1960年の論文「この世の終わりは2026年11月13日(金)」、人口の式はなぜ外れた?

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1960年に科学誌に載った論文は、2026年11月13日に世界の人口が無限大になると計算していた
題も「Doomsday(この世の終わりの日): Friday, 13 November, A.D. 2026」。この式は1970年代の終わりまで実際の人口をよくなぞったが、その後は外れた。11月13日の世界人口は約83億人の見込み(2026年の検証記事)。
- 対象
- 世界の人口(西暦1年ごろ〜1958年の推計)
- 規模
- 1960年の論文の式と、2026年の検証記事(2023年までのデータで見直し)
- 研究の種類
- 数式による予測と、その66年後の振り返り(新しい実験や調査ではない)
- 確かさ
- ★★★★☆
1960年の論文は「この世の終わり(Doomsday)」の日を2026年11月13日(金)とした。中身は、その日に世界の人口が無限大になるという計算。式は1970年代まで当たったが、子どもの数が減って外れた。
ひとことで言うと「この世の終わりは2026年11月13日」の正体は人口の式。子どもが減って外れた!
もくじ
来月、2026年11月13日は金曜日です。66年前の1960年、この日を「Doomsday(ドゥームズデイ)」と名指しした論文が、科学誌『Science』に載りました。Doomsday はこの世の終わりの日という意味です。題は「Doomsday: Friday, 13 November, A.D. 2026」。訳すと「この世の終わり:2026年11月13日金曜日」です。中身は人口の計算です。副題には、人口がこれまでの2000年と同じように増え続ければ、この日に世界の人口は無限大に近づく、とあります。
もちろん、その日に人口が無限大になることはありません。2026年10月8日、同じ『Science』に、この予言を振り返る文章が載りました。書いたのは、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の経済学者バーチェナル(Birchenall)さんです。11月13日の世界人口は約83億人の見込み。予言は大きく外れます。
それでも、この式は笑い話では終わりません。1970年代の終わりまでは、ふつうの人口予測より正確に、実際の人口をなぞっていたのです。しかも、今の数字を同じようにそのまま先へ延ばすと、今度は逆に「人がいなくなる日」が出てきます。例に使われたのは、日本の数字でした。
01人口が増えるほど、増えるスピードも上がっていた
1960年の論文を書いたのは、米イリノイ大学の電気工学科にいた3人です。フォン・フェルスター(von Foerster)さん、モラ(Mora)さん、アミオット(Amiot)さんです。西暦1年ごろから1958年までの世界人口のデータに、1本の式を当てはめました。
人口が倍になるまでの時間を見ると、彼らが何に気づいたかが分かります。バーチェナルさんが昔の推計と国連のデータから計算した数字です。
- 10億人に届いたのは1800年(それまでの人類の歴史すべてを使った)
- 20億人になったのは1925年(125年で倍)
- 40億人になったのは1975年(50年で倍)
- 80億人までは50年足らず(国連によると2022年11月15日)
毎年同じ割合で増えるなら、倍になる時間はいつも同じです。ところが人口は、倍になる時間がどんどん短くなっていました。人口が多いほど、増える割合そのものが上がっていたのです。
このタイプの増え方(双曲線型の成長)を式にすると、ある日に答えが無限大に届いてしまいます。その日が2026年11月13日でした。バーチェナルさんによると、この日付はフォン・フェルスターさんの誕生日。誕生日にかけた、ちょっとした冗談でした。
なぜ人口は、多いほど速く増えたのか。1993年、経済学者のクレーマー(Kremer)さんが一つの説明を出しました。人が多いほど、新しい技術を思いつく人も多い。技術が進むと、養える人の数が増える。このモデルは、歴史の大部分で「人口が増える割合は、人口の大きさに比例する」と予測し、データもそれを支持しました。
021970年代までは、本当に当たっていた
当時は、アジア・アフリカ・中南米で人口が爆発的に増えていた時代です。1968年にはエーリック(Ehrlich)さんの本『人口爆弾』が、近いうちに数億人が飢え死にすると書きました。1960年の論文が示した日付も、飢えや資源不足、貧困の心配に人々の目を向けさせました。
そして、短い期間の予測としては、この式はよく当たりました。物理的な限界を無視している、という批判は当時からありました。それでも1960〜70年代、ふつうの人口予測は人口の伸びを何度も低く見積もり、この式のほうが実際に近かった。1970年代の終わりまで、式は実際の人口の動きをぴたりとなぞっていました。
