東京スカイツリーの展望台では時間が速く進む。日本生まれの超精密時計が実証した

読む前に予想してみよう!
高い場所にある時計は、地上の時計よりゆっくり進む
逆。重力が弱い高い場所ほど時間は速く進む。アインシュタインの一般相対性理論の予言どおり。
- 対象
- 東京スカイツリーの地上階と展望台
- 規模
- 可搬型光格子時計2台(高さの差約450m)
- 研究の種類
- 物理実験
- 確かさ
- ★★★★☆
重力が弱い高い場所ほど時間は速く進む。地上と高さ約450mの展望台に光格子時計を置いた実験で、上の時計が1日に約4ナノ秒速く進むことが確かめられた。
ひとことで言うと高いところほど、時間がほんの少しだけ速く進むんだって!
もしあなたが、高層マンションの最上階に住んでいたら。地上に住む友達より、ほんの少しだけ早く年をとる――そう言われたら、信じられますか?
これはSF映画の話ではありません。アインシュタインの一般相対性理論が100年以上前に予言し、日本の研究チームが東京スカイツリーを使って実際に確かめた、本物の科学です。
結果は、展望台の時計のほうが、地上の時計より1日あたり約10億分の4秒、速く進んでいたのです。
01重力が強いところでは、時間がゆっくり進む
アインシュタインの一般相対性理論によると、重力が強い場所ほど、時間はゆっくり進みます。
地球の重力は、地球の中心に近いほど(つまり低い場所ほど)わずかに強く、高い場所ほどわずかに弱くなります。だから、
- 地上:重力が少し強い → 時間が少しゆっくり
- 高い場所:重力が少し弱い → 時間が少し速い
ということが起きるのです。
ただし、その差はとてつもなく小さいもの。高さ数百メートルの差で、1日に数ナノ秒(1ナノ秒は10億分の1秒)。ふつうの時計では、とても測れません。
02「300億年に1秒しかずれない」時計
そこで登場するのが、日本で生まれた光格子時計(ひかりこうしどけい)です。
東京大学の香取秀俊(かとり ひでとし)教授が2001年に提案したこの時計は、レーザー光で作った「光の卵パック」のようなくぼみにたくさんの原子(ストロンチウムなど)を閉じこめ、その原子が吸収・放出する光の振動を数えて時間を測ります。たくさんの原子を同時に測るので、短い時間で精度の高い値が得られるのが強みです。
原子の振動(光の振動数)はとても規則正しく、しかも1秒間に数百兆回も振動するので、ものすごく細かく時間を刻めます。その精度は「18桁」、およそ300億年に1秒しかずれないほど。宇宙の年齢(約138億年)の2倍以上かけても、1秒もずれないのです。今の「1秒」の定義に使われているセシウム原子時計より、100倍以上も精密です。

03スカイツリーで「相対性理論」をテスト
これまで、相対性理論による時間のズレを高い精度で確かめるには、人工衛星やロケットなど大がかりな方法が必要でした。2010年にはアメリカの研究所が、実験室の中でわずか33cmの高さの差による時間のズレを測っていますが、スカイツリーの実験は、研究室の外の街なかの建物で、持ち運べる時計を使って測れることを示した点が画期的でした。
04身近なところで役立っている「時間のズレ」
「そんな小さなズレ、生活に関係ないでしょ?」と思うかもしれません。でも実は、すでにあなたのスマホにも関係しています。
カーナビやスマホの地図で使われるGPSの衛星は、地上約2万kmの高さを回っています。そこでは重力が弱いため時計が速く進み、一方で衛星が高速で動いているぶん時計は遅れます。これらを合わせると、衛星の時計は地上より1日に約38マイクロ秒(100万分の38秒)速く進みます。
たったそれだけ?と思うかもしれませんが、もしこのズレを直さなければ、位置の計算は1日で10km以上も狂ってしまうと見積もられています。相対性理論は、地図アプリの裏側で毎日働いているのです。
05時計で「高さ」を測る未来
この研究には、さらに面白い使い道があります。時計の進み方の違いから、逆に高さの差を求めることができるのです。
精度の高い光格子時計なら、わずか1cmの高さの違いによる時間のズレも、原理的には見分けられます(18桁の精度は、高さにして約1cmに相当します)。これを「相対論的測地」と呼びます。将来は、時計を使って土地のわずかな隆起や沈み込みをとらえ、火山活動や地殻の変化を見張ることにも役立つと期待されています。
06まとめ
- 重力が弱い高い場所ほど、時間はわずかに速く進む(一般相対性理論)
- 日本生まれの光格子時計は、約300億年に1秒しかずれない超精密時計
- スカイツリーの実験で、展望台の時計が1日約4ナノ秒速く進むことを確認
- GPSや、将来の地殻変動の観測にも役立つ
