虫が光に集まる理由は?「月と勘違い説」をくつがえした“背中を光に向ける”反射

読む前に予想してみよう!
虫が街灯に集まるのは、月を目印に飛ぶ仕組みが光で狂うからだと証明されている
3D撮影の研究では、月を使った方向決めの説の予測と合わず、「背中を光に向ける反射」で説明できるとされた。
- 対象
- 10目の飛ぶ昆虫(野外と実験室)
- 規模
- 野外動画477本+室内モーションキャプチャ
- 研究の種類
- 3D飛行軌跡の観察研究とモデル
- 確かさ
- ★★★☆☆
虫は光に向かって飛んでいたのではなく、「明るい方が空」と思って背中を光に向けていた。そのせいで光の周りを回ったり、ひっくり返ったりして抜け出せなくなる。
ひとことで言うと虫は「明るいほうが空だ」と思って、背中を光に向けてしまう!
結論から言うと、虫が光に集まるのは、光に「向かって」いるのではなく、光のほうに「背中を向けて」しまうからだと考えられています。虫には「明るいほうが空(上)」として体の向きを保つ反射があり、すぐそばの電灯をその“空”と取り違えてしまうのです。
長年よく言われてきた「月と勘違いする説」は、2024年の3D撮影の研究で、データと合わないことが示されました。
01虫が光に集まる理由、これまでの4つの説
なぜ虫は光の周りに集まるのか。これまでに主に次のような説がありました。
- 逃げ道説:茂みのすき間の明るいほうへ逃げる習性のため
- 月と勘違い説:月を方角の目印にして飛ぶ虫が、電灯を月と間違える
- 熱説:光の熱に引き寄せられる
- 目がくらむ説:まぶしさで目がくらんで動けなくなる
どれももっともらしいのですが、暗い中を飛ぶ小さな虫の動きを3Dで正確に記録するのが難しく、決着がついていませんでした。
023Dで撮ったら、虫は光に向かっていなかった
結果は意外なものでした。虫は光にまっすぐ向かうことはほとんどなく、光に対して横向きに飛んでいました。そして体の背中側を、ほぼぴったり光の方向へ傾けていたのです。
野外の動画では、ふだんの飛び方では見られない3つの奇妙な動きが記録されました。
こうした動きは、暗闇の中ではほとんど見られませんでした。

03なぜ背中を光に向ける?「明るいほうが空」の反射
虫が何億年も飛んできた自然の世界では、いちばん明るいのは空でした。夜でも、地面より空のほうが明るいのです。そこで多くの飛ぶ昆虫は、背中を明るいほうに向けておけば体が上下逆さまにならないという反射(背光反応)を使って姿勢を保っています。
ところが、すぐそばに強い点の光があると、その反射が裏目に出ます。光を“空”と取り違えて体を傾け続けるため、まっすぐ飛べなくなり、光から離れられなくなるのです。
研究チームはこの反射だけを組み込んだシミュレーションで、虫の不規則な飛び方を再現しました。一方、「月と勘違い説」なら光に向かってらせんを描いて近づくはずですが、そうした軌跡は見られませんでした。また、熱をほとんど出さないLEDにも虫が集まることから、熱説も否定されています。
04どんでん返し:遠くから寄ってくる理由はまだ謎
ただし、この研究が説明したのは光のすぐ近くで抜け出せなくなる理由です。虫がそもそも遠くから光のほうへやって来る仕組みは、まだはっきりしていません。2016年の研究では、街灯が蛾を引き寄せる範囲は半径約23mと推定されました。また、種によって反応の強さに差があることも報告されています。
05まとめ
虫は光が「好き」なのではなく、体に組み込まれた姿勢の反射が、人工の光にだまされていたのでした。夜の照明は、虫にとって空の向きを狂わせるワナでもあります。必要な場所だけを照らす工夫は、虫たちを守ることにもつながりそうです。宇宙から見た夜の明かりについては宇宙から見た「夜の地球」もどうぞ。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerFor a long time, people believed that insects gather around lights because they confuse them with the moon,…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many insects fly around street lights at night. People often said that insects think the light is the moon. But a 2024 study used 3D cameras and found something different. The insects turned their backs toward the light.
In nature, the brightest part is the sky, so this habit helps them stay the right way up. But near a lamp, it makes them go around and around, stop, or even flip over.
72 words ・ CEFR A2
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夜、たくさんの虫が街灯のまわりを飛んでいます。虫は光を月だと思っているのだと、よく言われてきました。しかし2024年の研究では3Dカメラを使い、違うことがわかりました。虫は背中を光のほうに向けていたのです。
自然の中では空がいちばん明るいので、この習性のおかげで虫は正しい向きのまま飛べます。しかしランプの近くでは、そのせいで虫はぐるぐる回ったり、止まったり、ひっくり返ったりしてしまいます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
虫が光のまわりから離れられなくなる理由を説明しているので B。
Q2. What did the insects turn toward the light?
The insects turned their backs toward the light. とあるので D。
Q3. In the passage, "flip over" means ...
flip over は「ひっくり返る」。上下が逆になることなので B。
For a long time, people believed that insects gather around lights because they confuse them with the moon, which they use to find their direction. In 2024, researchers filmed insects flying near lights with high-speed cameras in Costa Rica and measured their body angles in the lab. The insects, though, rarely flew straight toward the light.
Instead, they tilted their backs toward it. In the natural world, the sky is usually brighter than the ground, so keeping the back toward the brightest area helps insects stay upright. Near a strong lamp, however, this reflex makes them circle around it, stall, or flip over. These strange movements were almost never seen in the dark.
