赤ちゃんの「頭のゆがみ(斜頭)」は現代だけの病気じゃないかも。約2800年前の頭の骨の4割に跡

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赤ちゃんの頭の片側が平らになる「斜頭症」は、1990年代以降に初めて現れた
鉄器時代(紀元前9〜8世紀)のイタリアの頭骨にも、同じタイプの変形が見つかった。
- 対象
- 鉄器時代前期イタリア・マテリカ遺跡の成人の頭骨
- 規模
- 26体(うち11体をCT撮影)
- 研究の種類
- 古病理学的な観察研究(肉眼観察+CT)
- 確かさ
- ★★☆☆☆
イタリアの鉄器時代の大人の頭骨26個を調べたら、11個に赤ちゃん時代の頭の向きぐせによると考えられる「斜頭」の跡。仰向け寝が勧められるはるか昔、約2800年前にもあった。
ひとことで言うと赤ちゃんの頭の片側が平らになる「斜頭」、大昔の人にもあった!
赤ちゃんの後頭部が、片側だけぺたんと平らになる。「向きぐせ」で起こりやすいこの状態を、医学では斜頭症(しゃとうしょう)といいます。後頭部全体が左右対称に平らになる、いわゆる「絶壁頭」(短頭症)とは別のタイプですが、どちらも寝る姿勢などで頭の形が変わる「位置的な頭のゆがみ」の仲間です。
この斜頭症、実は「最近の赤ちゃんに増えた」と言われてきました。1990年代に、乳幼児突然死症候群(SIDS)を防ぐため「赤ちゃんは仰向けで寝かせよう」という呼びかけが広まり、その直後から、アメリカの専門施設で斜頭症の赤ちゃんが目立って増えたと報告されたからです。
ところが2026年、イタリアの研究チームが約2800年前の頭の骨を調べたところ、なんと4割以上に、この斜頭症とそっくりの跡が見つかりました。
01鉄器時代の頭骨26個を、CTまで使って調べた
大事なのは、これが「大人の骨」だという点です。赤ちゃんのころにできた頭の形のクセが、大人になっても骨に残っていたことになります。
研究チームによると、これはイタリアで知られている斜頭症の例としては最古。論文は、斜頭症は「現代だけのものではないかもしれない」と述べています。「仰向け寝キャンペーンで生まれた現代の症状」というイメージを揺さぶる発見です。
02「わざと」や「土の重み」ではなかった
古い頭骨が変形しているからといって、すぐに斜頭症とは言えません。考えられる原因はほかにもあるからです。
- 埋まっている間に土の重みでつぶれた(死後の変形)
- わざと頭の形を変える風習(世界各地の古代文化で知られる)
- 頭蓋骨のつなぎ目が早くくっつく病気(頭蓋縫合早期癒合症)
チームはこれらを一つずつ検討して除外しました。さらにCTでは、後頭部の下側(頭の底に近い部分)まで平らになり、同じ側の耳の後ろの骨(乳様突起)が前にずれている例も見つかりました。真上から撮った写真で測る方法だと、この変形の程度を小さく見積もってしまう可能性があるそうです。

03首の筋肉のクセも関係していた?
もう一つ面白いのが、7人の首から下の骨に、先天性筋性斜頸(きんせいしゃけい)と一致する可能性のある特徴があったことです。これは生まれつき首の筋肉が片側だけ硬く、頭がいつも同じ方向に傾いてしまう状態で、現代の医学でも斜頭症と関係が深いことが知られています。
研究チームは全体として、赤ちゃんの頭が長い時間動かない状態が続いたことと一致し、それは当時の子育ての仕方と関係していた可能性がある、と結論づけています。
04どんでん返し:大人の4割は「多すぎる」?
現代では、生後8〜12週のイタリアの赤ちゃん283人のうち37.8%に斜頭が見られたという調査があります。赤ちゃんの斜頭は、実はとてもありふれたものなのです。
ところが、アメリカの12〜17歳の1045人を測った研究では、斜頭と診断された人はわずか1.1%。この研究の著者らは、ほとんどの子は成長とともに自然に目立たなくなると考えています(同じ子を追いかけた調査ではない点には注意)。
それなのに、マテリカでは大人の4割に跡が残っていた。測り方の基準が違うので単純には比べられませんが、当時の赤ちゃんは、現代よりもずっと長い時間、頭を動かせない状態で過ごしていたのかもしれません。研究チームも、マテリカの多さがこの地域だけのものか、鉄器時代のイタリア中部に広く見られたのかは、ほかの遺跡と比べないとわからないとしています。
05まとめ
「仰向け寝のせいで生まれた現代の悩み」と思われてきた赤ちゃんの斜頭症。でも約2800年前のイタリアでも、大人の頭骨の4割にその跡が残っていました。
骨に残った小さなへこみは、昔の親たちがどんなふうに赤ちゃんを寝かせ、抱っこしていたのかを教えてくれる「子育ての記録」なのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn the early 1990s, parents in many countries were told to put babies to sleep on their backs.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Some babies get a flat spot on the back of the head. This can happen when a baby lies with its head in one position for a long time. Some people said this problem grew after the 1990s.
