沈没船から出た2000年前の「歯車コンピューター」。アンティキティラ島の機械は日食まで予測していた

読む前に予想してみよう!
アンティキティラ島の機械には、オリンピックなどの競技会の年を示す目盛りがあった
背面の小さな目盛りが4年周期の競技会を示していることが、2008年の研究で明らかになった。
- 対象
- アンティキティラ島の機械の断片
- 規模
- 82個の断片(現存する歯車30個)
- 研究の種類
- X線CT・表面画像解析による復元研究
- 確かさ
- ★★★★☆
1901年、ギリシャの沈没船から見つかった青銅のかたまり。X線CTで中を調べると、30個の歯車で月の満ち欠けや日食、オリンピックの年まで示す天文計算機だった。
ひとことで言うと2000年前のギリシャ人は、歯車で宇宙の動きを計算する機械を作っていた。
1901年、ギリシャのアンティキティラ島の近くで、海綿(スポンジ)を採っていたダイバーたちが古代の沈没船を見つけました。
引き上げられた美しい彫像や陶器の中に、ひとつ地味なさびた青銅のかたまりがありました。よく見ると、そこには歯車が。
この「かたまり」こそ、今では「世界最古のアナログコンピューター」とも呼ばれるアンティキティラ島の機械です。100年以上の研究で、その驚きの正体が明らかになってきました。
01中を「割らずに」見る技術
機械は海の底で2000年以上を過ごし、82個の断片に分かれてしまっています。残っているのは元の3分の1ほど。しかも歯車はさびて固まり、外からは見えません。
転機は2005年。研究チームがマイクロフォーカスX線CT(体の断面を撮る医療用CTの、超高精細版)で断片の内部を撮影したのです。

02ハンドルを回すと、宇宙が動く
この機械は、木の箱に入った手回し式の装置だったと考えられています。側面のハンドルを回すと、内部の歯車が回転し、前と後ろの文字盤の針が動きます。
背面には、
- 19年で暦と月の満ち欠けがそろう周期(メトン周期)の暦の目盛り
- 223か月ごとに日食・月食がくり返す周期(サロス周期)を使った食の予報の目盛り
- 4年ごとのオリンピックなどの競技会の年を示す小さな目盛り
がありました。競技会の目盛りは2008年の研究で判明したもので、天体の周期と人間の行事を同じ機械で管理していたことになります。
03月の「速さのムラ」まで再現
さらに驚きなのが、月の動きの再現です。月は楕円の軌道を回るので、空を動く速さが速くなったり遅くなったりします。
機械の中には、少しずれた軸で2つの歯車をつなぎ、ピンと溝で回転の速さを周期的に変える仕組みがありました。古代ギリシャの天文学者ヒッパルコスの月の理論を、歯車で物理的に再現していたのです。
04どんでん返し:前面はまだ「推理」で埋めている
2021年、ロンドン大学(UCL)のチームは、前面に太陽・月・当時知られていた5つの惑星の位置を示す「宇宙の模型」があったとする新しい復元モデルを発表しました。
ただし、前面の歯車の多くは失われています。復元は、残った刻字に書かれた惑星の周期などから、「こう作ればつじつまが合う」と推理したものです。研究者自身も、実物の証拠で確かめきれない部分があることを認めています。
05まとめ
- 1901年に沈没船から見つかった青銅片は、紀元前2世紀ごろの歯車式の天文計算機だった
- X線CTで内部を調べ、月の満ち欠け・日食予報・競技会の年などの表示が判明
- 月の速さのムラまで歯車で再現する、驚きの技術があった
- 前面の惑星表示の復元は、まだ推理の部分が大きい
2000年前の誰かが、宇宙の動きを靴箱ほどの小さな箱に閉じこめようとした。その情熱は、今の科学者とまったく同じなのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 1901, sponge divers near the Greek island of Antikythera discovered an ancient shipwreck.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In 1901, divers found an old ship under the sea near a Greek island called Antikythera. Inside, there was a small, rusty piece of metal with gears in it.
Later, scientists used X-ray machines to look inside without breaking it. They learned that it was a machine made about 2,000 years ago. When people turned a handle, it showed the Moon and could even predict eclipses.
66 words ・ CEFR A2
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1901年、ダイバーたちはアンティキティラというギリシャの島の近くの海底で、古い船を見つけました。その中に、歯車の入った小さなさびた金属のかたまりがありました。
のちに科学者たちは、X線の機械を使い、それを壊さずに中をのぞきました。彼らは、それが約2000年前に作られた機械だとわかりました。人がハンドルを回すと月の様子を示し、日食や月食を予測することさえできたのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
沈没船から見つかった、月や日食を示す古代の機械がテーマなので B。
Q2. How did scientists look inside the machine?
scientists used X-ray machines to look inside without breaking it とあるので C。
Q3. In this passage, "predict" means ...
predict は pre-(前に)+dict(言う)で「予測する」。日食がいつ起きるかを前もって示すことなので D。
In 1901, sponge divers near the Greek island of Antikythera discovered an ancient shipwreck. Among the statues and pottery was a lump of corroded bronze containing gears. Today it survives in 82 fragments, only about a third of the original device. Because the gears were stuck together, researchers could not see them until 2005, when a team used high-resolution X-ray CT scans.
In 2006, Tony Freeth and his colleagues reported that the device, probably made around the second century BC, was a hand-cranked astronomical calculator. Its dials followed the cycles of the Moon and Sun and predicted eclipses. A later study found that one small dial even showed the years of the Olympic Games and other athletic festivals.