スカイツリーの展望台に上ったら、ほんの一瞬だけ、あなたの時間は地上より速く流れています。もちろん気づけないほどのわずかな差ですが、それを測れてしまう人類の技術こそ、本当の「マジか」なのかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAccording to Einstein's general theory of relativity, time runs slightly faster where gravity is weaker,…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Einstein said that time goes a little faster where gravity is weaker. Gravity is a little weaker in high places. Japanese scientists tested this at Tokyo Skytree. They put one very exact clock on the ground and another about 450 meters up.
The clock at the top went faster by about four billionths of a second each day. People cannot feel this, but it is real.
66 words ・ CEFR A2
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アインシュタインは、重力が弱いところでは時間が少し速く進むと言いました。重力は高い場所ではわずかに弱くなります。日本の科学者たちは、東京スカイツリーでこれを確かめました。とても正確な時計を1台は地上に、もう1台を約450mの高さに置いたのです。
上の時計は、1日あたり約10億分の4秒速く進みました。人はこれを感じることはできませんが、本当のことなのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
高い場所では時間が速く進むことをスカイツリーで確かめた話なので C。
Q2. How high was the second clock placed?
another about 450 meters up とあるので A。
Q3. In this passage, "exact" means ...
exact は「正確な」。ほんのわずかな時間の差を測れる時計なので D。
According to Einstein's general theory of relativity, time runs slightly faster where gravity is weaker, such as high above the ground. The difference is tiny, so it requires extremely precise clocks. Hidetoshi Katori of the University of Tokyo invented the optical lattice clock, which counts the vibrations of atoms trapped by lasers. It is so precise that it would lose only about one second in 30 billion years.
In 2020, his team placed two portable clocks at Tokyo Skytree, one on the ground floor and one about 450 meters up. The upper clock gained about four nanoseconds per day, matching Einstein's prediction. The same effect must be corrected in GPS satellites.
111 words ・ CEFR B1
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アインシュタインの一般相対性理論によると、地上のはるか上のように重力が弱い場所では、時間がわずかに速く進みます。その差はとても小さいので、きわめて精密な時計が必要です。東京大学の香取秀俊は、レーザーで閉じこめた原子の振動を数える光格子時計を発明しました。この時計はとても精密で、300億年でわずか1秒ほどしかずれません。2020年、彼のチームは持ち運べる時計2台を東京スカイツリーに置きました。
1台は地上階に、もう1台は約450mの高さにです。上の時計は1日あたり約4ナノ秒速く進み、アインシュタインの予言と一致しました。同じ効果は、GPS衛星でも補正しなければなりません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
スカイツリーで精密な時計を比べ、高い所ほど時間が速いことを確かめた内容なので B。
Q2. How precise is the optical lattice clock?
it would lose only about one second in 30 billion years とあるので C。
Q3. Why must the same effect be corrected in GPS satellites?
