語学・英語学習ウソ

英作文は「日本語で書いてから訳す」はダメ? 苦手な人ほど訳すほうが良かった実験

英作文は「日本語で書いてから訳す」はダメ? 苦手な人ほど訳すほうが良かった実験

読む前に予想してみよう!

英作文は、英語のレベルに関係なく、最初から英語で書いたほうが必ず質が高くなる

研究カード(どんな研究?)
対象
日本人大学生48人
規模
48人
研究の種類
被験者内比較(2つの書き方を両方実施)
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

日本語で書いて英訳する方法と英語で直接書く方法を比べると、英語が苦手な学生は訳したほうが内容や構成が良かった。得意な学生は訳してもあまり良くならなかった。

ひとことで言うと英語が苦手なうちは、日本語で考えてから訳してもOK。上達したら英語で直接書こう!

もくじ
  1. 2つの書き方を、同じ学生で比べた
  2. 得意な人は「訳す」と、かえってミス
  3. 訳す途中で「言えない!」に気づくのも学習
  4. まとめ

英作文の授業でよく言われるアドバイスがあります。

「日本語で考えてから訳すな。最初から英語で考えて書け」

もっともらしく聞こえます。でも、日本の大学で行われた実験では、英語が苦手な学生ほど、日本語で書いてから訳すほうが作文の質が高かったという結果が出ていました。

012つの書き方を、同じ学生で比べた

なぜ苦手な人には翻訳が効いたのでしょうか。

英語が苦手なうちは、英語で書こうとすると「言える英語」の範囲でしか考えられず、内容が浅くなりがちです。日本語でまず書けば、伝えたい内容や論理の流れをしっかり組み立てられます。

実際、この研究では翻訳した作文のほうが文の構造が全体的に複雑になっていました。日本語で考えた豊かな内容を、何とか英語にしようとした結果だと考えられます。

02得意な人は「訳す」と、かえってミス

ところが、英語が得意な学生にとっては、翻訳には落とし穴がありました。

レベルの高い学生は、翻訳した作文で意味が伝わらなくなるような誤りが、直接書いた作文より多い傾向があったのです。日本語の表現に引っ張られて、英語として不自然、あるいは意味のずれた文になりやすかったと考えられます。

また、直接英語で書いた作文の質は、文法の知識よりも話す・聞く力とより強く結びついていました。英語で直接書く力は、英語で考える経験の量に支えられているのかもしれません。

苦手なうちは「橋」を使い、慣れたら直接上へ
苦手なうちは「橋」を使い、慣れたら直接上へ

03訳す途中で「言えない!」に気づくのも学習

翻訳には、もう一つの効用があるかもしれません。それは、「日本語では言えるのに、英語では言えない」ことに気づけることです。

カナダのスウェインとラプキンの1995年の研究は、学習者が書く途中で「言いたいことが言えない」という問題に気づくと、その表現について考える学習が始まることを示しました。

さらに日本の大学生を対象にした花岡の2007年の研究では、自分の英作文をお手本の英文と比べると、学習者は書いている最中に「言えない」と気づいた部分の表現を、優先的に取り込んで覚えていたことがわかっています。

日本語から訳そうとして「この言い方、英語で何て言うんだ?」と詰まる。その瞬間こそ、新しい表現を学ぶチャンスなのです。

04まとめ

「日本語で考えてから訳すな」は、少なくとも英語が苦手な段階では言いすぎでした。日本語で内容を組み立ててから訳すことで、中身のある作文が書けることもあります。

大切なのは、レベルに合わせて書き方を変えること。苦手なうちは日本語の橋を使い、慣れてきたら少しずつ英語で直接書く。その途中で出会う「言えない!」が、あなたの英語を育ててくれます。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerTeachers often tell students not to write in Japanese and then translate, but to think in English from the… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Teachers often tell students not to write in Japanese and then translate, but to think in English from the start. In 1992, Kobayashi and Rinnert tested this advice with 48 Japanese university students, who wrote essays both by translating from Japanese and by writing directly in English. For lower-level writers, translation tended to produce better content, organization and style, probably because they could plan their ideas fully in Japanese.

Higher-level writers, however, gained little from translating and actually made more errors that confused the meaning. Translation may also create learning chances. When writers notice that they cannot express something in English, they start thinking about the form they need. So lower-level writers can use Japanese as a bridge, while higher-level writers can try writing directly.

125 words ・ CEFR B1

和訳を見る

先生はよく、日本語で書いてから訳すのではなく、最初から英語で考えるよう生徒に言います。1992年、小林とリナートは、日本の大学生48人でこのアドバイスを検証しました。学生たちは、日本語から訳す方法と英語で直接書く方法の両方で作文を書きました。レベルの低い書き手では、訳したほうが内容・構成・文体がよくなる傾向がありました。

おそらく日本語で考えを十分に組み立てられたからでしょう。しかしレベルの高い書き手は、訳してもほとんど得るものがなく、実際には意味をわかりにくくする誤りが多くなりました。翻訳は学びの機会を生み出すこともあります。書き手が、何かを英語で表現できないことに気づくと、必要な形について考え始めるのです。だからレベルの低い書き手は日本語を橋として使い、レベルの高い書き手は直接書くことに挑戦してもよいでしょう。

4択リーディングクイズ

Q1. Why did translation probably help lower-level writers?

Q2. What happened when higher-level writers translated?

Q3. What learning chance does translation create, according to the passage?

重要単語

  • composeB2
    動詞(文章を)書く・構成するTry to compose directly in English. 「作曲する」の意味もある。名詞 composition「作文」。be composed of ~「~から成る」も入試頻出。
  • translationB1
    名詞翻訳Translation helped lower-level writers. 動詞 translate A into B。translation は「訳すこと」と「訳文」の両方を表す。
  • organizationB1
    名詞(文章の)構成The essay has clear organization. 「組織」の意味が有名だが、作文評価では「論理の組み立て・構成」を指す。英検ライティングの採点観点にもある。
  • syntactic complexityC1
    名詞(句)統語的複雑さ(文構造の複雑さ)Translations showed greater syntactic complexity. syntax「統語(文の組み立て)」の形容詞。関係詞節や従属節が多いほど複雑とみなす。SLA の作文研究の評価指標。
  • proficiencyC1
    名詞熟達度・実力The effect depended on proficiency. lower-proficiency / higher-proficiency learners「熟達度の低い/高い学習者」の形でよく使う。
  • noticeB1
    動詞気づくWriters notice gaps when they cannot express an idea. SLA では noticing(気づき)が習得の第一歩とされる。notice the gap「(言いたいことと言えることの)ギャップに気づく」。
  • tentativeC1
    形容詞暫定的な・仮のThe findings are tentative because the sample was small. tentative plan「仮の計画」。研究紹介で「まだ確定ではない」と言うときの定番語。
「英作文は英語で考えて書け、日本語から訳すな」とよく言うけど、日本の大学生48人の実験では、英語が苦手な人ほど“日本語で書いてから訳す”ほうが内容も構成も良くなったらしい。得意な人は訳してもあまり良くならず、意味が伝わりにくくなるミスが増えた。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Kobayashi & Rinnert (1992) Effects of first language on second language writing: Translation versus direct composition. Language Learningdoi.org
  2. Hanaoka (2007) Output, noticing, and learning: An investigation into the role of spontaneous attention to form in a four-stage writing task. Language Teaching Researchdoi.org
  3. Swain & Lapkin (1995) Problems in output and the cognitive processes they generate: A step towards second language learning. Applied Linguisticsdoi.org