But scientists in Italy studied 26 adult skulls from about 2,800 years ago. Eleven of them had the same kind of flat spot. Most of the flat spots were on the right side.
71 words ・ CEFR A2
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赤ちゃんの中には、頭の後ろに平らな部分ができる子がいます。これは、赤ちゃんが長い時間、頭を同じ向きにして寝ていると起こることがあります。この問題は1990年代以降に増えたと言われていました。
しかしイタリアの科学者たちは、約2800年前の大人の頭骨26個を調べました。そのうち11個に、同じような平らな部分がありました。平らな部分のほとんどは右側にありました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
大昔の頭骨26個のうち11個に、現代の赤ちゃんと同じような平らな部分があったという内容なので B。
Q2. How many of the 26 skulls had a flat spot?
Eleven of them had the same kind of flat spot. とあるので C。26 は調べた頭骨の総数。
Q3. In this passage, "flat" means ...
flat は「平らな」。丸みがなく、ぺたんとしている様子なので A。
In the early 1990s, parents in many countries were told to put babies to sleep on their backs. The advice was meant to prevent sudden infant death, but doctors soon noticed more babies with one side of the head flattened.
So it was often seen as a modern problem. A team of Italian researchers has now found the same condition in skulls that are about 2,800 years old. They examined 26 adult skulls from Matelica, an Iron Age site in central Italy, and found flattening in 11 of them. The team used CT scans to rule out other causes, such as damage from soil or a custom of shaping heads on purpose. The flat side was usually the right one, just as it often is in babies today.
128 words ・ CEFR B1
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1990年代初め、多くの国の親たちは、赤ちゃんを仰向けで寝かせるように言われました。その助言は乳幼児の突然死を防ぐためのものでしたが、医師たちはまもなく、頭の片側が平らになった赤ちゃんが増えていることに気づきました。
そのため、それはしばしば現代の問題だと見なされてきました。イタリアの研究チームは今回、約2800年前の頭骨に同じ状態を見つけました。彼らはイタリア中部の鉄器時代の遺跡マテリカから出た大人の頭骨26個を調べ、そのうち11個に平らな部分を見つけました。チームはCTスキャンを使って、土による損傷や、わざと頭の形を変える風習など、ほかの原因を除外しました。平らな側はたいてい右側で、今日の赤ちゃんによく見られるのと同じでした。
4択リーディングクイズ
Q1. Why was the flattened head often seen as a modern problem?
doctors soon noticed more babies with one side of the head flattened のあとに So it was often seen as a modern problem とあるので B。
Q2. What did the team use CT scans for?
The team used CT scans to rule out other causes とあるので C。
Q3. Which statement is supported by the passage?
最後の文に The flat side was usually the right one, just as it often is in babies today. とあるので D。頭骨は大人のもので、意図的な変形は除外されている。
Eleven of 26 skulls. That is the count from Matelica, a site in central Italy where people were buried between the mid-ninth and eighth centuries BCE. These eleven adult skulls have one side of the back of the head pressed flat, a shape doctors call deformational plagiocephaly.
Today it is linked to babies who lie in one position for long hours, and more cases were reported after the 'Back to Sleep' advice of the 1990s. The researchers, writing in the International Journal of Paleopathology, used CT scans and ruled out three other explanations. The skulls had not been crushed by soil or shaped on purpose, and they did not show signs of skull bones fusing too early.
Seven individuals also had signs that may point to a tight neck muscle from birth. The figure of 42 percent is surprising because flattening in modern babies usually fades. A study of more than 1,000 American teenagers found it in only about one percent. But the Iron Age group is tiny, and nobody can watch how these babies were cared for, so the link to childcare is an educated guess. The team says other sites in the region should now be compared.