118 words ・ CEFR B1
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1901年、ギリシャのアンティキティラ島の近くで、海綿を採るダイバーたちが古代の沈没船を発見しました。彫像や陶器にまじって、歯車の入ったさびた青銅のかたまりがありました。今日それは82個の断片として残っており、元の装置の約3分の1にすぎません。歯車がくっついて固まっていたため、研究者たちは2005年まで中を見ることができませんでしたが、その年にあるチームが高解像度のX線CTスキャンを使いました。
2006年、トニー・フリースと同僚たちは、おそらく紀元前2世紀ごろに作られたこの装置が、手回し式の天文計算機だったと報告しました。その文字盤は月と太陽の周期を追い、日食・月食を予測しました。のちの研究では、小さな文字盤の一つがオリンピックなどの競技会の年まで示していたことがわかりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main purpose of the passage?
装置の発見、CTによる調査、そして天文計算機としての機能を説明しているので A。
Q2. How much of the original device survives today?
only about a third of the original device とあるので C。
Q3. What does the Olympic dial suggest about the device?
天体の周期を追う文字盤と同じ機械に競技会の年の表示もあった=天体と人間の行事を結びつけていたと推測できる。正解は D。
In 1901, sponge divers recovered a corroded bronze object from an ancient shipwreck. Today the Antikythera Mechanism survives as 82 fragments, roughly a third of the original. Its gears stayed hidden inside the fused metal until 2005, when microfocus X-ray CT let researchers look inside without damaging it. In 2006, Freeth and an international team reconstructed much of the gearing and doubled the number of readable inscriptions.
The device, probably made in the second century BC, was a hand-cranked astronomical calculator. Dials on the back followed the 19-year Metonic cycle and used the 223-month Saros cycle to predict eclipses. A small dial, identified in 2008, marked four-yearly athletic games such as the Olympics. Cleverest of all, a pin-and-slot mechanism reproduced the Moon's changing speed across the sky, in effect turning an ancient Greek lunar theory into moving parts.
No geared machine of comparable complexity is known for more than a thousand years afterward. Much of the front, though, is lost. A 2021 model by a UCL team shows the Sun, Moon and five planets, but no gears for those displays survive. The team worked from cycles recorded in the inscriptions, so parts of the model are informed reconstruction.
198 words ・ CEFR B2
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1901年、海綿採りのダイバーたちが古代の沈没船から、さびた青銅の物体を引き上げました。現在、アンティキティラ島の機械は82個の断片として残っており、これは元の装置のおよそ3分の1にあたります。歯車は固まった金属の中に隠れたままでしたが、2005年、マイクロフォーカスX線CTによって、研究者たちは壊さずに内部を調べられるようになりました。2006年、フリースと国際チームは歯車機構の多くを復元し、読み取れる刻字の数を倍にしました。
おそらく紀元前2世紀に作られたこの装置は、手回し式の天文計算機だったのです。背面の文字盤は19年のメトン周期をたどり、223か月のサロス周期を使って日食・月食を予測しました。2008年に特定された小さな文字盤は、オリンピックのような4年ごとの競技会を示していました。中でも最も巧みなのはピンと溝の機構で、空を移動する月の速さの変化を再現し、古代ギリシャの月の理論を事実上、動く部品に変えていました。
これに匹敵する複雑な歯車機械は、その後1000年以上知られていません。ただし、前面の多くは失われています。UCLのチームによる2021年のモデルは太陽・月・5つの惑星を表示しますが、それらの表示の歯車は残っていません。チームは刻字に記された周期をもとに作業したため、モデルの一部は根拠ある推理による復元なのです。
4択リーディングクイズ
Q1. Which of the following best summarizes the passage?
CTで高度な天文計算機であることが判明した一方、前面の復元は推理を含むと述べているので B。
Q2. What did the pin-and-slot mechanism do?
a pin-and-slot mechanism reproduced the Moon's changing speed across the sky とあるので A。
Q3. Why does the author call parts of the 2021 model "informed reconstruction"?
no gears for those displays survive と The team worked from cycles recorded in the inscriptions とあり、実物の歯車ではなく刻字からの推理であるため。正解は D。
重要単語
- gearB1名詞歯車The device contains about thirty bronze gears.
「装備・道具」の意味もある(camping gear)。change gear「ギアを変える」は比喩で「方針を切り替える」。 - eclipseB2名詞日食・月食The machine could predict when an eclipse would happen.
solar eclipse(日食)/ lunar eclipse(月食)。動詞で「~を見劣りさせる」の意味もある。 - shipwreckB2名詞沈没船・難破船Divers found the device in a shipwreck.
ship+wreck(残骸)。wreck は事故車などにも使う。 - fragmentB2名詞断片・かけらOnly fragments of the machine survive today.
frag- は「壊れる」の語源で fragile(壊れやすい)と同じ。 - inscriptionC1名詞刻まれた文字・銘文Tiny inscriptions explained how to use the machine.
in-(中に)+scribe(書く)。describe, prescribe と同じ scribe。 - reconstructB2動詞復元するScientists tried to reconstruct the missing parts.
re-(再び)+construct(組み立てる)。名詞 reconstruction は「復元・再建」。
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1901年に沈没船から出たサビたかたまり。X線CTで中を見たら、30個の歯車で月の満ち欠けや日食、競技会の年まで示す“2000年前のコンピューター”だった。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Freeth et al. (2006) Decoding the ancient Greek astronomical calculator known as the Antikythera Mechanism, Naturedoi.org
- Freeth et al. (2008) Calendars with Olympiad display and eclipse prediction on the Antikythera Mechanism, Naturedoi.org
- Freeth et al. (2021) A Model of the Cosmos in the ancient Greek Antikythera Mechanism, Scientific Reportsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