バーチェナルさんは、ほかの功績も挙げています。技術の進歩がどこかで予測できない点に達する、という考えを「特異点」と呼びます。この考えは、数学者フォン・ノイマンが1950年代の後半に語っていました。ただ、そこには式も日付もありませんでした。1960年の論文は、それを式と日付で示しました。約150本の式を使った1972年の『成長の限界』と比べても、ずっと単純で中身が見える式でした。

03外れた理由は、子どもの数
1960年代の半ばから、世界の人口が増える割合は下がり始めました。「人口が大きいほど速く増える」という関係が崩れたのです。1980年代までに、先進国で女性1人あたりの子どもの数が、人口を保てる水準(国連によると約2.1人)を下回りました。発展途上国でも、子どもの数が減るスピードが上がりました。
バーチェナルさんの結論はこうです。式は数学としては間違っていない。人口がどんどん速く増えていることを、正しく式にしていた。間違えたのは、20世紀半ばの一時的な人口爆発を、いつの時代にも成り立つ法則だと思ったことでした。物理の法則と違い、社会の傾向は時代とともに変わります。
どの期間のデータを使うかでも、答えは大きく変わります。たとえば紀元前200年の人が、農業が始まった時代(新石器時代)の増え方から先を計算したとします。すると、西暦1000年には今と同じくらいの人口になる、と大きく見誤ることになります。
今の世界人口はまだ増えていますが、増え方は年々ゆるやかです。国連の見通しでは、2080年代半ばに約103億人でピークを迎え、そのあとはゆっくり減っていきます。
04どんでん返し:日本の減り方を世界に当てはめると「人口ゼロ」
バーチェナルさんは、同じ失敗を逆向きにもやってみせます。今の世界の人口の増え方は、毎年同じ割合で増える場合(倍々ゲーム)よりもゆっくりです。増える割合そのものが、年々下がっているからです。そして世界の多くの人は、子どもの数が人口を保てる水準を下回る国に住んでいます。今の傾向をそのまま延ばすと、今度は人口が消える予測になるのです。
例に選ばれたのが日本です。バーチェナルさんは、日本の今の「自然減少」の率を使います。自然減少とは、生まれた人より亡くなった人が多い分のことです。日本では年0.77%です。この率が世界中でいつまでも続く、と仮定してみせます。すると地球から人がいなくなるのは3108年5月5日(火)になる、と書いています(計算の手順は書かれていません。くわしくは下の専門家向けメモ)。
この0.77%は、厚生労働省の2025年の数字(概数)とも合います。2025年の日本の出生数は67万1236人、死亡数は158万9489人。生まれた人より亡くなった人が91万8253人多く、人口1000人あたり7.7人の減少でした。1年で0.77%ずつ減る計算です(日本にいる日本人の数で、外国との行き来は含まない)。
ただし、これも起こりそうにない、とバーチェナルさんは書きます。人口が減ることを心配する人たちの計算も、数学としては正しい。高齢化の心配にも、十分な理由がある。それでも、子どもの数がこの先ずっと変わらないと決めつけている、というのです。人口の増え方は、時代とともに上がったり下がったりします。今の傾向をそのまま延ばすだけでは、1960年の予言と同じ失敗をくり返すことになります。
05AIの急成長の予測にも、同じ落とし穴
バーチェナルさんは、ほかの読み違いも並べています。ソ連が崩れたあとの「これからは自由な民主主義の時代だ」という予測。そして、1980年代の日本の高い経済成長がいつまでも続くという見方。日本は、ここでも例に出てきます。
最後に挙げたのがAIです。AIは、データや計算の規模を大きくするほど性能が上がる、という法則(スケーリング則)が知られています。これをずっと先まで延ばせば、技術が爆発的に伸びるのは避けられない、と見えてしまう。でもそれは、その法則が観察された時代だけの性質かもしれない。バーチェナルさんは、AIが世界を大きく変える力を否定しているわけではありません。今の伸びを未来の法則と思いこむ危うさを指摘しているのです。
06まとめ
「Doomsday(この世の終わりの日)」の予言は、66年前の科学者がでたらめに作ったものではありませんでした。2000年分のデータに合う式を、20年近く当て続けた本物の計算です。それでも外れたのは、人間が子どもの数を変えたからでした。
11月13日の金曜日には、約83億人がふつうに朝を迎えるはずです。そして、今の減り方をそのまま延ばした「人口ゼロ」の予測も、同じ理由で当たりそうにありません。今の勢いを未来の法則と思いこまないこと。それが、外れた予言の残した中身です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerOn Friday, November 13, 2026, about 8.3 billion people will be alive.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In 1960, three scientists in the United States wrote a paper about the number of people on Earth. They used numbers from the last 2,000 years.
