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スーパーのBGMがゆっくりだと、売り上げが増えた? 店内の音楽にひそむ心理作戦

スーパーのBGMがゆっくりだと、売り上げが増えた? 店内の音楽にひそむ心理作戦

読む前に予想してみよう!

お店のBGMが買い物に影響していても、客の多くはそのことに気づいていない

研究カード(どんな研究?)
対象
アメリカのスーパー客・イギリスのワイン売り場の客など
規模
スーパー1店舗の数週間の売上、ワイン売り場の客44人へのアンケート、その後の店舗実験
研究の種類
フィールド実験+メタ分析
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

スーパーでBGMのテンポを遅くすると、客の歩く速さがゆっくりになり、売り上げが増えたという1982年の研究がある。ただし、その後の研究では効果が出る条件は限られていた。音楽は知らないうちに買い物を左右することがある。

ひとことで言うとゆっくりな音楽が流れると、お店の中でのんびり歩いちゃう!

もくじ
  1. テンポを変えたら、歩くスピードが変わった
  2. レストランでは「長居」が増えた
  3. フランスの曲でフランスワインが売れた
  4. その後の研究では、条件しだいだった
  5. まとめ

スーパーやコンビニで流れているBGM。気にしたこと、ありますか?

ほとんどの人は「なんとなく流れているもの」と思っているはず。でも実は、BGMのテンポひとつで、お客さんの歩き方や買い物の量が変わるという研究があるんです。

01テンポを変えたら、歩くスピードが変わった

この分野の古典的な研究が、アメリカのマーケティング研究者ロナルド・ミリマンによる実験です。

結果は、こうでした。

  • ゆっくりのテンポのとき、客は店内をゆっくり歩いた
  • そして、ゆっくりのテンポの日は、速いテンポの日より売り上げが多かった(論文では約38%高いと報告)

ゆっくり歩くと、棚の商品が目に入る時間が増えます。その分、「あ、これも買っておこう」が増えたのかもしれません。

BGMは、じっと耳をかたむけて聞くものではありません。そのため、影響を受けていても、自分では気づきにくいのかもしれません。

02レストランでは「長居」が増えた

ミリマンは、1986年にレストランでも同じような実験をしています。

ゆっくりのBGMを流した日は、客の食事時間が長くなり、バーでの飲み物の注文が増えたと報告されました。

ただし、お客さんの回転が大事なファストフード店なら、逆にテンポの速い曲の方が向いているのかもしれません(これは研究で確かめられた話ではありません)。

流れる音楽が、手に取る商品を変えることがある
流れる音楽が、手に取る商品を変えることがある

03フランスの曲でフランスワインが売れた

さらに有名なのが、イギリスのレスター大学のエイドリアン・ノースらによる実験です。

1997年に科学誌 Nature に発表されたこの研究では、スーパーのワイン売り場で、フランスらしい音楽とドイツらしい音楽を日替わりで流しました。

すると、フランスの音楽の日はフランスワインが、ドイツの音楽の日はドイツワインがよく売れたのです。

ところが、ワインを買った客にアンケートをとると、音楽が自分の選択に影響したと答えた人は44人中6人だけでした。音楽は、私たちが気づかないうちに頭の中の「フランス」や「ドイツ」のイメージを呼び起こしていたようです。

04その後の研究では、条件しだいだった

これらの研究は、BGMと買い物の関係を示した先駆的な研究ですが、

  • ミリマンの研究は1つのスーパー、ノースらの研究も1つの売り場での結果
  • 時代やお店の種類、音楽の好みによって効果は変わりうる

という点には注意が必要です。

実際、その後の実験では「ゆっくりなら売れる」とは単純に言えませんでした。

  • 1996年に発表されたスーパーでの実験では、テンポや音量を変えても、客がいる時間や使うお金に違いは見られませんでした。差が出たのは、流れる曲が客の好みに合っているかどうかでした。
  • 2012年に発表されたデパートでの実験では、ゆっくりな曲で売り上げが伸びたのは、短調(悲しげな感じの曲)のときだけでした。長調(明るい感じの曲)では、テンポを変えても売り上げは変わりませんでした。
  • 北ヨーロッパの小さな食料品店6店で、4万件以上の買い物を調べた2017年の研究では、店が混んでいるときは、逆に速い曲のほうが、客1人あたりの買い物の額が増えていました。

BGMが買い物に影響するという結果は多く出ていますが、効果の向きや大きさはさまざまです。お店の音楽についての多くの実験をまとめたメタ分析(Garlin と Owen、2006年/Roschk ら、2017年)でも、BGMの効果は全体として小〜中程度でした。Garlin と Owen の分析では、効果はテンポや音量、お客さんの好みとの相性によって変わるとされています。

05まとめ

お店のBGMは、ただの背景とは限りません。ただし、どんな曲が売り上げにつながるかは、お店の種類や混み具合などで変わるようです。

次にスーパーに行ったら、ちょっと耳をすませてみてください。その曲のテンポが、あなたの歩く速さを左右しているかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerBackground music in stores is not just there to fill the silence. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Background music in stores is not just there to fill the silence. In 1982, marketing researcher Ronald Milliman tested this in an American supermarket. Over several weeks, he switched between no music, slow music and fast music, and he measured how quickly shoppers moved and how much the store sold. When slow music was playing, shoppers walked more slowly, and daily sales were higher than on fast-music days.

