望遠鏡なしで金星の動きを長い年月にわたって予測。マヤ文明の天文学がすごすぎる

読む前に予想してみよう!
マヤの暦は「2012年に世界が終わる」と予言していた
長期暦の大きな区切りが2012年にあっただけで、世界の終わりを予言した確かな記録はない。暦はその先も続く。
- 対象
- マヤの絵文書と遺跡の壁画
- 規模
- ドレスデン絵文書+シュルトゥン遺跡の壁の表
- 研究の種類
- 考古天文学(記録の解読・計算)
- 確かさ
- ★★★☆☆
マヤの人々は肉眼の観測だけで、金星が約584日周期で同じ見え方に戻ることを突き止め、日食が起こりうる時期の表まで作った。ゼロの概念も使いこなしていた。
ひとことで言うとマヤの人たちは、目だけで星を見て、金星の動きを正確に予想していた!
望遠鏡もコンピューターもない時代。夜空を見上げ、星の動きを記録し続けた人々がいました。中米のジャングルに栄えたマヤ文明の人々です。
彼らは肉眼の観測だけで、明けの明星・宵の明星として知られる金星の動きを驚くほど正確につかみ、長い年月くり返し使える「金星の予測表」まで作り上げていました。
ピラミッドや神殿で有名なマヤ文明。その本当のすごさは、空を読む「頭脳」にあったのかもしれません。
01マヤ文明ってどんな文明?
マヤ文明は、今のメキシコ南部からグアテマラ、ベリーズなどにかけて栄えた文明です。とくに西暦250年ごろから900年ごろにかけて、たくさんの都市が栄えました。
マヤの人々は、
- 絵のようなマヤ文字で記録を残し
- ゼロを表す記号を使いこなし
- 20進法(20ずつ位が上がる数え方)で大きな数を計算していました
手と足の指を合わせると20本。20進法は、そう考えると意外と身近な数え方です。
02金星は「約584日」で同じ見え方に戻る
金星は、ある時期は明け方の東の空に、別の時期は夕方の西の空に輝きます。そして、見えなくなる時期もはさみながら、約584日の周期で同じ見え方に戻ってきます。
マヤの人々は、この周期を584日として記録していました。現代の天文学で求めた平均の値は約583.92日。その差は、1回あたりたった0.08日(約2時間)ほどです。
ただし、実際の金星の周期は1回ごとに数日ずつばらつきます。マヤの人々は、何十年分もの観測を平均して「584日」という値にたどりついたと考えられます。
さらにすごいのは、ズレをそのままにしなかったこと。ドレスデン絵文書の金星の表には、長い年月の間にたまっていくズレを、決まったタイミングで数日ずつ差し引いて調整するしくみが組みこまれていたと考えられています。現代の「うるう年」と似た発想です。

03「5回の金星=8年」のぴったりな関係
マヤの人々は、もう1つ面白い関係に気づいていました。
金星の周期584日を5回くり返すと、2920日。これは、365日の1年の8年分(365×8=2920)とぴったり同じです。つまり、8年たつと、金星はカレンダーのほぼ同じ時期に、同じ見え方で戻ってくるのです。
マヤの人々はこうした周期の組み合わせを使って、儀式や戦いの日取りを決めることもあったと考えられています。彼らにとって天文学は、ただの学問ではなく、社会を動かす大切な知識でした。
04日食が起こりうる日も表にしていた
マヤの数少ない書物の1つ『ドレスデン絵文書』(ドイツのドレスデンの図書館が所蔵。11〜13世紀ごろの写本とする説が多く、もとになった表はさらに古いと考えられる)には、金星の表のほかに、日食が起こりうる時期をまとめた表もあります。
月の満ち欠けを405回分(約33年分)数え、「この時期に食が起こる可能性がある」という日を並べたもので、長い期間にわたってくり返し使えるように作られていました。表が示すのは「食が起こりうる時期」で、実際にマヤの地から見える食だけを当てたわけではない点には注意が必要です。
05「2012年に世界が終わる」は本当だった?