Their math said the number would become infinite, with no limit at all, on Friday, November 13, 2026. That is next month. It was also the birthday of one of the writers. The math worked well until the late 1970s. By then, families had started to have fewer children.
75 words ・ CEFR A2
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1960年、米国の3人の科学者が、地球上の人の数についての論文を書いた。彼らはこれまで2000年分の数字を使った。
その計算によると、人の数は2026年11月13日(金)に無限大、つまりまったく限りのない数になるという。それは来月だ。その日は、書いた人の1人の誕生日でもあった。この計算は1970年代の終わりまではよく合っていた。その頃には、家族が持つ子どもの数が減り始めていた。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
1960年の論文が、地球上の人の数が2026年11月13日に無限大になると計算した話なので、正解は B。
Q2. Until when did the math work well?
「The math worked well until the late 1970s.」とあるので、正解は B。
Q3. In the passage, "infinite" is closest in meaning to ___.
直後に「with no limit at all(まったく限りがない)」と言い換えているので、正解は B。
On Friday, November 13, 2026, about 8.3 billion people will be alive. A 1960 paper in Science said the number would be infinite by that day. Its three authors, researchers at the University of Illinois, had noticed that the world's population was growing faster and faster.
Later data agreed. It took 125 years to go from one billion to two billion people, and only 50 more years to reach four billion. Their formula matched real numbers until the late 1970s.
By then, families in many countries had fewer children, and growth was slowing. Economist Javier Birchenall turns the idea around. If Japan's current rate of decline, 0.77% a year, spread to the whole world and never changed, the last people would be gone in 3108, he writes.
127 words ・ CEFR B1
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2026年11月13日(金)には、約83億人が生きているはずだ。1960年の『Science』の論文は、その日までに人の数が無限大になると書いた。3人の著者はイリノイ大学の研究者で、世界の人口がどんどん速く増えていることに気づいていた。
その後のデータもそれを裏づけた。10億人から20億人になるのに125年かかったが、40億人に届くまではそこからわずか50年だった。彼らの式は1970年代の終わりまで、実際の数字に合っていた。
その頃には、多くの国で家族が持つ子どもの数が減っていて、人口の伸びはゆるやかになりつつあった。経済学者のハビエル・バーチェナルさんは、この考えを逆向きにした。日本の今の減り方である年0.77%が世界中に広がり、ずっと変わらなければ、最後の人がいなくなるのは3108年になる、と彼は書いている。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
1960年の人口の式、それが外れた理由、日本の数字を使った逆向きの計算を述べているので、正解は B。
Q2. How long did it take for the world's population to grow from one billion to two billion?
「It took 125 years to go from one billion to two billion people」とあるので、正解は C。50年は20億人から40億人まで。
Q3. What can we infer about the year 3108?
「If Japan's current rate of decline ... spread to the whole world and never changed」という仮定の計算から出た年なので、正解は B。
Heinz von Foerster and two colleagues at the University of Illinois fitted a single curve to estimates of world population from about the year 1 to 1958. In their model, the growth rate itself rose as the population got bigger, so the curve shot to infinity on a fixed day: Friday, November 13, 2026. That was also von Foerster's birthday, a joke on the authors' part.
For almost twenty years the curve beat standard forecasts, which kept underestimating growth. Economist Michael Kremer later offered one reason the pattern held for so long. More people meant more inventors, and better technology let the land feed more people. Writing in Science in October 2026, Javier Birchenall argues that the formula was sound as math but treated a brief burst of growth in the mid-twentieth century as a permanent law.