199 words ・ CEFR B2
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26個のうち11個。これが、紀元前9世紀なかばから8世紀にかけて人々が埋葬されたイタリア中部の遺跡マテリカの数字です。その11個の大人の頭骨は、後頭部の片側が押しつぶされたように平らになっており、医師が「変形性斜頭症」と呼ぶ形をしています。
今日それは、長い時間同じ向きで寝ている赤ちゃんと結びつけられており、1990年代の「仰向け寝」の呼びかけのあと、より多く報告されるようになりました。International Journal of Paleopathology に発表した研究者たちは、CTスキャンを使い、ほかの3つの説明を除外しました。頭骨は土でつぶされたものでも、わざと形を変えたものでもなく、頭蓋骨のつなぎ目が早くくっついた跡もありませんでした。
また7人には、生まれつき首の筋肉が硬いことを示すかもしれない特徴がありました。42%という数字が驚きなのは、現代の赤ちゃんの平らな部分はたいてい目立たなくなるからです。1000人を超えるアメリカの10代を調べた研究では、それが見つかったのはわずか約1%でした。ただし鉄器時代の集団はとても小さく、赤ちゃんたちがどのように世話をされていたのかを見ることは誰にもできないので、子育てとの関係は根拠のある推測にとどまります。チームは、今後この地域のほかの遺跡と比べる必要があるとしています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
1990年代の仰向け寝の助言と結びつけられてきた斜頭症が、鉄器時代のマテリカの大人の頭骨11個に見つかったことが中心なので B。意図的な変形は除外されているので A は誤り。
Q2. Why does the author call the figure of 42 percent surprising?
The figure of 42 percent is surprising because flattening in modern babies usually fades. とあり、10代では約1%しか見つからないと続くので A。
Q3. What does the author suggest about the link to childcare?
nobody can watch how these babies were cared for, so the link to childcare is an educated guess とあるので C。educated guess は「根拠のある推測」。
重要単語
- skullB1名詞頭蓋骨、頭の骨The skull was found in an old grave.
発音は /skʌl/(スカル)。scalp(頭皮)、skeleton(骨格)とセットで覚えると考古学・医学の長文に強くなる。 - infantB2名詞乳児、赤ちゃんThe infant slept on her back.
ラテン語の「話せない者」が語源。infant mortality(乳児死亡率)は入試長文の頻出コロケーション。 - flattenB2動詞平らにする、平らになるLying in one position can flatten a baby's head.
flat(平らな)+-en(~にする)。widen, shorten, strengthen と同じ作り。 - asymmetryC1名詞左右非対称Doctors measured the asymmetry of the head.
a-(否定)+symmetry(対称)。形容詞は asymmetrical。 - rule outB2句動詞(可能性を)除外するThe doctor ruled out a serious illness.
rule out the possibility of ~ の形で頻出。研究の長文では「ほかの説明を消す」場面で使われる。 - caregiverB2名詞世話をする人、養育者Caregivers can change the baby's head position.
care(世話)+giver(与える人)。親だけでなく保育士や介護者も含む中立的な言い方。 - ancientB1形容詞古代の、大昔のAncient people also faced this problem.
発音は /ˈeɪnʃənt/(エインシェント)。「アンシェント」と読まないよう注意。
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- Plagiocephaly and brachycephaly (flat head syndrome)(NHS)nhs.uk
- Safe to Sleep(米国立小児保健発達研究所 NICHD)safetosleep.nichd.nih.gov
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赤ちゃんの後頭部の片側が平らになる「斜頭症」、1990年代の仰向け寝キャンペーンで増えたと言われるけど、約2800年前のイタリアの頭骨26個のうち11個にその跡があったらしい。しかも右側が平らになる傾向まで現代と似ていた(ただし11個中8個)。
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- Beck De Lotto et al. (2026) Before "Back to Sleep": Deformational plagiocephaly and pediatric insights from Iron Age Italy, International Journal of Paleopathologydoi.org
- Turk et al. (1996) The "Back to Sleep Campaign" and Deformational Plagiocephaly: Is There Cause for Concern?, Journal of Craniofacial Surgerydoi.org
- Ballardini et al. (2018) Prevalence and characteristics of positional plagiocephaly in healthy full-term infants at 8–12 weeks of life, European Journal of Pediatricsdoi.org
- Roby et al. (2012) Prevalence of Positional Plagiocephaly in Teens Born after the "Back to Sleep" Campaign, Otolaryngology–Head and Neck Surgerydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











