語学・英語学習ウソ

「文法なんて勉強するな」は本当? 49本の研究をまとめたら、むしろ逆だった

「文法なんて勉強するな」は本当? 49本の研究をまとめたら、むしろ逆だった

読む前に予想してみよう!

英語の文法は、ルールを説明せずに大量の英語に触れさせたほうが身につきやすい

研究カード(どんな研究?)
対象
第二言語・外国語の学習者
規模
49研究
研究の種類
メタ分析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

文法をはっきり教える「明示的指導」は、教えない指導より効果が大きいことが、複数のメタ分析で示されてきた。ただし、テストの形式が明示的指導に有利という指摘もある。

ひとことで言うと文法は「自然に身につくのを待つ」より、ルールを教わった方が伸びる!

もくじ
  1. 49本の研究をまとめた「金字塔」
  2. その後の研究でも「明示的」が優勢
  3. でも「文法だけ」では話せない理由
  4. まとめ

「日本人が英語を話せないのは、文法ばかり勉強するからだ」。こんな意見を一度は聞いたことがあるはずです。

子どもは文法を習わなくても母語を話せるようになる。だから外国語も、文法の説明なんてせずに、大量の英語に触れていれば自然に身につく——。一見、筋が通っています。

ところが、外国語の教え方を比べた研究をまとめると、結果はむしろ逆でした。

0149本の研究をまとめた「金字塔」

第二言語習得の研究で最も引用される論文の一つで、「文法を教えるかどうか」の議論に大きな影響を与えました。

02その後の研究でも「明示的」が優勢

この結果は、その後の研究でも確かめられています。

2010年のメタ分析(Spada & Tomita)は、「簡単な文法」と「複雑な文法」に分けて調べました。すると、どちらのタイプでも明示的指導のほうが効果が大きく、テスト形式だけでなく、自由に話したり書いたりする課題でも効果が見られたと報告しています。

2015年には、ノリスとオルテガの分析を新しい研究で更新した分析も行われました。明示的指導と暗示的指導の差は以前より縮まったものの、明示的指導が上回る傾向は変わりませんでした。

ルールの説明は、迷路の中の道しるべ
ルールの説明は、迷路の中の道しるべ

03でも「文法だけ」では話せない理由

ここで注意したいことがあります。

こうした研究の多くは、選択式の問題や文法の正誤判断など、ルールを知っている人が有利になりやすいテストで効果を測っていました。ノリスとオルテガ自身も、この偏りを限界として認めています。

つまり、「文法の知識が増える」ことは確かでも、それがとっさの会話で使える力になるかは、また別の問題なのです。

ルールを知ったうえで、それを使う練習を何度も重ねる。「わかる」から「使える」への橋渡しが必要です。

たとえば現在完了形のルールを理解したら、「I have lived in Tokyo for ten years.」のように自分のことを言う文を作り、実際の会話や作文で何度も使ってみる。知識として「わかる」文法を、練習を通して「とっさに出る」文法に変えていくイメージです。

04まとめ

「文法なんて勉強するな」は、研究から見ると言いすぎでした。

ただし文法は、覚えて終わりではなく、使って初めて「話せる文法」になる。ルールで近道をして、浮いた時間で英語をたくさん使う。それが、効率のよいルートだと考えられます。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerChildren learn their first language without grammar lessons. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Children learn their first language without grammar lessons. So some people argue that a foreign language should be learned in the same natural way. Research does not support that idea. In 2000, Norris and Ortega combined the results of 49 studies on second language teaching.

Teaching in general had a large effect that lasted for weeks. Explicit instruction, where rules are clearly explained, had an effect about twice as large as implicit instruction, where they are not. A 2010 meta-analysis found that explicit teaching worked better for both simple and complex grammar.

But many of the tests in these studies, such as multiple-choice questions, may favor learners who know the rules. Knowing a rule is different from using it quickly in conversation. That is why practice is still essential.

129 words ・ CEFR B1

和訳を見る

子どもは文法の授業なしに母語を身につけます。そのため、外国語も同じように自然なやり方で学ぶべきだと主張する人もいます。しかし、研究はその考えを支持していません。2000年、ノリスとオルテガは第二言語の指導に関する49の研究の結果をまとめました。

指導は全体として大きな効果があり、それは数週間続きました。ルールをはっきり説明する明示的指導の効果は、説明しない暗示的指導のおよそ2倍の大きさでした。2010年のメタ分析では、簡単な文法でも複雑な文法でも明示的な指導のほうが効果的だとわかりました。

ただ、選択式問題など、これらの研究で使われたテストの多くは、ルールを知っている学習者に有利かもしれません。ルールを知っていることと、それを会話ですばやく使うことは別のことです。だからこそ、練習はやはり欠かせないのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is "explicit instruction"?

Q2. What did the 2010 meta-analysis find?

Q3. Why does the writer say "practice is still essential"?

重要単語

  • explicit instructionC1
    名詞(句)明示的指導(ルールをはっきり説明する教え方)Explicit instruction helped the students use the past tense. explicit「明白な」⇔ implicit「暗に示された」。SLAでは explicit / implicit knowledge(明示的・暗示的知識)の区別も重要。
  • implicit learningC1
    名詞(句)暗示的学習(ルールを意識せずに身につけること)Children rely more on implicit learning. implicit は「言外の」。母語習得の中心的な仕組みとされる。
  • delayed posttestC1
    名詞(句)遅延事後テスト(指導の数週間後に行うテスト)The effect remained on the delayed posttest. 直後テストだけでは「すぐ忘れる知識」も含まれるため、効果の持続を確かめるのに使う。
  • spontaneousB2
    形容詞自発的な・とっさのGrammar knowledge is harder to use in spontaneous production. spontaneous speech / production「準備なしの発話・産出」。副詞 spontaneously も頻出。
  • automaticB1
    形容詞自動的なWith practice, grammar use becomes automatic. SLAの automatization(自動化)は「わかる」を「とっさに使える」に変える過程。練習の目的そのもの。
  • research synthesisC1
    名詞(句)研究統合(多くの研究結果をまとめること)This research synthesis included 49 studies. synthesis「統合」(syn-=共に)。メタ分析や系統的レビューの総称として使われる。
  • caveatC2
    名詞注意書き・但し書きThere is an important caveat to these results. ラテン語で「用心せよ」。研究紹介で「ただし~」を言うときの決まり文句。難関大の長文に出る。

動画でもっと知る

「文法はやるな、英語は自然に覚えろ」と言われがち。でも49本の研究をまとめた有名な分析では、ルールをはっきり教える指導のほうが、教えない指導より効果が約2倍大きかったらしい。文法、やっぱり大事だった。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Norris & Ortega (2000) Effectiveness of L2 instruction: A research synthesis and quantitative meta-analysis, Language Learningdoi.org
  2. Spada & Tomita (2010) Interactions between type of instruction and type of language feature: A meta-analysis, Language Learningdoi.org
  3. Goo et al. (2015) Implicit and explicit instruction in L2 learning, Studies in Bilingualism 48doi.org