Slower walking may give people more time to notice products on the shelves. In a 1997 study, a wine section played French or German music on different days. French wine sold better with French music, and German wine sold better with German music. However, very few shoppers said the music had influenced their choice.

122 words ・ CEFR B1

和訳を見る

店のBGMは、ただ静けさを埋めるためにあるのではありません。1982年、マーケティング研究者のロナルド・ミリマンは、アメリカのスーパーでこれを検証しました。数週間にわたって、彼は音楽なし、ゆっくりした音楽、速い音楽を切り替え、買い物客がどれくらい速く移動するか、店がどれくらい売り上げるかを測りました。ゆっくりした音楽が流れているとき、客はよりゆっくり歩き、1日の売り上げは速い音楽の日より多くなりました。

ゆっくり歩くことで、棚の商品に気づく時間が増えるのかもしれません。1997年の研究では、ワイン売り場で日によってフランスの音楽かドイツの音楽を流しました。フランスの音楽のときはフランスワインが、ドイツの音楽のときはドイツワインがよく売れました。しかし、音楽が自分の選択に影響したと答えた客はほとんどいませんでした。

4択リーディングクイズ

Q1. What did Milliman measure in his study?

Q2. What happened in the 1997 wine study?

Q3. Why might slow music increase sales?

重要単語

  • tempoB2
    名詞速さ、テンポThe slow tempo calmed the shoppers. イタリア語由来の音楽用語で「時間」が原義。temporary(一時的な)と同語源。
  • background musicB1
    名詞(句)BGMBackground music can shape our mood. BGM は和製略語で、英語では background music と言うのが自然。
  • atmosphereB1
    名詞雰囲気Stores design their atmosphere carefully. 原義は「大気」。atmo-(蒸気)+sphere(球)。the atmosphere of the room「部屋の雰囲気」。
  • influenceB1
    名詞・動詞影響(する)Few customers noticed the music's influence. have an influence on ~「~に影響を与える」。動詞は他動詞なので influence on としない点に注意。
  • field experimentC1
    名詞(句)現場での実験The study was a field experiment in a real store. laboratory experiment(実験室実験)と対比される。現実に近いが条件を統制しにくい。
  • primingC1
    名詞プライミング(先に受けた刺激が後の判断に影響すること)French music may cause priming for French wine. prime は「下準備をする」。再現性が議論される分野なので、限界とセットで語られることが多い。
  • outsellC1
    動詞~より多く売れるFrench wines outsold German wines. out-+動詞で「~をしのぐ」。outnumber(数で上回る)、outperform(性能で上回る)も同じ形。
スーパーのBGMをゆっくりにしたら、お客さんの歩くスピードが落ちて売り上げが増えたという1982年の研究がある(その後の実験では、効くかどうかは条件しだい)。別の実験では、フランスの音楽を流すとフランスワインが売れたらしい。しかもお客さんはほぼ気づいてなかった。

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出典・参考文献(8件)タップで表示
  1. Milliman (1982) Using background music to affect the behavior of supermarket shoppers, Journal of Marketingdoi.org
  2. Milliman (1986) The influence of background music on the behavior of restaurant patrons, Journal of Consumer Researchdoi.org
  3. North, Hargreaves & McKendrick (1997) In-store music affects product choice, Naturedoi.org
  4. Knoferle, Spangenberg, Herrmann & Landwehr (2012) It is all in the mix: The interactive effect of music tempo and mode on in-store sales, Marketing Lettersdoi.org
  5. Knoeferle, Paus & Vossen (2017) An upbeat crowd: Fast in-store music alleviates negative effects of high social density on customers' spending, Journal of Retailingdoi.org
  6. Herrington (1996) Effects of music in service environments: a field study, Journal of Services Marketingdoi.org
  7. Garlin & Owen (2006) Setting the tone with the tune: A meta-analytic review of the effects of background music in retail settings, Journal of Business Researchdoi.org
  8. Roschk, Loureiro & Breitsohl (2017) Calibrating 30 years of experimental research: A meta-analysis of the atmospheric effects of music, scent, and color, Journal of Retailingdoi.org