マヤ文明といえば、「マヤの暦では2012年に世界が終わる」といううわさが、世界中で話題になったことを覚えている人もいるかもしれません。
ちなみに、マヤの書物の多くは、16世紀にスペイン人がやってきたときに燃やされてしまいました(1562年、ユカタンでの司教ディエゴ・デ・ランダによる焼却がとくに有名です)。今残っている古代マヤの絵文書は、わずか4冊しかありません。もし残っていたら、もっとたくさんの天文学の知恵がわかっていたかもしれないのです。
06まとめ
- マヤの人々は肉眼の観測だけで、金星の周期を約584日と見抜いていた
- 長い年月のズレを調整するしくみまで考えていた
- 日食が起こりうる時期の表も作っていた
- 「2012年に世界が終わる」という予言は誤解だった
明け方や夕方、空にひときわ明るく輝く星を見つけたら、それは金星かもしれません。1000年以上前、ジャングルの神殿から同じ星を見上げ、その動きを数え続けた人々がいたことを、ちょっと思い出してみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe Maya civilization flourished in what is now southern Mexico and Guatemala, especially between about 250…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
The Maya people lived in Central America long ago. They had no telescopes, but they watched the sky carefully. They learned that Venus comes back to the same place in the sky about every 584 days.
They made tables to predict its movements for many years. They also used a sign for zero. Some people said the Maya calendar showed the world would end in 2012, but that was not true.
71 words ・ CEFR A2
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マヤの人々は、昔、中央アメリカで暮らしていました。彼らは望遠鏡を持っていませんでしたが、空を注意深く観察していました。そして、金星が約584日ごとに空の同じ位置に戻ってくることを知りました。
彼らは、長い期間の金星の動きを予測するための表を作りました。また、ゼロを表す記号も使っていました。マヤの暦では2012年に世界が終わると言う人もいましたが、それは本当ではありませんでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
望遠鏡なしで空を観察し、金星の動きを予測したマヤの人々の話なので D。
Q2. How often does Venus come back to the same place in the sky?
Venus comes back to the same place in the sky about every 584 days とあるので A。
Q3. In this passage, "predict" means ...
predict は「予測する」。pre-(前に)+dict(言う)なので C。
The Maya civilization flourished in what is now southern Mexico and Guatemala, especially between about 250 and 900 AD. Without telescopes, Maya astronomers recorded the cycle of Venus as 584 days, extremely close to the modern average of about 583.92 days. Their Venus table in the Dresden Codex even included a way to correct small errors that built up over many years, much like our leap years. They also noticed that five Venus cycles equal eight 365-day years.
In addition, the codex contains a table showing when solar eclipses could happen. Sadly, most Maya books were burned by the Spanish in the 16th century, and only four survive today.
109 words ・ CEFR B1
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マヤ文明は、現在のメキシコ南部やグアテマラにあたる地域で、特に西暦250年ごろから900年ごろにかけて栄えました。望遠鏡なしで、マヤの天文学者たちは金星の周期を584日と記録しました。これは現代の平均値である約583.92日にきわめて近い値です。ドレスデン絵文書にある彼らの金星の表には、長い年月の間にたまっていく小さな誤差を修正するしくみまで含まれていました。私たちのうるう年によく似たものです。
彼らはまた、金星の周期5回分が、365日の1年の8年分に等しいことにも気づいていました。さらに、この絵文書には、日食が起こりうる時期を示す表も含まれています。残念なことに、マヤの書物のほとんどは16世紀にスペイン人によって燃やされ、今日残っているのは4冊だけです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
金星の周期や誤差の修正、食の表などマヤの天文学の知識を紹介しているので B。
Q2. What relationship did the Maya notice?
five Venus cycles equal eight 365-day years とあるので D。584×5=2920=365×8。
Q3. What can be inferred from the burning of Maya books?
