英語の間違いは直してもらうと伸びる。でも先生の「さりげない言い直し」は気づかれにくい

読む前に予想してみよう!
英語の間違いは、直されると自信をなくすので、直さないほうが上達する
研究をまとめると、間違いへのフィードバックには正確さを伸ばす効果があり、その効果は時間がたっても続いていた。
- 対象
- 教室で外国語を学ぶ人
- 規模
- 複数の研究
- 研究の種類
- メタ分析
- 確かさ
- ★★★★☆
間違いを直してもらうと英語の正確さが伸びることは、研究をまとめた複数の分析で示されている。ただし正解をさりげなく言い直されるだけでは気づかないことも多く、自分で直すよう促されるほうが効きやすいという分析もある。
ひとことで言うと間違いは直してもらうと伸びる。自分で言い直すと、もっと伸びやすいという研究もあるよ!
英会話レッスンで「I go to Kyoto last week.」と言ったら、先生がにっこり「Oh, you went to Kyoto?」と返してくれた。
間違いを指摘せず、さりげなく正しい形で言い直す。やさしくて、会話の流れも止めない。理想的な直し方に見えますよね。
ところがカナダの教室を調べた研究では、この「さりげない言い直し」は、授業でいちばん多く使われているのに、学習者がいちばん反応しにくい直し方でした。
01先生の直し方を6種類に分けて数えた
リキャストは、学習者にとって「ただの相づち」に聞こえてしまうことがあります。先生は直したつもりでも、本人は直されたと受け取っていないかもしれません。
02研究をまとめると、間違いを直してもらうのはちゃんと効く
では、間違いを直すこと自体に効果はあるのでしょうか。
2010年には、話しことばでの直し方の効果を調べた研究をまとめる分析(メタ分析)が2本発表されました。どちらも、フィードバックには正確さを伸ばす効果があり、その効果は時間がたっても続いていたと報告しています。
1本は、教室での研究15本に絞った分析です(Lyster & Saito)。正解を言ってあげるリキャストより、自分で直すよう促すフィードバック(プロンプト)のほうが、効果が大きい傾向が見られました。年齢の低い学習者ほど効果が大きい傾向もありました。
ただし、もう1本の分析(Li)では、少し違う結果も出ています。はっきり間違いを指摘する直し方より、リキャストのような「さりげない」直し方のほうが、効果が長く残っていたのです。リキャストが役に立たないわけではありません。

03英作文の添削は? 大論争の行方
書いた英語の添削については、かつて大きな論争がありました。1996年、研究者のトラスコットが「英作文の文法添削は効果がなく、むしろ有害だ」と主張する論文を発表したのです。
この論文をきっかけに多くの研究が行われました。2015年には、21本の研究をまとめたメタ分析が出ました。英作文への添削は、書いた英語の文法の正確さを、中くらいからやや大きいくらいに伸ばすという結果です。ただし効き方は、学習者のレベルや学ぶ環境、書く文章の種類によって変わります。今は「添削は効く。ただし条件しだい」という見方が広がっています。
04まとめ
間違いは、直してもらうとちゃんと伸びます。そして、自分で考えて、自分で言い直すほうが身につきやすい、という傾向も報告されています。
間違いは恥ずかしいものではなく、英語が伸びるチャンスの合図。次に直されたときは、ぜひ自分の口でもう一度言ってみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen learners make mistakes, teachers often repeat the sentence in the correct form.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
A student says, "I go to Kyoto last week." The teacher smiles and says, "Oh, you went to Kyoto?" This kind of gentle correction is very common.
But a study in Canada found that students often did not respond to it. Maybe they thought the teacher was just answering. Hints like "Try again" more often got students to fix the mistake themselves. So when a teacher corrects you, say the right sentence again with your own mouth.