衛星は高い場所にあり重力が弱いので、地上の時計と進み方が変わる。そのずれを補正する必要があると推論できるので A。
Einstein's general theory of relativity predicts that clocks tick faster where gravity is weaker, so a clock high above the ground should slowly pull ahead of one below. Measuring this over everyday heights demands extraordinary precision. The optical lattice clock, proposed in 2001 by Hidetoshi Katori, traps many atoms in a grid of laser light and counts the oscillations of the light they absorb. Because many atoms are measured simultaneously, it reaches 18-digit precision quickly, losing roughly one second in 30 billion years, over a hundred times better than the cesium clocks that define the second.
In 2020, Katori's team installed two transportable clocks at Tokyo Skytree, about 450 meters apart in height, and found that the upper clock gained about four nanoseconds per day, consistent with relativity and with surveyed elevation data. Earlier precise tests had required satellites or rockets, and a 2010 laboratory experiment detected a 33-centimeter height difference, but this was a pioneering measurement with portable clocks in an ordinary building. Since 18-digit precision corresponds to about one centimeter of height, such clocks could one day detect ground uplift associated with volcanic activity.
186 words ・ CEFR B2
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アインシュタインの一般相対性理論は、重力が弱い場所ほど時計が速く時を刻むと予言しています。そのため、地上のはるか上にある時計は、下にある時計を少しずつ追い越していくはずです。日常的な高さでこれを測るには、並外れた精度が必要です。2001年に香取秀俊が提案した光格子時計は、レーザー光の格子にたくさんの原子を閉じこめ、原子が吸収する光の振動を数えます。多くの原子を同時に測るので、短時間で18桁の精度に達し、300億年でおよそ1秒しかずれません。これは、1秒の定義に使われているセシウム時計より100倍以上優れています。
2020年、香取のチームは、高さが約450m違う東京スカイツリーの2か所に持ち運べる時計を設置し、上の時計が1日あたり約4ナノ秒速く進むことを発見しました。これは相対性理論とも、測量された標高のデータとも一致していました。それまで精密な検証には人工衛星やロケットが必要で、2010年には実験室で33cmの高さの差が検出されていましたが、これはふつうの建物で持ち運べる時計を使った先駆的な測定でした。18桁の精度は高さにして約1cmに相当するので、こうした時計はいつか、火山活動にともなう地面の隆起をとらえられるかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
持ち運べる超精密時計で実際の建物で相対性理論を確かめ、将来の応用も期待される、という内容なので D。
Q2. Why can optical lattice clocks achieve such high precision?
Because many atoms are measured simultaneously, it reaches 18-digit precision quickly とあるので B。
Q3. What future use does the author suggest?
such clocks could one day detect ground uplift associated with volcanic activity とあるので C。
重要単語
- general relativityC1名詞(句)一般相対性理論General relativity says gravity affects time.
relative(相対的な)の名詞形 relativity。special relativity は「特殊相対性理論」。 - gravityB1名詞重力Gravity is slightly weaker at the top of a tower.
grave(重い・重大な)と同語源。the gravity of the situation「事態の深刻さ」という意味もある。 - atomic clockB2名詞(句)原子時計An atomic clock can measure time very precisely.
atom(原子)の形容詞 atomic。atomic bomb「原子爆弾」。 - precisionB2名詞精度The clock has amazing precision.
形容詞 precise(正確な)。with precision「正確に」。accuracy もほぼ同じ意味。 - elevationC1名詞標高、高さClocks can measure differences in elevation.
elevate(持ち上げる)の名詞形。elevator と同語源。 - oscillationC1名詞振動The clock counts the oscillations of light.
動詞 oscillate(振動する・揺れ動く)。vibration よりも物理的・規則的な往復運動を指すことが多い。
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東京スカイツリーの展望台と地上で時計を比べたら、上の時計のほうが1日あたり約10億分の4秒速く進んだらしい。高層階に住むと、ほんの少しだけ早く年をとる計算に。
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※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。