ほとんどの書物が燃やされ4冊しか残っていないので、多くの知識が失われたと推論できる。正解は A。
Venus appears in the sky on a cycle that varies by several days each time. Maya astronomers, working without telescopes, recorded an average of 584 days. The modern value is about 583.92 days, so their figure was off by only around two hours per cycle, a result that probably took decades of careful watching.
The Venus table in the Dresden Codex, a manuscript usually dated to the 11th to 13th centuries but likely copied from older sources, appears to have built in scheduled corrections. At set points it subtracted a few days so that errors would not pile up. The Maya also used the fact that five Venus cycles equal eight 365-day years, possibly to time rituals and warfare.
Another table, covering 405 lunar months, marked periods when eclipses could happen, though it did not say whether they would be visible from Maya territory. Scholars still disagree about exactly how some of the tables were used, and most Maya books were burned in the 16th century. The tradition itself is old. In 2012, archaeologists reported numerical tables painted on a wall at Xultun, Guatemala, in the early ninth century, centuries before the codex.
193 words ・ CEFR B2
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金星が空に現れる周期は、毎回数日ずつばらつきます。マヤの天文学者たちは望遠鏡を使わずに、その平均を584日と記録しました。現代の値は約583.92日なので、彼らの数字は1周期あたりわずか2時間ほどしかずれておらず、おそらく何十年もの注意深い観測によって得られた結果です。ドレスデン絵文書は、一般に11〜13世紀のものとされますが、より古い資料から写されたと考えられる写本です。
その金星の表には、決まった時期に行う修正が組みこまれていたようです。ある時点ごとに数日を差し引き、誤差がたまらないようにしていたのです。マヤの人々はまた、金星の周期5回分が365日の1年の8年分に等しいという事実を利用し、儀式や戦いの日取りを決めていた可能性があります。
405朔望月にわたる別の表は、食が起こりうる時期を示していましたが、それがマヤの土地から見えるかどうかまでは示していませんでした。いくつかの表が正確にどう使われたのかについては研究者の意見が今も分かれており、マヤの書物のほとんどは16世紀に燃やされてしまいました。とはいえ、この伝統そのものは古いものです。2012年、考古学者たちは、グアテマラのシュルトゥン遺跡で9世紀初めに壁に描かれた数字の表を報告しました。絵文書より数百年も前のものです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
道具なしで精密な天文学を築いたが、表の使い方などには不明点が残る、という内容なので C。
Q2. What did the eclipse table actually indicate?
marked periods when eclipses could happen, though it did not say whether they would be visible from Maya territory とあるので A。
Q3. Why is the Xultun discovery significant?
The tradition itself is old. のあと、壁の表が in the early ninth century, centuries before the codex に描かれたとあるので B。
重要単語
- astronomyB2名詞天文学The Maya were skilled in astronomy.
astro(星)+nomy(法則)。占星術の astrology と混同しないこと。astronomer は「天文学者」。 - calendarA2名詞暦、カレンダーThe Maya used several calendars at once.
つづりは -dar(-der ではない)。lunar calendar「太陰暦」、solar calendar「太陽暦」。 - cycleB1名詞周期Venus repeats its cycle about every 584 days.
cyclo(円)が語源。bicycle(二輪)、recycle(再循環)と同じ仲間。 - eclipseB2名詞食(日食・月食)Their tables showed when an eclipse might happen.
solar eclipse(日食)、lunar eclipse(月食)。 - codexC1名詞写本(古い折り本の書物)Only four Maya codices survive today.
複数形は codices。code(法典・暗号)と同語源。 - civilizationB2名詞文明The Maya civilization flourished in Central America.
civil(市民の)→ civilize(文明化する)→ civilization。ancient civilization「古代文明」。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Saturno et al. (2012) Ancient Maya Astronomical Tables from Xultun, Guatemala, Sciencedoi.org
- Bricker & Bricker (1983) Classic Maya Prediction of Solar Eclipses, Current Anthropologydoi.org
- Bricker & Bricker (2011) The Venus Table in the Dresden Codex, Astronomy in the Maya Codices, American Philosophical Societydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