Growth rates began falling in the mid-1960s, and by the 1980s rich countries were having too few children to keep their populations steady. He then makes the same mistake in reverse on purpose. If Japan's natural decline of 0.77% a year applied to everyone forever, he writes, the planet would be empty on May 5, 3108. He thinks that is unlikely too.
199 words ・ CEFR B2
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ハインツ・フォン・フェルスターと2人の同僚(イリノイ大学)は、西暦1年ごろから1958年までの世界人口の推計に、1本の曲線を当てはめた。そのモデルでは人口が大きくなるほど増える割合そのものが上がるため、曲線はある決まった日に無限大へ跳ね上がる。2026年11月13日(金)だ。その日はフォン・フェルスターの誕生日でもあり、著者たちの冗談だった。
20年近くのあいだ、この曲線はふつうの予測より当たった。ふつうの予測は人口の伸びを低く見積もり続けていたのだ。のちに経済学者のマイケル・クレーマーが、この傾向が長く続いた理由の一つを示した。人が多いほど発明する人も多くなり、技術が進むと土地はより多くの人を養えた。
2026年10月の『Science』で、ハビエル・バーチェナルは、この式は数学としては正しかったが、20世紀半ばの短い人口の急増を、変わらない法則として扱ってしまったと論じている。人口の伸び率は1960年代半ばに下がり始め、1980年代には豊かな国々で、人口を保てないほど子どもの数が少なくなっていた。そして彼は、同じ間違いをわざと逆向きにやってみせる。日本の年0.77%の自然減が全人類にずっと当てはまるとすると、地球は3108年5月5日に無人になる、と彼は書いている。彼は、それも起こりそうにないと考えている。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
1960年の人口の式が20年近く当たった理由と、その後に外れた理由を述べているので、正解は B。D は筆者自身が「unlikely」と書いている。
Q2. According to Kremer's explanation, why did population growth speed up as the population grew?
「More people meant more inventors, and better technology let the land feed more people.」とあるので、正解は B。
Q3. Why does Birchenall calculate a date in 3108?
「He then makes the same mistake in reverse on purpose.」とあり、今の傾向をそのまま延ばす考え方の危うさを逆向きに示すためなので、正解は B。
重要単語
- extrapolateC1動詞(今までの傾向を)先へ延ばして予測するIf you extrapolate this trend, the numbers look scary.
extra(外へ)+ polate。extrapolate from ~ で「~をもとに推定する」。名詞は extrapolation - infiniteB2形容詞無限の、限りのないNo real population can become infinite.
in(否定)+ finite(限りのある)。発音は「インフィニット」で、finite(ファイナイト)と違う。名詞は infinity - doubling timeB2名詞倍になるまでの時間The doubling time of the world's population kept getting shorter.
double(倍になる)の -ing 形。人口・お金・感染者数などの話でよく使う - fertilityB2名詞出生率、子どもを産む割合Fertility has fallen in many countries since the 1970s.
fertile(実り豊かな、肥えた)の名詞形。fertility rate で「出生率」。fertilizer は「肥料」 - declineB1動詞・名詞減る、下がる/減少Japan's population has declined for many years.
a decline in ~ で「~の減少」。decline an offer(申し出を断る)の意味もある - forecastB1名詞・動詞予測(する)、予報(する)The old forecasts kept guessing too low.
weather forecast(天気予報)でおなじみ。過去形も forecast のままでよい - underestimateB2動詞低く見積もる、過小評価するMany experts underestimated how fast the population would grow.
under(下に)+ estimate(見積もる)。反対は overestimate
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1960年のScience論文の題は「この世の終わり:2026年11月13日(金)」。中身は、世界の人口がこの日に無限大になる計算。式は1970年代まで当たったが、子どもの数が減って外れた。日本の今の減り方を世界に延ばす「人口ゼロ」予測も同じ落とし穴だという。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Birchenall (2026) Demographic “doomsday” misses the mark, Sciencedoi.org
- von Foerster, Mora & Amiot (1960) Doomsday: Friday, 13 November, A.D. 2026, Sciencedoi.org
- Kremer (1993) Population Growth and Technological Change: One Million B.C. to 1990, The Quarterly Journal of Economicsdoi.org
- 国連 経済社会局 人口部 World Population Prospects 2024population.un.org
- 厚生労働省 令和7(2025)年 人口動態統計月報年計(概数)の概況mhlw.go.jp
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。