113 words ・ CEFR B1
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長いあいだ、虫が光に集まるのは、方角を知るために使っている月と光を取り違えるからだと信じられてきました。2024年、研究者たちはコスタリカで光の近くを飛ぶ虫を高速度カメラで撮影し、実験室で体の角度を測りました。ところが、虫が光にまっすぐ向かうことはめったにありませんでした。
そのかわり、背中を光のほうに傾けていたのです。自然の世界では、ふつう空は地面より明るいので、いちばん明るい方に背中を向けておくと、虫は上下正しい姿勢を保てます。しかし強いランプの近くでは、この反射のせいで虫は光のまわりを回ったり、失速したり、ひっくり返ったりします。こうした奇妙な動きは、暗闇ではほとんど見られませんでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
姿勢を保つための反射が、光のそばで虫を抜け出せなくしていることが主旨なので A。
Q2. What did the insects usually do near the light?
rarely flew straight toward the light. Instead, they tilted their backs toward it. とあるので C。
Q3. Why does the writer mention that the sky is brighter than the ground?
空のほうが明るいので、明るい方に背中を向けると上下を保てる、という反射の理由の説明。よって D。
Why do flying insects crowd around lamps at night? Earlier explanations included escaping toward bright gaps in vegetation, mistaking lamps for the moon, attraction to heat, and being dazzled. In 2024, researchers tested these ideas by recording insects from ten orders in 3D, using 477 field videos from Costa Rica and motion-capture experiments in the laboratory.
The insects seldom flew directly at the light; instead, they consistently tilted their backs toward it. This is a reflex that normally keeps them upright, since the sky is usually the brightest part of their surroundings. Near an artificial source, it produced three abnormal patterns: orbiting the lamp, stalling after a steep climb, and flipping over when passing above it.
A simulation based only on this reflex reproduced the erratic flight, whereas the spiral paths predicted by the moon hypothesis were not observed. The heat hypothesis is also weakened because insects gather around LEDs that emit little heat. However, the study explains why insects become trapped at close range, not why they approach from a distance; a 2016 study estimated that streetlights draw moths from roughly 23 meters away.
185 words ・ CEFR B2
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なぜ飛ぶ虫は夜のランプに群がるのでしょうか。これまでの説明には、茂みの明るいすき間へ逃げようとする、ランプを月と間違える、熱に引き寄せられる、まぶしさで目がくらむ、といったものがありました。2024年、研究者たちはこれらの説を検証するため、コスタリカで撮影した477本の野外動画と実験室でのモーションキャプチャ実験を使い、10の目(もく)にわたる昆虫を3Dで記録しました。虫が光にまっすぐ飛んでいくことはめったになく、そのかわり一貫して背中を光のほうへ傾けていました。
これは、まわりでふつう最も明るいのは空であるため、ふだんは体を上下正しく保つのに役立つ反射です。人工の光源の近くでは、この反射が3つの異常なパターンを生みました。ランプのまわりを旋回する、急上昇のあとに失速する、そして真上を通るときにひっくり返る、というものです。
この反射だけにもとづくシミュレーションは不規則な飛び方を再現した一方、月の説が予測するらせん状の軌跡は観察されませんでした。熱をほとんど出さないLEDにも虫が集まることから、熱の説も弱まります。ただし、この研究が説明するのは虫が近距離で抜け出せなくなる理由であって、遠くから近づいてくる理由ではありません。2016年の研究では、街灯は約23メートル先から蛾を引き寄せると推定されました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main finding of the 2024 study?
they consistently tilted their backs toward it と、その反射が近くでの異常な飛び方を生むことが中心的な発見なので D。
Q2. Which evidence weakens the moon hypothesis?
the spiral paths predicted by the moon hypothesis were not observed とあるので A。B は熱の説を弱める証拠。
Q3. According to the passage, what still remains unexplained?
not why they approach from a distance と研究の限界が述べられているので B。A はこの研究で説明された内容。
重要単語
- artificial lightB1名詞(句)人工の光Artificial light at night can confuse insects.
artificial は art(技)+-ficial(作る)で「人の手で作った」。反対は natural。artificial intelligence(AI)も同じ語。 - dorsalC1形容詞背中の、背側のInsects tilt their dorsal side toward the light.
反対語は ventral(腹側の)。dorsal fin は「背びれ」。生物系の長文で見かける。 - reflexB2名詞反射(無意識に起こる反応)This reflex helps insects stay upright.
re-(後ろへ)+flex(曲げる)。have quick reflexes「反射神経がよい」。reflect(反射する・映す)と同語源。 - hypothesisB2名詞仮説The moon hypothesis did not fit the data.
複数形は hypotheses。test a hypothesis「仮説を検証する」は研究紹介の定番。 - light pollutionB1名詞(句)光害Light pollution may contribute to insect decline.
air pollution, noise pollution と並ぶ「〜汚染」の仲間。環境系の長文・英作文で使える。 - orbitB2動詞・名詞周りを回る/軌道The moth orbited the lamp again and again.
本来は天体の「軌道」。in orbit「軌道上で」。虫や人が何かの周りを回る比喩にも使う。
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- 論文全文:Fabian et al. 2024(NIH PubMed Central)pmc.ncbi.nlm.nih.gov
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夜の街灯に虫が集まるのは「月と勘違いするから」と言われてきた。でも3D撮影で調べたら、虫は光に向かうのではなく、背中を光に向けて飛んでいた。明るい方を“空”と思う反射で、光の周りから抜け出せなくなっていたらしい。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Fabian et al. (2024) Why flying insects gather at artificial light, Nature Communicationsdoi.org
- Owens & Lewis (2018) The impact of artificial light at night on nocturnal insects: A review and synthesis, Ecology and Evolutiondoi.org
- Degen et al. (2016) Street lighting: sex-independent impacts on moth movement, Journal of Animal Ecologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












