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道で15人がビルの窓を見上げたら、通行人の4割が立ち止まった。行列に並びたくなる心理

道で15人がビルの窓を見上げたら、通行人の4割が立ち止まった。行列に並びたくなる心理

読む前に予想してみよう!

行列に並びたくなる心理は、「みんなが選んでいる=良いものだろう」という推測が関係している

研究カード(どんな研究?)
対象
ニューヨークの通行人ほか
規模
約1,400人(1969年)〜約3,300人(2012年)
研究の種類
フィールド実験・理論モデル
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

人は「多くの人が選んでいるもの」を良いものだと判断しやすい。街角で大勢がビルの窓を見上げると、通行人もつられて見上げた実験がある。

ひとことで言うとみんなが並んでいると、「きっとおいしいんだ」と思っちゃう!

もくじ
  1. 窓を見上げる人たち
  2. 「みんな」は情報になる
  3. 経済学者が見つけた「情報のなだれ」
  4. 行列は「ワクワク」も生む
  5. まとめ

ガラガラの店と、行列ができている店。どちらに入りたいですか?

多くの人は、「行列の方がおいしそう」と感じるはず。たとえ30分待つことになっても。

なぜ私たちは、わざわざ長い列に並びたくなるのでしょう? その答えは、ニューヨークの街角で行われた、ちょっと変わった実験にヒントがあります。

01窓を見上げる人たち

この実験を行ったのは、「服従の実験」で有名な心理学者スタンレー・ミルグラムらです。

結果は、とても分かりやすいものでした。

  • 仕掛け人が1人のとき:つられて見上げた通行人は約4割、立ち止まった人はわずか約4%
  • 仕掛け人が15人のとき:見上げた通行人は8割以上、立ち止まった人は約4割

窓には何もないのに、「大勢が見ている」というだけで、人は立ち止まってしまったのです。

2012年には、にぎやかな街中で約3,300人の歩行者の動きと顔の向きをカメラで追跡した、現代版の追試(Gallup ら)も行われました。仕掛け人が多いほど見上げる人が増える傾向は確認されましたが、ある人数を超えると増え方は頭打ちになり、「全員がつられて見上げる」ような爆発的な連鎖は起きにくいことも分かりました。

02「みんな」は情報になる

なぜ人は周りに流されるのでしょう? その理由の一つが、他人の行動を「情報」として使っていることです。

知らない街でレストランを選ぶとき、私たちは料理の味を知りません。そんなとき、行列の長さは「この店はおいしいらしい」という手がかりになります。

心理学ではこれを社会的証明(多くの人がしていることを正しいと判断する傾向)と呼びます。

ネットの「売れ筋ランキング」や「〇万人が購入!」という表示も、同じ心理に働きかけています。自分で全部の商品を調べるのは大変。だから、たくさんの人の選択を「近道」として使うのは、じつは理にかなった行動でもあるのです。問題は、その近道がいつも正しい道とは限らないことです。

一人ひとりの選択が、やがて大きな「人の流れ」になる
一人ひとりの選択が、やがて大きな「人の流れ」になる

03経済学者が見つけた「情報のなだれ」

1992年には、経済学者たちが情報カスケード(カスケード=連なった滝)という考え方を発表しました。

たとえば、2軒並んだ店があるとします。

  1. 最初の客は、なんとなくAの店に入る
  2. 2人目は、自分の好みではBかなと思いつつ、「Aに人がいる」のを見てAに入る
  3. 3人目以降は、もう自分の判断より「みんなAにいる」が決め手になる

こうして、最初のちょっとした偶然が、大きな人気の差を生んでしまうのです。行列は行列を呼ぶ。しかもその人気が、本当の実力を反映しているとは限りません。

これを実験で示したのが、1万4千人以上が参加したネット上の「人工音楽市場」の研究(Salganik ら、2006年)です。ほかの人のダウンロード数が見える条件では、人気の差がぐっと大きくなり、しかも同じ曲でも、どの世界でヒットするかが予測しにくくなりました。

