地球・歴史・物理ビミョー

イースター島のモアイは「歩いて」運ばれた? 18人とロープ3本で巨像が進んだ実験

イースター島のモアイは「歩いて」運ばれた? 18人とロープ3本で巨像が進んだ実験

読む前に予想してみよう!

イースター島の文明は、木を切りすぎて人口が激減し崩壊した、というのが今の定説だ

研究カード(どんな研究?)
対象
イースター島の道沿いのモアイとレプリカ
規模
レプリカ1体・道沿いのモアイ数十体
研究の種類
実験考古学・形態分析
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

島に伝わる「モアイは歩いた」という言い伝え。研究者がレプリカに3本のロープをかけて左右に揺らすと、18人で約100mを進んだ。道ばたのモアイの形も手がかりに。

ひとことで言うとモアイは、ロープで左右にゆらして「歩かせて」運んだのかもしれない。

もくじ
  1. 「寝かせて引きずった」説の弱点
  2. 道ばたのモアイに「ヒント」があった
  3. 2025年、「批判への回答」
  4. どんでん返し:すべてのモアイが「歩いた」とは限らない
  5. まとめ

南太平洋に浮かぶイースター島(ラパ・ヌイ)。この小さな島には、1000体近いモアイが残っています。

大きいものは高さ数メートル、重さ数十トン。島の石切り場で彫られたモアイは、遠いものでは十数km離れた海岸まで運ばれています。クレーンもトラックもない時代に、どうやって?

島の人々には、昔から答えがありました。「モアイは歩いたのさ」。この言い伝えを、科学者が本気で確かめてみたのです。

01「寝かせて引きずった」説の弱点

昔からの有力な説は、モアイを寝かせて木のソリやコロに乗せ、引っぱったというものでした。

でもこの方法だと、大量の木材と大人数が必要です。さらに、「木を切りすぎて森が消え、島の文明が崩壊した」という有名な物語とも結びついてきました。

02道ばたのモアイに「ヒント」があった

アメリカの考古学者リポとハントは、石切り場から延びる古い道の途中で倒れている「道のモアイ」に注目しました。

これらは、祭壇に立つ完成品のモアイとは形が少し違いました。底が幅広いD字形で、立てると前に傾くようにできていたのです。まるで「立てたまま揺らして運ぶ」のに都合のいい形でした。

左右に揺らしながら前へ。「モアイは歩いた」という言い伝えを実験で再現した
左右に揺らしながら前へ。「モアイは歩いた」という言い伝えを実験で再現した

道そのものも、断面がゆるいU字形のくぼみになっていて、立てた像が左右に倒れにくい構造だったと考えられています。

032025年、「批判への回答」

この「歩くモアイ」説には、「実際の大きなモアイでは無理では?」などの批判もありました。

リポとハントは2025年、道沿いのモアイの3Dデータなどを使った分析と実験の結果をまとめ直し、批判に一つ一つ答える論文を発表しました。道のモアイの形や分布は、立てて運ぶ方法と最もよく合う、という主張です。

04どんでん返し:すべてのモアイが「歩いた」とは限らない

ただし、実験で動かしたのは約4.35トンのレプリカです。数十トンの巨大モアイでも同じようにできたかは、まだ直接は確かめられていません。

運び方は1つではなく、像の大きさや地形によって工夫を変えた可能性もあります。

05まとめ

  • イースター島には「モアイは歩いた」という言い伝えがある
  • 道沿いのモアイは、立てて運ぶのに向いた形をしていた
  • レプリカ実験では、ロープ3本・18人で約100mを「歩かせる」ことができた
  • 「環境破壊で文明崩壊」という定説も、最新研究で揺らいでいる

昔話を「ただの伝説」と切り捨てず、ていねいに確かめる。それが科学のいちばん面白いところかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerEaster Island, or Rapa Nui, is home to nearly 1,000 moai, some weighing tens of tons. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Easter Island, or Rapa Nui, is home to nearly 1,000 moai, some weighing tens of tons. A common theory says they were laid down and dragged on wooden sledges, but this would have needed a lot of wood and many workers. Islanders, however, have long said that the statues "walked."

The archaeologists Lipo and Hunt noticed that moai left along ancient roads had wide, D-shaped bases and leaned forward, which suits moving them upright. In 2012, they tied three ropes to the head of a 4.35-ton replica. Two groups pulled from the sides in turn while a third group kept it steady from behind. The statue "walked," and 18 people moved it about 100 meters in around 40 minutes.

119 words ・ CEFR B1

和訳を見る

イースター島、すなわちラパ・ヌイには、1000体近いモアイがあり、なかには数十トンになるものもあります。よく知られた説では、モアイは寝かせて木のソリで引きずられたとされますが、それには大量の木材と多くの働き手が必要だったはずです。一方、島民は昔から像が「歩いた」と言ってきました。

考古学者のリポとハントは、古代の道沿いに残されたモアイが幅広いD字形の底を持ち、前に傾いていることに気づきました。これは立てたまま運ぶのに向いた形です。2012年、彼らは4.35トンのレプリカの頭に3本のロープを結びました。2組が左右から交互に引き、3組目が後ろから像を安定させました。像は「歩き」、18人で約100メートルを約40分で動かしたのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is one problem with the sledge theory?

Q2. What did Lipo and Hunt notice about the moai along the roads?

Q3. What was the role of the third group in the experiment?

重要単語

  • statueB1
    名詞像The giant statue stood on a stone platform. the Statue of Liberty(自由の女神像)。status(地位)、stature(身長)とつづりが似るので注意。
  • quarryC1
    名詞石切り場Most moai were carved at one quarry. 「獲物」という別の意味もある。文脈で判断する。
  • replicaB2
    名詞複製The team built a concrete replica of a moai. replicate(再現する)の仲間。研究の「再現性」は replicability。
  • oral traditionC1
    名詞(句)口承(口伝えの言い伝え)Oral tradition says the statues walked. oral は「口の・口頭の」。an oral exam「口頭試験」。aural(耳の)と発音が近い。
  • collapseB2
    名詞・動詞崩壊(する)The idea of a population collapse has been challenged. col-(共に)+lapse(滑る)。人が「倒れる」、建物が「崩れる」、文明が「崩壊する」まで幅広い。
  • uprightB2
    形容詞・副詞まっすぐ立った(状態で)The statue was moved in an upright position. stand upright「まっすぐ立つ」。比喩で「正直な・高潔な」の意味もある。

動画でもっと知る

4コマでわかる

イースター島のモアイは「歩いて」運ばれた? 18人とロープ3本で巨像が進んだ実験の4コマ漫画
イースター島には「モアイは自分で歩いた」という言い伝えがある。約4トンのレプリカに3本のロープをかけて左右に揺らすと、18人で約100mを進んだらしい。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Lipo, Hunt & Haoa (2013) The 'walking' megalithic statues (moai) of Easter Island, Journal of Archaeological Sciencedoi.org
  2. Lipo & Hunt (2025) The walking moai hypothesis: Archaeological evidence, experimental validation, and response to critics, Journal of Archaeological Sciencedoi.org
  3. Davis et al. (2024) Island-wide characterization of agricultural production challenges the demographic collapse hypothesis for Rapa Nui (Easter Island), Science Advancesdoi.org
  4. Moreno-Mayar et al. (2024) Ancient Rapanui genomes reveal resilience and pre-European contact with the Americas, Naturedoi.org