語学・英語学習

10か国語以上の人も含む多言語話者の脳を調べたら、母語にだけ"省エネ"モードがあった

10か国語以上の人も含む多言語話者の脳を調べたら、母語にだけ"省エネ"モードがあった

読む前に予想してみよう!

5言語以上を話す人の脳は、母語を聞くときに言語エリアがいちばん強く働く

研究カード(どんな研究?)
対象
5言語以上を話す人(うち10言語以上が16人)
規模
34人
研究の種類
fMRIによる脳画像研究
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

10言語以上を話す人を含む34人の脳を調べると、得意な言語ほど言語ネットワークがよく働くのに、母語だけは反応が控えめ。多言語話者の脳は「効率的」らしい。

ひとことで言うとたくさんの言語を話す人の脳は、母語だけ「楽して」動いていた!

もくじ
  1. MITが34人の「言語マニア」の脳をのぞいた
  2. 知らない言語でも「親戚」なら脳が反応
  3. ポリグロットの脳は「大きい」より「効率的」
  4. 超多言語話者から、私たちが学べること
  5. まとめ

世の中には、10か国語、20か国語、なかには50を超える言語を知っているという人がいます。こうした人は「ハイパーポリグロット(超多言語話者)」と呼ばれます。

「どうせ生まれつきの天才でしょ」と思いますよね。では、その頭の中で何が起きているのか。実際に脳をスキャンした研究があります。

結果は意外でした。カギは、外国語ではなく母語にあったのです。

01MITが34人の「言語マニア」の脳をのぞいた

つまり、母語は脳にとって、同じくらい得意な外国語より負担が小さいか同程度で処理できる言語らしい、ということです。

02知らない言語でも「親戚」なら脳が反応

もう一つ面白い発見があります。まったく知らない言語でも、本人がよく知っている言語と似た言語(たとえばスペイン語が得意な人にとってのポルトガル語)を聞いたときは、似ていない未知の言語より言語ネットワークがよく働いていました。

脳は、知っている言語の知識を使って、知らない言語の中から単語や文の手がかりを探そうとしているのかもしれません。

得意な外国語ほど「明るく」、母語だけは静かに光る——そんなイメージ
得意な外国語ほど「明るく」、母語だけは静かに光る——そんなイメージ

03ポリグロットの脳は「大きい」より「効率的」

同じチームは以前の研究で、多言語話者は、そうでない人より母語を聞いたときの言語ネットワークの反応が小さいことも報告していました。2024年の研究でも、この結果が再び確認されています。

「たくさんの言語を話す人の脳は、言語エリアが巨大で活発に違いない」という予想とは逆。むしろ少ない労力で言語を処理できる、効率のよい脳というイメージに近い結果です。

ただし、これが「生まれつき」なのか「たくさんの言語を学んだ結果」なのかは、まだ分かっていません。

04超多言語話者から、私たちが学べること

ハイパーポリグロットを扱った本や論文集では、特殊な記憶術よりも、

  • 言語そのものが大好きで、学ぶこと自体を楽しんでいる
  • 長い年月、毎日コツコツ触れ続けている
  • 自分に合う学習の仕組みを持っている

といった点が語られがちです。何十もの言語を「同じレベルで」話せる人はまれで、言語ごとに得意・不得意の差があるのが普通だとも指摘されています。

05まとめ

たくさんの言語を話す人の脳は、「何でも強く光る特別な脳」ではありませんでした。得意な言語ほどよく働き、母語だけは楽に処理されているらしい、効率のよい脳のようです。

ハイパーポリグロットの話から見えてくるのは、長い年月の積み重ねかもしれません。英語をコツコツ続けることも、その小さな一歩です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSome people, called hyperpolyglots, can speak ten or more languages. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Some people, called hyperpolyglots, can speak ten or more languages. In a 2024 study, Fedorenko and colleagues at MIT used fMRI to study 34 people who spoke at least five languages, 16 of whom spoke ten or more. The participants listened to their native language, foreign languages they knew to different degrees, and languages they did not know. The brain's language network responded more strongly to languages they knew better.

However, the native language was an exception. It caused a similar or weaker response than an equally strong foreign language. In addition, unknown languages that were similar to a known language caused more activity than unrelated unknown languages.

108 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ハイパーポリグロットと呼ばれる人たちは、10以上の言語を話すことができます。2024年の研究で、MITのフェドレンコらは、fMRIを使って、少なくとも5つの言語を話す34人を調べました。そのうち16人は10以上の言語を話しました。参加者は、母語、得意さの程度が異なる外国語、そして知らない言語を聞きました。脳の言語ネットワークは、よく知っている言語ほど強く反応しました。

しかし、母語は例外でした。同じくらい得意な外国語と比べて、反応は同程度か弱かったのです。さらに、知っている言語に似た未知の言語は、似ていない未知の言語より多くの活動を引き起こしました。

4択リーディングクイズ

Q1. What happened when participants heard languages they knew better?

Q2. Why was the native language an exception?

Q3. A person who knows Spanish hears Portuguese for the first time. What does the study suggest?

重要単語

  • polyglotC1
    名詞多言語話者The polyglot switched between five languages at dinner. poly(多くの)+glot(舌、言語)。bilingual(2言語話者)、multilingual(多言語の)も合わせて覚える。
  • native languageB1
    名詞(句)母語Your native language is processed with little effort. mother tongue / first language(L1)と同義。second language は L2。
  • proficiencyC1
    名詞熟達度・語学力Her proficiency in Spanish is very high. 形容詞 proficient(熟達した)。proficiency test(実力テスト)は英検の英語名 Eiken Test in Practical English Proficiency にも出てくる。
  • brain imagingC1
    名詞(句)脳画像(脳の活動を画像で見る技術)Brain imaging showed which areas were active. fMRI は functional magnetic resonance imaging(機能的磁気共鳴画像法)の略。
  • exceptionalB2
    形容詞並外れた・例外的なHe has an exceptional memory for words. exception(例外)の形容詞。「例外的な」と「並外れて優れた」の2つの意味に注意。
  • typologically relatedC1
    形容詞句言語のタイプが似ているSpanish and Italian are closely related languages. typology は「類型論」。言語どうしの距離(language distance)は学習のしやすさに影響する。
  • efficientB2
    形容詞効率的なThe polyglot brain seems to be efficient. effective(効果的な)との区別は語彙問題の定番。efficient は「無駄なく」、effective は「効き目がある」。

動画でもっと知る

4コマでわかる

10か国語以上の人も含む多言語話者の脳を調べたら、母語にだけ"省エネ"モードがあったの4コマ漫画
5か国語以上を話す34人(うち16人は10か国語以上)の脳をMITがfMRIで調べたら、得意な外国語ほど脳の言語エリアが強く働くのに、母語だけは同じくらい得意な外国語より反応が同程度か小さかったらしい。母語は脳にとって、それだけ"楽"な言語なのかもしれない。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Malik-Moraleda et al. (2024) Functional characterization of the language network of polyglots and hyperpolyglots with precision fMRI, Cerebral Cortexdoi.org
  2. Jouravlev et al. (2020) The Small and Efficient Language Network of Polyglots and Hyper-polyglots, Cerebral Cortexdoi.org
  3. Hyltenstam (Ed.) (2016) Advanced Proficiency and Exceptional Ability in Second Languages, De Gruyter Moutondoi.org