04行列は「ワクワク」も生む

もちろん、行列には別の魅力もあります。

  • 待つ時間そのものが、期待を高める
  • 「並んでまで食べた」という体験が、話のネタになる
  • 「みんなと同じものを味わいたい」という仲間意識

ただし、意図的に行列を作って人気を演出するケースもあり得ます。行列の長さだけで判断するのは、ちょっと危険かもしれません。

05まとめ

人が行列に並びたくなるのは、「みんなの選択」を判断材料にしているから。それは、情報が少ない中で生きるための賢い近道でもあります。

でも近道は、ときに遠回りにも。次に行列を見たら、窓を見上げる15人を思い出してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhy are we attracted to restaurants with long lines? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Why are we attracted to restaurants with long lines? A famous experiment by Stanley Milgram and his colleagues offers a clue. In 1969, groups of people stood on a busy New York sidewalk and looked up at a sixth-floor window for 60 seconds. The size of the group changed from 1 to 15. When just one person looked up, only about 4 percent of passersby stopped.

When 15 people did, more than 80 percent looked up and about 40 percent stopped, even though there was nothing in the window. Psychologists call this social proof: we often treat other people's choices as information. Following the crowd can be a useful shortcut, but it does not always lead us to the best choice.

121 words ・ CEFR B1

和訳を見る

なぜ私たちは、長い行列のあるレストランに引きつけられるのでしょうか。スタンレー・ミルグラムらによる有名な実験が手がかりを与えてくれます。1969年、人々のグループがニューヨークのにぎやかな歩道に立ち、6階の窓を60秒間見上げました。グループの人数は1人から15人まで変えられました。たった1人が見上げたときは、立ち止まった通行人は約4%だけでした。15人が見上げたときは、窓には何もなかったのに、80%以上が見上げ、約40%が立ち止まりました。

心理学者はこれを社会的証明と呼びます。私たちは他人の選択を情報として扱うことが多いのです。群衆に従うことは便利な近道になりえますが、必ずしも最善の選択につながるとは限りません。

4択リーディングクイズ

Q1. What changed in Milgram's experiment?

Q2. What is social proof?

Q3. What does the author suggest in the last sentence?

重要単語

  • conformityC1
    名詞同調Conformity can be useful or harmful. 動詞 conform to ~「~に従う・合わせる」。to を伴う点が頻出。
  • passerbyB2
    名詞通行人A passerby stopped to look up. 複数形は passersby(passer に s が付く)。mother-in-law → mothers-in-law と同じ仕組み。
  • herd behaviorC1
    名詞(句)群集行動、横並び行動Herd behavior can push prices up. herd は「(動物の)群れ」。herd mentality「群集心理」も同じ意味でよく使う。
  • cascadeC1
    名詞連鎖、なだれAn information cascade spread quickly. 原義は「段になった小さな滝」。次々と連なって起こることのたとえ。
  • social proofC1
    名詞(句)社会的証明Long lines act as social proof. proof は「証拠」。レビューやランキングの宣伝効果を説明する用語として広告系の長文にも出る。
  • queueB2
    名詞・動詞行列(に並ぶ)People queued for hours outside the shop. イギリス英語。アメリカでは line / stand in line。発音は /kjuː/。
  • gazeB2
    名詞・動詞じっと見ること/見つめるThey gazed up at the window. gaze at ~「~をじっと見る」。stare(じろじろ見る)より穏やかなニュアンス。
街角で仕掛け人が1人でビルの窓を見上げても立ち止まる人はほぼいないのに、15人で見上げたら通行人の約4割が立ち止まったらしい。行列店に並びたくなるのも同じ心理。「みんな」が情報になってる。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Milgram, Bickman & Berkowitz (1969) Note on the drawing power of crowds of different size, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  2. Banerjee (1992) A simple model of herd behavior, The Quarterly Journal of Economicsdoi.org
  3. Bikhchandani, Hirshleifer & Welch (1992) A theory of fads, fashion, custom, and cultural change as informational cascades, Journal of Political Economydoi.org
  4. Gallup et al. (2012) Visual attention and the acquisition of information in human crowds, PNASdoi.org
  5. Salganik, Dodds & Watts (2006) Experimental study of inequality and unpredictability in an artificial cultural market, Sciencedoi.org