77 words ・ CEFR A2
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ある生徒が「I go to Kyoto last week.」と言います。先生はにっこりして「Oh, you went to Kyoto?」と言います。
この種のやさしい直し方はとてもよくあります。しかしカナダのある研究で、生徒はそれに反応しないことが多いとわかりました。生徒は、先生がただ返事をしていると思ったのかもしれません。「もう一度言ってみて」のようなヒントのほうが、生徒が自分で間違いを直すことが多かったのです。ですから、先生に直されたら、正しい文を自分の口でもう一度言いましょう。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
先生の直し方(さりげない言い直しとヒント)の違いについての話なので B。
Q2. Why did students often not respond to the gentle correction?
Maybe they thought the teacher was just answering. とあるので C。
Q3. What should you do when a teacher corrects you?
say the right sentence again with your own mouth とあるので A。
When learners make mistakes, teachers often repeat the sentence in the correct form. This is called a recast. In a 1997 study, Lyster and Ranta recorded French immersion classes in Canada and classified teachers' feedback into six types. Recasts were the most common, but they led to the lowest rate of student uptake, meaning students responded or corrected themselves less often than after any other type. Feedback that pushed students to find the answer, such as asking "How do we say that?", more often led to self-repair.
Later meta-analyses in 2010 showed that correcting errors does improve accuracy and that the benefits last over time. One of them found that prompts tended to work better than recasts, and that younger learners benefited more. So ask your teacher for hints first.
130 words ・ CEFR B1
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学習者が間違えると、先生はしばしばその文を正しい形でくり返します。これはリキャストと呼ばれます。1997年の研究で、ライスターとランタはカナダのフランス語イマージョンの授業を記録して、先生のフィードバックを6種類に分類しました。リキャストは最も多かったのですが、生徒の取り込みの割合は最も低く、つまり生徒が反応したり自分で直したりすることが、ほかのどの種類よりも少なかったのです。「それはどう言うんだっけ?」
とたずねるなど、生徒に答えを見つけるよう促すフィードバックのほうが、自己修正につながることが多かったのです。その後、2010年のメタ分析は、間違いを直すことは確かに正確さを高め、その効果は時間がたっても続くことを示しました。そのうちの1つは、プロンプトのほうがリキャストより効く傾向があり、年齢の低い学習者ほど効果が大きいことを見出しました。ですから、まず先生にヒントを頼んでみましょう。
4択リーディングクイズ
Q1. What is a "recast"?
teachers often repeat the sentence in the correct form. This is called a recast. とあるので C。
Q2. What did the 2010 meta-analyses show?
correcting errors does improve accuracy and that the benefits last over time とあるので A。年齢の低い学習者ほど効果が大きいので D は逆。
Q3. Why might prompts work better than recasts?
答えを見つけるよう促すフィードバックが self-repair(自己修正)につながりやすかったことから D と推論できる。
When a learner makes a mistake, many teachers simply say the sentence back in its correct form and keep the conversation moving. This is called a recast. In a classic 1997 study, Lyster and Ranta recorded French immersion classrooms in Canada and sorted teachers' corrective feedback into six categories. Recasts made up more than half of all feedback, but they led to the lowest rate of learner uptake, probably because students often heard them as simple confirmations of meaning.
Moves that withheld the answer, such as elicitation or repeating the error, more often got learners to repair their own speech. Uptake is an immediate reaction, though, and saying the right form once is not proof of acquisition. Two meta-analyses published in 2010 supplied stronger evidence. Oral corrective feedback improved accuracy, and the effect lasted on delayed tests.
A classroom-focused analysis found that prompts tended to beat recasts and that younger learners gained more, although how well a recast works may depend on the setting. Written correction had a rockier history. A 1996 paper argued that grammar correction in writing was ineffective and even harmful. Then a 2015 meta-analysis found a moderate-to-large positive effect on written accuracy.
