歳は刺激を求める傾向のピーク。
Q3. What does the last part of the passage suggest?
the brain is not the whole story と述べ、車やお金などの「機会」も関係するとしているので B。モデルが完全に否定されたとは書かれていない。
Teenagers are often called reckless, and the dual systems model tries to explain why in terms of the brain. Systems that respond to rewards and excitement, such as the striatum, become highly reactive around puberty. Prefrontal systems that support planning and impulse control, by contrast, mature gradually into the twenties. In this account, the accelerator is pressed hard for years while the brake is still being built.
To test whether this imbalance is universal, Steinberg and colleagues surveyed over 5,000 people aged 10 to 30 in 11 countries, combining questionnaires with behavioral tasks. Sensation seeking peaked at around 19. Self-regulation did not level off until roughly 23 to 26. This shape was broadly consistent across cultures, though its size differed.
Critics say that splitting the brain into an accelerator and a brake oversimplifies things, because brain regions work together as networks. The data were also cross-sectional, collected from different age groups at a single point in time, so differences between those groups do not necessarily show how each individual develops. And risk in the real world depends on opportunity as well, such as access to cars, money and time away from adult supervision.
193 words ・ CEFR B2
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10代はしばしば無謀だと言われ、「二重システムモデル」はその理由を脳の働きから説明しようとします。線条体のように、ごほうびや刺激に反応するシステムは、思春期ごろに非常に反応しやすくなります。それに対して、計画や衝動の抑制を支える前頭前野のシステムは、20代にかけて徐々に成熟します。この説明では、ブレーキがまだ作られている途中なのに、アクセルが何年も強く踏み込まれている状態になります。
この不均衡が世界共通かどうかを調べるため、Steinbergさんらは11か国の10〜30歳の5000人以上を対象に、質問紙と行動課題を組み合わせて調査しました。刺激を求める傾向は19歳ごろにピークを迎えました。自己制御は23〜26歳ごろまで頭打ちになりませんでした。この形は、大きさに差はあっても文化を越えておおむね共通していました。批判的な研究者は、脳をアクセルとブレーキに分けるのは単純化しすぎだと言います。
脳の領域はネットワークとして協力して働くからです。また、データは横断的なもので、ある一時点で異なる年齢グループから集められたため、グループ間の差が一人ひとりの発達の仕方をそのまま表しているとは限りません。そして現実のリスクは、車やお金を使えること、大人の目から離れる時間があることといった「機会」にも左右されます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main purpose of the passage?
前半でモデルと11か国の調査を紹介し、後半で Critics say ... 以下の批判や、横断データ・機会という限界を述べているので B。
Q2. Which finding is reported for the eleven-country study?
This shape was broadly consistent across cultures とあるので C。A と B は「刺激希求」と「自己制御」を入れ替えたひっかけ。
Q3. Why does the author mention that the data were cross-sectional?
so differences between those groups do not necessarily show how each individual develops と続くので D。横断研究(ある時点で多くの年齢層を比べる研究)の限界の指摘。
重要単語
- adolescenceB2名詞思春期Adolescence is a time of big changes in the brain.
形容詞・名詞は adolescent(思春期の/若者)。teenager より学術的で、入試長文の頻出語。 - sensation seekingC1名詞(句)刺激を求める傾向Sensation seeking often peaks in the late teens.
sensation(感覚・興奮)+seek(求める)。心理学の専門用語として長文に出る。 - self-regulationC1名詞自己制御Self-regulation keeps improving into the twenties.
regulate(規制する・調整する)の名詞形に self- が付いた形。self-control とほぼ同義。 - impulseB2名詞衝動He tried to control his impulse to shout.
形容詞 impulsive(衝動的な)も頻出。on impulse で「衝動的に」。 - rewardB1名詞・動詞ごほうび・報酬(を与える)Teenagers are very sensitive to rewards.
reward A for B「B のことで A にほうびを与える」。形容詞 rewarding は「やりがいのある」。 - oversimplificationC1名詞単純化しすぎCalling it "just the brain" is an oversimplification.
over-(過度に)+simplify(単純化する)+-ation。論説文で筆者が反論するときの定番語。
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10代が無茶をしがちなのは「アホだから」じゃなかった。11か国・5000人超の調査で、スリルを求める気持ちは19歳ごろがピーク、自分を抑える力は20代半ばまで伸び続けるとわかった。アクセルとブレーキの成長のズレらしい。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Steinberg et al. (2017) Around the world, adolescence is a time of heightened sensation seeking and immature self-regulation, Developmental Sciencedoi.org
- Casey, Jones & Hare (2008) The Adolescent Brain, Annals of the New York Academy of Sciencesdoi.org
- Shulman et al. (2016) The dual systems model: Review, reappraisal, and reaffirmation, Developmental Cognitive Neurosciencedoi.org
- Pfeifer & Allen (2012) Arrested development? Reconsidering dual-systems models of brain function in adolescence and disorders, Trends in Cognitive Sciencesdoi.org
- Giedd et al. (1999) Brain development during childhood and adolescence: a longitudinal MRI study, Nature Neurosciencedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