196 words ・ CEFR B2
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学習者が間違えると、多くの先生はその文を正しい形で言い直し、そのまま会話を続けます。これをリキャストと呼びます。1997年の古典的な研究で、ライスターとランタはカナダのフランス語イマージョンの教室のやりとりを記録して、先生の訂正フィードバックを6つのカテゴリーに分類しました。リキャストはフィードバック全体の半分以上を占めましたが、学習者の取り込みの割合は最も低くなりました。生徒はしばしばそれを単なる意味の確認として受け取っていたためと考えられます。
答えを示さない働きかけ、たとえば正しい形を引き出す質問や誤りのくり返しの方が、学習者が自分の発話を修正することにつながりやすかったのです。ただし、取り込みは直後の反応にすぎず、正しい形を一度言えたからといって習得の証拠にはなりません。2010年に発表された2つのメタ分析が、より強い証拠を示しました。口頭の訂正フィードバックは正確さを高め、その効果は遅延テストでも続いていたのです。
教室に焦点を当てた分析では、プロンプトがリキャストを上回る傾向があり、年齢の低い学習者ほど伸びが大きいこともわかりました。もっとも、リキャストがどれだけ効くかは状況によって変わるかもしれません。書き言葉の訂正は、もっと波乱のある歴史をたどりました。1996年の論文は、英作文の文法添削は効果がなく有害でさえあると主張しました。その後、2015年のメタ分析が、書いた英語の正確さに中程度から大きめのプラスの効果を見出したのです。
4択リーディングクイズ
Q1. Why did students often fail to respond to recasts?
because students often heard them as simple confirmations of meaning とあるので B。
Q2. What happened to the debate about written correction?
Then a 2015 meta-analysis found a moderate-to-large positive effect on written accuracy. とあるので D。
Q3. What does the author mean by "saying the right form once is not proof of acquisition"?
直後に言い直せても、それだけで身についた(習得した)証拠にはならない、という限界の指摘なので C。
重要単語
- corrective feedbackC1名詞(句)訂正フィードバック(間違いへの指摘や直し)Corrective feedback helps learners notice their errors.
SLA研究の中心テーマ。oral(口頭)と written(書き言葉)に分けて研究される。略して CF。 - recastC1名詞・動詞リキャスト(間違いを正しい形で言い直すこと)The teacher used a recast: "Oh, you went to Kyoto?"
re-(再び)+cast(形作る)。会話を止めない利点がある一方、学習者の反応につながりにくいのが弱点とされる。 - promptB2名詞・動詞促し・促すPrompts encourage learners to correct themselves.
答えを言わずに自己修正を引き出すフィードバックの総称。動詞 prompt A to do「Aに~するよう促す」は入試頻出。 - uptakeC1名詞取り込み(フィードバック直後の学習者の反応)Recasts led to less uptake than other feedback types.
一般には「摂取・利用率」。SLAでは「直された後に言い直したか」を指す専門用語。 - self-repairC1名詞自己修正Self-repair means fixing your own mistake without help.
repair は会話分析で「言い直し」。自分で気づいて直す経験が記憶に残りやすいとされる。 - accuracyB2名詞正確さFeedback mainly improves grammatical accuracy.
SLAでは fluency(流暢さ)・complexity(複雑さ)と並ぶ発話評価の3本柱(CAF)。 - acquisitionC1名詞習得Second language acquisition takes time.
acquire「身につける」の名詞形。SLA=Second Language Acquisition。クラッシェンは「学習(learning)」と「習得(acquisition)」を区別した。
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英会話で間違えたとき、先生がさりげなく正しく言い直してくれる「リキャスト」。カナダの教室を調べた研究では、授業でいちばん多いのに、生徒が反応する率はいちばん低かった。「自分で直させる」ほうが効くという分析も。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Lyster & Ranta (1997) Corrective feedback and learner uptake: Negotiation of form in communicative classrooms, Studies in Second Language Acquisitiondoi.org
- Lyster & Saito (2010) Oral feedback in classroom SLA: A meta-analysis, Studies in Second Language Acquisitiondoi.org
- Li (2010) The effectiveness of corrective feedback in SLA: A meta-analysis, Language Learningdoi.org
- Kang & Han (2015) The efficacy of written corrective feedback in improving L2 written accuracy: A meta-analysis, The Modern Language Journaldoi.org
- Truscott (1996) The case against grammar correction in L2 writing classes, Language Learningdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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